タクシー運転手の年収はいくら?平均450万円の中身と都道府県別・年齢別データ

厚生労働省の調査(令和7年)をもとにした数字では、タクシー運転手の全国平均年収は450万8,200円です。

ただ、経験年数別に見ると、長く勤めている層ほど平均年収が低いという、ほかの仕事とは逆の傾向があります。その理由は、給料の決まり方にあります。

この記事では、数字の読み方をそろえたうえで、都道府県別・年齢別・経験年数別の年収と、収入を左右する歩合給の仕組みを確かめていきます。

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目次

タクシー運転手の平均年収が資料によって違って見える3つの理由

同じ「タクシー運転手の平均年収」でも、参照する数字の定義が違えば結果は変わります。差が生まれるポイントは次の3つです。

  • 調査年が1年違うだけで36万円動く
  • 超過労働手当と賞与をどこまで含めるかで83万円変わる
  • 平均値と分布のどこを見るかで印象が反転する

まず押さえたいのは、最新値と1年前の値で36万円近い差があることです。 令和7年賃金構造基本統計調査によるタクシー運転者の年間推計額は450万8,200円ですが、令和6年調査では414万8,500円でした。1年で35万9,700円、率にして8.7%の増加。同じ資料は背景として、調査期間中の地域別最低賃金の引上げ率が5.1%だったこと、令和4年以降の運賃引上げやアプリ利用率の増加を背景とした売上の増加を挙げています。「タクシー運転手の平均年収は414万円」という記述を見つけたら、それは前年の数字である可能性が高いでしょう。

2つ目は、どこまでを年収に含めるかの違いです。同資料の内訳を分解すると、次のようになります。

項目金額年換算した場合
所定内給与額30万6,400円/月367万6,800円
きまって支給する現金給与額35万9,200円/月431万400円
年間賞与19万7,800円―
年間推計額―450万8,200円

きまって支給する現金給与額には、超過労働手当(残業・深夜・休日手当)のほか通勤手当なども含まれ、所定内給与額はそこから超過労働手当を除いた額。年間推計額は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与」で計算されています。どの欄を引用するかで、367万円にも431万円にも450万円にもなるわけです。

3つ目は平均値そのものの性質です。歩合給が中心の業界では個人差が大きく出るため、資料自身が「平均賃金のみで単純比較することには留意が必要」と明記しています。

参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」

全産業との差94万7,400円は、その大半が賞与の差

タクシー運転手の年収を全産業労働者と比べると、たしかに差があります。ただし中身を分解すると、見え方が変わります。

  • 月々の給与だけを比べると、差は月1万1,300円にとどまる
  • 年間賞与では81万1,800円の差がつく
  • 労働時間は月19時間長い

年収差の内訳を見ると、月給の差はごくわずかで、開きのほとんどは賞与から生まれています。 令和7年調査の数値を並べると次のとおりです。

項目タクシー運転者全産業労働者差
月間給与35万9,200円37万500円1万1,300円
年間賞与19万7,800円100万9,600円81万1,800円
年間推計額450万8,200円545万5,600円94万7,400円
平均年齢56.8歳44.4歳12.4歳
平均勤続年数8.3年12.7年4.4年
月間実労働時間192時間173時間19時間

月給の差を12か月分に直すと13万5,600円。年収差94万7,400円のうち、8割以上は賞与の差だと分かります。歩合給を中心とする賃金体系では、売上に応じた支払いが毎月の給与に組み込まれるため、まとまった賞与という形になりにくいのです。「毎月の手取りは思ったより悪くないのに、年間で見ると差がつく」という声の正体はここにあります。

見落とされやすいのが労働時間です。月間実労働時間は192時間(所定内169時間+所定外23時間)で、全産業より月19時間長い。年収を時間で割って比べる視点も持っておきたいところ。なお平均年齢は令和6年調査の60.2歳から56.8歳へ、1年で3.4歳若返っています。

平均値だけでは読み違える タクシー運転手の年収分布

平均年収450万8,200円は、あくまで目安の一点にすぎません。同じ資料には、分布のどこを見るかで評価が変わることを示すデータが載っています。

  • 賃金の低い層は145職種中134位まで下がる
  • 真ん中の層は79位でほぼ中央
  • 上位層は58位で、上位4割の水準に入る

同資料は、タクシー運転者の賃金を低い順に並べたときの各分位点が、145職種の中でどの順位にあるかを示しています。 結果は次のとおりです。

賃金階層145職種中の順位資料の評価
第1・十分位数(下位10%)134位最下位に近い水準
第1・四分位数(下位25%)116位順位は上昇する
中位数(50%)79位ほぼ中央値水準
第3・四分位数(上位25%)69位中央値を上回る
第9・十分位数(上位10%)58位上位4割水準
推定年収900万円以上層の割合49位高所得層の存在が一定程度確認される

