転職したいけどスキルがない20代は不利?統計で見る評価と棚卸しの手順

スキルがないと感じていても、20代の転職が不利とは限りません。厚生労働省の調査では、20代は全体の平均を大きく上回る割合で転職しています。
実は、転職した20代のうち、前職を辞めた理由に「能力・個性・資格を生かせなかった」を挙げた人は多くて20人に1人程度です。上位に来るのは、収入や労働時間、人間関係でした。
この記事では、「スキルがない」の正体を分解する棚卸しの手順と使える公的制度、採用する側が20代に何を見ているかを整理します。
「スキルがないから転職できない」という悩みに、一人で結論を出す必要はありません。いまの経歴でどんな求人に応募できるかは、求人情報を持つ転職のプロに無料で確認できます。
20代の「スキルがない」は、転職市場でどう扱われているのか
まず、思い込みと実際の数字を突き合わせておきましょう。次の3点が、20代の転職を考えるうえでの前提になります。
- 20歳以上でみると、転職入職率が最も高いのは男女とも25〜29歳
- 20代の転職では、賃金が上がった人のほうが多い
- 「転職したい」と考えている人は、全国で1,000万人を超える
20代は、全体の平均を大きく上回るペースで転職しています。 厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」による年齢階級別の転職入職率は次のとおり。主要16大産業に属し、常用労働者5人以上を雇用する事業所から無作為に抽出した約15,000事業所を対象に、令和6年1年間の入職・離職を集計した調査です。
| 年齢階級 | 男性の転職入職率 | 女性の転職入職率 |
|---|---|---|
| 19歳以下 | 20.8% | 20.4% |
| 20〜24歳 | 13.4% | 14.3% |
| 25〜29歳 | 15.1% | 16.8% |
全体の転職入職率は9.7%ですから、20代はその1.4倍から1.7倍動いていることになります。最も高いのは19歳以下ですが、20歳以上の年齢階級に限れば25〜29歳がピーク。「スキルがある人だけが転職している」という状況ではないのです。賃金の動きも見ておきましょう。転職して賃金が増えた人は全体で40.5%、減った人は29.4%。年齢階級別では、とくに20〜24歳で増加が目立ちます。
| 年齢階級 | 賃金が増加 | うち1割以上の増加 | 賃金が減少 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 50.5% | 38.5% | 16.8% |
| 25〜29歳 | 46.3% | 37.9% | 29.2% |
20〜24歳では、増加が減少を33.7ポイント上回りました。個々の結果を保証する数字ではなく、下がった人も一定数います。経験の有無で分けた集計ではないため、未経験での転職に限った結果までは分かりません。それでも20代の転職全体では、賃金が下がった人より上がった人のほうが多いのです。
実際に動いた人より、動きたいと考えている人のほうがはるかに多いことも押さえておきたいところ。全国の世帯を対象とした総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年(令和7年)平均結果の要約」によると、2025年平均の転職等希望者数は1,023万人で、前年より23万人増えました。同じ年に実際に転職した人は330万人ですから、希望者はその3倍を超える規模。踏み出せずにいるのは、あなただけではありません。


参考:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概要」
参考:総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年(令和7年)平均結果の要約」
20代が会社を辞めた理由に「スキル不足」はほとんど出てこない
「スキルがない」という言葉を、いったん脇に置いてみます。実際に転職した20代が挙げた退職理由には、別の景色が広がっているからです。
- 「能力・個性・資格を生かせなかった」を挙げた20代は数パーセントにとどまる
- 上位に来るのは、収入・労働時間・人間関係
- 「スキルがない」は、言葉にしづらい不満の言い換えになりやすい
厚生労働省「令和6年雇用動向調査」の、転職入職者が前職を辞めた理由です。
| 区分 | 「能力・個性・資格を生かせなかった」を挙げた割合 |
|---|---|
| 男性20〜24歳 | 1.6% |
| 男性25〜29歳 | 4.7% |
| 女性20〜24歳 | 3.1% |
| 女性25〜29歳 | 4.3% |
