店長の転職|管理職経験の伝え方と転職先、名ばかり管理職の判断基準

店長の転職で評価されるのは「店長」という肩書きではなく、採用、人事評価、シフト、売上と在庫のうち、どこまでを自分の判断で決めていたかです。
実は、このうち採用・評価・シフトの権限は、国が店長を労働基準法上の「管理監督者」と認めるかどうかを見るときの要素と重なっています。
この記事では、店長経験を職務経歴書の言葉にする方法と転職先ごとの求人倍率、名ばかり管理職かどうかの判断基準を、厚生労働省の資料で整理します。
店に残るか、外で力を試すか。その答えを急いで出す必要はありません。店長として任されてきた範囲がどの職種でどう評価されるかは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
店長の転職は、任されていた権限を説明できるかで決まる
同じ「店長」でも、会社によって任される範囲は大きく違います。採用する側が職務経歴書で確かめたいのは、肩書きの重さではなく、その人が実際に何を決めてきたかです。先に整理しておきたいのは次の3点です。
- 店長の仕事は、売上・在庫・人の配置・採用育成・評価の5つの領域に分けられる
- 領域ごとに「自分で決めた」「提案した」「指示どおり実行した」のどれだったかで、経験の読まれ方が変わる
- 権限の範囲は、法律上の管理監督者かどうかを判断する材料とも重なる
| 領域 | 権限が広い店長の例 | 権限が限られる店長の例 |
|---|---|---|
| 売上・予算 | 予算づくりに関わり、販促や値引きの判断を店で行う | 本部から配られた予算を追いかける |
| 在庫・発注 | 発注量と品ぞろえを店の判断で決める | 自動発注や本部の指示どおりに発注する |
| 人の配置 | 勤務割を作り、残業や休日出勤を指示する | 本部が組んだシフトを店で回す |
| 採用・育成 | アルバイト・パートの採否を自分で決める | 面接はするが、採否は本部やエリア責任者が決める |
| 評価 | 部下の評価を付け、昇給や賞与に反映される | 評価の対象外か、意見を出すだけ |
この表は、店長の働き方を編集部が一般的な例として整理したもので、統計の区分ではありません。どちらの列が良い悪いという話でもなく、転職の書類で必要なのは、自分がどちらの列に近かったかを領域ごとに正直に書き分けることです。 権限が限られていた領域があっても、その中で何を工夫したかは十分に材料になります。
店舗ビジネスを伸ばしてきた経営者の話を聞いていると、店長に何をどこまで任せるかの線引きは、会社ごとに驚くほど違うと感じます。同じ肩書きの応募者が並んだとき、読む側が差を見つけるのは、この線引きの書き方なのでしょう。
「名ばかり管理職」かどうかは、肩書きではなく実態で決まる
店長から転職を考える理由として、長時間労働や休日の少なさ、残業代が出ないことを挙げる人は少なくありません。転職先を探す前に、いまの扱いが法律上どう位置づけられるかを知っておくと、求人票の読み方も変わります。
- 労働基準法第41条の「管理監督者」には、労働時間・休憩・休日の規定が適用されない
- チェーン店の店長については、厚生労働省の通達が否定要素を具体的に挙げている
- 管理監督者であっても、深夜の割増賃金と年次有給休暇は対象から外れない
- 気になったら、記録を残したうえで公的な窓口に相談できる
労働基準法第41条の「管理監督者」とは
残業代が出ない店長の根拠として持ち出されるのが、労働基準法第41条第2号です。条文はこう書かれています。
「監督若しくは管理の地位にある者」が、いわゆる管理監督者です。この人たちには1日8時間・週40時間といった労働時間の上限や休日の規定がかからず、その結果として時間外・休日の割増賃金も支払いの対象になりません。
ただし、会社が「管理職」と呼んでいることと、法律上の管理監督者であることは別の話です。 厚生労働省が通達の参考資料として示す解釈例規(昭和22年と昭和63年の通達)は、管理監督者を「部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とし、名称にとらわれず実態に即して判断すべきだとしています。役職者なら誰でも例外扱いになる、という運用は認められていないのです。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について―具体的な判断要素を整理した通達を発出―」