下位層は他職種と比べて極めて低い位置にありながら、上位層は相対的に高い位置に達しています。資料自身が結論としてこう書いています。「平均値のみをもって賃金水準を評価することは適当ではなく、分布全体を踏まえた評価が必要である」。

なぜここまで広がるのか。理由は歩合給という賃金制度そのものにあります。 資料は、年功賃金制では勤続とともに固定給が上がるため最低賃金近傍の人はほとんど見られないが、歩合給制度では最低賃金は保障として機能するにとどまり、売上水準に応じて賃金が変動するため、年齢に関わらず一定程度の最低賃金近傍の層が生じ得ると説明しています。年収の上限を他職種と比べたい方は、年収1000万円は30代の何%?年齢・男女別の割合もあわせてご覧ください。

年齢別の年収 20代前半は全産業を121万円上回る

年齢階級別に見ると、タクシー運転手の年収は他業種と違う形を描きます。若いうちは高く、年齢が上がっても横ばい。この形が、全産業との比較で逆転を生みます。

  • 20代から30代前半までは、タクシーのほうが年収が高い
  • 35〜39歳で逆転し、55〜59歳で差が最大になる
  • 60歳以降は差が縮まる

20〜24歳では、タクシー運転者の年間推計額が全産業労働者を121万9,900円上回ります。 令和7年調査の年齢階級別の比較は次のとおりです。

年齢階級タクシー運転者全産業労働者差
20〜24歳483万3,600円361万3,700円+121万9,900円
25〜29歳482万8,700円448万2,000円+34万6,700円
30〜34歳517万9,200円507万2,800円+10万6,400円
35〜39歳491万8,700円556万7,100円−64万8,400円
40〜44歳498万5,500円594万6,800円−96万1,300円
45〜49歳521万3,100円613万6,200円−92万3,100円
50〜54歳494万3,100円633万8,500円−139万5,400円
55〜59歳481万3,500円641万3,500円−160万円
60〜64歳440万1,300円506万2,700円−66万1,400円
65〜69歳379万500円401万7,200円−22万6,700円
70歳〜347万5,900円352万8,500円−5万2,600円
年齢階級別に、タクシー運転者と全産業労働者の年間推計額を比べたグラフ。20〜24歳は483万円対361万円でタクシーが上回るが、35〜39歳で492万円対557万円と逆転し、55〜59歳では481万円対641万円まで差が開く。

資料はこの形を、全産業が60歳の定年まで一定して賃金が上昇する年功賃金制であるのに対し、タクシー運転者は年齢や勤続にかかわらない同一の歩合給制の仕組みで賃金が決まるため、賃金額がおおむね横ばい傾向を示すと説明しています。高齢層で若干低下する背景として、売上が高い隔日勤務や深夜勤務から日勤への移行といった勤務形態の変化にも触れられています。

若いうちに入るほど相対的に有利で、他業種で年功が積み上がる年代に入るほど相対的に不利になる構造です。 20代でこの仕事を選ぶ判断と40代で選ぶ判断は、同じ「年収450万円の仕事」でも意味が違ってきます。

参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」

経験年数別の年収 長い層ほど職種順位が低い

年齢別の横ばいと同じことが、経験年数別にも表れます。しかもこちらは、他職種との相対順位で見るとかなりはっきりした下降線を描きます。

  • 経験0年の時点では145職種中44位と、上位3分の1に入る
  • 経験10年を超えると108位まで下がる
  • 経験15年以上では139位、下位3分の1に入る

経験0年の層の年収順位が最も高く、経験の長い層ほど順位が低いという、他職種とは逆の並びになっています。 経験年数別の年間推計額と順位は次のとおりです。

経験年数年間推計額145職種中の順位
0年371万円44位
1〜4年418万円54位
5〜9年407万円83位
10〜14年392万円108位
15年以上347万円139位

