成果主義とは?給与への反映のしかたと能力主義・年功序列・ジョブ型との違い

成果主義とは、一定期間に上げた仕事の成果や業績を評価し、その結果を給与や昇進・昇格に反映させる人事の考え方です。
「結果がすべて」の厳しい仕組みと思われがちですが、令和4年の国の調査(常用労働者30人以上の企業)で、基本給の決定要素に業績・成果を挙げた企業は4割ほど。多くの会社は複数の要素で基本給を決めています。
この記事では、成果を給与に結びつける仕組みと能力主義・年功序列・ジョブ型との違い、働く側のメリット・デメリットと向き合い方を整理します。
成果がどこまで給与に響くかは、求人票の「昇給年1回」「賞与年2回」といった書き方だけでは見えてきません。評価のされ方が自分に合う会社を見つけたいときは、転職エージェントに無料で相談してみるのも一つの手です。
成果主義とは|仕事の成果を評価して、給与や昇進に反映させる仕組み
成果主義は、どれだけ長く勤めたかや、どんな力を持っているかよりも、「一定の期間に何を成し遂げたか」を処遇の物差しにする考え方です。まず次の3点を押さえておきましょう。
- 法律で決まった制度ではなく、何を成果とし、どこに反映するかは会社ごとに違う
- 成果は評価を通して、基本給・賞与・手当・昇格の4か所に表れる
- 「成果」が個人の結果か、チームや会社の業績まで含むかも、会社や職層で違う
成果主義という言葉は、法律に出てくる制度名ではありません。 厚生労働省が労働条件について解説するQ&Aによれば、労働基準法が定めるのは賃金の支払い方の原則で、決め方の規制はありません。同じQ&Aは基本給の決め方を4つに分け、仕事の成果・業績で決めるものを「業績給」と呼んでいます。成果主義の賃金の中心にあるのは、この考え方です。
成果は基本給・賞与・手当・昇格の4か所に表れる
評価の結果が反映される場所は、代表的には次の4か所です。
| 反映される場所 | 成果が表れる形 | 働く側から見た特徴 |
|---|---|---|
| 基本給 | 評価の結果で昇給の幅が変わり、決め方によっては下がることもある | 昇給した分は翌年以降の月給にも残りやすい |
| 賞与 | 個人やグループ、会社の業績で支給額が変わる | 月給は安定させたまま、年ごとの差がつきやすい |
| 業績手当 | 個人や部門・グループが達成した成果、会社全体の業績に対して支給される | 毎月の賃金の中で金額が増減する |
| 昇格・昇進 | 評価を積み重ねて等級や役職が上がる | 給与の水準そのものが一段変わる |
厚生労働省の就労条件総合調査は、業績手当を、個人や部門・グループが達成した労働の量的な成果と、会社全体として達成した業績に対して支給する賃金と定義しています。求人票に「成果主義」と書かれていたら、4か所のうちどこに反映されるのかを確かめるのが第一歩です。
「成果」の中身は、個人か組織か、短期か長期かで分かれる
何を成果とみなすかも一様ではありません。厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」は、基本給の決定要素に「業績・成果」を挙げた企業に、その主な内容を尋ねています。管理職以外では「短期の個人の業績・成果」が41.6%で最も多く、「長期の個人の業績・成果」33.7%と合わせると、個人の業績・成果が75.3%(編集部計算)を占めました。課・班・プロジェクトチームの業績・成果は短期2.5%・長期2.2%、事業部門や会社の業績・成果は短期4.1%・長期7.1%、その他の内容は5.1%です。
管理職になると顔ぶれが変わります。「長期の個人の業績・成果」が24.4%、「短期の個人の業績・成果」と「長期の事業部門、会社の業績・成果」がともに19.7%。課・班・プロジェクトチームは短期6.5%・長期9.3%、事業部門・会社の短期は10.9%、その他の内容は6.0%でした。いずれも、主な内容が「不明」の企業を分母に含むため、合計は100%になりません。


同じ「成果主義」でも、管理職以外は自分の業績を、管理職は部門や会社の業績も問われやすい、という違いがあるわけです。
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金制度改革:年功序列vs能力評価 長所短所を教えてください。」
参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況」