チェーン店の店長に当てはめるときの判断要素
小売業や飲食業のチェーン店の店長については、厚生労働省が平成20年9月9日付けの通達で、管理監督者性を否定する要素を具体的に挙げています。 少数の正社員の店長と多数のアルバイト・パートで運営される比較的小規模な店舗で、十分な権限や相応の待遇がないまま管理監督者として扱われる例が見られたためです。
| 区分 | 管理監督者性を否定する要素 | 通達での扱い |
|---|---|---|
| 職務内容、責任と権限 | アルバイト・パート等の採用(人選のみを含む)に関する責任と権限が実質的にない | 重要な要素 |
| 職務内容、責任と権限 | アルバイト・パート等の解雇が職務内容に含まれず、実質的にも関与しない | 重要な要素 |
| 職務内容、責任と権限 | 人事考課の制度がある企業で、部下の人事考課に実質的に関与しない | 重要な要素 |
| 職務内容、責任と権限 | 勤務割表の作成や所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない | 重要な要素 |
| 勤務態様 | 遅刻・早退等により、減給の制裁や人事考課での負の評価などの不利益な取扱いがある | 重要な要素 |
| 勤務態様 | 人員不足のときに自ら業務に入らなければならないなどで、労働時間の裁量がほとんどない | 補強要素 |
| 勤務態様 | マニュアルに従った業務など、部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占める | 補強要素 |
| 賃金等の待遇 | 基本給や役職手当等の優遇が、実際の労働時間を考えると十分でない | 補強要素 |
| 賃金等の待遇 | 1年間の賃金総額が、特別の事情がないのに同じ会社の一般労働者と同程度以下 | 補強要素 |
| 賃金等の待遇 | 時間単価に換算すると、アルバイト・パート等の賃金額に満たない | 重要な要素(最低賃金額に満たない場合は極めて重要な要素) |
通達では、遅刻・早退の扱いについて、健康障害の防止や深夜割増賃金の支払いのために労働時間を把握・管理されていること自体は否定要素にならないとも断っています。また、これらの否定要素に当てはまらないからといって、直ちに管理監督者だと認められるわけではありません。 表は「当てはまったら管理監督者ではない可能性が高い」側の物差しだと読んでください。


通達とあわせて公表された監督指導の結果も残っています。平成20年4〜6月に全国の労働基準監督署が、管理監督者の範囲に問題があると考えられる店舗66店(53社)を監督したところ、管理監督者として扱われていた店長55人のうち、管理監督者と認められたのは10人で、認められなかったのは45人でした。副店長・部門長・主任など店長以外の33人は、全員が認められていません。問題がありそうな店舗を選んで調べた結果なので、店長全体のうち約8割が当てはまるという意味ではありません。 それでも、肩書きだけで管理監督者とされていた例が当時まとまって見つかったことは、この数字から読み取れます。


参考:厚生労働省「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(通達・監督指導結果)」
管理監督者でも、深夜の割増賃金と有給休暇はなくならない
第41条が適用を外しているのは、労働時間・休憩・休日に関する規定です。深夜の割増賃金を定めた第37条第4項は、その外にある規定です。
言い換えると、本当に管理監督者に当たる店長でも、午後10時から午前5時までに働いた時間には25%以上の深夜割増が付きます。 厚生労働省のパンフレット「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」も、管理監督者であっても深夜業の割増賃金は支払う必要があり、年次有給休暇も一般労働者と同様に与える必要があると明記しています。年10日以上の有給休暇が付与される人に、会社が年5日を時季を指定して取らせる義務(第39条第7項)も、管理監督者を除外していません。
