裁量労働制とは?残業代の扱いと対象業務|専門業務型・企画業務型の違い

裁量労働制とは、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ労使で決めた時間を働いたものとみなす制度です。対象は法令で決められた業務に限られ、専門業務型と企画業務型の2種類があります。

ただ、「裁量労働制だと残業代が出ない」という言い方は正確ではありません。みなし時間のうち法定労働時間を超える部分や、深夜・休日の労働には割増賃金が支払われます。

この記事では、2つの型の違いと残業代の扱い、2024年4月の改正点を確かめたうえで、求人票で見ておきたい点を整理します。

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目次

裁量労働制とは「実際の時間にかかわらず、決めた時間働いたとみなす」制度

裁量労働制は、労働時間の数え方そのものを変える制度です。まず押さえたいのは次の3点。

  • 何時間働いても、労使で決めた「みなし労働時間」で労働時間を計算する
  • 仕事の進め方と、始業・終業の時刻を含む時間配分は本人が決める
  • 休憩、休日、深夜の割増賃金、年次有給休暇の決まりは通常どおり適用される

通常の働き方では、タイムカードなどで記録した実際の労働時間をもとに給与や残業代を計算します。裁量労働制では、たとえばみなし労働時間を1日8時間と決めた職場なら、6時間で仕事を終えた日も、10時間かかった日も、8時間働いたものとして扱われるのです。働いた時間ではなく、前もって決めた時間で労働時間を数えるのが、裁量労働制の中心にある考え方です。

ふだんの会話で使う「裁量がある」と、法律上の裁量労働制は別物。取材で「裁量の大きい会社です」と聞いたとき、私たちもそれが制度の話なのか、仕事の任され方の話なのかを確かめるようにしています。法律でいう裁量労働制は、労働基準法の第38条の3(専門業務型)と第38条の4(企画業務型)で、対象も手続きも細かく決められた仕組みだからです。専門業務型の条文は次のとおりです。

“
使用者が、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、労働者を第一号に掲げる業務に就かせたときは、当該労働者は、厚生労働省令で定めるところにより、第二号に掲げる時間労働したものとみなす。 一 業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この条において「対象業務」という。) 二 対象業務に従事する労働者の労働時間として算定される時間 三 対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。
労働基準法(昭和22年法律第49号)
第38条の3第1項(抜粋)
条文を見る

「書面による協定」は、会社と、社員の過半数でつくる労働組合(ない場合は社員の過半数を代表する人)が書面で結ぶ取り決めのこと。「みなす」は、実際の時間がどうであれ、その時間働いたものとして扱うという意味です。第3号の「時間配分の決定等に関し…具体的な指示をしない」には、何時に働き始めて何時に終えるかも含まれます。厚生労働省の「専門業務型裁量労働制の解説」は、始業と終業の時刻のどちらか一方でも会社から指示される業務は、対象業務に当たらないとしています。毎朝の出社時刻を会社に決められている働き方は、制度の前提から外れているということです。

参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説」

フレックスタイム制や高度プロフェッショナル制度との違い

時間の使い方を本人に任せる制度は、ほかにもあります。フレックスタイム制は、始業と終業の時刻を本人が決められる点は似ていますが、労働時間は実際に働いた時間で数えます。高度プロフェッショナル制度は、年収1,075万円以上などの要件を満たす一部の専門職について、労働時間、休憩、休日、深夜の割増賃金の規定そのものを適用しない制度。深夜や休日の割増が残る裁量労働制とは、扱いがはっきり違います。年収1,075万円の水準感は、年収1000万円は30代の何%?年齢・男女別の割合で確かめられます。