参考:厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況」
成果主義と能力主義・年功序列・ジョブ型の違い|処遇を決める物差しで比べる
成果主義とよく並べられる3つの考え方は、処遇を決める物差しで見分けられます。要点は次のとおりです。
- 年功序列は「時間」、能力主義は「身につけた力」、成果主義は「期間内の結果」、ジョブ型は「担う仕事」を物差しにする
- 能力主義と成果主義の分かれ目は、いったん上がった給与が下がりうるかどうか
- ジョブ型は職務に就く時点で、成果主義は期間の終わりに給与を決める物差しで、同じ会社の中で組み合わせられる
| 考え方 | 処遇を決める物差し | 対応する基本給の例 | 給与が動く場面 |
|---|---|---|---|
| 年功序列 | 年齢・勤続年数 | 年齢給 | 年齢や勤続年数を重ねると上がる |
| 能力主義 | 身につけた職務遂行能力 | 職能給 | 能力が認められて等級が上がると上がる |
| 成果主義 | 一定期間に上げた成果・業績 | 業績給 | 期ごとの評価の結果で上がり、決め方によっては下がる |
| ジョブ型 | 担当する職務の内容と重さ | 職務給 | 担う職務が変わったときに見直される |
基本給の例は、厚生労働省のQ&Aの4区分にあてはめたものです。実際の会社が1つの物差しだけで給与を決めているとは限りません。4つの考え方は1つを選ぶものというより、どれをどの程度混ぜるかで会社ごとの違いが出るものです。
能力主義との違い|「持っている力」か「期間内に出した結果」か
能力主義は、身につけた職務遂行能力を等級で表し、等級に応じて基本給(職能給)を決める考え方です。2009年の労働経済白書(平成21年版 労働経済の分析)は、高度経済成長から安定成長へ移るなかで年齢や勤続年数による一律の処遇が難しくなり、長期雇用を保ったまま職務遂行能力を評価する職能資格制度が導入された、と振り返っています。
違いが最も表れるのは、給与が下がるかどうかです。厚生労働省のQ&Aは職能給の長所に、保有能力が低下しない限り基本給は下がらないことを挙げる一方、業績給の長所には、業績の範囲内に基本給の額を納められることを挙げています。能力は一度認められると積み上がりやすく、成果は期ごとに測り直される。前の期の評価が、次の期の給与を約束してくれるとは限らないのです。 なお同じQ&Aは、職能給でも仕事で発揮された「発揮能力」や「行動特性」を取り入れる動きを紹介しており、両者の境目は近づいています。
年功序列との違い|積み上がる仕組みと、期ごとに見直す仕組み
年功序列は、年齢や勤続年数を重ねるほど賃金や役職が上がる仕組みです。長くいるほど処遇が積み上がる年功序列に対し、成果主義は期ごとの結果で処遇を見直します。
ただ、同じ会社の中で両方が使われていることもあります。令和4年就労条件総合調査(複数回答)では、基本給の決定要素に「年齢・勤続年数など」を挙げた企業が管理職以外で63.4%あり、「業績・成果」の42.0%と足すと100%を超えます。両方を基本給に入れている会社もあることになるでしょう。年功序列の仕組みと統計に表れた実態は、年功序列とは?成果主義・ジョブ型雇用との違いとメリット・デメリットで詳しく整理しています。
ジョブ型との違い|職務に就く時点で決まる給与と、期間の終わりに決まる給与
ジョブ型は、担当する職務を先に決め、その内容や重さで処遇する考え方です。土台になる職務給について、厚生労働省は、従業員の能力や特徴ではなく仕事内容や役割の重要さにもとづいて給与を決める制度だとしています。
「ジョブ型にすれば成果主義になる」と受け取られがちですが、2つの違いは給与が決まるタイミングに注目すると見えてきます。ジョブ型ではどの職務に就くかが決まった時点で給与の水準がおおむね定まり、成果主義では期間が終わって結果が評価された時点で給与の増減が決まります。 就く前の物差しと働いた後の物差しなので、職務で給与の水準を決め、成果を賞与に反映するといった組み合わせも成り立つわけです。令和4年の同じ調査でも、基本給の決定要素として「職務・職種など仕事の内容」と「業績・成果」は別の選択肢として尋ねられていました。求人で「ジョブ型」と「成果主義」が並んでいたら、給与の水準を決めるのが職務か、上下させるのが成果かを分けて聞いてみてください。
