年功序列とは?成果主義・ジョブ型雇用との違いとメリット・デメリット

年功序列とは、勤続年数や年齢に応じて賃金や役職が上がっていく人事の仕組みです。

「年功序列は崩壊した」とよく言われますが、基本給を決める要素に年齢・勤続年数を入れている企業は、令和4年の調査でも6割を超えています。なくなったというより、仕事の内容や成果の要素を足しながら薄まってきたのです。

この記事では、成果主義・ジョブ型雇用との違いと統計に表れた賃金の実態を確かめたうえで、メリット・デメリットと、応募先の評価の仕組みを見分ける質問の例まで整理します。

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目次

年功序列とは|勤続年数と年齢で賃金や役職が上がる仕組み

年功序列は、同じ会社に長くいるほど、また年齢を重ねるほど処遇が上がっていく考え方を指します。先に押さえておきたいのは次の3点です。

  • 年功序列は法律で決まった制度ではなく、会社ごとの賃金・人事の運用
  • 年功は賃金だけでなく、役職が上がる順番にも表れる
  • 「能力で評価」と言いながら、運用が年功的になっている会社もある

年功序列は、法律で定められた制度ではありません。 厚生労働省の労働条件に関するQ&Aは、「年功序列賃金」について統一的な定義はないとしたうえで、一般的には企業での勤続年数や年齢の上昇に従って、賃金(基本給)も上昇する仕組みと考えられると説明しています。同じQ&Aによれば、労働基準法には賃金の決め方や計算の方法をどうすべきかという規制はなく、賃金制度のあり方は労使が対等の立場で話し合って決めるもの。どこまで年功的にするかは、会社ごとに違うわけです。

年功は、賃金だけでなく役職にも表れます。入社年次の順に主任、係長、課長と上がっていく会社では、成果を出していても先輩より先に役職に就くことはまれでしょう。

基本給の決め方は4つに分けられる

ある会社が年功序列に近いかどうかは、基本給が何で決まるかを見ると判断しやすくなります。厚生労働省の同じQ&Aは、基本給の決め方を次の4つに整理しています。

名称基本給を決めるもの年功序列との関係
年齢給年齢や勤続年数などの属人的な要素年功序列の中心になる
職能給職務を遂行する能力運用しだいで年功的になりやすい
職務給従事している職務ジョブ型雇用の賃金の土台になる
業績給仕事の成果・業績成果主義の賃金の土台になる

見落としやすいのは職能給です。 能力に応じて決める仕組みのはずですが、厚生労働省のQ&Aは短所として、職務遂行能力の定義が抽象的であることなどにより、運用が年功的になる点を挙げています。能力が伸びたかどうかを判断しにくいと、長く勤めた人ほど能力が高いという扱いに寄っていくのです。「年功序列ではなく能力で評価しています」と聞いたら、その能力を何で測っているのかまで確かめてみてください。

参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金制度改革:年功序列vs能力評価 長所短所を教えてください。」

年功序列・成果主義・ジョブ型雇用の違い

3つの言葉はよく並べて語られますが、指している範囲は少しずつ違います。違いは次の3点に整理できるでしょう。

  • 年功序列は「時間」、成果主義は「結果」、ジョブ型雇用は「仕事の中身」を軸にする
  • ジョブ型雇用は賃金の決め方だけでなく、採用や異動まで含む考え方
  • 実際の会社は、どれか1つではなく組み合わせで賃金を決めている
比べる点年功序列成果主義ジョブ型雇用
評価の軸勤続年数・年齢と積み重ねた経験一定期間に上げた成果・業績担当する職務の内容と、その遂行の度合い
賃金の決まり方年齢給や、年功的に運用される職能給で、勤続とともに上がる業績給や賞与で、成果に応じて増減する職務ごとに水準が決まる職務給が中心
異動会社主導で、職種をまたぐ異動もある賃金の決め方とは別に、会社の方針で決まる同じ職種の中での異動が基本で、職種を移るときは社内公募を使う例がある
向く人同じ会社で長く経験を積み、収入の見通しを立てたい人成果を早く処遇に反映させたい人専門とする仕事を決めて、その分野で力を伸ばしたい人

