若手社長はどれくらいいる?20代で起業する人の割合と始める前の現実

自分で事業を起こして営んでいる29歳以下は、仕事を持つ同世代のおよそ1%です。
しかもその9割近くは、会社をつくって社長になった人ではなく、個人で事業を営む自営業主。メディアでよく見かける「若手社長」の姿と、統計に表れる姿のあいだには、少しずれがあるのです。
この記事では、若手社長の人数と割合、若くして始める人が向き合うお金と働き方の現実、20代で起業と向き合った経営者の言葉、使える公的支援まで順に整理します。
社長を目指すかどうかを決める前に、いまの自分がどんな仕事やポジションを選べるのかを知っておくと、比べる材料が増えるでしょう。自分の市場価値は、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
若手社長はどれくらいいる?統計で見る20代・30代前半の起業者
若手社長の数を確かめる手がかりは、総務省「令和4年就業構造基本調査」の「起業者」です。起業者とは、自営業主と会社などの役員のうち、今の事業を自ら起こした人のこと。数字から見えるのは次の3点です。
- 29歳以下で事業を起こして営んでいる人は、働く同世代の約1%
- 29歳以下の起業者の86.2%は自営業主で、会社などの役員は少数
- 起業者の平均年齢は57〜59歳台で、若手は少数派
働く29歳以下のうち、起業者は約1%
同調査によると、2022年に仕事を持っていた15〜29歳は1,085万2,500人。このうち起業者は11万2,600人で、割合にすると約1.0%です。30〜34歳では2.6%、35〜39歳では4.8%と、30代後半までは年齢が上がるにつれて割合も上がっていきます。働く人全体で見た起業者の割合は6.9%でした。
| 年齢 | 起業者 | 働く人に占める割合 | 起業者のうち会社などの役員 |
|---|---|---|---|
| 15〜29歳 | 11万2,600人 | 約1.0% | 13.8% |
| 30〜34歳 | 14万6,800人 | 2.6% | 15.7% |
| 35〜39歳 | 29万4,500人 | 4.8% | 23.5% |
| 全年齢 | 465万7,600人 | 6.9% | 28.7% |
働く29歳以下のうち、自分で起こした事業を営んでいる人は100人に1人ほど、という計算です。 珍しい存在であることは確かですが、30代へと進むにつれて割合が上がっていく形を見ると、起業は「若いうちにしかできないもの」ではないことも読み取れます。
29歳以下の起業者の多くは、会社の社長ではない
起業者を「自営業主」と「会社などの役員」に分けると、若手の特徴がもう一段はっきりします。29歳以下の起業者11万2,600人のうち、自営業主は9万7,100人で86.2%。会社などの役員として事業を起こした人は1万5,500人にとどまります。全年齢では自営業主の割合が71.3%なので、若い起業者ほど、会社をつくらずに個人で事業を始めている割合が高いのです。


会社をつくり、その代表として事業を動かしている29歳以下は、統計のうえではさらに少数です。個人事業として始め、売上や取引先が育ってから会社にするという順番もあります。「若手社長」という言葉に引っ張られて、最初から会社をつくることを前提にしなくてもよいでしょう。
起業者の平均年齢は57〜59歳台
同じ調査で、自営業主のうち起業者の平均年齢は57.2歳、会社などの役員のうち起業者は59.5歳でした。この数字には何十年も前に起業して今も事業を続けている人が含まれるため、起業したときの年齢とは異なります。それでも、平均年齢で見る限り、起業者の顔ぶれは若手より中高年に寄っています。
なお、「若手社長」が何歳までを指すかに決まった定義は見当たりません。この記事で参照した法令や統計にも区分としては出てこない言葉なので、この記事では20代から30代前半までを目安に扱っています。
参考:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 男女、従業上の地位・雇用形態・起業の有無、年齢別有業者数及び平均年齢」
参考:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」
若くして開業する人の割合は、公庫の調査では1990年代より低い
新しく事業を始めた人に絞ると、どうなるでしょうか。日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」は、1991年度から同じ形で開業者の年齢を集計しています。開業時の年齢が29歳以下だった人の割合を見ると、1991年度は14.5%、1998年度は15.2%で、開業者の7人に1人ほどが29歳以下でした。それが2019年度に4.9%、2020年度に4.8%と2年続けて5%を下回り、直近の2025年度は7.0%です。長い目で見ると、開業者に占める若手の割合は1991年度の半分ほどの水準にあります。