金額は1〜4年の418万円が最も高く、15年以上では347万円ですが、それ以上に開きが大きいのは順位です。44位から139位へ、95ランクの差。いずれも同じ年の調査で経験年数ごとの平均を並べた数字で、同じ人の年収を追いかけた結果ではありません。資料はその背景として、歩合給制度では経験年数に応じて賃金が段階的に上昇する仕組みが一般的に取り入れられておらず、年功賃金制度を採る他職種と比較すると、勤続年数の増加に伴い平均賃金の相対的な順位が低下する傾向が見られる、と説明しています。

この職種を検討するなら、「入社後何年で年収がいくらになるか」ではなく「その時々の売上で年収が決まる」という前提で考えることになります。 昇給表を前提にしたキャリア設計とは、設計思想がそもそも違うのです。

参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」

都道府県別の年収 東京と最下位で2.2倍の開き

地域差は、年齢差よりも大きく効いてきます。同じ仕事、同じ資格でも、営業する場所で金額がまったく違うのです。

  • 上位は東京都、大阪府、栃木県の順
  • 下位は富山県、岩手県、大分県
  • 年収の差には、労働時間の差も含まれている

東京都の570万3,500円に対し、最も低い富山県は253万9,800円。差は316万3,700円、倍率にして約2.2倍です。 令和7年調査の都道府県別データから、上位・下位それぞれ5県と全国平均を並べます。

都道府県タクシー運転者の年間推計額月間実労働時間
東京都570万3,500円198時間
大阪府479万400円198時間
栃木県461万3,100円196時間
神奈川県448万9,400円201時間
千葉県448万8,000円168時間
全国平均450万8,200円192時間
熊本県290万1,600円168時間
宮崎県286万2,800円182時間
大分県283万6,800円132時間
岩手県279万9,800円186時間
富山県253万9,800円143時間

数字を並べると、年収の低い県には、労働時間も短い県が目立ちます。大分県は月132時間、富山県は143時間で、全国平均192時間を大きく下回る。働く時間が短ければ、年収もそのぶん小さく出るわけです。逆に山口県は月224時間、北海道は223時間と長いにもかかわらず、年収はそれぞれ396万8,400円、420万3,200円にとどまります。地域差には、「どれだけ長く乗るか」と「1時間あたりいくらになるか」の両方の違いが表れています。 ただし、なぜそれだけの違いが生まれるのかまでは、この表からは分かりません。

資料が付けている2つの注記も押さえておきたいところ。調査対象事業所数が限られるため小規模な都道府県では実情が正確に反映されていない可能性があること、そして東京都と地方の比較には住居費の支出額の差を考慮する必要があること。東京の570万円と富山の254万円を、そのまま生活水準の差として読むのは早計です。

参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」

給与体系の仕組み 固定給・歩合給・足切りはどう決まるのか

ここまで見てきた数字のばらつきの多くは、歩合給という賃金制度と結びついています。仕組みを分解すると、求人票の読み方が変わります。

  • 歩合給には、固定給と組み合わせる型と、売上に一定率を掛ける型がある
  • 「足切り」は、歩合が付き始める売上ラインのこと
  • 売上に応じて歩合率が跳ね上がる方式は、行政指導で廃止対象になっている
  • 売上が少ない月でも、法律上は一定額の賃金が保障される

歩合給の2つの計算パターン

国土交通省が審議会に示した資料(平成21年当時)は、タクシー運転者の歩合給を2つのパターンで整理しています。ひとつ目は、運賃収入等が一定額A以下なら賃金は固定給のみ、Aを超えた場合は「(運賃収入等−A)×歩合+固定給」で計算する方式。もうひとつは固定給を置かずに「運賃収入等×歩率」で算出する方式です。

求人でよく聞く「足切り」は、1つ目の方式におけるAを指します。 つまり足切りとは罰則ではなく、歩合が発生し始める売上ラインの俗称。会社によって金額も歩合率も違うため、求人を比べるときは「足切りはいくらか」と「超過分の歩合率は何%か」をセットで確認することになります。

業界ではA型・B型・AB型という呼び方も使われます。一般に固定給と賞与の比重が大きいものをA型、売上に連動する比重が大きいものをB型、両者を組み合わせたものをAB型と呼び分けますが、中身は会社ごとに異なります。名称だけで判断せず、賃金規程の計算式を見せてもらうのが確実です。

歩合率が跳ね上がる方式は、廃止するよう指導されている

「売上が◯万円を超えると歩合率が一気に上がる」という説明を見かけたら、注意が必要です。厚生労働省は、水揚高等に応じて歩合給の額が非連続的に増減する「累進歩合制度」について、労働者の長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあることから、通達に基づき廃止するよう指導しています。 廃止指導の対象は次の3つです。