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金制度改革:年功序列vs能力評価 長所短所を教えてください。」
参考:厚生労働省「平成21年版労働経済の分析(要約版)第3章第3節 雇用システムの展望と課題」
参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況」
参考:厚生労働省「職務給について」
日本で成果主義はどこまで広がったか|厚生労働省の調査で確かめる
日本の会社で成果がどの程度給与に反映されているかは、厚生労働省「就労条件総合調査」で分かります。見えてくるのは次の4点です。
- 業績・成果主義は1990年代に広がり、その後は運用の難しさから見直しも進んだ
- 基本給に業績・成果を反映する企業は4割台で、規模の大きい企業ほど割合が高い(令和4年)
- 賞与では、算定に個人の業績を使う企業が6割を超える(令和4年)
- 賃金制度を見直した企業の4割強が、業績・成果に対応する部分を広げた(令和4年)
この調査は常用労働者30人以上の民営企業が対象で、期間を定めずに雇われている労働者(パートタイム労働者を除く)の制度を尋ねています。調べる項目は年ごとに入れ替わり、2026年10月時点で公表されている結果のうち、基本給の決定要素と賞与の算定方法は令和4年調査が最新です。賞与で個人の業績をどんな基準で測るかは、結果の概況に載っている直近の調査が平成29年にさかのぼります。
1990年代に広がり、運用の難しさから見直しも進んだ
2009年の労働経済白書は、1990年代に人件費を抑える要請が強まるなかで、即効性があるようにみえた業績・成果主義を導入する企業が増えたと分析していました。その後、納得できる運用には評価基準の明確化や評価者の研修が要るという課題が明らかになり、組織やチームの成果を賃金に反映させることも大切だと、人事担当者の認識が変わってきたとしています。成果主義の課題は、成果を測る物差しをどう作り、どう説明するかに集まっていたのです。
基本給に業績・成果を反映する企業は令和4年で4割台、規模の大きい企業ほど高い
令和4年就労条件総合調査で、基本給の決定要素(複数回答)に「業績・成果」を挙げた企業は、管理職以外で42.0%、管理職で43.4%でした。前回の平成29年調査(管理職以外39.0%、管理職40.0%)から、それぞれ3.0ポイント、3.4ポイント増えています。
企業規模別に見ると差がはっきりします。管理職以外では1,000人以上56.3%、300〜999人50.3%、100〜299人49.5%、30〜99人38.4%。管理職も57.9%、51.8%、50.4%、40.0%と同じ並びです。調査の対象になった30人以上の企業では、規模が大きいほど基本給に業績・成果を反映する割合が高くなっています。


賞与と手当にも、成果は表れる
令和4年就労条件総合調査では、賞与制度がある企業が87.9%。そのうち算定方法を定めている企業(管理職以外で85.8%、管理職で82.9%)を100とすると、考課査定で個人別の業績を算定に使う企業が管理職以外で65.9%、管理職で61.4%でした(複数回答)。管理職以外の規模別では1,000人以上78.3%、300〜999人75.7%、100〜299人67.8%、30〜99人63.3%です。


ただ、個人の業績をどんな基準で測るかは別の話です。個人別業績の主な評価基準を結果の概況に載せた直近の調査は平成29年就労条件総合調査で、賞与の算定に個人別の業績を使う企業のうち、主な評価基準を「成果(目標)達成度」としたのは管理職以外で47.0%、「職務遂行能力」とした企業も25.1%ありました。成果を賞与に反映する会社でも、成果の中身は数字の達成度だけに限られないのです。
毎月の賃金にも成果は表れます。最新の令和7年就労条件総合調査では、令和6年11月分の諸手当を支給した企業のうち、業績手当などを支給した企業が13.7%(複数回答)。支給された労働者1人あたりの平均額は64.1千円で、諸手当の種類別では最も高い額でした。
令和4年調査では、賃金制度を見直した企業の4割強が業績・成果の部分を広げた
令和4年調査によると、過去3年間(平成31年〜令和3年)に賃金制度を改定した企業は40.4%でした。この改定企業を100とした内訳では、「業績・成果に対応する賃金部分の拡大」が42.8%、「業績評価制度の導入」が17.2%、「年俸制の拡大・導入」が5.6%(複数回答)で、「業績評価制度の廃止」0.4%や「年俸制の縮小・廃止」1.5%を上回っています。改定内容の1位は「職務・職種などの仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」(65.7%)です。
