教員を辞めたいと感じたら|辞める前の休職・異動と転職先、公立と私立の違い

教員を辞めたいと感じたら、辞めるか決める前に、休む・異動する・転職するの3つを並べて比べてみてください。令和6年度に定年以外の理由で公立小学校を離れた教員は8,334人で、迷うのは特別なことではありません。
意外と知られていないのが、教員免許にはいま有効期限がないことです。教壇をいったん離れても、免許を持ったまま別の道を試せます。
この記事では、勤務と離職の実態、給特法の改正、辞める前に使える仕組み、公立と私立の違い、教員経験が活きる転職先を順に整理します。
辞めるか続けるかを、一人で抱え込んで決める必要はありません。教員として積んだ経験でどんな仕事を選べそうかは、転職エージェントを活用すれば無料で相談できます。
教員の離職・勤務時間・休職はいまどうなっているか|公的統計の最新データ
辞めたい気持ちの背景を、まず公的な統計で確かめておきましょう。押さえておきたいのは次の4点です。
- 公立小学校では、定年以外の理由による離職が3年前より1,310人増えた
- 定年以外の離職理由は、公立の小学校と中学校では「転職のため」が最も多い
- 令和6年度に時間外在校等時間が月45時間を超えた教諭は、中学校で約4割
- 公立学校の精神疾患による病気休職者は、令和6年度に7,087人
令和6年度間に定年以外で離職した教員は、公立小学校で8,334人
文部科学省の学校教員統計調査は、国公私立の学校の教員を対象に3年ごとに行われる調査です。最新は令和8年7月に公表された令和7年度調査の中間報告で、教員の異動は令和6年度間(令和6年4月1日〜令和7年3月31日)の状況をまとめています。確定値の公表は令和9年3月の予定です。
この調査でいう「離職」は、その学校の本務教員(籍のある常勤の教員)でなくなった人のこと。別の小学校や高等学校などの本務教員として引き続き移った人は数えないため、公立から私立の学校へ移った人も離職には入りません。
令和6年度間に公立小学校を離職した教員は13,840人で、定年(勧奨を含む)が5,506人、定年以外が8,334人でした。定年以外の離職は、令和3年度間の7,024人から1,310人増えています。公立中学校でも定年以外は3,640人から4,751人に、公立高等学校でも2,017人から2,455人に増えました。
定年以外の理由を公立小学校で見ると、「転職のため」2,552人、「家庭の事情のため」2,269人、「その他」2,174人、「病気のため」1,040人、「職務上の問題のため」147人、「死亡」117人、「大学等入学のため」35人です。病気のうち精神疾患によるものは801人で、令和3年度間の569人から232人増えました。3年前と比べると、転職・家庭の事情・病気がいずれも増えています。 公立中学校でも「転職のため」1,745人が定年以外で最も多く、公立高等学校では「その他」949人に次いで「転職のため」783人が多くなっています。


調査の手引によると、家庭の事情は結婚・出産・育児・介護・転居など、職務上の問題は学級運営の困難や懲戒処分などを指します。「転職のため」には籍が教育委員会に移った人も含まれるため、すべてが教育の外に出た人というわけではありません。それでも、教壇を離れる理由が転職だけでなく、家庭の事情や病気にも分かれていることは読み取れるでしょう。
参考:文部科学省「学校教員統計調査 -令和7年度(中間報告)結果の概要-」
参考:文部科学省「学校教員統計調査-用語の解説」
参考:文部科学省「令和7年度学校教員統計調査の手引について」
令和6年度、時間外在校等時間が月45時間を超えた中学校の教諭は約4割
文部科学省の教員勤務実態調査(令和4年度)は、全国の公立小学校・中学校各1,200校と高等学校300校に勤めるフルタイムの常勤教員に、連続する7日間の勤務を記録してもらった調査です。確定値によると、10・11月の平日1日あたりの在校等時間は、教諭(主幹教諭・指導教諭を含む)で小学校10時間45分、中学校11時間01分でした。平成28年度の調査より、小学校で30分、中学校で31分短くなっています。同じ資料は、1週間あたりの正規の勤務時間を38時間45分と示しています。
もう少し新しい数字を示しているのが、文部科学省がすべての教育委員会にたずねている「見える化」調査です。令和7年度調査(令和8年3月公表)では、令和6年度(令和6年4月〜令和7年3月)の各月について、教諭の時間外在校等時間を時間区分ごとの平均人数の割合で集計しています。時間外在校等時間は、学校教育活動に関する業務をしている時間から所定の勤務時間を除いたもの。在校等時間を客観的な方法で把握し、教諭の月ごとの人数を回答できた教育委員会の分の集計です。