廃止指導の対象となる制度内容
累進歩合給水揚高等に応じて歩合給の額が非連続的に増減する制度
トップ賞水揚高が最も高い者やごく一部しか達成し得ない高い水揚高を達成した者のみに支給する制度
奨励加給水揚高を数段階に区分し、区分の額に達するごとに一定額の加算を行う制度

一方、積算歩合給制は対象外です。運賃収入等を数区分し、区分ごとの歩率が変動(一般的には逓増)したうえで、各区分の運賃収入等に対応する比率を乗じた金額を合計する制度のこと。段階的に歩率が上がること自体ではなく、あるラインを超えた瞬間に非連続的に跳ね上がる設計が問題視されているわけです。根拠となる通達は平成元年基発第93号と、累進歩合制度の廃止指導の徹底を求めた平成26年1月24日付け基発0124第1号。

売上が少ない月でも、賃金はゼロにならない

歩合給と聞いて最初に浮かぶ不安は、「売上がなければ給料もないのでは」という点でしょう。労働基準法第27条は「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と規定しています。 自動車運転者についての通達(平成元年基発第93号)はさらに具体的で、歩合給制度が採用されている場合には、労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金の6割以上の賃金が保障されるよう保障給を定めるものとする、としています。1時間当たりに換算した賃金額が最低賃金額を下回ることもできません。

求人票にある「保障給あり」「入社◯か月は月給◯万円保証」が、この法令上の保障給を指しているのか、会社が独自に上乗せしている期間限定の制度なのかは、募集要項の文言だけでは見分けがつきません。条件はいずれも各社の賃金規程で決まります。どちらなのか、期間があるなら終わったあとに何が残るのかまで確認しておくと、入社後のギャップを避けられます。

参考:国土交通省「タクシー運転者に係る賃金規制の概要」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法等の一部を改正する法律の附帯決議を踏まえた累進歩合制度の廃止に係る指導等の徹底について」
参考:厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」

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勤務形態と労働時間 隔日勤務が年収を左右する

同じ会社で同じ歩合率でも、どの勤務形態を選ぶかで年収は変わります。そして勤務形態には、法令による上限が定められています。

  • 隔日勤務は1回の乗務が長く、売上を積み上げやすい
  • 日勤は生活リズムを保ちやすいが、1回あたりの売上は小さくなる
  • 拘束時間の上限は改善基準告示で決まっている

タクシー・ハイヤー運転者には、2024年4月1日から改正された改善基準告示が適用されています。 拘束時間と休息期間の上限は勤務形態ごとに次のとおりです。

項目日勤勤務隔日勤務
1か月の拘束時間288時間以内262時間以内(労使協定により年6か月まで270時間)
1回の拘束時間1日13時間以内、延長時は最大15時間(14時間超は週3回までが目安)2暦日22時間以内、かつ2回の隔日勤務を平均し1回21時間以内
休息期間継続11時間与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らない継続24時間与えるよう努めることを基本とし、22時間を下回らない

休息期間の11時間・24時間は努力義務で、下限として守るべき線が9時間・22時間です。なお厚生労働省は、ハイヤー運転者についてはこの表の適用外としています。

隔日勤務は、1回の乗務でおよそ2日分を走り、翌日は明け休みになる働き方。乗務1回あたりの営業時間が長いため、朝夕の通勤需要と深夜需要の両方を拾えます。一方の日勤は生活リズムを保ちやすい代わりに、1回の乗務で拾える需要は小さめ。都道府県別の表で労働時間が短い県ほど年収も低く出ていたのは、日勤や短時間勤務の比率が影響している可能性があります。

求人を比べるときは、月収の提示額だけでなく「その金額は月何回の乗務を前提にしているか」を確認してください。 同じ月収でも、前提の乗務回数が違えば1回あたりの負荷はまるで変わります。

参考:厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示」

未経験に好条件が並ぶ理由は、採用する側の事情にある

「未経験歓迎」「二種免許の取得費用は会社負担」「入社後◯か月は月給保証」。タクシーの求人には、他業種ではあまり見ない条件が並びます。正直なところ、私たちも求人票を眺めたときは「なぜここまで出せるのか」が引っかかりました。答えは業界側の採用事情にあります。

  • 運転者数はピーク時から4割以上減った(令和3年度時点)
  • 事業者の約6割は車両10両以下の小規模事業者
  • 参入のハードルは制度面でも下げられてきた