労働時間の記録も同じです。2019年4月から、会社は医師による面接指導を行うために労働者の労働時間の状況を把握する義務を負っており(労働安全衛生法第66条の8の3)、厚生労働省の通達はこの対象に管理監督者を含めています。長時間の労働が続いた場合に面接指導の対象になりうる点も、管理監督者だからといって変わりません。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
参考:厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」
自分の扱いが気になったときの確かめ方
いきなり会社と争う必要はありません。順番としては、まず手元の書類を見るところからで足ります。
- 労働条件通知書と就業規則で、自分が管理監督者として扱われているか、役職手当の額はいくらかを確かめる
- 給与明細で、深夜割増の欄があるかを見る
- 自分の出勤・退勤の時刻を、手帳やスマートフォンのメモなど自分の手元にも残しておく
- 判断がつかないときは、都道府県労働局や労働基準監督署内などにある総合労働相談コーナーに相談する
総合労働相談コーナーは全国378か所。無料・予約不要で、面談か電話で相談を受け付けています。法令違反の疑いがあれば、労働基準監督署など権限を持つ部署につないでもらえます。未払いの賃金を請求できる期間は、2020年4月1日以降に支払期日が来た賃金について、現行法では当分の間3年です。 転職してから気づいても、期間内なら請求の余地は残ります。一般の社員に適用される時間外労働の上限の考え方は、残業時間の平均と多い業界・少ない業界、上限45時間で整理しています。
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
参考:厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」
店長経験は「権限の範囲」と「動かした数字」で職務経歴書に書く
ここからは書類の話です。店長の職務経歴書でありがちなのは、「店長として店舗運営全般を担当」と一行で済ませてしまう書き方。読む側には、その店で何を決めていたのかが伝わりません。書き分けたいのは次の4つです。
- 領域ごとに「決めた」「提案した」「実行した」を区別する
- 売上と在庫は、予算に対してどう動かしたかで書く
- 人のマネジメントは、採用・育成・評価・配置に分けて書く
- 異動・新店・閉店の経験は、別の行に立てる
| よくある書き方 | 職務経歴書での書き方 | 添えたい数字 |
|---|---|---|
| 店舗運営全般を担当 | 年間予算の策定に参加し、月次の進捗管理と販促の判断を担当 | 予算額、達成率、前年比 |
| 発注と在庫管理 | 担当カテゴリの発注量を店舗判断で決定し、廃棄と欠品を管理 | 在庫金額、廃棄率、欠品件数の変化 |
| シフト作成 | 月次の勤務割を作成し、時間外労働の指示と人件費の予算管理を担当 | スタッフ数、人件費率、人時売上高 |
| アルバイトの面接 | アルバイト・パートの採用面接と採否の決定を担当 | 年間の採用人数、半年後の在籍人数 |
| 新人教育 | 教育の手順を店舗で定め、新人の立ち上がりを管理 | 担当人数、独り立ちまでの期間 |
| 部下の評価 | パート・社員の人事考課を行い、昇給額の案を本部に提出 | 評価対象の人数、評価の回数 |
「決めた」「提案した」「実行した」を書き分ける
店長経験を書くときに読み手が知りたいのは、その成果のうちどこまでが本人の判断だったかです。 発注量を自分で決めていたのか、本部の推奨数を確認して承認していたのか。販促の内容を店で企画したのか、本部の企画を実施したのか。同じ「売上を伸ばした」でも、判断した範囲によって次の職場での期待値が変わります。
指示どおりに実行した経験も、書き方次第で評価の対象になるものです。「本部の販促企画を、売場の配置とスタッフの声かけの順番まで落とし込んで実施」のように、実行の段階で自分が加えたものを書けば、現場を動かす力として読まれます。
売上と在庫は、予算との関係で書く