国の調査から見えるのは、成果だけで給与を決める仕組みへの転換というより、基本給・賞与・手当に成果の要素を組み込みつつ、仕事の内容に応じた部分も広げる姿です。
参考:厚生労働省「平成21年版労働経済の分析(要約版)第3章第3節 雇用システムの展望と課題」
参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況」
参考:厚生労働省「平成29年就労条件総合調査 結果の概況」
参考:厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況」
働く側から見た成果主義のメリット・デメリット
ここでは働く側に絞って、成果主義の良い面と気をつけたい面を見ていきます。
- 年齢や勤続を待たずに、成果が処遇に届く余地がある
- 評価の基準が言葉になっていれば、力を注ぐ先がはっきりする
- 一方で、収入の上下、チームの仕事の後回し、評価への納得感に課題が出やすい
メリット|年齢や勤続を待たずに、成果が処遇に届く
厚生労働省のQ&Aは、能力や仕事を重視した賃金制度を、勤続年数や年齢に関係なく、担当している仕事の難易度や仕事上発揮した能力による成果を重視する仕組みと説明しています。入社年次が浅くても、成果を出せば処遇に反映される余地があるということです。同じQ&Aは業績給の長所に、短期的には労働者の勤労意欲が高まる点も挙げています。目標と評価の基準が言葉になっている会社なら、何に力を注げばよいかがはっきりするでしょう。
正直なところ、私たちが取材で「20代で大きな役割を任された」という話を聞くと、そのきっかけは年次より、目の前の仕事で出した結果だったと感じることが多いのです。
デメリット|収入が上下し、評価への納得が揺らぎやすい
厚生労働省のQ&Aは業績給の短所に、組織が硬直化して労働者の協調性が育たないことや、過重労働につながることを挙げています。個人の数字だけが評価に直結すると、後輩の指導や他部署の手伝いのように数字に表れにくい仕事が、後回しになりやすいのです。
2009年の労働経済白書は、業績評価制度の問題として、評価結果に対する本人の納得が得られないことや勤労意欲の低下を挙げていました。数字は、担当する顧客や市場の状況といった本人には動かせない事情でも上下します。
| 気をつけたいこと | 起きやすい場面 | 働く側の備え |
|---|---|---|
| 収入が年によって上下する | 賞与や業績手当の割合が大きい | 基本給など毎月決まって支払われる部分で生活が回るかを先に確かめる |
| チームの仕事が後回しになる | 個人の数字だけが評価項目になっている | 後輩の指導や部署をまたぐ協力が、評価項目に入っているかを確かめる |
| 働きすぎにつながる | 成果が出るまで時間で補おうとする | 労働時間を自分でも記録し、割増賃金のルールを知っておく |
| 評価に納得できない | 何を見て評価するかが言葉になっていない | 評価の基準と理由を、面談で具体的に聞く |
デメリットの多くは、成果主義そのものより、成果の物差しが言葉になっていないときに大きくなります。
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金制度改革:年功序列vs能力評価 長所短所を教えてください。」
参考:厚生労働省「平成21年版労働経済の分析(要約版)第3章第3節 雇用システムの展望と課題」
成果主義でも変わらない給与のルール|残業代・保障給・不利益変更
成果で給与が決まる会社でも、法律が定める最低限のルールは変わりません。知っておきたいのは次の3つです。
- 年俸制でも、法定労働時間を超えて働けば原則として割増賃金が支払われる
- 出来高払制で働く人には、労働時間に応じた一定額の保障がある
- 就業規則の変更で給与を不利益に変えるには、周知と合理性が必要
年俸制でも、法定労働時間を超えれば割増賃金が必要
