販売職からの転職は30代でもできる?移り先の実態と年収を下げない選び方

30代で販売職から別の仕事に移ることは、十分にできます。令和7年の国の調査では、前職が販売の仕事だった30代の転職者のうち、6割を超える人が販売・営業以外の職業に就いていました。
意外なのは、30代の前半と後半で移り先の顔ぶれが変わることです。後半になると、事務の仕事に就いた人の割合がぐっと高くなります。
この記事では、移り先の実態と賃金の差、年収を下げない比べ方、30代の経験の伝え方、家庭と両立するための制度の確かめ方を順に見ていきます。
30代まで積み上げてきた店頭の経験が、どの職種でいくらの提示につながるのか。自分の経歴に合う求人と条件は、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
30代で販売職から移った人は、どの職業に就いたのか
まずは、実際に動いた人の行き先から。厚生労働省の雇用動向調査は、転職した人の前の職業と今の職業を組み合わせて集計しています。そこから読み取れるのは次の3点です。
- 前職が販売従事者だった30代の転職入職者は約9万人で、うち64.9%は販売従事者以外の職業に就いた
- 30〜34歳ではサービス職が最も多く、35〜39歳では事務職が2割を超える
- 35〜39歳の女性では、事務職に就いた人が4割を超える
30代前半はサービス職、後半は事務職の割合が高い
「令和7年 雇用動向調査」の第19-1表は、常用労働者5人以上の事業所に転職して入った人のうち、前職でも雇われていて調査時点で在籍している人を、前の職業と今の職業で数えたものです。前職が販売従事者だった人を30代に絞り、今の職業ごとの割合を編集部が計算しました(人数は千人単位の推計値)。
| 今の職業(大分類) | 30〜34歳 | 35〜39歳 |
|---|---|---|
| 販売従事者 | 1万5,300人(31.4%) | 1万6,600人(39.5%) |
| サービス職業従事者 | 1万6,700人(34.2%) | 4,400人(10.5%) |
| 事務従事者 | 5,100人(10.5%) | 9,500人(22.6%) |
| 専門的・技術的職業従事者 | 1,100人(2.3%) | 4,900人(11.7%) |
| 生産工程従事者 | 3,800人(7.8%) | 4,000人(9.5%) |
| 運搬・清掃・包装等従事者 | 3,900人(8.0%) | 700人(1.7%) |
| 前職が販売従事者の転職入職者 計 | 4万8,800人 | 4万2,000人 |
※主な職業を抜き出した表で、管理的職業・保安・輸送・建設などは省いています。割合は計に対する値です。
30代の合計は9万800人で、そのうち今も販売従事者に就いているのは3万1,900人、35.1%でした。残る64.9%は、販売従事者以外の職業に移っています。 年齢で分けると傾向が変わり、30〜34歳はサービス職業従事者が34.2%で最も多く、35〜39歳では事務従事者が22.6%、専門的・技術的職業従事者が11.7%まで上がりました。


男女で分けると、35〜39歳の女性は1万8,900人のうち8,300人、43.9%が事務従事者に就いていました。同じ年齢の男性は2万3,100人のうち1万1,100人、48.1%が販売従事者で、販売・営業の仕事に就いた人が多い結果です。
読むときに気をつけたい点が2つあります。ひとつは、統計の「販売従事者」には店頭の販売員だけでなく営業職も含まれることです。「販売から販売へ」の中には、店頭から営業へ移った人も入っています。もうひとつは、標本調査からの推計で、30代の細かい区分は人数が少なく振れやすいこと。この数字は「30代後半は事務に移りやすい」と言えるものではなく、実際に移った人の中で事務の割合が高かった、という事実を示しています。
正直なところ、販売職の30代の転職と聞くと「同じ業界の販売に戻るしかない」というイメージを持つ人が多いように感じます。数字を並べると、行き先は思っているより散らばっていました。
参考:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」
参考:厚生労働省「雇用動向調査 令和7年 年計 第19-1表 職業(大分類)、企業規模(生産工程)、性、年齢階級、前職職業(大分類)、前職企業規模(生産工程)、就業形態・前従業上の地位別 入職者数 及び 構成比(就業経験有りで調査時在籍者で前職雇用者)」
30代の販売店員の年収と、移り先の候補の年収を比べる
移り先を考えるとき、気になるのは賃金の水準です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査には、職種ごと・年齢ごとの賃金が載っています。30代で比べると、次のことが分かります。