売上の絶対額は、店の立地と規模で決まる部分が大きく、それだけでは比べにくい数字です。予算に対する達成率、前年同月比、客数と客単価のどちらを動かしたか。予算との関係で書くと、店の大きさに左右されずに力量が伝わります。 在庫も同じで、在庫金額の規模と、廃棄や欠品をどう変えたかを並べると管理の中身が見えます。
人のマネジメントは、採用・育成・評価・配置に分けて書く
「スタッフ◯名をマネジメント」だけでは、何をしていたのかが分かりません。採用は年に何人を採り、そのうち何人が残ったか。育成では、誰が何をできるようになったのか。評価は何人を年に何回見ていたかで、配置は繁閑に合わせて人件費をどう調整したかです。4つに分けて書くと、厚生労働省の通達が店長の管理監督者性を見るときに挙げる採用・解雇・人事考課・勤務割の権限とほぼ同じ並びになり、管理職としての実態をそのまま示せます。
異動・新店・閉店の経験は、別の行に立てる
複数の店を経験してきた人は、店舗ごとの規模と在任期間、着任時の課題と離任時の状態を短く並べてください。新店の立ち上げや閉店の対応は、店長を続けていても毎回経験するとは限らない仕事なので、独立した行にしておく価値があります。
数字は、会社の非公開データを持ち出さず、自分のメモと記憶で書ける範囲にとどめましょう。「約」を付けた概算でも、比較の向きが分かれば十分に伝わります。書類全体の組み立て方は、職務経歴書の書き方|4職種の見本とテンプレートで確認できます。


参考:厚生労働省「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(通達・監督指導結果)」
店長からの転職先5つと、求人倍率で見る入り口の広さ
店長経験を持っていける先は、大きく分けて5つ。どれを選ぶかは、5つの領域のうち何を一番持っていきたいかで決まります。
- 同業他社の店長・店長候補は、経験をそのまま持ち込める
- 本部職(スーパーバイザー・エリアマネージャー)は、複数店舗の数字を見る仕事
- 異業種の営業は、売上をつくる経験を店の外へ持ち出す道
- 人事・採用は、店舗での採用と育成の経験が入り口になる
- ベンチャーの店舗責任者は、任される範囲の広さと引き換えに仕組みが未整備なこともある
| 転職先 | 持っていける店長経験 | 応募前に確かめたいこと |
|---|---|---|
| 同業他社の店長・店長候補 | 売上・在庫・人の配置のすべて | 管理監督者として扱うか、店長の権限の範囲、役職手当の額 |
| 本部職(スーパーバイザー・エリアマネージャー) | 複数のスタッフを動かした経験、店舗の数字の読み方 | 担当店舗数、移動の範囲、店長への指導の権限 |
| 異業種の営業 | 予算を追った経験、顧客の要望を聞く力 | 目標の決め方、固定給と歩合の割合 |
| 人事・採用 | 採用面接、育成、評価の経験 | 採用の対象(新卒・中途・パート)、担当する人数 |
| ベンチャーの店舗責任者・事業責任者 | 店舗運営の全体像、立ち上げの経験 | 出店計画の根拠、評価と昇給の決まり方、権限の範囲 |
この表は、店長経験の持ち運び方で編集部が整理したもので、統計の区分ではありません。
求人倍率で見ると、「管理職」として探すと入り口は狭い
求人の数を公的統計で確かめておきましょう。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)」の職業別の有効求人倍率(常用・パートを含む・季節調整をしていない実数)を見ると、職業計の1.08倍に対し、管理的職業従事者は0.86倍でした。「管理職」という区分でみると、求職者のほうが求人より多い状態です。
一方で、店長が含まれる職業の区分は求人のほうが多くなっています。この統計の区分のもとになる総務省の日本標準職業分類では、自分も仕入れや販売に立つ小売店の店長は「商品販売従事者」、自分も接客に立つ飲食店の店長は「接客・給仕職業従事者」に分類されます。主に経営・管理の仕事をしている店長は管理的職業従事者、自ら調理をする店長は飲食物調理従事者に入るので、店長がすべて一つの区分に集まるわけではありません。同じ統計で商品販売従事者は1.71倍、接客・給仕職業従事者は2.31倍。営業職業従事者も2.05倍あります。対して一般事務従事者は0.30倍で、事務職へ移る場合は1件の求人を多くの人で争う形になります。