小学校の教諭は、月45時間以下が77.8%、45時間超80時間以下が20.9%、80時間超が1.3%でした。中学校は60.5%、32.1%、7.4%、高等学校は72.6%、21.8%、5.6%です。中学校では、月45時間を超えた教諭が平均して約4割(39.5%)いたことになります。 月45時間以下の割合は令和5年度より小学校で2.4ポイント、中学校で2.9ポイント、高等学校で0.8ポイント上がり、少しずつ改善は進んでいます。1か月あたりの平均は、小学校教諭で約31時間、中学校教諭で約40時間、高等学校教諭で約33時間でした。


参考:文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)【確定値】について(概要)」
参考:文部科学省「令和7年度教育委員会における学校の働き方改革のための『見える化』調査結果の概要」
精神疾患による病気休職者は、令和6年度に7,087人
文部科学省の公立学校教職員の人事行政状況調査は、都道府県・指定都市の67教育委員会を対象に、公立の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校の教育職員の状況をまとめたものです。令和7年12月に公表された令和6年度分が最新で、精神疾患による病気休職者は7,087人、教育職員全体(922,776人)の0.77%でした。
令和5年度の7,119人からはわずかに減ったものの、令和2年度の5,203人と比べると1,884人多くなっています。精神疾患で1か月以上の病気休暇を取った人を含めると13,310人(1.44%)で、年代別では20代が2.21%と最も高い割合です。
休職の要因について教育委員会の認識をたずねた結果(「その他」「教育委員会として把握していない」を除いて割合を算出)では、「児童・生徒に対する指導そのものに関すること」26.5%、「職場の対人関係(上司、同僚、部下等)」23.2%、「校務分掌や調査対応等、事務的な業務に関すること」12.7%、「元々の精神疾患の悪化」11.8%、「個人的な対人関係(家族、プライベート関係)」8.9%、「職場外の者との対人関係(地域住民、保護者等)」6.1%が上位でした。20代に限ると、指導そのものが33.5%、職場の対人関係が27.1%と、どちらも全体より高くなっています。


これは休職した本人への調査ではなく、教育委員会の認識をまとめた数字です。 自分の辞めたい気持ちがどこから来ているのかを考えるときの、材料の1つとして見てください。
参考:文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」
参考:文部科学省「1-1-2 病気休職者の推移(教育職員)(過去5年間)」
参考:文部科学省「1-1-13 精神疾患による病気休職者及び1か月以上の病気休暇取得者の学校種別・性別・職種別・年代別状況(過去5年間)」
参考:文部科学省「1-1-19 精神疾患による病気休職者の要因に関する教育委員会の認識について(教育職員)」
給特法の改正で何が変わるのか|教職調整額の引き上げと在校等時間の上限
公立学校の教員の給与と働き方には、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)という特別な法律があります。令和7年6月に改正法が成立し、公布の日から令和8年4月1日にかけて順に施行されています。押さえておきたいのは次の4点です。
- 時間外勤務手当(残業代)が出ない仕組みは、改正後も変わらない
- 教職調整額は2026年1月に5%となり、毎年1%ずつ上がって2031年1月に10%になる
- 教育委員会は、業務量を管理する計画を定めて公表する
- 時間外在校等時間の上限は、国の指針で月45時間・年360時間とされている
教職調整額は上がるが、時間外勤務手当は出ない
給特法が残業代の代わりに定めているのが、教職調整額です。改正後の条文は次のとおり。
「教育職員」は、公立の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校と幼稚園の教諭など(第2条)。「教職調整額」は、勤務時間の長さにかかわらず、給料月額の一定割合を上乗せして支給する手当です。第2項は「支給しない」と言い切っており、改正後も公立学校の教員に時間外勤務手当や休日勤務手当は出ません。 給特法は公立学校の教育職員を対象にした法律なので、私立学校の教員には当てはまらない点も押さえておきましょう。
変わったのは割合です。改正前は給料月額の4%でした。改正後の「百分の十」は、附則の表で令和8年(2026年)は百分の五、令和9年は百分の六、令和10年は百分の七、令和11年は百分の八、令和12年は百分の九と読み替えられ、令和13年(2031年)1月から10%になります。幼稚園の教育職員は4%のままです。文部科学省はこれを約50年ぶりの教職調整額の引き上げと説明しており、学級担任への手当の加算も改正に盛り込まれました。


