起業の成功例4つ|経営者4人が語る起業のきっかけと成功例に共通する点

起業の成功例を4人の経営者の歩みで見ると、きっかけは劇的なひらめきではなく、それまでの仕事や人との出会いの延長にありました。
意外なのは、公的な調査に答えた開業者のうち、株式公開を考えている人が1割に満たないことです。上場や急成長だけが起業の成功ではなく、目指すものは人によって違います。
この記事では、4人が起業に踏み切ったきっかけとその後の道のり、成功例から見える共通点、会社員のいまからできる準備までを整理します。
起業を考えるときに土台になるのは、いまの経験がどこで評価されるかを知っておくことです。自分のキャリアにどんな選択肢があるかは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
起業の「成功」は一つではない|開業した人の答えから見る
起業の成功例と聞くと、上場した会社や、誰もが知るサービスを生んだ創業者を思い浮かべるかもしれません。ところが、実際に開業した人の答えを見ると、目指しているものはもっと幅広いことが分かります。
日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」は、同公庫が2024年4月から9月に融資した企業のうち、開業後1年以内の企業を対象にしたアンケートです。回答は2,165社で、調査時点では開業から平均15.5カ月がたっています。
| 物差し | 開業した人の答え | 読み方 |
|---|---|---|
| 売上の見込み | 予想月商を達成 58.7% | 開業前の計画どおりかそれ以上の月商 |
| 仕事のやりがい | 満足 84.4% | 自分の能力を発揮できているか |
| ワークライフバランス | 満足 54.7% | 働き方の満足は半分ほど |
| 事業からの収入 | 満足 28.3% | お金の面で満足している人は3割に届かない |
| 売上高の今後 | 拡大したい 85.6% | ほとんどの人が伸ばしたいと考えている |
| 株式公開 | 考えている 9.9% | 上場を目指す人は1割に満たない |
計画どおりに売上が立っている人は約6割
予想月商達成率は、調査時点の平均月商を開業前に予想していた月商で割った値です。「2025年度新規開業実態調査」では、予想月商を達成した人が58.7%で、うち125%以上の人も34.2%いました。 一方で、75〜100%未満が14.2%、50〜75%未満が16.6%、50%未満にとどまる人も10.5%います。同じ調査の過去の結果を見ると、予想月商を達成した人は2023年度が55.8%、2024年度が59.6%で、5〜6割の水準が続いています。


月商の金額そのものは、大きいとは限りません。調査時点の月商は「100万円未満」が39.5%、「100万〜500万円未満」が44.2%でした。金額の大きさより、開業前に立てた計画をどこまで実現できたかのほうが、成功を測る一つの目安になるでしょう。
やりがいの満足は高く、収入の満足は3割に届かない
満足度を項目別に見ると、差がはっきり出ます。「かなり満足」と「やや満足」を合わせた割合は、仕事のやりがい(自分の能力の発揮)が84.4%、ワークライフバランスが54.7%、事業からの収入が28.3%。やりがいで満足している人は多い一方、お金の面で満足している人は3割に届いていません。 調査時点は開業から平均15.5カ月なので、収入の評価はこれから変わっていく可能性もあります。


伸ばしたい人は多いが、上場を目指す人は1割未満
今後の方針では、売上高を「拡大したい」が85.6%、商圏を「拡大したい」が62.6%でした。ところが株式公開を「考えている」のは9.9%で、90.1%は「考えていない」と答えています。事業を伸ばしたいという気持ちと、上場を目指すかどうかは別の話なのです。


成功の物差しは、売上の計画、やりがい、働き方、収入、事業の広がりと、人によって置きどころが違います。上場の仕組みそのものは上場とIPOの違いを解説した記事で整理しています。
参考:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
起業の成功例4つ|きっかけと、そこからの道のり
ここからは、熱狂ベンチャーナビのインタビューで経営者自身が語った内容から、起業のきっかけと事業を形にするまでの道のりを紹介します。成功の物差しは前のセクションで見たとおり人それぞれなので、ここでは「事業を立ち上げ、続けている例」として読んでください。正直なところ、私たちも経営者に話を聞くまでは「成功=会社を大きくすること」と考えがちでした。