- 販売店員の年収換算は30〜34歳387.1万円、35〜39歳401.9万円
- 30代前半から後半への伸びは、販売店員が14.8万円で、事務や営業より小さい
- 移り先の候補の職種は、年収に占める賞与の割合が2割前後と高い
35〜39歳の年収換算では、事務や営業が137万円以上高い
「令和7年賃金構造基本統計調査」の職種別第5表(企業規模10人以上・一般労働者・男女計)から、6月分のきまって支給する現金給与額を12倍し、前年1年間の賞与を足して年収に直しました。一般労働者は、短時間労働者を除いたフルタイムで働く人で、正社員以外も含みます。
| 職種 | 30〜34歳 | 35〜39歳 | 伸び |
|---|---|---|---|
| 販売店員 | 387.1万円 | 401.9万円 | 14.8万円 |
| 営業・販売事務従事者 | 501.8万円 | 539.6万円 | 37.8万円 |
| 総合事務員 | 522.6万円 | 568.4万円 | 45.8万円 |
| その他の営業職業従事者 | 596.7万円 | 646.8万円 | 50.1万円 |
| 機械器具・通信・システム営業職業従事者(自動車を除く) | 586.3万円 | 667.1万円 | 80.8万円 |
※編集部の試算。伸びは表の値どうしで計算しています。
35〜39歳で比べると、販売店員の401.9万円に対し、営業・販売事務従事者は137.7万円、総合事務員は166.5万円、その他の営業職業従事者は244.9万円上回ります。 30代前半から後半への伸びも、販売店員の14.8万円は5職種の中で最も小さい値でした。


年収に占める賞与の割合が違う
35〜39歳の販売店員と営業・販売事務従事者を比べると、月々のきまって支給する現金給与額は29万2,200円と35万9,400円、年間の賞与は51万2,800円と108万2,700円でした。年収換算の差137.7万円の内訳は、月々の給与の12か月分の差が80.6万円、賞与の差が57.0万円です。差は年収換算の表示値どうしで計算しているため、内訳の合計とは0.1万円ずれます。
目を向けたいのは、年収に占める賞与の割合です。 35〜39歳の年収換算に占める賞与は、販売店員の12.8%に対して、営業・販売事務従事者は20.1%、総合事務員は22.4%、その他の営業職業従事者は22.0%でした。移り先の候補は、年収のうち賞与で受け取る部分が大きい職種だと分かります。
同じ表で、30代の販売店員の平均勤続年数は30〜34歳で7.2年、35〜39歳で10.0年でした。平均で見ると、30代後半の販売店員は同じ会社に10年近く勤めている計算になります。
ただし、これは2025年の時点で各職種に就いている人の平均を並べたもので、同じ人を追いかけた数字ではありません。勤め先の規模や業種、役職の構成も職種ごとに違います。販売店員から事務や営業に移れば、この差がそのまま上乗せされるという意味ではない点に注意してください。 30代全体の年収の水準や、産業・役職による違いは30代の平均年収は483.0万円|前半・後半と男女差、役職・業種別の目安で確かめられます。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第5表 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(e-Stat)
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況:主な用語の定義」
年収を下げずに移るには、内訳と年額で比べる
30代の転職で避けたいのは、提示額の見え方だけで決めて、あとから年収が下がったと気づくことです。統計と比べ方の両面から確かめておきましょう。
- 30代で転職した人のおよそ半数は、賃金が前職と変わらないか減っている
- 減った人の多くは「1割以上の減少」に入る
- 販売職の給与は、固定給・手当・賞与に分けてから年額で比べる
30代の転職入職者の賃金は、どう動いたか
厚生労働省「令和7年雇用動向調査」で、前職でも雇われていて調査時点で在籍している転職入職者の賃金を前職と比べると、30〜34歳では「1割以上の増加」32.8%、「1割未満の増加」15.8%、「変わらない」20.8%、「1割未満の減少」9.9%、「1割以上の減少」19.0%でした。35〜39歳は順に32.8%、10.7%、28.1%、7.8%、16.1%です。5つを足すと30〜34歳は98.3%、35〜39歳は95.5%で、残りは変化が不詳の人です。