年功序列と成果主義は処遇の決め方の話、ジョブ型雇用は雇用の組み立て方そのものの話です。 年功序列の反対語として成果主義とジョブ型雇用が同じように並べられがちですが、扱う範囲が一回り違います。

成果主義とは|成果を処遇に反映させる考え方

成果主義は、一定期間に上げた成果や業績を、賃金や昇進に反映させる考え方です。厚生労働省のQ&Aは、成果・業績で基本給を決める業績給の長所として、仕事の成果と基本給の額が連動することを挙げています。一方の短所は、複雑で共同作業が必要な仕事では採用できないことや、労働者の過重労働につながること。

成果がどこに反映されるかも、会社によって違います。同じQ&Aは最近の動きとして、基本給ではなく、個人や所属グループ、企業の業績を賞与の額に反映させる動きがあるとしています。基本給が上下する会社と、基本給は安定していて賞与で差がつく会社とでは、同じ「成果主義」でも収入の動き方がまるで違うのです。

ジョブ型雇用とは|仕事を先に決めて人を当てはめる

ジョブ型雇用は、職務(ジョブ)の内容と必要なスキルを先に決め、それに合う人を採用・配置する考え方です。2024年に政府が公表した「ジョブ型人事指針」は、閣議決定した実行計画を引いて、従来の日本の雇用制度を「新卒一括採用中心、異動は会社主導、企業から与えられた仕事を頑張るのが従業員」と表しました。そのうえで、職務ごとに必要なスキルを設定し、従業員が上司と相談しながら自ら職務やリ・スキリングの内容を選ぶジョブ型人事への移行を掲げています。

人を先に採ってから仕事を割り当てる従来のやり方は「メンバーシップ型」と呼ばれ、同指針の企業事例でもこの言葉が使われています。導入企業の事例として紹介されているのは、職務の内容を職務記述書(ジョブディスクリプション)にまとめ、社内公募や外部からの採用に使うやり方です。

参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金制度改革:年功序列vs能力評価 長所短所を教えてください。」
参考:内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事指針」
参考:新しい資本主義実現会議「三位一体の労働市場改革の指針」

年功的な賃金は、統計でどう表れているか

年齢や勤続とともに賃金が上がる形は、公的統計にもはっきり出ています。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」から、年齢と勤続年数の2つの切り口で見ていきましょう。

  • 年齢とともに賃金は上がるが、上がり幅は年齢が進むほど小さくなる
  • 勤続30年以上の賃金は、勤続0年の1.62倍
  • 勤続による伸び方は、大企業ほど大きい

ここでいう賃金は、常用労働者10人以上の民営事業所で働く一般労働者(短時間労働者以外)の、令和7年6月分の所定内給与額です。残業代などは含みません。

年齢とともに上がるが、上がり幅は小さくなっていく

男女計の賃金は、20〜24歳の24.28万円から、30〜34歳31.23万円、40〜44歳36.43万円、50〜54歳38.88万円と上がり、55〜59歳の39.62万円が最も高くなっています。ただし10年ごとの上がり幅は、年齢が進むほど小さくなります。 20代前半から30代前半にかけては6.95万円上がるのに対し、30代前半から40代前半では5.20万円、40代前半から50代前半では2.45万円。上がり幅は、概況の数値をもとに編集部が計算しました。60〜64歳になると、32.93万円まで下がります。

年齢と年収の関係を、年収1,000万円に届く人の割合から見たい場合は、年収1000万円は30代の何%?年齢・男女別の割合で整理しています。

勤続30年以上の賃金は、勤続0年の1.62倍

年功序列により近いのは、年齢よりも「同じ会社にどれだけ長くいるか」という切り口でしょう。同じ調査で男女計の賃金を勤続年数別に見ると、勤続0年27.45万円、1〜2年28.53万円、3〜4年29.7万円、5〜9年31.25万円、10〜14年33.36万円、15〜19年37.08万円、20〜24年40.04万円、25〜29年43.36万円、30年以上44.42万円と、勤続が長いほど高くなっています。勤続30年以上の賃金は、勤続0年の1.62倍です。