参考:e-Gov法令検索「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」
参考:文部科学省「給特法等一部改正法 広報資料」
教育委員会には、業務量を管理する計画が求められる
改正で新しく設けられた給特法第8条は、服務を監督する教育委員会に「業務量管理・健康確保措置実施計画」を定めて公表し、毎年度その実施状況を公表するよう求めています。計画のよりどころになる文部科学省の指針(令和7年文部科学省告示第114号)は令和8年4月1日から適用され、時間外在校等時間の上限を次のように定めています。
| 場面 | 上限 |
|---|---|
| 原則 | 1か月45時間、1年間360時間 |
| 児童生徒等に係る臨時的な特別の事情がある場合 | 1か月100時間未満、1年間720時間、月45時間を超えるのは年6か月まで、2〜6か月の平均はいずれも月80時間まで |
同じ指針は、政府として令和11年度までに1か月の時間外在校等時間を平均30時間程度に減らす目標を掲げています。そのうえで、上限は上限時間まで働くことを勧めるものと受け取ってはならないこと、実際より短い時間を記録したり記録させたりしてはならないこと、業務の持ち帰りは行わないのが原則であることも書かれています。
勤め先の教育委員会がホームページなどで公表する実施計画と実施状況を見れば、自分の自治体がどんな目標を立て、どこまで進んでいるのかを確かめられます。時間を短く記録するよう求められるなど、指針に沿わない運用に気づいたら、それは一人で抱える問題ではありません。 教育委員会に相談しても改まらないときのために、文部科学省にも相談窓口が設けられています。
参考:文部科学省「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理その他教育職員の服務を監督する教育委員会が教育職員の健康及び福祉の確保を図るために講ずべき措置に関する指針(令和7年文部科学省告示第114号)」
参考:e-Gov法令検索「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」
辞める前にできること|病気休暇・休職、学校の外の相談先、異動
辞めたい気持ちが強いときほど、辞めるか続けるかの2つに絞って考えてしまいがちです。公立学校の教員には、そのあいだに使える仕組みがいくつかあります。
- 心身がつらいときは、病気休暇と病気休職で、給与や共済の手当を受けながら休める
- 精神疾患で休職していた公立学校の教育職員の4割は、令和7年4月1日時点で復職している
- 校内で言い出しにくいことは、学校の外にも相談できる
- 学校を変えたいなら、異動の希望を校長に伝える
子どもや同僚に迷惑をかけたくないという思いが強い人ほど、休むことを後回しにしがちだと私たちは感じています。ただ、どの仕組みも、使われることを前提に用意されているものです。
心身がつらいときは、病気休暇と病気休職を先に考える
文部科学省のページで公開されている公立学校共済組合の手引き「とまり木」は、心の不調で休むときの制度を次のように説明しています(いずれも自治体によって異なります)。
- 病気休暇は、医療機関を受診して主治医の診断書を職場に出して取る。最大90日間が目安で、その間の給与は満額(180日間とする自治体などもある)
- 療養が長引くときは病気休職が発令される。期間は最長3年間が目安で、給与は1年目が8割、2年目以降は無給
- 無給になったあとは、公立学校共済組合から給与の約3分の2の額が、傷病手当金として1年6か月、傷病手当金附加金として6か月の範囲で、最大2年間支給される


病気休職の根拠は、地方公務員法の次の条文です。
「その意に反して」とあるとおり、休職は任命権者が発令する分限処分の1つで、懲戒処分(同法第29条)とは別のものです。手引きも、病気休職を公務員としての身分を保障しつつ勤務に従事させない処分と説明しています。休職は辞めることではなく、教員の身分を保ったまま療養に専念するための仕組みです。 手続きと効果は条例で定めることになっているため(同条第3項)、期間や給与の扱いは勤め先の自治体の条例・規則で確かめてください。
公立学校共済組合の傷病手当金は、1日あたり、支給開始日の属する月以前の直近の継続した12か月間の標準報酬月額の平均額の22分の1の、3分の2に相当する額です(組合員期間が12か月以上の場合)。引き続き1年以上職員だった人が退職し、在職中に傷病手当金を受けていたか受けられる状況だったなら、退職後も傷病手当金を受け取れます(附加金はなし)。