どちらの年齢でも、賃金が減った人のうち3分の2ほどは「1割以上の減少」に入っています。 30〜34歳では減少29.0%のうち19.0%、35〜39歳では23.9%のうち16.1%です。35〜39歳では「変わらない」が28.1%と、30〜34歳の20.8%より多くなっていました。これは販売職から移った人だけの数字ではなく、30代の転職入職者全体の集計です。
総支給を4つに分けてから比べる
販売職の給与には、店舗の手当や歩合、休日・深夜の割増などが混ざっていることが多く、月の総支給をそのまま求人の月給と並べると見誤ります。比べる前に、直近12か月の給与明細を次の4つに分けてみてください。
| 内訳 | 販売職でよくある中身 | 移った後に残るか |
|---|---|---|
| 固定給 | 基本給、職能給 | 新しい会社の基本給に置き換わる |
| 手当 | 役職手当、店舗手当、資格手当 | 前の会社の役職や店舗に付く手当は引き継がれない |
| 変動分 | 歩合、販売インセンティブ、休日・深夜の割増 | 固定給中心の職種では小さくなる |
| 賞与 | 年2回の賞与、決算賞与 | 会社の規定と実績で大きく変わる |
この表は、給与明細の読み方を編集部が一般的な例として整理したもので、統計の区分ではありません。4つに分けたうえで、新しい会社の「月給×12+賞与の実績」と年額どうしで並べるのが、年収を下げない比べ方の基本です。 先に見たとおり、事務や営業の職種では賞与の比重が大きいため、求人票に「賞与あり」とだけ書かれている場合は、昨年度の支給実績を何か月分かで聞いておきましょう。入社した年の賞与は、査定期間に在籍していた月数で計算する会社もあるので、1年目の年額は低めに見積もっておくと安心です。
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 3 転職入職者の状況」
30代の販売経験は「厚み」と「人を動かした経験」で伝える
30代の転職では、「この人は何を積み上げてきたか」を書類で具体的に示せるかどうかで、話の進み方が変わってきます。店長でなくても、30代の販売職には書ける材料がそろっています。
- 同じ売場で年間の計画を何度も回した経験は、改善の積み重ねとして書ける
- 主任・副店長・売場責任者の経験は、役職名でなく任されていた範囲で書く
- 本部やメーカーとのやりとりは、社外の人と調整した経験として書ける
店長未満のリーダー経験を言い換える
主任や副店長、売場の責任者として働いてきた人は、「店長ではないので管理職経験はない」と書きがちです。けれども採用する側が知りたいのは肩書きより、何人の誰に対して、何を任されていたかのほう。
| 書きがちな表現 | 任された範囲が伝わる書き方 |
|---|---|
| 主任として売場をまとめた | パート・アルバイト◯名の日々の作業の割り振りと、担当カテゴリの売上管理を担当 |
| 店長がいない日の代わりを務めた | 店長不在日の値下げ判断、欠品時の代替提案、苦情の最終対応を任されていた |
| 同じ売場に長くいた | 年間の販促計画を◯回まわし、前年の反省を次の年の発注量と売場づくりに反映 |
| 本部の指示を店に伝えた | 本部・メーカーの担当者との窓口として、新商品の導入時期と売場展開を調整 |
| 異動が多かった | ◯店舗で勤務し、規模や客層の違う店で同じ水準の売上を保つ進め方を身につけた |
ポイントは、役職名を書くかわりに「判断していたこと」を書くことです。 値下げの判断、欠品のときの代わりの提案、苦情の最後の受け手。どれも店長でなくても任される仕事で、事務や営業に移っても「自分で判断して動ける人」として読まれます。
年数の長さは、繰り返しの回数に直す
「販売歴10年」とだけ書くと、同じことを10年続けてきたようにも読めてしまいます。30代の強みは、年末商戦や新生活の時期、決算セールといった1年の山を何周も経験していることです。1周目の失敗を2周目の発注にどう生かしたか、3周目に売場の配置をどう変えたかを書けば、年数が「改善の回数」として伝わります。
店頭の業務を書類の言葉に置き換える基本の形は、販売職から転職|売上をつくった経験の伝え方と転職先8職種で業務別に整理しています。店長として採用・評価・シフトまで任されていた人は、店長の転職|管理職経験の伝え方と転職先、名ばかり管理職の判断基準のほうが近い内容です。
私たち編集部が経営者の話を聞いていても、中途で入る30代に期待されているのは、指示を待たずに何かを変えた経験なのだと感じる場面が多くあります。主任や副店長の仕事は、その材料が一番見つかりやすい場所かもしれません。
移り先は4つの方向から選ぶ|営業・販売事務・本部職・異業種