参考:厚生労働省「高度プロフェッショナル制度 届出にあたって」

専門業務型と企画業務型の違い|対象業務・対象者・決め方

2つの型は、対象になる業務と、制度を決める手続きが違います。

  • 専門業務型は、省令と告示で決められた20業務だけが対象
  • 企画業務型は、事業の運営にかかわる企画・立案・調査・分析の業務が対象で、職務経験も求められる
  • どちらの型でも、労使の取り決めと本人の同意がなければ適用できない
  • 導入している企業は、専門業務型が2.1%、企画業務型が1.0%
項目専門業務型企画業務型
根拠の条文労働基準法第38条の3労働基準法第38条の4
対象業務省令・告示で決められた20業務事業の運営に関する企画・立案・調査・分析の業務
対象になる人対象業務に就く人のうち、労使で協議して決めた範囲対象業務を適切に行う知識・経験のある人。職務経験のない新卒は対象外
制度の決め方過半数労働組合または過半数代表者との労使協定労使委員会で、委員の5分の4以上の多数による決議
本人の同意2024年4月から必要以前から必要
労働基準監督署への手続き協定を届け出る決議を届け出て、その後も定期的に報告する
導入企業の割合(令和7年調査)2.1%1.0%

手続きは企画業務型のほうが重く、委員の半数を労働者側が指名する労使委員会で決議して届け出たあとも、初回は6か月以内、その後は1年以内ごとに実施状況を報告しなければなりません。

専門業務型の対象は20業務に限られる

専門業務型の対象業務は、労働基準法施行規則と厚生労働大臣の告示で20に限られています。2024年4月に銀行・証券会社のM&Aアドバイザーの業務が加わり、分野ごとに整理すると次のとおりです。

分野対象業務
研究新商品・新技術の研究開発や人文科学・自然科学の研究/大学での教授研究(主に研究に従事するもの)
IT・ゲーム情報処理システムの分析・設計/システムコンサルタント/ゲーム用ソフトウェアの創作
メディア・デザイン新聞・出版の記事や放送番組の取材・編集/放送番組・映画などのプロデューサー・ディレクター/衣服・室内装飾・工業製品・広告などのデザインの考案/コピーライター/インテリアコーディネーター
金融証券アナリスト/金融工学などを使った金融商品の開発/銀行・証券会社のM&Aアドバイザー
士業公認会計士/弁護士/建築士/不動産鑑定士/弁理士/税理士/中小企業診断士

同じ部署で同じ肩書きでも、仕事の中身によっては対象から外れます。厚生労働省の解説は、情報処理システムの業務でもプログラムを設計・作成するプログラマーは含まれないとし、研究開発の助手や、チーフの管理のもとで時間配分が決められているメンバーも対象外としています。対象業務とは別の業務が、短時間でも予定として混ざる場合も適用できません。

追加されたM&Aアドバイザーの業務は、銀行と、第一種金融商品取引業を営む証券会社に限られ、信用金庫などは含まれません。M&Aに必要な調査・分析と、それに基づく考案・助言の両方を担うことが条件で、どちらか一方だけなら対象外とされています。M&A仲介会社やFA、投資銀行の違いは、M&A業界とは?年収・給料・仕事内容を解説で整理しています。

参考:厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説」

企画業務型は「事業の運営にかかわる企画・立案・調査・分析」が対象

企画業務型は、業種や職種の名前ではなく、業務の中身で対象が決まります。厚生労働省の解説は、次の4つをすべて満たす業務だけが対象になり得るとし、ホワイトカラーの業務がすべて当てはまるわけではないと念を押しています。

  • 事業の運営に関する業務であること
  • 企画、立案、調査、分析を組み合わせて行う業務であること
  • 業務の性質に照らして、進め方を労働者の裁量に委ねる必要があると客観的に判断できること
  • 進め方や時間配分について、会社が具体的な指示をしない業務であること

解説に挙がる例でいえば、経営企画の部署で経営環境を調べて経営計画をつくる業務や、人事の部署で人事制度の問題点を分析して新しい制度をつくる業務は対象になり得ます。反対に、会議の庶務、給与計算や採用・研修の実施、予算・決算の計算、個別の営業活動は対象外。「企画部」や「調査課」という部署の名前だけで、対象かどうかが決まるわけではないのです。

対象になる人にも条件があります。第38条の4第1項第2号が求めるのは「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者」で、厚生労働省の解説は、大学を卒業したばかりで職務経験がまったくない人は対象になり得ないとしています。少なくとも3〜5年程度の職務経験を経て、はじめて対象者に当たるかどうかの判断の対象になる、という位置づけです。