実際に転職した20代のうち、能力を生かせなかったことを理由に挙げた人は、多くて20人に1人程度です。 一方で上位に来ているのは、生活そのものに関わる条件。内訳の分からない「その他の個人的理由」(男性25〜29歳24.2%、女性25〜29歳22.3%)を除くと、男性25〜29歳では「給料等収入が少なかった」が16.9%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が11.5%。女性25〜29歳では「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が15.2%、「職場の人間関係が好ましくなかった」が14.0%でした。


この差は何を意味するのでしょうか。「スキルがない」は、退職の理由ではなく、動けない理由として持ち出されやすい言葉だと考えられます。 給料が低い、休みが取れない、人間関係がつらい。そうした不満は口にしづらく、「自分に力がないから」と言い換えたほうが説明しやすい面があります。ただ、そう翻訳した瞬間に、解決すべき対象が「会社の条件」から「自分の欠落」へすり替わってしまうのです。
ひとつ断っておくと、この調査が対象にしているのは実際に転職した人で、まだ動けずにいる人の心理を直接調べたものではありません。そのうえでやることは単純で、不満の中身を条件の言葉に戻すこと。収入なのか、時間なのか、人間関係なのか、仕事の中身なのか。分けておくと、次の会社で何を確認すればよいかがはっきりします。
参考:厚生労働省「令和6年雇用動向調査 結果の概要 転職入職者の状況」
「未経験歓迎」は本当か|年齢の上限がある若手向け求人は職業経験を問えない
「未経験歓迎と書いてあっても、本当は経験者を採るのだろう」と疑っている人もいるでしょう。ここは制度の話なので、はっきりしています。
- 募集・採用は、原則として年齢を理由に応募を制限できない
- 例外的に上限年齢を設けられる場合のひとつが、長期勤続によるキャリア形成を目的とする無期雇用の募集
- この例外にあたる場合は、職業経験を不問にすることが要件になっている
「35歳未満」といった上限年齢のある無期雇用の若手枠には、職業経験を問わないことを条件に成立している求人があります。 労働施策総合推進法により、事業主は募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与える必要があり、年齢制限は原則として禁止されています。その例外のひとつが、同法施行規則第1条の3第1項の例外事由3号のイ。長期勤続によるキャリア形成を図る観点から若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合に限り、上限年齢を設定できます。
このとき満たすべき要件が2つ。対象者の職業経験について不問とすることと、新卒者以外の人について新卒者と同等の処遇にすることです。つまり、この例外事由3号のイを根拠に上限年齢を設けた求人は、職業経験を条件にできません。上限年齢のある求人がすべてそうだというわけではなく、定年年齢を上限とする無期雇用の募集のように、経験を問える例外もあります。厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークのリーフレット「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」には、具体例が示されています。
| 求人の書き方 | 年齢制限の可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 35歳未満の人を募集。高卒以上、職務経験不問 | 認められる | 例外事由3号のイの要件を満たしている |
| おおむね40歳未満の人を募集。1級建築士保持者 | 認められない | 職務経験がなければ取得できない資格を条件にしている |
| 30歳未満の人を募集。契約期間1年、更新あり | 認められない | 期間の定めのない労働契約ではない |
法令に違反する求人には助言・指導・勧告が行われ、ハローワーク等が受理を拒否する場合もあります。上限年齢が書かれた無期雇用の若手枠で「求める経験」の欄が空いているなら、それは書き忘れではなく、要件を満たしているサインだと読んでください。 スキルがないから応募資格がない、という理解は、少なくとも若手枠には当てはまりません。


参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」
企業は20代の未経験者に何を期待しているのか
制度の話の次は、採る側の考え方です。経営者への取材を重ねていると、未経験者の採用について語る言葉が想像よりずっと具体的で、正直なところ驚かされます。共通していたのは、経験そのものではなく、その後の伸び方を見ているという点でした。
- 経験者と同じ即戦力性ではなく、伸びしろと定着を見ている
- 前職のやり方に縛られないことが、そのまま強みとして語られる
- 未経験を採る前提で、育成の仕組みを持っている会社が実在する