勤続年数階級別の所定内給与額(令和7年、一般労働者、男女計)。勤続0年27.45万円、1〜2年28.53万円、3〜4年29.7万円、5〜9年31.25万円、10〜14年33.36万円、15〜19年37.08万円、20〜24年40.04万円、25〜29年43.36万円、30年以上44.42万円で、30年以上は0年の1.62倍。

注意したいのは、勤続0年の人には新卒で入った人だけでなく、転職して入社したばかりの人も含まれること。年齢の違う人が混ざった平均なので、「同じ人が勤め続ければ1.62倍になる」という意味ではありません。

勤続による伸び方は、大企業ほど大きい

男女計の勤続年数別の賃金を企業規模で分けると、伸び方の違いが見えてきます。

企業規模勤続0年勤続30年以上勤続0年に対する倍率
大企業(1,000人以上)29.26万円49.68万円1.70倍
中企業(100〜999人)27.34万円41.38万円1.51倍
小企業(10〜99人)25.52万円36.67万円1.44倍

※倍率は編集部が計算。大企業で最も高いのは勤続25〜29年の50.75万円です。

長く勤めるほど賃金が上がる形は、規模の大きい会社ほどはっきり表れています。 ただし統計から言えるのは、勤続年数と賃金の関係までです。勤続の長い人の賃金が高い理由が、年功で決まる仕組みなのか、経験を積んで担う仕事が大きくなった結果なのか、昇進によるものなのかは、この数字だけでは区別できません。

参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」

年功序列は崩壊したのか|30年の変化と政府の指針

「年功序列は崩壊した」という言い方をよく見かけます。ところが統計と政府の資料を並べてみると、実態は「なくなった」より「薄まりながら残っている」に近いのです。

  • 勤続による賃金の伸びは、30年前よりなだらかになった
  • 基本給に年齢・勤続年数を反映する企業は減ったが、令和4年調査でも6割を超える
  • 政府はジョブ型人事(職務給)を後押ししつつ、進め方は企業の実態に応じてとしている

勤続による賃金の伸びは、30年前よりなだらかに

労働政策研究・研修機構(JILPT)は、賃金構造基本統計調査をもとに、男女計で勤続0年の賃金を100としたときの勤続年数別の賃金を、1976年・1995年・2025年で比べています。勤続30年以上の値は、1976年が233.8、1995年が224.5、2025年が161.8。勤続による賃金の伸びは、この30年ではっきりとなだらかになりました。 雇用延長などで賃金が下がる人が多いとみられる60歳以上を除いた推計でも、1995年の228.8から2025年は176.1と、同じ方向に動いています。

なお、賃金構造基本統計調査は2020年に調査事項や推計方法の一部が変わっています。細かな差より、大きな流れとして読むのが安全です。

基本給に年齢・勤続年数を反映する企業は、令和4年調査でも6割を超える

会社の制度の側も見ておきましょう。厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」は、常用労働者30人以上の民営企業に、基本給を何で決めているかを複数回答で尋ねています。この項目は毎年調べられているわけではなく、公表されている結果では令和4年が最新です。管理職以外の社員について、前回の平成29年調査と並べると次のとおりです。

基本給の決定要素平成29年調査令和4年調査
職務・職種など仕事の内容74.1%76.4%
職務遂行能力62.8%66.3%
年齢・勤続年数など67.1%63.4%
業績・成果39.0%42.0%

年齢・勤続年数などを基本給の決定要素にする企業は5年で3.7ポイント減ったものの、令和4年の時点でも6割を超えています。 管理職でも60.1%から55.7%に下がりました。複数回答なので、多くの会社は年齢・勤続と、仕事の内容や能力、成果を組み合わせて基本給を決めていることになります。年功序列か成果主義かは二者択一ではなく、配合の問題なのです。

何を変えたのかも見えてきます。平成31年から令和3年までの3年間に賃金制度を改定した企業は40.4%。改定の中身で最も多かったのは「職務・職種などの仕事の内容に対応する賃金部分の拡大」の65.7%で、「学歴、年齢・勤務年数に対応する賃金部分の縮小」は12.7%でした。この3年間の見直しは、年功の部分を削るより、仕事の内容に応じた部分を広げる形が中心だったのです。