ただし、これはハローワークで受け付けた求人と求職から出した数字で、マイナビ転職・リクナビNEXTなどの求人サイトや転職エージェント経由の求人は含みません。全国の有効求人倍率として報道される1.19倍(同月・季節調整値)とも集計の仕方が違います。スーパーバイザーやエリアマネージャーのように、一つの職業区分に収まらない仕事の倍率も、この統計からは取り出せません。職業区分ごとの大まかな向きとして読んでください。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)参考統計表」
参考:総務省「日本標準職業分類(平成21年12月告示)分類項目名」
参考:[政府統計の総合窓口(e-Stat)「日本標準職業分類(平成21[2009]年12月統計基準設定) 販売従事者 商品販売従事者 小売店主・店長」](https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/20/02/321)
参考:[政府統計の総合窓口(e-Stat)「日本標準職業分類(平成21[2009]年12月統計基準設定) サービス職業従事者 接客・給仕職業従事者 飲食店主・店長」](https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/20/02/401)
同業他社の店長・店長候補
経験がもっとも素直に評価される道です。そのぶん、移る理由が「いまの会社の店長の扱い」にあるなら、応募先でも同じことが起きないかを先に確かめてください。 管理監督者として扱うのか、残業代や深夜割増はどう払われるのか、採用やシフトの権限は店長にあるのか。面接で聞きにくければ、労働条件通知書の段階で文面を確認できます。飲食の店長から業界の外も含めて考えたい人は、飲食から転職するには?店長経験の伝え方と転職先も参考になります。
本部職(スーパーバイザー・エリアマネージャー)
1店舗の結果に責任を持つ立場から、複数店舗の店長を支える立場へ移る仕事です。店長時代に自分の店の数字を他店と比べて改善した経験や、新任の店長を指導した経験が、そのまま応募の材料になります。社外の求人だけでなく、いまの会社の本部への異動を先に相談する道もあります。
異業種の営業
予算を背負い、毎月の数字を追ってきた経験は、営業の仕事と地続きです。違うのは、来店を待つのではなく自分から顧客を探しに行く点と、1件の取引が決まるまでの期間が長くなる点。法人向けの営業がどんな仕事かは、法人営業とは?BtoB営業の仕事内容と個人営業との違いで全体像をつかめます。
人事・採用
店舗で年に何人も面接し、採否を決めてきた店長は、採用の実務をすでに経験しています。人を見る基準を言葉にできるか、面接から定着までの流れを自分で設計したことがあるかが、応募時の分かれ目でしょう。採用の対象が新卒中心か中途中心かで、仕事の中身は大きく変わります。
ベンチャーの店舗責任者・事業責任者
店舗数を増やしていく段階の会社では、店長経験者に出店や仕組みづくりまで任せることもあるでしょう。私たち編集部の実感としては、店の数が増えていく会社ほど、「店を任せられる人」をどう確保するかに頭を悩ませているように見えます。一方で、評価制度や権限の線引きがまだ固まっていない会社もあるため、任される範囲と待遇の決まり方は入社前に言葉で確認しておきたいところです。
年収と待遇は「役職の段階」と「時間単価」で比べる
店長からの転職で見落とされやすいのが、待遇の比べ方です。月給の額面だけを並べると、残業代の有無や労働時間の違いが見えなくなります。比べるときの物差しは次の3つです。
- 公的統計で、役職の段階ごとの賃金の差を知っておく
- 管理職として扱われる求人かどうかで、残業代の有無が変わる
- 月給を実際の労働時間で割った時間単価で比べる
役職の段階で、所定内給与はどれくらい違うか