30代の販売職が選ぶ移り先は、大きく4つの方向に分けられます。どれを選ぶかで、持っていける経験と、確かめておきたいことが変わります。
- 営業は、求人が多く、店頭の提案力をそのまま持ち込める
- 販売事務・営業事務は、店舗の業務の流れを知っている強みが効くが、求人は少なめ
- 本部職は、社外への転職より社内異動のほうが近道になりやすい
- 異業種は、販売の職種を残したまま業界だけを変える道もある
| 方向 | 持っていける経験 | 30代で確かめたいこと |
|---|---|---|
| 営業 | 提案から購入までの流れ、目標を追った経験 | 固定給と歩合の割合、目標の決め方、休日の取り方 |
| 販売事務・営業事務 | 受発注や在庫の流れ、店舗とのやりとり | 賞与の実績、残業の時間、事務の中での役割の広がり |
| 本部職(商品部・販促・店舗運営支援) | 売場の数字、店長や本部との調整 | 社内公募や異動の制度、必要な経験年数 |
| 異業種 | 職種の経験(販売なら販売、事務なら事務) | 業界の商習慣、扱う商品の知識をどう身につけるか |
この表は移り先の方向を編集部が整理したもので、統計の区分ではありません。
営業|求人の多さと、店頭の提案力が重なる
厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)」の参考統計表8-1(全国・常用〈パートを除く〉・原数値)では、営業職業従事者の有効求人倍率は2.19倍で、職業計の1.18倍を上回りました。ハローワークの求人の数で見るかぎり、営業は求職者より求人のほうが多い職種です。 相手が会社になるか個人のままかで、仕事の進め方は大きく変わります。営業の種類と会社の選び方は営業への転職は未経験でもできる?求人の多さと営業の種類・会社の選び方にまとめています。
販売事務・営業事務|店舗を知っている強みと、求人の少なさ
同じ統計で、営業・販売事務従事者の有効求人倍率は0.90倍、一般事務従事者は0.29倍でした。求職者のほうが多い区分です。一方で、店舗からの発注や問い合わせを受ける側の仕事は、店頭の事情を知っている人ほど早く回せます。応募書類では、受発注や在庫の数字を扱った経験、本部への報告を作っていた経験を前に出すと、事務経験者との違いを示しやすくなります。なお、この倍率はハローワークで受け付けた求人と求職から出したもので、マイナビ転職やリクナビNEXTといった求人サイトの求人や、転職エージェントが扱う求人は入っていません。年齢別の倍率でもないため、30代に限った求人の多さを示す数字ではない点も頭に置いてください。
本部職|まず社内の異動を確かめる
商品部や販促、店舗運営の支援といった本部の仕事は、店頭の経験が前提になることが多い一方、社外の求人として出る数は多くありません。いまの会社に社内公募や本部への異動の制度があるなら、外へ出る前に条件を確かめておく価値があります。同業他社の本部に移る場合も、「どのカテゴリを何年担当したか」が応募の入口になるでしょう。
異業種|職種を残して業界を変える
接客や販売の職種はそのままに、扱う商品や業界を変える道もあります。店舗やショールームで説明して売る仕事は、住宅や保険、ITサービスなど多くの業界にあるもの。業界と職種を一度に変えるより、どちらかを残すほうが前の経験を説明しやすくなります。業界を変える転職の考え方は異業種転職とは?異職種との違いと難易度、転職後の賃金の変化を統計で確認で詳しく扱っています。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)参考統計表」
家庭と両立したい30代が、転職の前後で確かめたいこと
30代では、子育てや家族の事情を仕事選びの条件に入れる人も少なくありません。シフト勤務の販売職から移る理由に、家庭との両立を挙げる人もいるでしょう。ここで押さえておきたいのは次の3点です。
- 自己都合で辞めた30代の転職者のうち1割あまりが、理由に「結婚・出産・育児」を挙げている
- 転職して1年未満の人は、労使協定で育児休業の対象から外される場合がある
- 2025年に施行された法改正で、子育て中の残業免除や柔軟な働き方の制度が広がった
30代の転職理由は「賃金」と「会社の将来」が上位、育児も1割あまり
厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査」の個人調査(5人以上の常用労働者を雇用する事業所で働く一般労働者の転職者、有効回答7,310人)で、自己都合で前の会社を辞めた人の理由を見ると、30〜34歳は「賃金が低かったから」26.2%、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」25.4%、「満足のいく仕事内容でなかったから」24.6%が上位で、「会社の将来に不安を感じたから」は23.3%でした。35〜39歳では「会社の将来に不安を感じたから」32.2%が最も多く、「賃金が低かったから」30.6%、「労働条件(賃金以外)がよくなかったから」21.8%、「満足のいく仕事内容でなかったから」21.7%が続きます。