規模による違いもあります。管理職以外で年齢・勤続年数などを決定要素とする割合は、1,000人以上の企業で53.8%、30〜99人の企業で62.3%でした。勤続による賃金の伸びは大企業ほど大きかったので、制度の上での決め方と実際の賃金の伸び方は、必ずしも同じ向きではありません。2つは別の調査で数え方も違いますが、制度の名前だけでは年功的かどうかを判断しにくいことがうかがえます。

政府はジョブ型人事の導入を後押ししている

政策の側でも動きがあります。新しい資本主義実現会議が2023年5月にまとめた「三位一体の労働市場改革の指針」は、年功賃金制などの戦後に形成された雇用システムを背景に、評価・賃金の客観性と透明性が十分に確保されず、個人がどう頑張ったら報われるかが分かりにくいと指摘しました。そのうえで、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化の3つを一体で進めるとしています。

2024年8月には、内閣官房・経済産業省・厚生労働省が、すでにジョブ型人事を導入している20社の事例をまとめた「ジョブ型人事指針」を公表しました。ただし同指針は、企業の経営戦略や歴史など実態は千差万別だとして、自社のスタイルに合った導入方法を各社が検討できることが大切だとしています。三位一体の指針も、職務給を導入する場合にスキルだけでなく個々人のパフォーマンスや適格性を勘案することもあり得ると示しました。国が一律に年功序列をやめさせるのではなく、どう変えるかは会社ごとに決まる、というのが今の枠組みです。

参考:労働政策研究・研修機構「早わかり グラフでみる長期労働統計 図5 賃金カーブ」
参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況」
参考:新しい資本主義実現会議「三位一体の労働市場改革の指針」
参考:内閣官房・経済産業省・厚生労働省「ジョブ型人事指針」

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年功序列のメリット・デメリット|会社側と働く側

年功序列は「古い仕組み」として語られがちです。正直なところ、統計と制度を並べてみると、働く側にとっての安心材料という面も無視できないと感じます。会社側と働く側に分けて、良い面と難しい面を見ていきましょう。

  • 会社側は、人が定着しやすい一方で、人件費が膨らみやすい
  • 働く側は、収入の見通しが立てやすい一方で、成果が賃金に表れにくい
  • どちらの側にとっても、評価の理由が見えにくいことが課題になりやすい

会社側から見たメリット・デメリット

観点メリットデメリット
人材の定着長く勤めるほど処遇が上がり、長期勤続を促しやすい成果を出している人ほど不満を抱えやすい
賃金の管理基本給の計算と管理が簡単社員の平均年齢が上がると、人件費もそのまま上がる
配置仕事と賃金が結びついていないため、配置転換がしやすい同じ仕事をしていても賃金が異なり、働きぶりと一致しにくい
育成と採用長く勤める前提で、時間をかけて育てやすい専門性の高い人材を外から採りにくい

厚生労働省のQ&Aは、年齢給の長所として分かりやすさ、基本給の計算・管理の容易さ、長期勤続を促す効果、配置転換のしやすさを挙げています。短所に並ぶのは、同じ仕事をしていても賃金が異なること、企業の業績と無関係に賃金コストが増減すること、平均年齢の上昇が賃金コストの上昇に直結し、賃金水準が低くなる若年労働者に不平が生じることです。ジョブ型人事指針も、従来の制度では専門性のある人材を採用しにくく、若手を適材適所の観点から抜てきしにくいという危機感が日本企業から示されている、と紹介しています。

働く側から見たメリット・デメリット

観点メリットデメリット
収入年齢や勤続とともに上がる見通しを立てやすい若いうちは成果を出しても賃金の差がつきにくい
キャリア異動を通じて幅広い仕事を経験できる異動は会社主導で、仕事を自分で選びにくい
評価年齢や勤続という基準は単純で分かりやすいどうすれば上がるのかが見えにくい
転職長く勤めるほど処遇が積み上がる途中で辞めると、それまでの積み上げが途切れやすい

三位一体の労働市場改革の指針は、これまでの雇用システムでは転職しにくく、転職しても給料アップにつながりにくかったと指摘しています。勤続が長いほど有利になる仕組みは、賃金だけではありません。退職金にかかる所得税の退職所得控除額は、国税庁の説明(令和8年4月1日現在)で勤続20年までが1年あたり40万円、20年を超えた部分は1年あたり70万円。同指針は、この勤続20年の境が自らの選択による労働移動を妨げているとの指摘があるとして、税制の見直しを掲げました。