株式会社CockPitホールディングス 取締役の竹内解氏は、採用で見ている点をこう話しています。
採用基準の軸を「スキル」ではなく「向き合い方への共感」に置く会社は、実際にあります。 さらに踏み込んで、経験がないことを強みとして説明する経営者もいます。キュリオシティ株式会社 代表取締役CEOの金田隼人氏の言葉です。
経験者は前職の型を持ち込みます。その型が自社と合えば強力ですが、合わなければ修正に時間がかかります。未経験者にはその修正コストがかからない、という読み方です。「素直さ」が評価されるのは人柄の話というより、教えたことがそのまま伸びに変わるかどうかの見立てだと言えます。
では、経験の代わりに何を見ているのか。コクー株式会社 代表取締役CEOの入江雄介氏は、入社する人に求めることをこう話しています。
話し方が上手かどうかより、周囲と関わろうとする姿勢のほうが見られているということ。同社は社員の9割がデジタル未経験者で、それだけの人数を受け入れてきた組織には、教える手順が蓄積されています。逆に、未経験採用が初めての会社では、入社後に教わる相手が決まっていないこともあるでしょう。同じ「未経験歓迎」でも、育てる仕組みがある会社とない会社では、入社後の学びやすさに差が出るはずです。 面接では「研修は何か月で、その後どんな仕事を任されますか」「配属後に質問できる相手は決まっていますか」の2つを聞いてみてください。入社後に伸びる人が何をしているかは、成長が早い人の特徴9選にまとめています。
「スキルがない」を分解する棚卸しの6手順
自分に何もないと感じるとき、その多くは資格や専門技術がないことを指しています。実際には、いまの仕事に他社でも通じる要素が含まれているのに、説明する言葉を持っていないだけということが少なくありません。次の6手順で分解します。
- 1日の仕事を30分単位で書き出す
- 「誰に何を渡したか」で言い換える
- 数字が付く仕事を拾い出す
- うまくいかなかったときの動き方を書く
- 社内でしか通じない言葉を外でも通じる言葉に直す
- 求人票の「求める人物像」と突き合わせる
① 1日の仕事を30分単位で書き出す
記憶ではなく記録から始めてください。 職務経歴書を前にして「何もしていない」と感じるのは、思い出そうとしているからです。直近1週間について、始業から終業まで30分刻みで実際にやったことを並べてみましょう。行数は人によって違いますが、記憶をたどるだけでは出てこない作業が並ぶはずです。「電話対応」「入力」といった粗い粒度では止めず、誰からの用件で、その後どう処理したかまで書きましょう。
② 「誰に何を渡したか」で言い換える
書き出した作業を、相手と成果物の形に直します。「入力」ではなく「営業担当10名分の週次の受注データを、翌朝の会議で使う一覧表にまとめて渡していた」といった形です。仕事は、必ず誰かに何かを渡す行為として説明できます。 相手が社内の別部署でも、店舗のお客様でも同じ。職務経歴書に書けるのは、作業名ではなくこの形なのです。
③ 数字が付く仕事を拾い出す
金額、件数、人数、時間、頻度。どれかが付けられる仕事を選び出します。売上のような大きな数字である必要はなく、1日あたりの処理件数、担当した店舗数、短縮できた作業時間で十分です。数字が入るだけで、同じ経験の伝わり方が変わります。 「接客をしていました」と「1日平均60名の会計と、月2回の棚卸しを担当していました」では、読み手が持てるイメージがまったく違うのです。
④ うまくいかなかったときの動き方を書く
順調だった話より、つまずいた話のほうが評価につながる場合があります。クレームを受けたとき、締切に間に合わなくなりそうなとき、先輩が不在で判断を求められたとき。どう気づき、誰に相談し、何をしたかを1件ずつ書きます。未経験者の選考で見られている「伸びしろ」は、この種の記述に表れます。 前の章で経営者が挙げていた「素直さ」も、抽象的な性格ではなくこの動き方のことだと考えると、つかみやすくなるでしょう。
⑤ 社内でしか通じない言葉を外でも通じる言葉に直す
社内システムの名前、略語、独自の役職名。書き出した内容には、その会社でしか通じない言葉が混ざっています。これを一般名詞に置き換えます。「Sシートの更新」ではなく「在庫管理表の日次更新」というように。当たり前すぎて価値を感じない仕事ほど、この置き換えで見え方が変わるはず。「スキルがない」の正体は、能力の欠落ではなく、社内語のまま止まっている経験であることが多いのです。


⑥ 求人票の「求める人物像」と突き合わせる
最後に、マイナビ転職やリクナビNEXTなどの求人サイト、あるいは転職エージェントから紹介された求人を3社分ほど開き、「求める人物像」「歓迎する経験」の欄と、自分が書き出した内容を並べます。完全に一致する必要はありません。見るべきは、その会社が挙げている要素のうち、自分の記述と重なる言葉がいくつあるかです。 重なった言葉が、志望動機と自己PRで使う材料になります。ゼロなら応募先の方向を見直し、2つ3つ重なるなら、その経験を軸に書類を組み立てていきましょう。