参考:厚生労働省「企画業務型裁量労働制の解説」

どちらの型でも欠かせない5つの条件

型による違いがある一方で、2024年4月の改正のあと、どちらの型でも欠かせない条件は5つあります。法令で決められた対象業務に就いていること、労使協定か労使委員会の決議でみなし労働時間などを定めて届け出ていること、本人の同意を得ていること、同意を撤回する手続きが決まっていること、そして仕事の進め方と時間配分を会社が具体的に指示しないこと。健康・福祉確保措置や苦情処理の措置も、協定や決議で定めておく必要があります。このうち1つでも欠けた状態で「裁量労働制だから」と言われても、ルールに沿った運用とは言えません。

裁量労働制で、専門業務型・企画業務型に共通して欠かせない5つの条件。法令で決められた対象業務(専門業務型は20業務)に就いていること、労使協定か労使委員会の決議でみなし労働時間などを定めて労働基準監督署に届け出ていること、本人の同意を得て同意しなかった人を不利益に扱わないこと、同意を撤回する手続きが決まっていること、仕事の進め方と始業・終業の時刻を含む時間配分を会社が具体的に指示しないこと。

導入している企業は専門業務型2.1%、企画業務型1.0%

厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、みなし労働時間制を導入している企業は15.8%。その多くは外回りの営業などに使われる事業場外みなし労働時間制(13.8%)で、専門業務型裁量労働制は2.1%、企画業務型裁量労働制は1.0%でした。調査の対象は常用労働者30人以上の民営企業で、2025年1月1日現在の状況です。企業の規模が大きいほど割合は高く、1,000人以上の企業では専門業務型が8.7%、企画業務型が5.0%、30〜99人の企業では1.4%と0.7%です。

働く人の側から見ると、期間の定めなく雇われている労働者(パートタイムを除く)のうち、専門業務型が適用されているのは1.1%、企画業務型は0.3%。2つを足しても2%に届かず、裁量労働制で働く人はごく一部です。

参考:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査の概況」

2024年4月の改正で変わったこと|本人の同意と撤回の手続き

裁量労働制のルールは、2024年4月1日に施行された省令と告示の改正で大きく変わりました。働く側から見て押さえたい変更は次の4つです。

  • 専門業務型でも、適用には本人の同意が必要になった
  • どちらの型でも、同意を撤回する手続きを決めておくことになった
  • 専門業務型の対象に、銀行・証券会社のM&Aアドバイザーの業務が加わった
  • 健康・福祉確保措置の選択肢が整理され、企画業務型では労使委員会の運営も見直された

改正の中心にあるのは、本人の意思を確かめる手続きです。企画業務型では、本人の同意はもともと法律の要件でした。第38条の4は、労使委員会が決議しなければならない事項の一つとして、次の一文を置いています。

“
六 使用者は、この項の規定により第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者を対象業務に就かせたときは第三号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
労働基準法(昭和22年法律第49号)
第38条の4第1項第6号
条文を見る

「第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者」は企画業務型の対象になる人、「第三号に掲げる時間」はみなし労働時間のこと。会社は同意を得なければならず、同意しなかった人を解雇や減給、降格などで不利益に扱ってはなりません。どちらも「努めなければならない」の努力義務ではなく、守らなければならない義務です。2024年4月からは、専門業務型でも同じ内容を労使協定に定めることが労働基準法施行規則で義務になりました。あわせて、どちらの型でも同意を撤回する手続きと撤回の記録の保存が協定・決議に定める事項に加わり、専門業務型では同意の記録の保存も新たに求められています。

改正前から制度を続けていた会社も例外ではなく、新しい内容で協定や決議を結び直し、2024年3月末までに労働基準監督署へ届け出る必要がありました。企画業務型では、賃金・評価制度を変えるときの労使委員会への説明や、6か月以内ごとの委員会の開催も定められています。