休んだあとどうなるのかも、人事行政状況調査で確かめられます。令和6年度に精神疾患で病気休職していた公立学校の教育職員7,087人の、令和7年4月1日時点の状況は、復職2,857人(40.3%)、引き続き休職2,772人(39.1%)、退職1,458人(20.6%)でした。令和6年度中に新たに休職した4,239人に限ると、復職37.2%、引き続き休職43.4%、退職19.3%です。


一方で、7,087人のうち1,283人(18.1%)には、過去1年以内にも精神疾患による休職期間がありました。手引きは、療養中は退職のような人生にかかわる大きな決断を、回復して落ち着いて判断できるまで保留するよう勧めています。各自治体には、復職前の試し出勤(復職支援プログラムなどの名称)のような支えも用意されています。不調のサインの見分け方は、仕事を辞めたいのは甘え?原因別の対処法でも紹介しています。
参考:文部科学省「教職員のメンタルヘルス対策について」
参考:公立学校共済組合「とまり木 心の不調による病気休暇・病気休職中の手引き」
参考:公立学校共済組合「傷病手当金/傷病手当金附加金」
参考:e-Gov法令検索「地方公務員法」
参考:文部科学省「1-1-9 精神疾患による休職者の状況(教育職員)」
校内で言い出しにくいことは、学校の外にも相談できる
管理職や同僚に話しにくい悩みは、学校の外の窓口にも持ち込めます。公立学校の教員が使える主な相談先は次のとおりです。
| 相談先 | 向いている相談 | 使う前に知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 公立学校共済組合の健康相談 | 心や体の不調、家族のことなど | LINEの「心ほっとサポート@公立学校共済」、電話・面談のメンタルヘルス相談、Web相談、教職員電話健康相談24などがある。組合員と被扶養者が対象で、詳細は組合員専用ページで確かめる |
| 人事委員会・公平委員会 | 勤務条件や職場での扱いへの不満 | 地方公務員法第8条で、職員の苦情を処理する機関とされている |
| 文部科学省の相談窓口 | 在校等時間の上限の指針などが適切に運用されていないとき | まず服務を監督する教育委員会と任命権を持つ教育委員会に相談し、その結果を添えて連絡する。教育委員会に内容が伝えられるため、相談者が特定される可能性がある |
文部科学省の窓口は、学校名や相談の内容、教育委員会への相談の時期と結果などを具体的に書いて、郵送かメールで連絡する仕組みです。対応が必要と認めた場合は、内容を教育委員会に伝えて対応を促し、相談したことを理由に不利益な取扱いをしてはならない旨もあわせて伝えるとしています。
参考:公立学校共済組合「心と体の健康情報」
参考:e-Gov法令検索「地方公務員法」
参考:文部科学省「公立学校の教育職員の業務量の適切な管理及び『休日のまとめ取り』のための1年単位の変形労働時間制等における不適切な運用に関する相談窓口について」
学校を変えたいなら、異動の希望を校長に伝える
辞めたい理由がいまの学校の人間関係や役割にあるなら、教員を続けたまま学校を変える道もあります。市町村立の小学校・中学校などの教員の多くは、給与を都道府県が負担する県費負担教職員で、任命権を持つのは都道府県教育委員会です(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第37条第1項)。都道府県教育委員会は市町村教育委員会の内申を待って異動などを行い(同法第38条第1項)、校長は所属する教員の進退について、市町村教育委員会に意見を申し出ることができます(同法第39条)。
異動を考えるなら、希望とその理由を校長に伝えておくことが欠かせません。 希望の出し方や時期は教育委員会ごとに違うため、校内の案内や面談の機会を確かめておきましょう。政令指定都市の市立学校の教員は県費負担教職員の対象から外れているので(市町村立学校職員給与負担法第1条)、市の教育委員会の手続きによります。
異動は環境を変える手段ですが、移った先で新しい負担を抱えることもあります。人事行政状況調査で、精神疾患で休職した教育職員7,087人を休職発令時点の所属校での勤務年数で見ると、2年未満が3,293人と全体の46.5%でした(異動してきた人だけでなく、新たに採用された人も含む数字です)。異動を希望するときは、何から離れたいのかと合わせて、移った先で何があれば続けられそうかも言葉にしておくと、面談で伝えやすくなります。
参考:e-Gov法令検索「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」
参考:e-Gov法令検索「市町村立学校職員給与負担法」