20代前半と20代後半で、企業の見方はどう変わるか
「20代後半になるとスキルを求められて厳しくなる」という説明をよく見かけます。統計と制度を並べると、少し違う姿が見えてきます。
- 20歳以上でみると、転職入職率が最も高いのは25〜29歳で、後半のほうが動いている
- 年齢階級別に見ると、20代の賃金水準は30代以降より低い
- 職業経験を問わない若手枠は35歳未満が中心だが、必ずしもそこで切れるわけではない
25〜29歳は「遅い年齢」どころか、20代前半より転職入職率が高い年齢層です。 前述のとおり転職入職率は男性15.1%、女性16.8%で、20〜24歳の13.4%、14.3%を上回っています。20代後半で動くこと自体は珍しくありません。一方で、賃金の水準は年齢によって差があります。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」による一般労働者の所定内給与額は次のとおりです。
| 年齢階級 | 所定内給与額 |
|---|---|
| 20〜24歳 | 242.8千円 |
| 25〜29歳 | 279.4千円 |
| 30〜34歳 | 312.3千円 |
| 全体の男女計 | 340.6千円 |
年齢階級別に見ると、20代の水準は30代以降より低いところにあります。裏を返せば、20代後半の応募者に企業が払う想定額は前半より上がるため、入社後の期待も具体的になりやすいと考えられます。目安としては、20代前半で「これから覚えられるか」が、20代後半で「前職で何を身につけ、それをどう転用するか」が問われやすくなる、という違いでしょう。
もうひとつの区切りが年齢の上限です。例外事由3号のイでいう「若年者等」は基本的に35歳未満が想定されていますが、リーフレットは「必ずしも35歳未満に限られるものではありません」と注記し、勤続可能期間の観点から「おおむね45歳未満」を目安としています。35歳の誕生日で枠が閉じるわけではないということ。20代後半は「もう遅い」ではなく「経験不問の枠と、経験を評価する枠の両方を使える時期」と捉えるほうが実態に近いでしょう。なお、厚生労働省が令和4年3月卒業者について集計した結果では、就職後3年以内の離職率は大学卒で33.8%。3人に1人が3年以内に職場を離れており、20代前半での転職も特別な選択ではありません。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査の概況」
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」
応募先に「職場の数字」を出してもらう3つの確かめ方
スキルの不安と同じくらい多いのが、「未経験で入って続けられるか」という不安です。ここは感覚ではなく、公開のルールが決まっている情報で確かめられます。
- 青少年雇用情報の3類型を手がかりに質問する
- 労働条件の「変更の範囲」を読む
- 求人票と面接の説明のズレを質問材料にする
新卒者等であることを条件に募集している会社は、応募者から求めがあれば職場情報を提供する義務を負っています。 若者雇用促進法にもとづく制度で、卒業見込者や職業訓練修了見込者などの新卒者等を条件とした募集・求人では、次の3類型それぞれについて、いずれか1つ以上を提供しなければなりません。中途採用の求人は義務の対象ではありませんが、どんな項目が公開の対象になっているかを知っておくと、聞くべきことの見当がつきます。
| 類型 | 含まれる情報 |
|---|---|
| 募集・採用に関する状況 | 直近3事業年度の新卒採用者数と離職者数、男女別人数、平均勤続年数 |
| 職業能力の開発・向上に関する取組 | 研修、自己啓発支援、メンター制度、キャリアコンサルティング制度、社内検定等の有無と内容 |
| 職場定着に関する取組 | 前事業年度の月平均所定外労働時間、有給休暇の平均取得日数、育児休業取得対象者数と取得者数、役員・管理的地位に占める女性割合 |
未経験で入るなら、2つ目の「職業能力の開発・向上に関する取組」がとくに効いてきます。研修とメンター制度の有無は、入社後に教わる相手がいるかどうかに直結するからです。聞きにくいと感じるかもしれませんが、新卒者等を条件とした求人なら制度として求められている情報ですし、中途採用の求人でも、質問すること自体に問題はありません(この場合は法的な提供義務がないため、答えられる範囲での回答になります)。
内定後に見る欄も決まっています。2024年4月から労働条件明示のルールが変わり、すべての労働者を対象に、就業場所と業務の「変更の範囲」を明示することが必要になりました。将来の配置転換などで変わり得る範囲まで書かれるという意味で、入社時の職種名だけで決めると、数年後に想定外の業務や勤務地に移る可能性を見落とします。