法人タクシーの運転者数は、平成16年度の38万1,943人をピークに、令和3年度には22万1,849人まで減りました。 約42%の減少です。個人タクシー運転者も同じ期間に4万6,360人から2万8,485人へ。事業者側の規模も小さく、国土交通省の資料によれば、令和4年3月末現在で車両保有台数10両以下・従業員数10人以下のタクシー事業者(法人)がいずれも全国の約6割を占めます。大企業が体力で人材を囲い込む構図ではなく、小規模事業者が一人ずつ採用していく市場です。

制度面でも参入のハードルは下げられてきました。指定地域で行われるタクシー運転者の登録試験から「地理」の科目が廃止されたのは、令和6年2月29日付の国土交通省令第15号によるものです。 現在の試験名は「輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験」で、出題科目はタクシー事業に係る法令、安全および接遇の3分野。第二種運転免許の受験資格も、令和4年5月13日施行の改正道路交通法により、受験資格特例教習を修了すれば19歳以上・普通免許等1年以上で受験できるようになりました。

求職者が受け取っている好条件は、業界が人を集めるために制度と費用の両面から障壁を取り払ってきた結果です。採用側から見れば、免許取得費用の負担も保障給も採用への投資。「なぜこの条件が出せるのか」を面接で聞ける状態にしておくと、入社後の見通しが立ちやすくなります。

参考:国土交通省「タクシー事業の運転者数の推移」
参考:国土交通省 関東運輸局「タクシー事業の概要や事故の状況等について」
参考:公益財団法人東京タクシーセンター「タクシー運転者の登録試験」
参考:e-Gov法令検索「タクシー業務適正化特別措置法施行規則」
参考:警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」

年収を左右する4つの変数と、ライドシェア導入後の前提

歩合給である以上、年収を決めるのは売上です。取材を重ねていると、どの業界でも「稼ぐ人は変数を分解している」と感じますが、この仕事も例外ではありません。

  • 営業する地域を選ぶ
  • 勤務形態を選ぶ
  • 需要が集中する時間帯に乗る
  • 配車アプリの依頼を取りこぼさない

最も金額の差が大きいのは、営業する地域です。 東京都と最下位の県では2.2倍の開きがありました。ただし東京の570万3,500円は月間実労働時間198時間を前提とした数字ですし、資料自身も東京都と地方の賃金額を比べる際には住居費の支出額の差を考慮する必要があると注記しています。移住してまで狙うかどうかは、生活費まで含めて計算するのが現実的でしょう。

次に効くのが勤務形態です。隔日勤務は1回の乗務が長いぶん、深夜割増の時間帯と朝夕の需要を両方拾いやすい形ですが、実際にどちらの需要を取れるかは営業区域や会社の配車方針によって変わります。加えて改善基準告示により、隔日勤務の1か月の拘束時間は262時間以内(日勤は288時間以内)。上限が定まっている以上、勝負どころは時間の長さではなく、その時間内にどれだけ実車できるかです。時間帯の選び方も地域の需要構造次第で、繁華街の深夜需要が強い地域と朝の通院需要が中心の地域では、稼げる時間が違います。

そして近年の変化を象徴するのが配車アプリです。 全国ハイヤー・タクシー連合会の資料は、令和7年に年間推計額が8.7%増えた背景として、令和4年以降の運賃引上げに加えて「アプリ利用率の増加等を背景とした売上の増加」を挙げています。流しで客を探す時間が配車依頼に置き換わるほど、乗務時間あたりの実車率は上がるわけです。勘に頼る部分が減り、データに沿って動ける人が伸びる仕事に変わりつつあります。

いわゆる日本版ライドシェアは、正式には自家用車活用事業といい、道路運送法第78条第3号(公共の福祉のためやむを得ない場合)に基づく制度として創設されました。国土交通省はタクシー配車アプリのデータ等に基づいて営業区域ごとの「タクシーの不足車両数」を算出・公表しており、令和6年3月13日の第1回公表では特別区・武三交通圏、京浜交通圏、名古屋交通圏、京都市域交通圏が対象でした。需要が供給を上回る時間帯を埋める仕組みであるため、影響の出方は地域と時間帯で変わります。

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参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」
参考:厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト タクシー・ハイヤー運転者の改善基準告示」
参考:国土交通省「自家用車活用事業に係る営業区域ごとのタクシーの不足車両数を公表します」

タクシー運転手の年収に関するよくある質問

タクシー運転手で年収1000万円は可能ですか?