参考:厚生労働省「裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」

同意は一人ひとりに、協定の期間ごとに求められる

厚生労働省の解説によると、同意は労働者ごとに、しかも協定や決議の有効期間ごとに得なければなりません。協定は自動更新できないため、結び直すたびに改めて同意を求められることになります。就業規則に「裁量労働制を適用する」と書いてあるだけの包括的な同意は、個別の同意に当たりません。

同意の前には、みなし労働時間を含む制度の概要、同意した場合の賃金・評価制度、同意しなかった場合の配置と処遇を、会社が明示して説明するのが適当とされています。説明は書面などで示し、同意も口頭ではなく書面などで確実に取るのが適切、というのが解説の考え方です。誤った説明を受けたまま同意した場合などは、自由な意思による同意と認められず、労働時間のみなしの効果が生じないことがあります。

同意は、あとから撤回できる

一度同意しても、働き始めてから撤回できます。厚生労働省のQ&Aは、協定や決議で「撤回は認めない」と定めることはできないとしており、撤回の申出先や方法を明らかにしておく必要があります。撤回を理由に解雇や降格、賃金の減額といった不利益に扱うことも禁止。

気をつけたいのは、撤回したあとの給与です。裁量労働制の人だけに支給される手当などが、あらかじめ労働契約や就業規則に定められている場合、撤回でその手当がなくなっても、内容が明らかに合理性を欠かない限り不利益な取扱いには当たりません。撤回の申出に「適用解除の何日前まで」といった期限を設けることは認められていますが、必要以上に長い期限は不適当とされています。同意する前に受ける説明の中で、撤回の手続きと撤回後の等級・給与を確かめておくと判断しやすくなるでしょう。

参考:厚生労働省「令和5年改正労働基準法施行規則等に係る裁量労働制に関するQ&A(追補版)」

健康を守る措置と、労働時間の把握

時間配分を任せる制度だからこそ、会社には健康を守る仕組みが求められます。協定や決議には健康・福祉確保措置を定めて実施しなければならず、改正後は、勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、一定時間を超えたときの制度の適用解除、医師による面接指導、代償休日の付与といった選択肢から選ぶのが適切とされました。全員を対象とする措置と一人ひとりに応じた措置から1つずつ以上、とくに適用解除の措置を実施することが望ましいとされますが、この組み合わせ自体は義務ではありません。

一方、労働時間の状況の把握は労働安全衛生法第66条の8の3にもとづく義務で、裁量労働制の人も例外ではありません。方法はタイムカードやパソコンの使用時間の記録といった客観的なものが原則。本人の自己申告だけに頼る把握は、やむを得ない場合を除いて認められていません。時間配分を任せていても、会社は安全配慮義務を免れないと解説は明記しています。

参考:厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」

裁量労働制でも残業代は出る|時間外・深夜・休日の割増の扱い

「裁量労働制だと残業代が出ない」という言い方は、正確ではありません。割増賃金との関係は次の3点にまとまります。

  • みなし労働時間が法定労働時間を超えるなら、その部分が毎日の時間外労働になる
  • 深夜と法定休日の労働は、実際に働いた時間で割増賃金を計算する
  • みなし時間より長く働いた日の差は、深夜や休日でなければ割増賃金に反映されない

厚生労働省の解説は、法定労働時間を超えてみなし労働時間を設定する場合は36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)が必要で、みなし時間のうち法定労働時間を超える部分には割増賃金の支払いが必要だとしています。休日と深夜の労働は、みなし時間ではなく実際に働いた時間に応じて割増賃金を払う決まりです。

割増の種類対象になる労働割増率裁量労働制での計算
時間外1日8時間・1週40時間の法定労働時間を超える労働25%以上(1か月60時間を超えた部分は50%以上)みなし労働時間のうち、法定労働時間を超える部分
休日法定休日の労働35%以上実際に働いた時間
深夜午後10時から午前5時までの労働25%以上実際に働いた時間