この調査の対象は、公庫が2024年4月から9月にかけて融資した企業のうち、開業後1年以内だった企業です。回答は2,165社。公庫の融資を受けずに始めた人は含まれません。若い起業そのものが減ったと言い切れるデータではなく、「公庫の融資を受けて開業した人の中では、若手の比率が下がってきた」と読むのが正確です。
正直なところ、メディアで「20代社長」が取り上げられる機会の多さと、この数字の小ささには、私たちも少し驚きました。目立つ例が多いぶん、実際よりも身近に感じやすいテーマなのかもしれません。
参考:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
何歳から社長になれるのか|18歳からの会社設立
会社法には、取締役や社長になるための年齢の要件はありません。ただし、親の同意なく自分ひとりで契約や手続きを進められるのは、成年になる18歳からです。
「法律行為」とは、契約を結ぶ、会社の設立手続きをするといった、法律上の効果を生む行為のこと。「法定代理人」は、未成年者の場合は通常、親権者である親を指します。つまり、18歳未満でも事業を始めること自体は禁じられていませんが、契約や設立の手続きには親の同意が要る、ということです。法務省によると、成年年齢は2022年4月1日に20歳から18歳へ引き下げられました。いまは18歳から単独で会社を設立できます。
会社をつくるルートや手続き、費用の目安は「社長になるには?4つのルートと向いている人の特徴」で詳しく整理しています。
参考:e-Gov法令検索「民法」
参考:法務省「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について」
若手社長のメリットとデメリット|年齢より効いてくる条件
若いうちに社長になることには、よく言われる利点と弱点があります。ただ、その多くは年齢そのものより、時間・お金・経験の量の違いから生まれるものです。
- 若さの利点は、やり直せる時間が長いこと
- 弱点になりやすいのは、自己資金と実務経験の薄さ
- 開業直後は、働き方と収入の面でも余裕が小さい
年齢で変わること、準備で変えられること
一般に言われる若手社長の利点と弱点を、準備で補えるかどうかの視点で並べると次のようになります。
| 観点 | 若いうちに始める場合に起きやすいこと | 準備で変えられること |
|---|---|---|
| 時間 | 失敗しても次の挑戦に使える時間が長い | 撤退の基準を先に決めておく |
| 生活の身軽さ | 扶養家族が少なく、収入が不安定な時期を受け止めやすい場合がある | 生活費の何か月分を手元に残すかを決める |
| 自己資金 | 貯蓄期間が短いぶん、手元資金が小さくなりやすい | 公的融資や個人事業からの小さな始め方を検討する |
| 実務経験 | 業界の取引慣行や人脈が少ない | 勤めながら、いまの仕事で経験を積む |
| 信用 | 取引先や金融機関に実績を示しにくい | 事業計画書で数字の根拠を説明できるようにする |
年齢で決まるのは「時間の長さ」くらいで、ほかの項目は準備しだいで差を縮められます。 逆に言えば、若さだけを理由に始めても、資金と経験の薄さはそのまま残るということです。
開業時の資金は、平均で約1,200万円を集めている
「2025年度新規開業実態調査」によると、開業時の資金調達額は平均1,219万円でした。内訳は、金融機関等からの借り入れが平均827万円で67.9%、自己資金が平均279万円で22.9%。両者で全体の9割を占めます。


この数字は全年齢の平均で、この調査の公表資料には年齢別の内訳がありません。ただ、自己資金は働いてきた年数に左右されやすいもの。若いうちに始めるなら、自己資金が小さいぶん、借り入れの比重や事業の規模をどう設計するかが最初の論点になります。
開業直後は、働く時間が長く、収入の逃げ道が少ない
同じ調査では、開業後の働き方と収入の状況も尋ねています。1週間の労働時間が「50時間以上」の人は49.8%。事業からの収入が本人の定期的な収入のすべて、つまり「100%(ほかの収入はない)」という人は53.3%でした。
開業者のおよそ半数が週50時間以上働き、半数あまりは本人の収入をその事業からの収入だけに頼っていることになります。若いうちの起業で「体力がある」ことが利点に挙がるのは、こうした働き方の現実があるからでしょう。 一方で、体力で押し切れる期間には限りがあります。事業が軌道に乗るまでの生活費をどう確保するかは、年齢に関係なく先に考えておきたい点です。


参考:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
20代で起業と向き合った経営者は、何を考えていたのか
統計は全体の傾向を教えてくれますが、一人ひとりが何を考えて踏み出したのかまでは分かりません。取材を重ねていると、若くして起業した人ほど、回り道をした時期や考え込んだ時期の話を率直にしてくれると感じます。ここでは、20代で起業や事業のテーマと向き合った経営者の言葉を3つ紹介します。