成果主義の会社では、評価をもとに1年分の給与を決める年俸制が使われることがあります。厚生労働省のQ&Aは、年俸制を導入した場合でも、実際の労働時間が1週または1日の法定労働時間を超えれば、原則として割増賃金を支払わなければならないとしています。例外は、管理監督者など労働基準法第41条にあたる人です。年俸に割増賃金を含める取り決めも、そのことが労働契約の内容として明らかで、割増賃金にあたる部分を区別でき、法定の額以上が支払われていることが条件になります。
成果主義は賃金の決め方の話で、働いた時間に対する割増賃金のルールまで消えるわけではありません。 労働時間の扱いそのものを変える仕組みには裁量労働制などがあり、裁量労働制とは?残業代の扱いと対象業務|専門業務型・企画業務型の違いで整理しています。
出来高払制には、労働時間に応じた保障給がある
成果に応じて賃金が決まる働き方のうち、売上や作業量といった出来高で賃金を計算する払い方には、労働基準法に次の定めがあります。
「出来高払制その他の請負制」は、歩合給のように仕事の出来高で賃金が決まる払い方のこと。条文の結びは「保障をしなければならない」で、努力義務ではなく会社に課された義務です。保障給の額について厚生労働省のQ&Aは、常に通常の実収賃金とあまり隔たらない程度の収入が保障されるように定める、とする通達を紹介しています。出来高がふるわない月でも、働いた時間に応じた一定額は支払われなければなりません。
一方、年に1〜2回の評価で基本給や賞与を決める仕組みは、出来高で賃金を計算する払い方とは異なります。歩合給がある求人では、固定給との割合と保障給の定めを確かめておきましょう。
給与を下げる就業規則の変更には、周知と合理性が必要
賃金制度を成果主義へ切り替えた結果、給与が下がる人が出ることもありえます。労働契約法第9条は、会社が労働者と合意することなく就業規則を変えて、労働条件を労働者の不利益に変えることはできないと定め、その例外を第10条に置いています。
条件は、変更後の就業規則を働く人に周知させていることと、変更が合理的であることの2つ。合理的かどうかは、不利益の大きさ、変更の必要性、新しい規則の内容の妥当さ、労働組合などとの交渉の状況といった事情に照らして判断されます。会社が一方的に決めれば何でも通るわけではない一方、2つを満たせば、同意していない人にも新しい規則が適用されうる点は押さえておきましょう。 なお、もともと評価で基本給が上下すると定めた規程に沿って下がるのと、規程そのものを変えて下げるのとでは、場面が違います。


参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「年俸制の場合には、何時間残業しても割増賃金はもらえないのですか。」
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金制度改革:年功序列vs能力評価 長所短所を教えてください。」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:e-Gov法令検索「労働契約法」
成果主義の会社で評価されるための向き合い方
成果主義の会社で納得して働けるかは、評価の物差しを自分でもつかめているかで変わります。意識しておきたいのは次の4つです。
- 何が成果で、給与のどこに反映されるかを確かめる
- 目標は、期末に本人と上司が同じ判定をできる形にする
- 結果と一緒に、過程と自分では動かせなかった事情を記録する
- 期の途中で見通しを、期末に評価の理由を聞く
何が成果で、給与のどこに反映されるかを確かめる
マイナビ・リクナビの募集要項や転職エージェントの求人票に「成果主義」「実力主義」とあっても、それだけで仕組みは分かりません。確かめたいのは、成果が個人の結果かチームや会社の業績か、評価は年に何回で誰が行うか、基本給・賞与・手当のどこに反映されるか、評価で基本給が下がることがあるか、の4点です。
入社前は採用サイトの人事制度の説明や経営者の発信を読み、分からなかった点だけを面接の逆質問で聞けば十分でしょう。入社後は就業規則や賃金規程も手がかりになります。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する事業場に就業規則の作成を義務づけ、賃金の決め方や昇給のルールを必ず記載する事項に挙げています。
目標は、期末に本人と上司が同じ判定をできる形にする
成果主義では、期のはじめの目標が期末の評価の物差しになります。「頑張る」「改善する」のような言葉で終えると、達成したかを本人と上司で同じように判定できず、評価がずれかねません。数字にしにくい仕事なら、期限と仕上げる成果物で書く方法もあります。