| 経営者 | 起業前の経歴 | きっかけ | 設立 |
|---|---|---|---|
| 寺本 雄平さん | 不動産デベロッパー、セブ島での転職 | 社内ベンチャーで事業を立ち上げた経験 | 2019年3月 |
| 千葉 伸明さん | 20歳で一度起業 | 経営者たちとの対話から得た着想 | 2004年10月 |
| 渡邉 晃司さん | フリーランスで3D関連の仕事 | アイデアを話して意気投合し、会社にする前に客がついた | 2024年8月 |
| 笹島 敦史さん | 銀行、人材サービス2社 | 前職で見えた銀行員の可能性 | 2025年6月 |
設立年月は各インタビューに掲載された会社概要によるものです。
社内ベンチャーの経験から、留学の仕組みを事業にした例
株式会社ストロングジャパンホールディングスの寺本雄平さんは、教員免許を持ちながら、教育実習を通じて「教員になっても教育業界は変えられない」と感じ、営業経験を得るために不動産デベロッパーへ就職しました。2年ほど働くうちに、もっと稼ぎたい、早く出世したいという思いから独立を考えるようになったそうです。
ただ、何をすべきかは決まっていませんでした。海外で探そうとセブ島の日本語コールセンターに就職したものの、入社2週間ほどで拠点の撤退が告げられ、退職を決意します。次に転職した語学学校のセールス・マーケティング職で「自分のやりたかったのは教育事業だ」と気づき、社内ベンチャーとして立ち上げた留学エージェント事業を7ヶ月で単月黒字化させた経験が、起業のきっかけになったと語っています。
その後は日系のBPOセンターに転職して運営ノウハウを学び、日中はセンターの運営、朝晩は自分の留学エージェント事業という形で準備を進めました。働きながら留学できる「0円留学」の仕組みは、この2つの経験をつなげて生まれたものです。独立の気持ちが先にあり、何をやるかは働きながら見つけていった例と言えるでしょう。
会社をつくった後も平坦ではありません。寺本さんによれば、コロナ禍ではセブ島の語学学校の9割以上が撤退しました。その中で事業を続けられたのは、0円留学のために持っていたコールセンター・BPOセンターで営業代行の仕事を取り込めたからだと振り返っています。あのとき学校を閉じていれば失敗だったとも話しており、やめずに続けたことを成否の分かれ目と捉えていることがうかがえます。
一度目の起業がうまくいかず、2社目で事業を見つけた例
千株式会社の千葉伸明さんは、親族のほとんどが経営者という環境で育ち、高校時代に起業を意識するようになりました。ただ、20歳で初めて起業した会社はうまくいかず、千株式会社は2社目の会社です。次の事業を模索するなかで、さまざまな経営者と話す機会があったそうです。
当時はサーバー容量の制約から、動画より静止画のほうがインターネットで提供しやすいと考え、デジタル写真をオンラインで販売するサービスを始めます。それが、創業から20年続く主力サービスの「はいチーズ!フォト」です。千葉さんは、最初から一人で完成させたというより、多くの出会いとチームの力で育ててきたサービスだと振り返っています。一度目の失敗のあと、他の経営者の話を聞きに行ったことが次の事業の種になっています。
「起業するぞ」と決める前に、客が現れた例
株式会社OpenHeartの渡邉晃司さんは、撮影するだけで3Dのシーンを生成できるプラットフォームを開発しています。起業の経緯は、本人の言葉を借りれば自然な流れだったそうです。
始まりは、勉強会かイベントでたまたま隣にいた人に、自分でつくっていたサービスのアイデアを話して意気投合したことでした。振り返ると、ピッチイベントへの参加など起業家的な行動はしていたかもしれないと語り、スマート農業や自動運転の分野で3Dや地図づくりに携わったフリーランスの経験も役立ったといいます。決意より先に、つくっていたものと、それを欲しがる人がそろっていた例です。
始まり方は自然体でも、目指すところは大きく置いています。新潟県の出身で、世界を知る手段がインターネットしかなかったという渡邉さんは、日本のスタートアップが連合を組んで世界の時価総額ランキングに並ぶ状況を目指していると語っています。始まり方の小ささと、目指す規模の大きさは別のものなのです。
前職で見えた課題と可能性を、独立して事業にした例
株式会社バンクライトの笹島敦史さんは、三井住友銀行の法人営業からキャリアを始めました。担当した50社を超える中小企業に話を聞くと、ほとんどの社長が採用の話になると「うちなんか」と口にしていたそうです。銀行を辞めるきっかけは、取引先の社長からの一言だったといいます。