足りない知識を補ってから、農業の会社を立ち上げた
合同会社S.FARMSの蛯名洸CEOは、青森県の大学を卒業後、ハウスメーカーの営業職として働き、会社を辞めて半年間の留学を経験しています。帰国後、すぐに農業の会社をつくったわけではありませんでした。
取材時点で28歳の蛯名CEOは、同い年の仲間と3人で会社を立ち上げています。やりたいテーマが決まってからも、足りない知識を先に補ってから踏み出しているのです。 若いうちの起業は、思い立ってすぐに始めることだけを指すわけではありません。
21歳で起業家になると決め、28歳で会社をつくった
9CROSS株式会社の木島康平社長は、21歳のときに起業家として生きると決め、28歳で起業しました。決めた理由を、自分の性格から説明しています。
決めてから会社をつくるまでのあいだに、グリー株式会社でトップセールス兼事業責任者を務めています。決意した年齢と起業した年齢のあいだに、会社員として経験を積む期間がはさまっているのです。
25歳で、残りの働く時間の使い方を考えた
freeks株式会社の篠竹将太朗社長は、20代半ばに自分の将来を考え直す時期があったと語っています。
そこから選んだテーマが、IT技術者不足と地方創生という2つの社会課題でした。採用支援の仕事で見てきたIT業界の状況と、旅先で目にした地方の課題が、そのまま事業の軸になっています。
3人に共通するのは、「若いから始めた」のではなく、自分の性格や経験、残りの時間を考えたうえで決めていることです。ほかの経営者が起業を決めた場面は、経営者インタビューでも読めます。


20代で起業するまでの準備と、使える公的支援
若くして社長になるかどうかは、準備の進め方で現実味が大きく変わります。ここでは、始める前に押さえておきたい3つの点を整理します。
- 個人事業から小さく始める選択肢を比べる
- いまの仕事で、事業に使える経験を積む
- 若手向けの優遇がある公的融資を知っておく
個人事業から始めるか、会社をつくるか
前述のとおり、29歳以下の起業者の86.2%は自営業主です。個人事業は、会社のような設立登記をしなくても始められます。一方の会社は、法務局での設立登記によって成立し、登録免許税などの費用がかかる代わりに、法人として契約を結んだり出資を受け入れたりしやすくなります。
| 観点 | 個人事業から始める | 会社をつくって始める |
|---|---|---|
| 始め方 | 設立登記をせずに始められる | 定款を作成し、法務局に設立登記を申請する |
| 始めるときの費用 | 設立登記の費用はかからない | 登録免許税などの設立費用がかかる |
| 経営者の立場 | 事業主本人 | 代表取締役など会社の役員 |
| 向いているケース | まず小さく試したい | 取引先や出資者との関係で法人格が必要 |
どちらが正しいということはありません。「社長」という肩書きより、事業を試せる形で始められるかどうかを優先して選ぶのが現実的です。 起業家と個人事業主の違いは「起業家とは?意味と経営者・個人事業主との違い」で詳しく扱っています。
いまの仕事で、事業に使える経験を積む
紹介した経営者のうち、木島社長はグリーで営業と事業責任者を、篠竹社長は人材紹介会社で採用コンサルタントを経験してから起業しています。どちらも、会社員時代に見てきた業界の課題がその後の事業につながっていました。
社長になった後の仕事は、方針を決める、お金を回す、人を採って任せる、売上をつくるといった領域に広がります。いまの職場で予算や採用、営業に関われる機会があれば、手を挙げておくだけでも準備になります。社長の仕事の中身は「社長の仕事内容とは?」で確かめられます。
35歳未満は、公庫の創業融資で特別利率の対象になる
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める人や、事業開始後おおむね7年以内の人が対象の融資です。利率は基準利率が原則ですが、「女性の方、35歳未満または55歳以上の方」は、基準より低い特別利率の対象になります。
ただし、利用できるのは適正な事業計画を立て、それを遂行する能力が十分あると認められる人に限られ、創業計画書などで事業計画の内容を確認されます。審査の結果、希望どおりにならないこともあります。若さで優遇されるのは利率であって、審査が甘くなるわけではない点は押さえておきましょう。
参考:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
参考:e-Gov法令検索「会社法」
参考:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 男女、従業上の地位・雇用形態・起業の有無、年齢別有業者数及び平均年齢」
若手社長に関するよくある質問
20代で社長になっている人はどれくらいいますか?