「結婚・出産・育児のため」は30〜34歳で11.2%、35〜39歳で11.4%でした。いずれも3つまでの複数回答なので、割合を足しても100%にはなりません。厚生労働省「令和7年雇用動向調査」で前職を辞めた理由を一つに分けた集計でも、30〜34歳の女性の6.2%が「出産・育児」を挙げています。 シフト勤務と家庭の予定が合わないことが一番の理由なら、続けるか移るかの分かれ目をシフト制がきつい3つの正体と、土日休みの仕事に移る判断で確かめておくと迷いにくくなります。
入社1年未満は、労使協定で育休の対象外になることがある
転職を考える30代が見落としやすいのが、入社してからの期間と育児休業の関係です。 育児・介護休業法第6条第1項は、こう定めています。
言い換えると、会社は育児休業の申出を原則として拒めません。ただし、労働組合や労働者の代表と書面で協定(労使協定)を結んでいれば、入社して1年に満たない人を対象から外せます。協定があるかどうかは会社ごとに違うので、出産や育児の予定が近い人は、入社前に就業規則と労使協定の扱いを確かめておくと安心です。 第16条の8が定める、子が小学校に入るまでの残業免除(所定外労働の制限)にも、同じように1年未満の人を労使協定で外せる定めがあります。こちらは、事業の正常な運営を妨げる場合には会社が断れる点も条文に書かれています。また第5条第1項により、契約社員など期間を定めて雇われる人は、子が1歳6か月になるまでに労働契約が満了することが明らかでないことも、育児休業を申し出る条件になります。
2025年の改正で広がった制度
改正された育児・介護休業法は、2025年4月1日と10月1日に段階的に施行されました。厚生労働省のリーフレットから、30代の転職で確かめておきたい点を挙げます。
- 残業免除を請求できる人が、3歳未満の子から小学校就学前の子を養育する人に広がった(2025年4月)
- 子の看護等休暇の対象が小学校3年生修了までになり、継続雇用期間6か月未満の人を労使協定で外す規定はなくなった(2025年4月)
- 3歳から小学校就学前の子を養育する人について、会社は始業時刻の変更、テレワーク、短時間勤務など5つの措置から2つ以上を選んで用意する(2025年10月)
- 男性の育児休業等の取得率などを公表する義務が、従業員1,000人超から300人超の企業に広がった(2025年4月)
子の看護等休暇は、継続雇用期間が6か月未満であることを理由に労使協定で外されることがなくなりました。 一方で、育児休業と残業免除には1年未満を外せる定めが残っています。制度ごとに扱いが違う点は覚えておきたいところです。


まず公表されている情報から見る
応募先の両立のしやすさは、いきなり面接で聞かなくても、公表情報からある程度つかめます。従業員300人超の会社には、男性の育児休業等の取得率などを年1回公表する義務があるのです。自社サイトのほか、厚生労働省が運営する「両立支援のひろば」に載せている会社もあります。300人以下の会社や、公表を見ても分からないことがあるときは、面接や内定後の条件確認の場で「育児中の社員はどんな働き方をしていますか」と聞いてみてください。全社を調べる必要はなく、最終候補に残った会社で確かめれば足ります。
参考:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 3 転職入職者の状況」
参考:e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
参考:厚生労働省・都道府県労働局「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
販売職からの30代の転職に関するよくある質問
30代後半でも、販売職から別の職種に移れますか?
移っている人は多くいます。 厚生労働省「令和7年雇用動向調査」の第19-1表(常用労働者5人以上の事業所の転職入職者で、前職でも雇われていた人)から編集部が計算すると、前職が販売従事者だった35〜39歳の4万2,000人のうち、事務従事者に就いた人は22.6%、専門的・技術的職業従事者は11.7%でした。統計の販売従事者には営業職も含まれ、販売従事者のままの人は39.5%です。千人単位の推計値なので、細かな割合は幅を持って読んでください。
販売職から事務職に移ると、年収は上がりますか?