参考:文部科学省「1-1-9 精神疾患による休職者の状況(教育職員)」
公立と私立で違う、辞めるときに関わる制度
同じ教員でも、公立と私立では立場が違い、辞めたときに関わる制度も変わります。違いは次の4点に表れます。
- 公立の教員は地方公務員で、時間外勤務手当の代わりに教職調整額が出る
- 私立の教員には、民間の会社員と同じく労働基準法の割増賃金の決まりが当てはまる
- 雇用保険に入っているかは、給与明細の控除で確かめられる
- 健康保険と年金は、公立は公立学校共済組合、私立は私学共済が受け持つ
| 項目 | 公立学校の教員 | 私立学校の教員 |
|---|---|---|
| 立場 | 地方公務員 | 学校法人などに雇われる労働者 |
| 時間外の勤務 | 給特法により時間外勤務手当は出ず、教職調整額が出る | 労働基準法の割増賃金の決まりが当てはまる |
| 雇用保険 | 自治体が承認を受けていれば適用されない | 週20時間以上などの要件を満たせば原則として加入する |
| 健康保険・年金 | 公立学校共済組合 | 私学共済(日本私立学校振興・共済事業団) |
| 退職手当 | 自治体の条例で決まる | 勤め先の退職金の規程で確かめる |
| 休職 | 地方公務員法と自治体の条例・規則 | 勤め先の就業規則 |
公立学校の教員に時間外勤務手当が出ないことは、給特法第3条第2項のとおりです。給特法の対象は公立学校の教育職員なので、私立学校の教員には労働基準法がそのまま当てはまり、時間外労働には36協定と割増賃金の決まりが関わってきます。私立に移れば勤務時間が短くなるとは限りませんが、時間外の労働に割増賃金が支払われる点は、公立との違いです。
雇用保険法には、国や自治体の職員のうち、退職したときの手当が雇用保険の給付より手厚いと認められる人には法を適用しない定めがあります(第6条第6号)。都道府県立や市町村立の学校の教員でいえば、知事や市町村長など自治体の長が申請し、承認を受けた場合に外れる仕組みです(同法施行規則第4条)。承認を受けた自治体の公立学校の教員は、辞めても雇用保険の基本手当を受け取れません。辞めたときの給付は、自治体の退職手当条例が定めるものです。私立学校の教員は、週20時間以上働くなどの要件を満たせば原則として雇用保険に入る一方、学校も同じ規則で承認を受けて適用から外れる場合があります。どちらの場合も、毎月の給与明細から雇用保険料が差し引かれているかを見れば、自分が入っているかが分かります。
健康保険と年金にあたる給付は、公立学校の教員は公立学校共済組合、私立学校の教員は日本私立学校振興・共済事業団の私学共済が受け持ちます。公立から私立の学校へ移ると、こうした加入先も切り替わります。
参考:e-Gov法令検索「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:e-Gov法令検索「雇用保険法」
参考:e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」
参考:e-Gov法令検索「地方自治法」
参考:公立学校共済組合「傷病手当金/傷病手当金附加金」
参考:日本私立学校振興・共済事業団「私学共済事業のご案内」
教員の経験が活きる転職先と、伝え方
学校教員統計調査の中間報告では、定年以外の離職理由として「転職のため」が多いものの、どんな仕事に移ったかまでは分かりません。ここでは、制度の上で教員免許とつながりのある仕事と、経験の伝え方を整理します。
- 放課後児童支援員や児童指導員は、教員免許が資格要件の1つになっている
- 学習塾や教育関連の会社、企業の研修担当は、教える経験と仕事の中身が重なる
- 教員の仕事は、企業で通じる言葉に置き換えて伝える
- 辞める時期は、年度と引き継ぎから逆算する
教員免許が資格要件の1つになる仕事
教員免許がそのまま、あるいは研修や知事の判断と組み合わさって資格要件になる仕事があります。
| 仕事 | 教員免許の扱い | 確かめたいこと |
|---|---|---|
| 放課後児童支援員(学童保育) | 教員免許状を持つ人は、都道府県知事などが行う研修を修了すれば支援員になれる | 研修の時期と、働く時間帯(放課後中心かどうか) |
| 児童指導員(児童福祉施設) | 幼稚園・小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校の教諭の免許状を持ち、都道府県知事が適当と認めた人が資格を満たす | 施設の種類と勤務の形(交替制かどうか) |
| 私立学校や他の自治体の教員 | 免許状は有効期限なくそのまま使える | 採用試験や選考の時期、雇用の条件 |
| 学習塾・教育関連の会社・企業の研修担当 | 免許は要件ではないが、教える経験と仕事の中身が重なる | 教える仕事の割合と、評価や昇給の決まり方 |