申し出を断り、中小企業の人材課題に向き合うためにインテリジェンス(現パーソルキャリア)へ転職しますが、2年ほど取り組んでも大きくは変えられなかったと振り返っています。次に入ったサーキュレーションでは地方拠点を広げ、仲間とともに地方銀行・信用金庫約90行庫との業務提携を築きました。その中で、提携しても現場で動いている会社は一部にとどまるという話を聞き、銀行員の仕事そのものを良くする会社をつくろうと独立を決めたそうです。銀行員、人材サービス、提携の仕事という3つの経験が、1つの事業につながった例です。
4人の話は、それぞれのインタビューのほんの一部です。ほかの経営者が事業を始めたきっかけや苦しかった時期の話は、熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューで読めます。自分の経歴に近い人の話を探してみると、始め方の幅が見えてきます。
参考:熱狂ベンチャーナビ「【代表インタビュー】株式会社ストロングジャパンホールディングス 代表取締役CEO 寺本 雄平」
起業の成功例に共通する点|4人の歩みから見えること
4人の入口はばらばらですが、並べてみると重なるところがあります。4人の話から言えるのは、起業はある日突然決めるものというより、それまでの経験を積み重ねた先にあるということです。もちろん4人の例だけで一般化はできないので、ここでは考え方のヒントとして読んでください。
- 事業の種は、それまでの仕事や経験の中にある
- 一度で決まっていない。転職や失敗を挟んでいる
- 人と話す場所に出て、そこで着想や相手を得ている
- いきなり全部を賭けず、働きながら小さく試している
事業の種は、それまでの仕事の中にある
寺本さんは語学学校とBPOセンターでの仕事を、笹島さんは銀行と人材サービスでの経験を、渡邉さんはフリーランスで手がけた3Dの仕事を、それぞれ事業の土台にしています。ゼロから思いついたアイデアより、自分が現場で見てきた課題のほうが、事業の芯になりやすいのかもしれません。
一度で決まっていない
千葉さんは20歳での最初の起業がうまくいかず、2社目で現在の事業にたどり着きました。寺本さんも、セブ島で就職した会社の拠点撤退という予想外の出来事を経ています。笹島さんは、転職先で思うように変えられなかった時期をくぐっています。遠回りに見える時期が、あとから振り返ると次の一歩の材料になっている点は共通しています。
人と話す場所に出ている
千葉さんは経営者たちとの対話から、渡邉さんは勉強会やイベントでの出会いから事業が動き出しました。私たちが話を聞いてきた経営者の中でも、起業のきっかけとして「誰かと話したこと」を挙げる人は思いのほか多い印象です。アイデアは一人で温めるより、人に話したときに形が見えてくるものなのでしょう。
働きながら小さく試している
寺本さんは日中にBPOセンターで働きながら、朝晩に自分の事業を始めていました。渡邉さんも、会社をつくる前にサービスを具体化し、客がついてから法人にしています。公的な調査を見ても、開業後の収入が事業だけに頼る形になる人は少なくありません。「2025年度新規開業実態調査」では、事業からの収入が経営者本人の定期的な収入の100%を占める人が53.3%でした。だからこそ、収入の柱があるうちに小さく試せるかどうかは、始め方を考えるうえで意味を持ちます。


参考:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
起業のきっかけをつくるために、いまできること
4人の歩みを見ると、起業のきっかけは待っていて降ってくるものではなく、日々の仕事の中で拾えるものです。いまの立場からでも、次の3つは始められます。
| できること | 具体的な行動 | 4人の例との対応 |
|---|---|---|
| 現場の課題を集める | 顧客や取引先が困っていることをメモに残す | 笹島さんは担当企業の社長たちから同じ悩みを聞いている |
| 人に話す | 勉強会やイベントで、考えているアイデアを話してみる | 渡邉さんは隣の人に話して意気投合した |
| 小さく試す | 社内の新規事業や副業の範囲で、実際に売ってみる | 寺本さんは社内ベンチャーで単月黒字化を経験した |
「もっと良くできるのに」と感じた場面を書き留める
いまの仕事で「これはもっと良くできるのに」と感じる場面は、事業の種の候補です。誰が困っていて、なぜ解決されていないのかを言葉にしておくと、後から事業の形を考えるときの材料になります。笹島さんが50社を超える担当企業で同じ話を聞いて課題に気づいたように、一社だけでなく複数の相手から聞いてみると、それが個別の事情なのか、多くの会社に共通する困りごとなのかが見えてきます。