統計の平均では事務職のほうが高いものの、移れば上がるとは言い切れません。 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(企業規模10人以上・一般労働者・男女計)から編集部が試算した35〜39歳の年収換算は、販売店員401.9万円、営業・販売事務従事者539.6万円、総合事務員568.4万円でした。ただし同じ人を追った数字ではなく、勤め先の規模や役職の違いも含みます。ハローワークの有効求人倍率(令和8年9月分・常用〈パートを除く〉)は一般事務従事者が0.29倍と、求職者のほうが多い区分です。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第5表 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(e-Stat)
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)参考統計表」
30代で転職すると、年収は下がりますか?
上がった人のほうが多い一方、減った人の3分の2ほどは1割以上減っています。 厚生労働省「令和7年雇用動向調査」で、常用労働者5人以上の事業所に転職して入った人のうち前職でも雇われていた人を見ると、賃金が減った人は30〜34歳で29.0%、35〜39歳で23.9%で、そのうち「1割以上の減少」が19.0%と16.1%を占めました。増加した人は48.6%と43.5%です。販売職から移った人だけの数字ではありません。比べるときは、いまの総支給を固定給・手当・変動分・賞与に分け、移り先の「月給×12+賞与の実績」と年額で並べてください。
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 3 転職入職者の状況」
店長の経験がなくても、30代の転職で評価されますか?
評価の材料になります。 主任や副店長、売場責任者として、パート・アルバイトの作業の割り振り、店長不在日の値下げ判断、本部やメーカーとの調整を任されていたなら、役職名ではなく任されていた範囲として書けます。何年も同じ売場にいた経験は、年間の販促計画を何周回し、前年の反省を次の年にどう生かしたかに置き換えると、30代ならではの積み上げとして伝わるでしょう。
転職したばかりでも、育児休業は取れますか?
会社に労使協定があるかどうかで変わります。 育児・介護休業法第6条第1項により、会社は育児休業の申出を原則として拒めませんが、労働組合や労働者の代表と書面で協定を結んでいれば、雇用された期間が1年に満たない人を対象から外せます。小学校就学前の子を養育する人の残業免除(第16条の8)も同じで、こちらは事業の正常な運営を妨げる場合に会社が断れる例外もあります。一方、子の看護等休暇は2025年4月の改正で、継続雇用期間6か月未満の人を労使協定で外す規定がなくなりました。入社前に就業規則と協定の扱いを確かめておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
参考:厚生労働省・都道府県労働局「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
まとめ
30代で販売職から別の仕事に移ることは十分にできます。令和7年雇用動向調査の結果表から計算すると、前職が販売従事者だった30代の転職入職者のうち64.9%は販売従事者以外の職業に就いており、30〜34歳ではサービス職業従事者、35〜39歳では事務従事者の割合が高くなっていました。
令和7年賃金構造基本統計調査から試算した35〜39歳の年収換算は、販売店員401.9万円に対し、営業・販売事務従事者539.6万円、その他の営業職業従事者646.8万円で、移り先の候補は年収に占める賞与の割合が高くなっています。転職で賃金が減った30代の多くは「1割以上の減少」に入るため、いまの総支給を4つに分け、年額どうしで比べるのが近道です。店長でなくても、任されていた判断と年間の計画を何周も回した経験は、30代ならではの材料として書けます。家庭と両立したい人は、入社1年未満を労使協定で育児休業の対象から外せる定めがあることも覚えておいてください。
参考:厚生労働省「雇用動向調査 令和7年 年計 第19-1表 職業(大分類)、企業規模(生産工程)、性、年齢階級、前職職業(大分類)、前職企業規模(生産工程)、就業形態・前従業上の地位別 入職者数 及び 構成比(就業経験有りで調査時在籍者で前職雇用者)」
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第5表 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(e-Stat)
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 3 転職入職者の状況」
参考:e-Gov法令検索「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」
私たちが統計を並べてみて感じたのは、30代の販売職の転職は「どこへ行けるか」より「何を持って行くか」で結果が分かれそうだ、ということでした。中途で入った30代に何を任せ、どう評価しているのかは会社によってまちまちで、その違いは熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューに経営者本人の言葉で残っています。
いまの総支給を4つに分け、任されてきた判断を書き出したら、その経歴にどの職種がいくらの条件を示すのか、実際の求人と突き合わせてみてください。