公的統計上、高所得層が一定程度存在することは確認できます。 令和7年賃金構造基本統計調査によるタクシー運転者の分析では、推定年収900万円以上層の割合が145職種中49位に位置し、資料は「高所得層の存在が一定程度確認される」と記しています。一方で下位10%の層は134位と最下位に近い水準。上にも下にも幅が広いのがこの職種の分布であり、平均年収450万8,200円という数字だけで到達可能性は判断できません。狙うのであれば、営業区域・勤務形態・売上のつくり方をすべて条件のよい側に揃える必要があります。

タクシー運転手の手取りはいくらくらいですか?

額面から健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、所得税、住民税を差し引いた金額が手取りになります。 控除の割合は扶養家族の有無、加入する健康保険の保険者、居住自治体などで変わるため、額面に対して一律の比率を当てはめることはできません。全国平均の年間推計額450万8,200円も、そのまま手元に残る金額ではないという前提で見ておく必要があります。実額を知りたいなら、応募先が提示する月収例をもとに、社会保険料と税がどう引かれるかを給与明細の控除欄で確認するのが確実。歩合給は月ごとの額面が動きやすいため、単月ではなく年間で均した数字で見ておくほうが実態に近くなります。

地理試験に合格しないとタクシー運転手になれませんか?

登録試験の「地理」科目は廃止されています。 令和6年2月29日付の国土交通省令第15号「タクシー業務適正化特別措置法施行規則の一部を改正する省令」により、指定地域の登録試験から地理の科目がなくなりました。現在の試験名は「輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験」で、出題科目はタクシー事業に係る法令、安全および接遇。東京タクシーセンターの場合は45問が出題され、36問以上の正解(正答率80%)が合格基準です。

ただし、地理を問われる場面が完全になくなったわけではありません。大阪タクシーセンターは同じ改正にあわせて、地理の講習で新たに「効果測定」を実施し、これに合格することが必要になると案内しています。登録試験の科目としての地理と、講習内の効果測定は別物なので、受ける地域のタクシーセンターの案内を確認してください。

参考:公益財団法人東京タクシーセンター「タクシー運転者の登録試験」
参考:公益財団法人大阪タクシーセンター「『地理』科目の試験廃止に伴う研修等の変更について」

二種免許は何歳から取れますか?

原則は21歳以上、かつ普通免許等を受けていた期間が通算3年以上です。 ただし令和4年5月13日施行の改正道路交通法により、受験資格特例教習を修了すれば19歳以上・普通免許等1年以上で受験できるようになりました。特例で取得した場合は本来の年齢要件である21歳に達するまで若年運転者期間に指定され、その期間内に違反行為の合計点数が3点以上(1回の違反で3点となった場合を除く)になると、9時間の若年運転者講習の受講が義務づけられます。取得費用を会社が負担する求人は多く見られますが、負担の条件は会社ごとに異なるため、在籍年数の縛りや退職時の取り扱いまで書面で確認しておくことをおすすめします。

参考:警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて」

まとめ

タクシー運転手の全国平均年収は450万8,200円で、全産業労働者との差は94万7,400円。ただしその差の8割以上は賞与によるもので、月々の給与の差は月1万1,300円にとどまります。年齢別に見れば20代前半は全産業を121万9,900円上回り、35〜39歳で逆転。経験年数別では、0年の層が145職種中44位なのに対し、15年以上の層は139位です。地域差はさらに大きく、東京都と最下位の県で約2.2倍。これらの多くは、年功で積み上がらず売上で決まる歩合給という制度から生まれている形です。

編集部として数字を並べてみて、この職種ほど「平均年収」という言葉が実態を映さない仕事も珍しいと感じました。資料が自ら「平均値のみをもって賃金水準を評価することは適当ではない」と書いているのですから、読む側も平均の一点ではなく、自分が入る地域・年代・勤務形態に近い数字を探しにいくのが正解でしょう。求人を見るときは、月収の提示額に加えて、足切りの金額と歩合率、保障給の期間と期間後の条件、想定している月の乗務回数の4点を確認してみてください。

歩合給のように「制度ではなく個人の動き方で年収が決まる」職種は、他の業界にもあります。何で評価され、どう報酬が決まっているのか。熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューでは経営者本人がその設計を語っているので、業界を横断して見比べると自分の基準ができます。

相場の輪郭がつかめたら、次は自分の経歴でどんな条件が提示されるかを確かめる番です。

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編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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