目標を立てる面談は、評価の物差しを上司とすり合わせる最初の機会です。 目標の書き方の例と、就業規則で評価と給与の関係を確かめる方法は、OKRとは?KPI・MBOとの違いと目標の例|働く側の向き合い方まででも紹介しています。
結果と一緒に、過程と動かせなかった事情を記録する
期末の面談で半年前の工夫を思い出そうとしても、細部は抜け落ちがちです。月に1回、取り組んだこと、数字の動き、担当先の事情や市場の変化のように自分では動かせなかった要因を短くメモしておけば、数字が届かなかった期ほど、評価の面談で説明の材料になります。
期の途中で見通しを、期末に評価の理由を聞く
期末に初めて見通しを聞いても、打てる手は残っていません。期の半ばに「いまの進み方で、期末にどう評価されそうですか」と尋ねておけば、見通しが厳しいときに目標の優先順位を相談し直せます。評価に納得できないときは、どの項目がどの基準でその評価になったのかを聞き、次の期に何をすれば変わるのかまで話しておきましょう。
私たちが経営者に評価の話を聞いていても、うまく回っている会社ほど、評価の結果そのものより、その理由をどう伝えるかに時間をかけていると感じます。
ベンチャーの評価制度は成果主義なのか
「ベンチャーは成果主義」というイメージについて、統計と経営者の言葉から言えるのは次のところまでです。
- 30〜99人の企業は1,000人以上の企業より、基本給に業績・成果を反映する割合が低い(令和4年)
- 業績手当などを支給する企業の割合は、規模による差が小さい(令和6年11月分)
- 経営者の言葉からは、数字の測り方と同じくらい、評価のルールやチームでの動き方が語られる
就労条件総合調査の集計は企業規模や産業ごとで、対象も常用労働者30人以上の企業です。そのうえで規模別に見ると、基本給の決定要素に「業績・成果」を挙げた企業は、管理職以外で30〜99人が38.4%、1,000人以上が56.3%でした(令和4年調査)。
一方、業績手当などを支給する企業の割合は、令和6年11月分の諸手当を支給した企業のうち30〜99人で13.5%、1,000人以上で13.0%と差が小さく、支給された労働者1人あたりの平均額は30〜99人が77.2千円、1,000人以上が54.9千円でした(令和7年調査)。少なくともこの数字からは、「小さい会社ほど成果主義」という傾向は見えてきません。 ベンチャーの給与水準そのものは、ベンチャー企業の年収は低い?規模別の統計とオファーで確かめる内訳で整理しています。
経営者は、評価の仕組みをどう語っているか
統計では見えない評価の中身は、経営者の言葉に表れます。中小企業の人事評価制度づくりを支援してきた株式会社あしたのチームの山本拓馬社長は、現場で担当していた支援先の小売店について、辞めようとしていた店長の事情をこう説明しています。
山本社長によると、店長が退職を考えた背景には、給与が経営者の感覚で決まっていたことがありました。数字は本人の外にある事情でも動くので、数字だけを物差しにすると、本人は何を見られているのかが分からなくなります。
株式会社エッジコネクションの大村康雄社長は、社内の判断をルールにもとづいて行う仕組みについて、こう話しています。
判断のルールが前もって言葉になっていれば、結果が思わしくないときでも、どこを直せばよいかを落ち着いて話し合えます。
成果を出した分が給与に反映される評価制度とインセンティブ制度を設けているmadoguchi株式会社で、取締役COOを務める福士雅也さんは、チームで動くことにこだわる理由をこう語っています。
成果主義かどうかという看板より、数字のほかに何を見ているか、チームへの貢献をどう扱うかを聞くほうが、入社後の働き方は見えてきます。 面接では「評価では数字のほかに何を見ていますか」「チームの成果は個人の評価にどう反映されますか」と尋ねてみてください。経営者が評価や仕事の任せ方を自分の言葉で語った話は、熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューにまとめています。
参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況」
参考:厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況」
成果主義に関するよくある質問
成果主義を一言でいうと、どんな仕組みですか?