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、常用労働者10人以上の民営事業所で働く一般労働者のうち、雇用期間の定めのない人の所定内給与額(6月分・男女計)は、部長級635.8千円、課長級529.2千円、係長級399.2千円、非役職者310.5千円でした。非役職者を100とすると、係長級は128.6、課長級は170.4、部長級は204.8です。


この統計の役職は会社の中での位置づけによる区分で、店長がどの段階に当たるかは会社によって違います。また、所定内給与額は残業代を含まないため、残業代が出る立場と出ない立場を比べるときは、この数字だけでは判断できません。 統計は「役職が一段上がると所定内給与がどれくらい動くか」の目安として使い、自分の待遇は次の時間単価で確かめるのが確実です。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況(役職別にみた賃金)」
月給ではなく、時間単価で比べる
厚生労働省の平成20年9月9日付けの通達は、長時間労働の結果、店長の時間単価がアルバイト・パートの賃金額に満たない場合を、管理監督者性を否定する要素に挙げています。転職先を比べるときにも、この「時間あたりでいくらか」という見方が使えます。
計算は単純で、月の総支給額を、その月に実際に働いた時間で割るだけです。いまの職場の数字は直近3か月ほどの平均で出し、転職先の数字は求人票と面接で聞いた所定労働時間や平均の残業時間から見積もります。月給が下がる求人でも、労働時間が大きく減るなら時間単価は上がることがあります。 逆に、月給が上がっても「管理職のため残業代なし」の求人なら、労働時間しだいで時間単価が下がる場合もあるでしょう。
求人票では、次の3点も確認しておきましょう。
- 管理職として採用するのか、残業代は支払われるのか
- 固定残業代が含まれる場合、何時間分でいくらなのか
- 深夜に働く可能性がある職場なら、深夜割増の扱いはどうなっているか
参考:厚生労働省「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(通達・監督指導結果)」
辞める前に、手元に残しておきたい3つの記録
店長は、辞めると決めてからが忙しい立場です。後任への引き継ぎや店舗の繁忙期と重なると、自分の準備が後回しになりがち。在職中のうちに、次の3つを自分の手元に残しておきましょう。
- 自分の出勤・退勤の時刻
- 任されていた権限の範囲のメモ
- 店舗の数字の推移のメモ
勤怠の記録は、未払いの賃金を後から確かめる材料になります。 請求できる期間は現行法で当分の間3年なので、退職前の数か月分だけでなく、さかのぼれる範囲で自分の記録を整理しておくと安心です。権限の範囲は、採用・評価・シフト・発注のそれぞれについて、自分で決めていたのか、提案していたのかを書き出しておきます。これはそのまま職務経歴書の下書きになり、管理監督者かどうかを相談するときの材料にもなります。
店舗の数字は、予算達成率や前年比など、自分のメモで残せる範囲にとどめてください。社内資料のコピーを持ち出す必要はありません。退職の切り出し方や時期は、引き継ぎに必要な期間から逆算して決めるのが基本です。
参考:厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」
店長の転職に関するよくある質問
店長経験は転職で有利になりますか?
有利になるかどうかは、店長という肩書きより、任されていた権限の範囲を説明できるかで決まります。 採用の採否、部下の評価、勤務割の作成、発注量の判断を自分で行っていたかを領域ごとに書き分けると、管理職経験として読まれやすくなるでしょう。求人の量で見ると、厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)」のハローワークでの有効求人倍率(常用・パートを含む)は、商品販売従事者1.71倍、接客・給仕職業従事者2.31倍、営業職業従事者2.05倍で、職業計の1.08倍を上回っています。一方、管理的職業従事者は0.86倍で、「管理職」の区分だけで探すと入り口は狭くなります。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)参考統計表」
店長は管理職だから残業代が出ないのは、違法ではないのですか?