割増率は、労働基準法第37条と、時間外・休日の率を定める政令によるものです。たとえばみなし労働時間を1日9時間と決めた職場なら、法定労働時間の8時間を超える1時間が毎日の時間外労働になり、月に20日働けば20時間分の割増賃金が発生します。反対に、みなし時間を8時間以内にしている職場では、平日の労働について時間外の割増は基本的に生じません。

裁量労働制の弱点が出るのは、みなし時間より長く働いた日です。9時間とみなされる職場で毎日11時間働いても、時間外として計算されるのは1時間分のまま。差の2時間は、深夜や休日に重ならない限り割増賃金に反映されません。だからこそ、みなし時間が実際の働き方に見合っているか、手当や基本給で「相応の処遇」が確保されているかが問われます。厚生労働省は、所定労働時間をそのままみなし時間にする場合でも、特別の手当や基本給の引上げなどで処遇を確保する必要があるとしています。

なお、妊娠中や産後1年以内の人が請求した場合、会社は実際の労働時間が1日8時間・1週40時間を超えないようにしなければなりません。

参考:e-Gov法令検索「労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令」
参考:厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説」

みなしが認められない運用もある

裁量労働制と言われていても、実態しだいでは労働時間のみなしが認められません。厚生労働省の解説が挙げているのは、たとえば次のような状態です。

  • 対象業務に当たらない仕事をしている(プログラマー、研究の助手、個別の営業活動など)
  • 始業か終業の時刻を会社から指示されている
  • 業務量が多すぎる、期限が短すぎるなどで、時間配分の裁量が事実上ない
  • 対象業務とは別の業務が、短時間でも予定として混ざっている
  • 誤った説明を受けたまま同意するなど、同意が自由な意思によるものと認められない

時間配分の裁量が失われたと認められる場合には「労働時間のみなしの効果は生じない」と、解説は明記しています。どの状態に当たるかは個別の事情で判断されるため、一人で結論を出すより、記録をそろえて公的な窓口に相談するのが確実です。日々の始業・終業の時刻と、受けた指示の内容を手元に残しておきましょう。

参考:厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説」
参考:厚生労働省「企画業務型裁量労働制の解説」

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裁量労働制のメリット・デメリット|働く人の実感と労働時間

時間を自分で組み立てられる自由と、長く働いても給与が増えにくい構造は、表裏の関係にあります。公的な調査から読み取れるのは次の3点です。

  • 適用されている人のうち、「満足」「やや満足」は合わせて8割を超える
  • 1日の平均労働時間は、同じような業務の非適用者より21分長い
  • よい面が生きるかは、業務量・処遇・同意の扱いで決まる

厚生労働省が2019年に行い、2021年に結果を公表した「裁量労働制実態調査」は、裁量労働制が適用されている労働者と、制度の対象になり得る業務に就きながら適用されていない労働者を比べています。1日の平均労働時間は、適用労働者が9時間0分、非適用労働者が8時間39分。1週間では45時間18分と43時間2分で、2時間16分の差でした。一方、制度の適用に「満足している」は41.8%、「やや満足している」は38.6%で、合わせて80.4%にのぼります。

ただし、2024年の改正より前の調査で、平均どうしを比べた結果です。業務の性質など、ほかの要因も重なっている可能性があり、裁量労働制だから労働時間が長くなるとまでは言えません。

観点よい面気をつけたい面
時間の使い方始業・終業の時刻を含めて自分で決められる業務量が多いと、任されているのは形だけになる
給与手当や基本給の引上げなど、相応の処遇が求められるみなし時間を超えて働いた分は、時間外として計算されない
健康健康・福祉確保措置と労働時間の把握が会社に義務づけられている働く時間の区切りを自分でつける必要がある
選ぶ自由同意しない選択も、あとからの撤回もできる撤回すると、適用者向けの手当がなくなることがある

よい面が生きるかどうかは、業務量と期限、みなし時間に見合った処遇、同意しない自由が守られているかで決まります。同じ「裁量労働制」という名前でも、中身は会社ごとに大きく違うのです。