一定期間に出した仕事の結果を評価し、給与や昇進に反映させる考え方です。 法律で定められた制度ではないため、何を成果とし、基本給・賞与・手当のどこに反映するかは会社ごとに違います。成果だけで給与を決めるとは限らず、仕事の内容や能力などと組み合わせている会社もあります。
成果主義と実力主義・結果主義は何が違いますか?
どれも成果や実力を重んじる言葉ですが、指す範囲が少しずつ違います。 一般に、結果主義は過程を問わず結果だけで判断する考え方、実力主義は年齢や経歴にかかわらず力のある人を処遇・登用する考え方として使われることが多い言葉です。成果主義は期ごとの評価を通じて成果を給与や昇進に結びつける仕組みを指すことが多く、評価で過程や能力を見る会社もあります。言葉より、応募先が何を見て評価しているかを確かめるほうが確実です。
成果主義の会社では、給料が下がることもありますか?
下がることはありえますが、会社が自由に下げられるわけではありません。 評価で基本給が上下すると就業規則や賃金規程に定めがあれば、評価の結果として下がることもあるでしょう。一方、賃金制度そのものを変えて引き下げる場合は、労働契約法第10条により、変更後の就業規則の周知と、変更の合理性が求められます。厚生労働省のQ&Aは、同意も合理性もないまま労働条件通知書や就業規則に明記された額より少ない給料しか支払われない場合、労働基準法第24条違反(給料の一部不払い)となる可能性があるとしています。
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「突然の給与カット通告は、労基法に違反しますか?」
参考:e-Gov法令検索「労働契約法」
成果主義や年俸制なら、残業代は出ないのですか?
年俸制でも、法定労働時間を超えて働けば、原則として割増賃金が支払われます。 厚生労働省のQ&Aは、年俸制を導入した場合でも、実際の労働時間が1週または1日の法定労働時間を超えれば割増賃金を支払わなければならないとしています。例外は、管理監督者など労働基準法第41条にあたる人です。
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「年俸制の場合には、何時間残業しても割増賃金はもらえないのですか。」
成果主義の会社に向いているのはどんな人ですか?
評価の物差しに納得でき、結果に至るまでの過程を自分の言葉で説明できる人は、成果主義の会社でも力を出しやすいでしょう。 収入の見通しを優先したいなら、毎月決まって支払われる部分の割合と、評価で基本給が下がる仕組みがあるかを確かめてから選ぶと安心です。
まとめ
成果主義とは、一定期間に上げた仕事の成果や業績を評価し、給与や昇進・昇格に反映させる人事の考え方です。法律で定められた制度ではなく、成果を基本給・賞与・手当・昇格のどこに反映するか、個人とチーム・会社のどちらの業績を見るかは、会社や職層によって違います。
能力主義が身につけた力、年功序列が年齢・勤続、ジョブ型が担う仕事を物差しにするのに対し、成果主義の物差しは期間内の結果です。令和4年就労条件総合調査(常用労働者30人以上の企業、複数回答)で基本給の決定要素に「業績・成果」を挙げた企業は管理職以外で42.0%、管理職で43.4%で、規模の大きい企業ほど割合が高くなっていました。
成果で給与が動く会社でも、年俸制の割増賃金、出来高払制の保障給、就業規則を変えるときの周知と合理性といったルールは変わりません。働く側は、何が成果でどこに反映されるかを確かめ、目標を判定できる形でそろえ、過程と事情を記録しておきましょう。取材で多くの経営者と話してきて私たちが感じるのは、評価で揉めない会社ほど「何をもって成果とするか」を最初に言葉にしている、ということでした。
成果の評価のしかたは会社ごとに違うからこそ、転職エージェントに希望を伝え、評価の考え方まで含めて相談してみると会社を選びやすくなります。