求人票の記載と面接での説明が食い違ったときは、その場で確認して構いません。職業安定法第5条の4第1項により、求人企業や募集情報等提供事業者は、求人情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないとされているからです。「求人票では月給◯万円と拝見しましたが、基本給と固定残業代の内訳を教えてください」といった聞き方なら、確認として自然に伝わるでしょう。
参考:厚生労働省「職場情報の提供制度」
参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
参考:厚生労働省「労働者の募集広告の表示について」
学び直しの費用は、公的制度で下げられる
「入ってから覚えればいい」と言われても、教えてくれる会社に当たるとは限りません。自分で手を打てる領域です。
- 会社の教育訓練を受けている労働者は全体の4割弱にとどまる
- 在職中は教育訓練給付で受講費用の一部が戻る
- 離職中はハロートレーニングや求職者支援制度が使える
常用労働者30人以上の企業と、そこで働く労働者を対象にした厚生労働省「令和6年度能力開発基本調査」によると、会社が用意した教育訓練であるOFF-JTを受講した労働者は37.0%。正社員で44.6%、正社員以外で18.4%でした。教育訓練に費用を支出した企業は54.9%です。入社後に会社が体系立てて教えてくれる環境は、決して当たり前ではないという数字でしょう。 だからこそ、応募先を選ぶ段階で研修の中身を確認しておく意味があります。


自分で学ぶ場合、費用は国の制度で下げられます。状況によって使える制度が変わるため、まず自分がどれに当てはまるかを確認してください。
| いまの状況 | 使える制度 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 在職中で雇用保険に加入している、または離職後1年以内 | 教育訓練給付 | 厚生労働大臣が指定した約17,000講座が対象。一般教育訓練は受講費用の20%で上限10万円、特定一般教育訓練は最大50%で上限25万円、専門実践教育訓練は最大80%で年間上限64万円 |
| 離職中で雇用保険の受給資格がない、または受給が終了した | 求職者支援制度 | 訓練期間は2〜6か月。要件を満たすと職業訓練受講手当が月10万円、ほかに通所手当と寄宿手当 |
| 求職中で訓練を受けたい | ハロートレーニング | 公共職業訓練と求職者支援訓練。受講料は原則として無料で、テキスト代などは自己負担 |
教育訓練給付の初回利用には雇用保険の加入期間が1年以上、専門実践教育訓練では2年以上必要で、パート・アルバイト・派遣で働く人も対象です。自分が受給できるかどうかは、ハローワークの支給要件照会で事前に調べられます。 求職者支援制度の職業訓練受講給付金には、本人収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯の金融資産が300万円以下といった要件と、訓練実施日にすべて出席することが求められます。


なお、資格を取れば転職が有利になると言い切れるわけではありません。例外事由3号のイを根拠にした若手枠では職業経験を問えないため、1級建築士のように実務経験がなければ取得できない資格を条件にすることはできない決まりです。一方で、普通自動車免許のように未経験でも取得できる資格なら、応募条件になり得ます。制度は、応募先の選択肢を広げる手段として使うのが現実的でしょう。
参考:厚生労働省「令和6年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」
参考:厚生労働省「教育訓練給付金のご案内」
参考:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
実在する会社の採用の考え方を、経営者の言葉で読む
制度と統計は、選択肢の外枠を教えてくれます。最後に効くのは、その会社が未経験者をどう見ているかを、経営者本人の言葉で確かめること。 求人票の「未経験歓迎」という4文字からは、そこまで読み取れません。
熱狂ベンチャーナビでは、未経験の若手を採っている会社の経営者に、採用で何を見ているかを聞いています。スキルより共感や人との関わり方を軸に置く会社もあれば、育成の仕組みから話す会社もあります。先に何社か読んでおくと、面接で目の前の会社が何をどこまで話してくれるかが、判断材料として立ち上がってくるでしょう。
選考の準備を進めるなら、グループ面接でよく聞かれる質問と回答のコツと履歴書のAI作成はバレる?見抜かれない書き方のコツもあわせてご覧ください。
転職したいけどスキルがない20代からのよくある質問
20代後半でスキルがないと、転職は厳しいですか?