参考:厚生労働省「裁量労働制実態調査 結果の概況」

求人票で「裁量労働制」とあったら確かめたい7つのこと

マイナビやリクナビなどの求人サイトでも、転職エージェントから紹介される求人でも、裁量労働制を採る会社は募集の段階でその旨を示す必要があります。厚生労働省の求職者向けリーフレットが示す記載例は「企画業務型裁量労働制により、●時間働いたものとみなされます」。ただ、この一文だけでは働き方の実態までは分かりません。確かめたいことは、次の3つの分野にまたがります。

  • 型と対象業務、みなし労働時間、始業・終業の時刻の決め方
  • 手当と基本給、休日・深夜に働いたときの割増賃金
  • 労働時間の記録と健康を守る措置、同意と撤回の扱い

7つのうち多くは、まず書類で手がかりをつかめるもの。求人票には時間外労働と賃金の欄があり、内定後に受け取る労働条件通知書にも、厚生労働省のモデル様式では「裁量労働制」の欄と、休日・深夜の割増賃金率の欄が設けられています。書類を読んで分からない点だけを、面接や内定後の面談で確かめれば足ります。

確認することまず見るところ見るポイント
型と対象業務求人票の仕事内容と時間外労働の欄法令で決められた対象業務の仕事か
みなし労働時間求人票の時間外労働の欄法定労働時間を超える分の割増が毎日つくか
手当と基本給求人票と労働条件通知書の賃金の欄相応の処遇が用意されているか
始業・終業の時刻労働条件通知書の「裁量労働制」の欄時刻の決定が本人に委ねられているか
休日・深夜の割増労働条件通知書の割増賃金率の欄休日や深夜の割増率が書かれているか
労働時間の把握と健康確保面接や面談での説明客観的な記録と健康・福祉確保措置があるか
同意と撤回同意を求められるときの説明の書面撤回の手続きと、撤回後の条件が決まっているか

求人広告に載せきれない労働条件も、原則として面接など最初に接する時点までにすべて示すことになっています。それでも分からなかった点は、「労働時間はどのように記録していますか」のように仕組みを尋ねる形で聞けば十分です。転職エージェント経由で応募しているなら、担当者に確認を頼む方法もあります。求人票、面接での説明、労働条件通知書、同意の書面の4つで、みなし時間や手当の説明が食い違っていないかを見比べてください。

参考:厚生労働省「求職者の皆さま 労働条件明示のルールが変わります!」
参考:厚生労働省「モデル労働条件通知書」

おかしいと感じたら、労働基準監督署や総合労働相談コーナーへ

入社してから「出社時刻を決められている」「同意した覚えがない」「深夜の割増が出ていない」と感じたときは、公的な窓口を無料で使えます。

相談先受け付けていること使い方
総合労働相談コーナー解雇、賃金の引下げ、募集・採用など、あらゆる分野の労働問題全国の労働局や労働基準監督署内など378か所。予約不要・無料で、学生や就活生の相談も受け付ける
労働基準監督署労働基準法などに違反する疑いのある事案違反の事実を申告でき、申告を理由とする不利益な取扱いは労働基準法第104条で禁じられている
労働条件相談ほっとライン労働時間や割増賃金など、労働基準関係の法令に関する相談平日17〜22時、土日祝9〜21時の電話相談。無料・匿名で使えるが、会社への指導は行わない

総合労働相談コーナーは、法律違反の疑いがある場合、行政指導などの権限を持つ労働基準監督署などに取り次いでくれます。どこに相談すべきか迷ったら、最初の窓口として覚えておくとよいでしょう。相談の前に、始業・終業の時刻、受けた指示、給与明細の割増賃金の欄をまとめておくと、状況が伝わりやすくなります。

参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
参考:厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」
参考:厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」

裁量労働制に関するよくある質問

裁量労働制とみなし残業(固定残業代)は何が違いますか?