放課後児童支援員は、放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準第10条第3項が資格を定めており、保育士や社会福祉士などと並んで、教育職員免許法第4条に規定する免許状を持つ人が挙がっています。児童指導員は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第43条第1項第9号が定めるものです。どちらも免許だけで足りるわけではない点は押さえておきましょう。
求人を探すときは、マイナビ・リクナビといった求人サイトのほか、転職エージェントに教員からの転職の相談をしてみるのも方法の1つです。
参考:文部科学省「学校教員統計調査 -令和7年度(中間報告)結果の概要-」
参考:e-Gov法令検索「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」
参考:e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」
教員の仕事を、企業で通じる言葉に置き換える
教員の経験は、学校の言葉のままだと、企業の採用担当者に中身が伝わりにくいことがあります。学級経営、授業づくり、保護者対応、校務分掌といった日々の仕事は、企業で通じる言葉に置き換えると伝わりやすくなります。
| 学校での言い方 | 企業で通じる言い方 |
|---|---|
| 学級経営 | 数十人の集団の目標づくりと、日々の進み具合の管理 |
| 授業準備・教材づくり | 相手の理解度に合わせた説明資料や研修の企画・作成 |
| 保護者対応 | 立場の違う相手との調整と、要望や苦情への対応 |
| 校務分掌・学校行事の運営 | 期限の決まった案件の段取りと、複数の部署との連携 |
| 成績処理・評価 | 決まった基準でのデータの集計と評価 |
毎日、数十人の子どもに伝わるように説明を組み立ててきた経験は、思っている以上に持ち運べるものだと私たちは考えています。職務経歴書には、担当した学年や教科、学級の人数、行事の規模のような数字と、自分が工夫して変えたことを書き添えると、読み手が仕事の大きさをつかめます。書き方の型は職務経歴書の書き方|4職種の見本とテンプレート、自分の強みを業種を問わない言葉で棚卸しする方法はポータブルスキルとは?9要素の一覧と例で確かめられます。
面接で教員を辞める理由を聞かれたときは、学校への不満を並べるより、教える仕事のどの部分を次の職場で続けたいのか、どこを変えたいのかを話すほうが、相手に伝わります。
辞める時期は、年度と引き継ぎから逆算する
学級担任や教科の担当は年度ごとに決まるため、辞める時期は引き継ぎとあわせて考える必要があります。退職の申し出の時期や手続きは勤め先の教育委員会の決まりによるので、校長に相談しながら進めましょう。年度の区切りで辞めるなら、次の年度の校内の役割が決まる前に伝えておくと、引き継ぎを組みやすくなります。切り出し方と伝える日の逆算は、退職の伝え方|上司への切り出し方・タイミング・理由と引き止めの断り方の例文が参考になります。
辞めたあとに教壇へ戻る道も残ります。教員免許更新制は令和4年7月1日に発展的に解消され、その時点で有効だった教員免許状は、手続きなしで有効期限のない免許状になりました。それ以前に期限を過ぎて失効した免許状も、都道府県教育委員会に再授与の申請をすれば、有効期限のない免許状を受けられます(ごく例外的なケースを除く)。
熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューには、社員の育成や研修の仕組みを語った話もあります。教える経験が会社のどんな場面で求められているのかを知る材料として、読んでみてください。
参考:文部科学省「教員免許更新制(アーカイブ)」
参考:文部科学省「令和4年7月1日以降の教員免許状の扱いについて」
教員を辞めたいときによくある質問
公立学校の教員を辞めたら、失業保険(雇用保険の基本手当)はもらえますか?
勤め先の自治体が雇用保険を適用しない承認を受けていれば、公立学校の教員は辞めても雇用保険の基本手当を受け取れません。 雇用保険法施行規則第4条により、都道府県や市町村などの長が申請して承認を受けた職員は、雇用保険の適用から外れる仕組みです。辞めたときの給付は自治体の退職手当条例が定めるため、条例や人事担当の案内で確かめてください。私立学校の教員は、週20時間以上働くなどの要件を満たせば原則として雇用保険に入りますが、学校が承認を受けて外れている場合もあります。どちらも、給与明細から雇用保険料が差し引かれているかで確かめられます。
給特法が改正されたら、残業代は出るようになりますか?