働く側にとっての年功序列は、長く勤めるほど報われる代わりに、途中で動くと損をしやすい仕組みでもあります。 評価の仕組みにかかわらず、成長が早い人に共通する行動は成長が早い人の特徴9選|共通点と今日からの行動にまとめています。

参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「賃金制度改革:年功序列vs能力評価 長所短所を教えてください。」
参考:新しい資本主義実現会議「三位一体の労働市場改革の指針」
参考:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」

年功序列の会社か、成果で評価する会社かを見分ける方法

マイナビやリクナビの求人情報、転職エージェントから届く求人票に「昇給あり」「賞与年2回」と書かれていても、何で給与が上がるのかまでは分からないことが多いもの。いきなり会社に尋ねるより、公表されている情報から順に見ていくほうが負担は少なくて済みます。応募するすべての会社で全部を確かめる必要はなく、気になった会社に絞れば十分です。手がかりになるのは次の3つです。

  • 採用サイトや経営者の発信など、公表されている情報で評価の仕組みを見る
  • 公表情報で分からなかった昇給や評価の決まり方を、面接で聞く
  • 内定時の労働条件通知書で、昇給と異動の範囲の書き方を確かめる

採用サイトや経営者の発信で、評価の仕組みを見る

最初の手がかりは、会社がすでに公表している情報です。採用サイトや求人票に人事制度・評価制度の説明や入社後の年収例が載っているか、経営者がインタビューなどで評価や昇給の考え方をどう語っているかを見てみましょう。

取材で経営者に評価や昇給の話を聞いていると、決め方を具体的に語れる会社ほど、社員について話すときの言葉にも迷いがない、というのが私たちの実感です。

人事評価制度の構築と運用を支援する株式会社あしたのチームの山本拓馬社長は、年功序列の風土が残る会社で起きやすいことを、こう語っています。

“
年功序列の風土が残る会社ですと、自分の方がパフォーマンスを出しているのに年長者の方が役職に就いている、という不満がきっかけで辞めていくケースもあります。退職まで至らなくても、それがモチベーションの上がらない要因になり、20代、30代のこれから伸び盛りの従業員が、主体的に仕事へ取り組む意欲が薄れてしまう。
株式会社あしたのチーム 代表取締役社長
山本 拓馬
インタビューを読む

評価の段階を言葉で示している例が、株式会社TalentXです。鈴木貴史社長は、自社の仕組みをこう説明しています。

“
当社では、社員一人ひとりのキャリアパスを尊重しているので、個人の興味や適性に合わせて柔軟なキャリア形成が可能です。「ミッショングレード制」を導入しており、これは社員の役割やスキルに応じて段階的な評価基準を設けているので、その制度に従って行動していれば、課題解決力が高い人材が育つようにできています。
株式会社TalentX 代表取締役社長
鈴木 貴史
インタビューを読む

どんな行動を評価するかを行動指針の言葉で示している例として、アイユーコンサルティンググループの出川裕基共同代表の言葉も挙げておきましょう。

“
弊社の行動指針の一つに「トライ&エラー」という項目があります。たとえ失敗したとしても、挑戦した事実は評価されますし、「まずはやってみよう」という一言が、これまでも組織を大きく動かしてきました。
アイユーコンサルティンググループ グループ共同代表
出川 裕基
インタビューを読む

評価の段階や、どんな行動が評価されるかまで言葉にしている会社なら、面接で同じことを聞いても具体的な答えが返ってきやすいでしょう。 熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューでは、経営者本人が評価の考え方や若手への任せ方を語っています。志望先の採用サイトや経営者の発信を読むときに、見比べる材料にしてみてください。

面接で評価制度について聞く質問の例

公表されている情報で分からなかった点は、面接の逆質問の時間などで確かめる方法もあります。全部を聞く必要はなく、気になる1〜2点に絞れば十分でしょう。聞き方を工夫すれば、角を立てずに尋ねられます。たとえば次のような質問です。