会社が管理職と呼んでいるだけでは、残業代を払わなくてよいことにはなりません。 残業代の規定が外れるのは、労働基準法第41条第2号の管理監督者に当たる場合で、名称ではなく実態で判断されます。チェーン店の店長については、平成20年9月9日付けの厚生労働省の通達が、アルバイト・パートの採用や解雇、部下の人事考課、勤務割の作成や残業命令の権限が実質的にないこと、時間単価がアルバイト・パートの賃金額に満たないことなどを、管理監督者性を否定する要素として挙げています。なお、管理監督者に当たる場合でも、午後10時から午前5時までの深夜割増賃金と年次有給休暇は対象から外れません。判断がつかないときは、無料・予約不要の総合労働相談コーナーに相談できます。
参考:厚生労働省「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(通達・監督指導結果)」
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
店長から異業種に転職できますか?
売上をつくる経験を持ち出すなら営業、人を採って育てる経験を持ち出すなら人事・採用が、異業種でも接続しやすい先です。 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)」のハローワークでの有効求人倍率(常用・パートを含む)は、営業職業従事者が2.05倍、一般事務従事者が0.30倍でした。事務職を目指すこと自体は自由ですが、求人1件を多くの求職者で争う区分であることは知っておきたいところです。異業種では店長の社内用語が通じないため、予算達成率や採用人数のように、業界を問わず意味が通じる数字で書き直しておきましょう。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)参考統計表」
スーパーバイザーやエリアマネージャーに転職するには、何が必要ですか?
自分の店の数字を、他店や前年と比べて改善した経験を具体的に示せることが入り口になります。 スーパーバイザーやエリアマネージャーは複数店舗の店長を支える立場で、担当店舗の数字を読み、店長に改善を促すのが仕事です。新任の店長や副店長を指導した経験、新店の立ち上げや不振店の立て直しに関わった経験があれば、店舗ごとの規模と在任期間を添えて書いてください。社外の求人を探す前に、いまの会社の本部への異動を相談する道もあります。
辞めた後でも、未払いの残業代は請求できますか?
退職した後でも、請求できる期間内であれば請求の余地は残るのです。 労働基準法は賃金の請求権の時効を5年と定めていますが、附則で退職手当を除く賃金は当分の間3年とされており、2020年4月1日以降に支払期日が来た賃金に適用されます。管理監督者に当たるかどうかで残業代の有無は変わるため、まずは自分の出勤・退勤の時刻、役職手当の額、給与明細を手元にそろえることから始めてください。判断に迷う場合は、総合労働相談コーナーで、どこに相談すればよいかを含めて案内を受けられます。
参考:厚生労働省「未払賃金が請求できる期間などが延長されています」
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
まとめ
店長の転職で評価されるのは、肩書きではなく、売上・在庫・人の配置・採用育成・評価のそれぞれで何を自分で決めていたかです。「決めた」「提案した」「実行した」を書き分け、予算達成率や採用人数のように業界を問わず通じる数字を添えると、管理職としての経験が読み手に伝わります。
その権限の範囲は、法律上の管理監督者かどうかを見るときの物差しとも重なります。厚生労働省の通達は、採用・解雇・人事考課・勤務割の権限が実質的にないことや、時間単価がアルバイト・パートの賃金額に満たないことを否定要素に挙げており、管理監督者であっても深夜割増と年次有給休暇は外れません。転職先を選ぶときは、ハローワークの有効求人倍率(令和8年9月分・常用、パートを含む)で管理的職業従事者が0.86倍と職業計の1.08倍を下回る一方、商品販売従事者は1.71倍、営業職業従事者は2.05倍という向きを踏まえ、「管理職」の枠だけに絞らないほうが選択肢は広がります。
参考:厚生労働省「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について(通達・監督指導結果)」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)参考統計表」
正直なところ、私たちは取材を重ねるうちに、店を任せる側が見ているのは店の大きさより「何を、なぜ自分で決めたか」を話せるかどうかではないか、と考えるようになりました。店舗を伸ばしてきた会社の社長が、店長やマネージャーに何を任せているのかは、熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューで読み比べられます。
任されてきた範囲を書き出せたら、次はその経験がどの求人で評価されるかを、実際の募集と並べて確かめる段階です。