統計上は、20代前半より20代後半のほうが転職しています。 令和6年雇用動向調査の転職入職率は男性25〜29歳で15.1%、女性25〜29歳で16.8%。20〜24歳の13.4%、14.3%を上回り、19歳以下に次ぐ高さでした。職業経験を問わない若手枠は基本的に35歳未満が想定されているものの、リーフレットは必ずしも35歳未満に限られないとし、おおむね45歳未満を目安としています。20代後半は、経験不問の枠と経験を評価する枠の両方を検討できる時期だと考えるのが実際的でしょう。
スキルがない状態で、資格を取ってから応募したほうがいいですか?
資格を取れば必ず有利になる、とは言い切れません。 労働施策総合推進法施行規則の例外事由3号のイを根拠に年齢の上限を設けた無期雇用の若手求人は、職業経験を不問とすることが要件です。1級建築士のように職務経験がなければ取得できない資格は条件にできませんが、普通自動車免許のように未経験でも取得できる資格は応募条件になり得ます。学びたい分野が決まっているなら、在職中は教育訓練給付、離職中はハロートレーニングで費用を抑えつつ、応募と並行して進めるという選び方もあります。
求人票の「必要な経験」を満たしていなくても応募していいですか?
例外事由3号のイを根拠に年齢の上限を設けた無期雇用の若手求人であれば、職業経験を不問とすることが制度上の要件です。歓迎条件として書かれた経験は、満たしていなければ応募できないという性質のものではありません。気をつけたいのは、求人票の記載と実際の説明が食い違う場合。 職業安定法第5条の4第1項により、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示は禁じられています。気になる点は面接でそのまま確認して構いません。
未経験で転職すると、年収は下がりますか?
下がる人もいますが、20代の転職者全体では上がる人のほうが多数です。令和6年雇用動向調査では、賃金が増加した転職入職者は20〜24歳で50.5%、25〜29歳で46.3%。減少はそれぞれ16.8%、29.2%でした。経験の有無で分けた数字ではなく、個々の結果を保証するものでもありません。業界や職種を大きく変える場合は一時的に下がることもあります。内定時の労働条件通知書で、基本給と固定残業代の内訳まで確認してください。
何がしたいか分からないまま、転職活動を始めてもいいですか?
始めて構いません。応募先を見比べるうちに条件の優先順位がはっきりしてくることもあります。まず手をつけたいのは、6手順の「1日の仕事を30分単位で書き出す」ところまで。 自分がやってきたことが具体的に並ぶと、続けたい要素と手放したい要素が分かれてきます。相談先としては、パート・アルバイトとして働きながら正社員就職を目指すおおむね35歳未満の人を対象にした、わかものハローワークがあります。担当者制の支援を無料で受けられる窓口です。すでに正社員として在職中なら、ハローワークの一般窓口や転職エージェントが相談先になるでしょう。
まとめ
「転職したいけどスキルがない」。その言葉を出発点に統計をたどると、別の姿が見えてきました。20歳以上の年齢階級で転職入職率が最も高いのは、男女とも25〜29歳。前職を辞めた理由に「能力・個性・資格を生かせなかった」を挙げた人は数パーセントで、実際の上位は収入・労働時間・人間関係です。スキルの不足は、動けない理由として持ち出されやすい言葉だと考えられます。
制度の側も、経験がない人に向けて開かれています。例外事由3号のイを根拠に年齢の上限を設けた若手求人は、職業経験を不問とすることが要件。新卒者等を条件に募集する会社は、応募者が求めれば研修やメンター制度を含む職場情報を提供する義務を負っており、中途採用の求人でも質問してみる価値はあります。学び直しの費用なら、教育訓練給付や求職者支援制度で下げられるでしょう。
そして、経験がないことを強みとして語る経営者が実在します。多くの社長に取材してきて感じるのは、未経験者に期待しているものが「何ができるか」ではなく「教えたことがどう伸びるか」に寄っているということでした。まずは1日の仕事を30分単位で書き出すところから、自分の経験を言葉にしてみてください。
自分の経験がどんな求人で評価されるかは、実際に求人を並べて比べるのがいちばん早い方法です。