裁量労働制は労働時間の数え方を変える制度で、固定残業代は残業代の払い方の一つです。 固定残業代、いわゆるみなし残業は、一定時間分の時間外手当を、実際の残業の有無にかかわらず定額で支払う仕組み。労働時間は実際の時間で数えるため、決められた時間を超えた分の割増賃金は追加で支払われます。厚生労働省の求職者向けリーフレットの記載例では、裁量労働制は時間外労働の欄、固定残業代は賃金の欄に書かれるので、求人票では両方を見てください。

裁量労働制でも出社時間を決められることはありますか?

始業や終業の時刻を会社が指示する業務は、裁量労働制の対象になりません。 厚生労働省の解説は、どちらか一方の時刻でも指示される業務は対象業務に当たらないとしています。就業規則に基本の始業・終業時刻が書かれていることはあっても、実際に何時に働き始め、何時に終えるかは本人が決めるのが前提。一方で企画業務型の解説は、目標設定や成果評価に必要な会議への出席など、時間配分がある程度しばられる場面も業務の一部として想定しています。毎日の出社時刻まで決められているなら、運用を確かめる余地があるでしょう。

裁量労働制でも有給休暇や休憩はありますか?

あります。 裁量労働制で変わるのは労働時間の数え方だけで、休憩、休日、深夜の割増賃金、年次有給休暇の規定はそのまま適用されると、厚生労働省は説明しています。休日や深夜に働いた分も、実際の時間に応じた割増賃金の対象です。

新卒でも裁量労働制で働くことはありますか?

企画業務型は、大学を卒業したばかりで職務経験のない人は対象になりません。 厚生労働省の解説は、少なくとも3〜5年程度の職務経験を経て、はじめて対象者に当たるかどうかの判断の対象になるとしています。専門業務型の解説には年数の目安はなく、対象業務を適切に行う知識や経験があるかを労使で協議して範囲を決める形。どちらの型でも本人の同意が必要で、同意しなかったことを理由に不利益に扱うことは禁じられています。

同意を撤回したら給料は下がりますか?

撤回を理由にした減給や降格は禁じられていますが、裁量労働制の人だけに出る手当がなくなることはあります。 厚生労働省のQ&Aは、適用される人だけの手当などがあらかじめ労働契約や就業規則で定められていれば、撤回後にその定めどおりの条件になっても、内容が明らかに合理性を欠かない限り不利益な取扱いには当たらないとしています。同意する前に「撤回したらどの等級・給与になるか」を確かめておくと安心です。

まとめ

裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、労使で決めたみなし労働時間で労働時間を数える制度です。対象は法令で決められた業務に限られ、20業務を対象とする専門業務型と、事業の運営にかかわる企画・立案・調査・分析を対象とする企画業務型があります。令和7年就労条件総合調査で導入企業は専門業務型2.1%、企画業務型1.0%と、働き方としてはまだ少数派です。

残業代は、みなし時間のうち法定労働時間を超える部分と、深夜・法定休日の労働に割増賃金が支払われます。2024年4月からは専門業務型でも本人の同意が欠かせなくなり、撤回の手続きはどちらの型でも定めておくことになりました。同意しないことや撤回を理由に、不利益に扱うことは禁じられています。求人票や労働条件通知書、面接での説明を通して、みなし時間、手当、始業・終業の時刻の決め方、撤回後の処遇まで確かめてください。

編集部としては、「裁量労働制かどうか」という一点より、「何をどこまで任され、それにどう報いる会社か」を聞くほうが、入社後の働き方を思い描きやすいと考えています。経営者が仕事の任せ方や評価の考え方を自分の言葉で語った経営者インタビューも、会社を見比べる材料になるはずです。

みなし時間や手当の条件まで含めて何社か見比べたいときは、転職エージェントに希望を伝えて求人を集めてもらうのが近道です。

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編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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監修者

西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

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新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
年間500記事以上の監修を行っております。採用側の視点でサービスのファクトチェックや記事内容を精査しています。

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執筆者情報

熱狂ベンチャーナビ編集部はインターンシップ・新卒就活・転職経験者で編成されております。20代~30代の幅広い年齢・職種やキャリアを持つメンバーが在籍しているため、就活・転職の苦しかった経験や成功体験を元に求職者に役立つ情報を発信いたします。

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