総務省「令和4年就業構造基本調査」では、仕事を持つ15〜29歳のうち、自分で事業を起こして営んでいる起業者は約1.0%でした。 人数では11万2,600人です。このうち会社などの役員は1万5,500人で、残りの86.2%は自営業主。会社をつくって社長になっている20代は、さらに限られます。
参考:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 男女、従業上の地位・雇用形態・起業の有無、年齢別有業者数及び平均年齢」
若手社長は何歳までを指しますか?
決まった定義は見当たりません。 この記事で参照した法令や公的統計に「若手社長」という区分はなく、使う人や媒体によって範囲が変わります。この記事では、20代から30代前半までを目安にしています。公的な制度で年齢が区切られる例としては、日本政策金融公庫の創業融資で「35歳未満」が特別利率の対象になっています。
未成年でも会社をつくって社長になれますか?
なれますが、18歳未満の場合は親など法定代理人の同意が必要です。 民法第4条は成年年齢を18歳と定め、第5条第1項は未成年者が法律行為をするには法定代理人の同意を得なければならないとしています。18歳以上であれば、親の同意なく単独で会社を設立できます。
20代で起業するには、いくらお金が必要ですか?
事業の内容によって大きく変わるため、一律の金額はありません。 参考になるのが日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」で、全年齢の開業者が開業時に集めた資金は平均1,219万円、そのうち自己資金は平均279万円でした。この調査の公表資料に年齢別の数字はないため、自分の事業計画で必要な額を積み上げて考えるのが確実です。
参考:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」
若いうちに起業したほうが有利ですか?
年齢だけで有利・不利は決まりません。 若さの利点はやり直せる時間が長いことで、弱点になりやすいのは自己資金と実務経験の薄さです。紹介した経営者にも、ITベンチャーで2年ほど経験を積んでから農業の会社を立ち上げた人や、21歳で起業家になると決めてから会社員として経験を積み、28歳で起業した人がいます。始める年齢より、始めるまでに何を準備したかのほうが、その後を左右しやすいでしょう。
まとめ
総務省の2022年の調査では、仕事を持つ29歳以下のうち、自分で事業を起こして営んでいる人は約1.0%。その86.2%は自営業主で、会社をつくって社長になっている20代はさらに少数です。公庫の融資を受けて開業した人に占める29歳以下の割合も、1991年度の14.5%に対し、2025年度は7.0%です。
若いうちに始める利点は、やり直せる時間の長さです。一方で、公庫の調査に答えた開業者は平均1,219万円の資金を集め、およそ半数が週50時間以上働き、半数あまりは本人の収入を事業からの収入だけに頼っています。自己資金や経験の薄さは、勤めながらの準備や、35歳未満が対象になる公庫の特別利率などで補える部分もあります。
取材で20代の起業の話を聞くたびに感じるのは、年齢よりも「なぜ始めるのか」を自分の言葉で話せるかどうかの差です。若手社長という肩書きを目標にするより、自分が何を事業にしたいのかを先に確かめてみてください。
社長になる道を選ぶにしても、いまの会社で経験を積む道を選ぶにしても、自分の市場価値と選べるポジションを知っておくと比べやすくなります。