考えていることを人に話し、小さく売ってみる
アイデアは、頭の中にあるうちは良し悪しが分かりません。勉強会や社外のイベントで話してみると、興味を持つ人がいるか、どこに疑問を持たれるかが見えてきます。渡邉さんの場合も、隣にいた人に話したことが事業の始まりでした。
反応が良ければ、次は小さく売ってみる段階です。社内の新規事業制度や、勤務先が認める範囲の副業で、少人数の顧客に実際に使ってもらうと、お金を払ってもらえるかどうかが確かめられます。寺本さんが社内ベンチャーで留学エージェント事業を立ち上げたように、会社の中にいながら事業を試せる場があるなら、活用を考えてみる価値があります。
規模の小さい会社で、事業全体を見る
事業全体を見渡す経験は、規模の小さい会社ほど早く回ってきやすいものです。ベンチャー企業やスタートアップで働くことは、起業する前に経営に近い仕事を経験する一つの選択肢になります。それぞれの特徴はベンチャー企業とは何かを解説した記事とスタートアップの意味と働き方の記事で確かめられます。
起業するかどうかを決める前に、社長になるルートや必要な準備を知っておきたい人は、社長になるための4つのルートを整理した記事も参考にしてみてください。
起業の成功例に関するよくある質問
起業のきっかけで多いものは何ですか?
今回紹介した4人の例では、それまでの仕事で見えた課題や経験、人との出会いがきっかけになっていました。 社内ベンチャーで事業を立ち上げた経験、経営者たちとの対話、イベントで意気投合した相手、前職で見えた業界の可能性と、入口は人によって違います。開業した人の動機を統計で知りたい場合は、起業家とは何かを解説した記事で整理しています。
起業して計画どおりに売上が立つ人はどれくらいいますか?
日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」では、予想月商を達成した人が58.7%でした。 開業後1年以内の企業を対象にした調査で、調査時点では開業から平均15.5カ月がたっています。50%未満にとどまる人も10.5%いるため、計画には幅を持たせておくほうが現実的でしょう。
参考:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
起業した人はみんな上場を目指しているのですか?
目指している人は少数です。 日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」で株式公開を「考えている」と答えた人は9.9%、「考えていない」は90.1%でした。一方で売上高を「拡大したい」人は85.6%います。事業を伸ばしたいことと、上場を目指すことは別の選択として考えられています。
参考:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
一度起業に失敗したら、もう成功は難しいですか?
そうとは限りません。 今回紹介した千葉伸明さんは、20歳での最初の起業がうまくいかず、2社目で20年続くサービスを生み出しています。もちろん一人の例で一般化はできませんが、最初の挑戦で得た経験や人とのつながりが、次の事業の材料になることはあります。
会社員を続けながら起業の準備はできますか?
できます。 寺本雄平さんは、日中は勤務先で働き、朝晩に自分の事業を始めていました。いまの仕事で課題を集める、勉強会やイベントでアイデアを話す、社内の新規事業や副業の範囲で試すといった準備は、会社員のままでも始められます。副業をする場合は、勤務先の就業規則を確かめておきましょう。
まとめ
起業の成功例を4人の経営者の歩みで見ると、きっかけは社内ベンチャーでの経験、一度目の起業の失敗、イベントでの出会い、前職で見えた課題と、それぞれ違っていました。それでも、それまでの仕事の中に事業の種があったこと、遠回りを経ていること、人と話す場所に出ていたこと、働きながら小さく試していたことは共通しています。
成功の物差しも一つではありません。「2025年度新規開業実態調査」では、予想月商を達成した人が58.7%、仕事のやりがいに満足している人が84.4%いる一方、収入に満足している人は28.3%、株式公開を考えている人は9.9%でした。
経営者の話を聞いていると、成功の定義を最初から決めて始めた人は意外に少ないと感じます。自分にとって何が成功かは、始めてから見えてくるものなのかもしれません。まずは、いまの仕事の中で気になっている課題を一つ書き出すところから始めてみてください。
起業するにしても、いまの会社でもう少し経験を積むにしても、自分の経験がどこで評価されるかを知っておくと、次の一歩を選びやすくなります。