令和7年6月に成立した改正法のもとでも、公立学校の教員に時間外勤務手当や休日勤務手当は出ません。 給特法第3条第2項が「支給しない」と定めたままです。変わるのは代わりに出る教職調整額で、改正前の給料月額の4%から、2026年1月に5%となり、毎年1%ずつ上がって2031年1月に10%になります(幼稚園の教育職員は4%のまま)。私立学校の教員には給特法が適用されず、労働基準法の割増賃金の決まりが当てはまります。
参考:e-Gov法令検索「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」
精神疾患で休職したら、そのまま辞めることになりますか?
休職は教員の身分を保ったまま療養するための仕組みで、辞めることとは別です。 文部科学省の令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査では、精神疾患で病気休職していた公立学校の教育職員7,087人のうち、令和7年4月1日時点で復職した人が40.3%、引き続き休職中の人が39.1%、退職した人が20.6%でした。休職の期間や給与は自治体の条例・規則で決まり、公立学校共済組合の手引きは、最長3年間、1年目は給与の8割を目安として示しています(自治体によって異なります)。
参考:文部科学省「1-1-9 精神疾患による休職者の状況(教育職員)」
参考:公立学校共済組合「とまり木 心の不調による病気休暇・病気休職中の手引き」
教員を辞めたあとも、教員免許は使えますか?
令和4年7月1日の時点で有効だった教員免許状は、手続きなしで有効期限のない免許状になっています。 教員免許更新制がこの日に発展的に解消されたためで、いま教員を辞めても、免許が期限切れで失効することはありません。それ以前に期限を過ぎて失効した免許状も、都道府県教育委員会に再授与を申請すれば、有効期限のない免許状を受けられます(ごく例外的なケースを除く)。私立学校や他の自治体の採用試験を受けるときのほか、研修の修了とあわせて学童保育の放課後児童支援員になるときにも、免許が資格の1つになります。
参考:文部科学省「令和4年7月1日以降の教員免許状の扱いについて」
参考:e-Gov法令検索「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」
公立の教員から私立の教員に移るのは、統計上も「辞めた」ことになりますか?
文部科学省の学校教員統計調査では、公立から私立の学校へ本務教員として引き続き移った場合、離職ではなく転入として数える決まりです。 発令の上では公立を退職して私立に採用される形になりますが、調査ではこれを転出・転入として扱います。ただし制度は変わり、給特法の対象から外れて労働基準法の割増賃金の決まりが当てはまるようになり、健康保険と年金の加入先も公立学校共済組合から私学共済などに切り替わります。
参考:文部科学省「学校教員統計調査-用語の解説」
参考:文部科学省「令和7年度学校教員統計調査の手引について」
参考:e-Gov法令検索「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」
参考:日本私立学校振興・共済事業団「私学共済事業のご案内」
まとめ
教員を辞めたいという迷いは、公的な統計で見ても珍しいものではありません。令和7年度学校教員統計調査の中間報告では、令和6年度間に定年以外の理由で公立小学校を離れた教員は8,334人で、3年前より1,310人増えました。文部科学省の「見える化」調査では、令和6年度に時間外在校等時間が月45時間を超えた教諭が中学校で約4割いて、同じ年度の精神疾患による病気休職者は公立学校の教育職員で7,087人でした。
給特法の改正で、教職調整額は2031年1月に給料月額の10%まで上がりますが、公立学校の教員に時間外勤務手当が出ない仕組みは変わりません。辞める前には、病気休暇と病気休職で休む、学校の外の窓口に相談する、異動の希望を伝えるといった手があります。公立と私立では雇用保険や共済の扱いも違うので、辞めたあとの生活を考えるときは、自分の立場の制度を確かめてください。
参考:文部科学省「学校教員統計調査 -令和7年度(中間報告)結果の概要-」
参考:文部科学省「令和7年度教育委員会における学校の働き方改革のための『見える化』調査結果の概要」
参考:文部科学省「令和6年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」
参考:e-Gov法令検索「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」
私たち編集部は、教壇を離れることも、教える経験の使い道を変える選択の1つだと考えています。教員免許は期限で失効しないので、別の場所で経験を積んでから戻る道も残ります。
教員の経験がどんな職場で求められるのかを、辞めるかどうか決める前に一度確かめておくと、残る場合も移る場合も判断の材料が増えます。