確かめたいこと質問の例答えの聞きどころ
昇給の決まり方昇給は年に何回で、何をもとに決まりますか年齢・勤続で決まる部分と、評価で決まる部分があるか
評価の基準評価項目にはどんなものがあり、誰が評価しますか項目の名前と評価者が具体的に返ってくるか
等級と昇格等級は何段階あり、上がるのに在籍年数の目安はありますか年数の条件が中心か、役割や成果の条件があるか
同期の間の差同じ年に入社した社員の間で、給与や役職にどのくらい差がつきますか差がつく仕組みがあるか、ほぼ横並びか
中途入社の処遇中途入社の場合、等級や給与はどう決まりますか前職の経験や担う職務で決めるのか、年齢で決めるのか
異動の考え方職種をまたぐ異動はありますか。本人の希望はどう反映されますか会社主導か、本人の意思や職務が軸か

見るべきは、どの答えが正解かではなく、答えが具体的かどうかです。 収入の見通しを重視する人なら毎年の昇給額の目安を示してくれる会社が、成果を早く反映させたい人なら評価項目と昇給幅の関係を説明できる会社が合うでしょう。求人票や採用サイトに年収例が見当たらなければ、「入社5年目の社員はどのくらいの給与になっていますか」と実例を尋ねると、制度が実際にどう動いているかも見えてきます。「頑張りを見ています」で答えが終わる場合は、入社後も評価の理由が見えにくいかもしれません。

面接全体の準備は、グループ面接でよく聞かれる質問と回答のコツも参考になります。

労働条件通知書の「昇給」と「変更の範囲」を見る

最後に確かめたいのが、内定時に受け取る書面です。内定が出ると、会社から労働条件通知書などで労働条件が示されます。厚生労働省のモデル労働条件通知書では、賃金の欄に「昇給」「賞与」「退職金」の有無と時期・金額等を書く行があり、基本賃金の項目には「就業規則に規定されている賃金等級等」という欄も設けられています。

ただし昇給の扱いには注意が必要です。労働基準法施行規則第5条は、労働契約を結ぶときに明示する労働条件として、賃金の決定・計算・支払の方法などと並べて「昇給に関する事項」を挙げています。一方で、書面で示さなければならない事項については、同じ条文で次のように定めています。

“
法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項は、第一項第一号から第四号までに掲げる事項(昇給に関する事項を除く。)とする。
労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)
第5条第3項
条文を見る

「法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める事項」とは、書面の交付(本人が希望すればメールなど)で示さなければならない労働条件のこと。契約期間、就業の場所と業務、労働時間、賃金の決め方や支払い方、退職に関する事項などは書面での明示が必要ですが、昇給はその対象から外されていて、口頭で伝えても法律上は足りる扱いです。 書面に昇給の時期や決まり方が書かれておらず気になるときは、内定後の面談などで尋ね、聞いた内容を手元に控えておくと安心でしょう。

もう1つの手がかりが「変更の範囲」です。2024年4月から、労働契約を結ぶときには、雇い入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、その変更の範囲も明示が必要になりました。厚生労働省は変更の範囲を、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲と説明しています。業務の変更の範囲が広く書かれていれば職種をまたぐ異動もありうる働き方、限られていれば仕事の中身を軸にした働き方に近いと読めるでしょう。

参考:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」
参考:厚生労働省「モデル労働条件通知書」
参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わりました」

年功序列に関するよくある質問

年功序列の反対は何ですか?

一般には「成果主義」や「実力主義」が反対の意味で使われます。 賃金の決め方でいえば、年齢や勤続年数で基本給を決める年齢給の反対側にあるのが、成果・業績で決める業績給や、従事する職務で決める職務給です。ジョブ型雇用は採用や異動まで含めた雇用の組み立て方を指すため、厳密には年功序列の対義語とは言えません。言い換えとしては、「年功賃金」や「年功制」といった言葉も使われます。

なぜ日本では年功序列が広がったのですか?

政府の「三位一体の労働市場改革の指針」は、年功賃金制を戦後に形成された雇用システムの1つと位置づけています。 厚生労働省のQ&Aが年齢給の長所として挙げるのは、ライフステージごとの最低生計費が保障されること、労働者に安心感を与えて長期勤続を促す効果があることです。年齢とともに増える生活費をまかなう代わりに、長く勤めてもらうという組み合わせです。この形が、会社と働く側の双方にとって受け入れやすかったと考えられます。

年功序列と終身雇用はどう違いますか?

年功序列は処遇の決め方、終身雇用は雇用の長さに関わる言葉です。 終身雇用は、入った会社で定年まで働き続けることを前提にした雇用慣行を指して使われます。厚生労働省「令和4年就労条件総合調査」では、定年制を定めている企業が94.4%。一律定年制の企業のうち、定年を60歳とする企業が72.3%、65歳以上とする企業が24.5%でした。長く勤めるほど処遇が上がる年功序列は、定年まで勤めることを前提にした雇用と組み合わさって成り立ってきた面があります。

参考:厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 結果の概況 定年制等」

年功序列と成果主義、どちらの会社を選べばいいですか?

年功型と成果型に優劣はなく、選ぶ基準は自分が何を優先したいかにあります。 収入の見通しを立てたい、時間をかけて幅広い仕事を経験したいなら年功的な会社、成果を早く処遇に反映させたいなら成果型の会社が合いやすいでしょう。ただ、令和4年就労条件総合調査の基本給の決定要素は複数回答で、多くの会社が年齢・勤続と仕事の内容、成果を組み合わせていました。看板の言葉で選ぶより、昇給と評価の決まり方を説明してもらえるかどうかで比べるほうが、入社後のずれを減らせるでしょう。

中途入社だと、年功序列の会社では不利になりますか?

一概には言えず、中途入社の人の等級や給与をどう決める会社かで変わります。 勤続年数で処遇が積み上がる仕組みが強い会社では、同じ年齢でも、勤続の長い社員との間に差が出ることがあります。一方で、前職での経験や担う職務で等級を決める会社なら、勤続年数による差は小さくなるでしょう。面接で「中途入社の場合、等級や給与はどう決まりますか」と聞き、前職の経験がどう評価されるかを確かめておくと安心です。

まとめ

年功序列とは、勤続年数や年齢に応じて賃金や役職が上がっていく人事の仕組みです。法律で決まった制度ではないため、どこまで年功的にするかは会社しだい。成果主義は成果・業績を処遇に反映させる考え方、ジョブ型雇用は職務の内容を軸に採用や配置、賃金まで組み立てる考え方で、指している範囲が違います。

統計で見ると、年功的な賃金は今も残っています。令和7年の賃金構造基本統計調査では勤続30年以上の賃金が勤続0年の1.62倍で、伸び方は大企業ほど大きいのが特徴です。一方で、勤続0年を100とした勤続30年以上の値は1995年の224.5から2025年の161.8へ下がり、基本給に年齢・勤続年数などを反映する企業も、管理職以外で平成29年の67.1%から令和4年の63.4%に減りました。崩壊というより、仕事の内容や成果の要素を増やしながら薄まっている、と見るのが実態に近いでしょう。

応募先を選ぶときは、制度の名前より、昇給の決まり方と評価の基準を具体的に説明できるかを見てください。昇給は書面での明示が義務づけられていない項目なので、公表情報や書面で分からず気になるときは、面接や内定後の面談で確かめ、聞いた内容を控えておくと安心です。年功型か成果型かを決める前に、自分がどんな評価のされ方なら納得して働けるかを言葉にしておくと、会社選びはぐっと楽になると私たちは感じています。

評価や昇給の仕組みが自分に合う会社は、1社ずつ調べるより、候補を並べて比べたほうが見つけやすくなります。

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小川莉奈のアバター

編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

西畑大樹のアバター

監修者

西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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ファクトチェック

秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

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新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
年間500記事以上の監修を行っております。採用側の視点でサービスのファクトチェックや記事内容を精査しています。

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執筆者情報

熱狂ベンチャーナビ編集部はインターンシップ・新卒就活・転職経験者で編成されております。20代~30代の幅広い年齢・職種やキャリアを持つメンバーが在籍しているため、就活・転職の苦しかった経験や成功体験を元に求職者に役立つ情報を発信いたします。

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