内定辞退メールの例文|電話での伝え方と承諾後に辞退するときの注意点

内定を辞退すると決めたら、できるだけ早く採用担当者に伝えましょう。承諾の返事をする前ならメールで足り、承諾したあとや入社日が近いときは、まず電話で直接伝えます。
一度「入社します」と返事をしたら断れない、と考えている学生も少なくありません。けれど厚生労働省は、承諾したあとの辞退も基本的には問題ないとしています。大切なのは、断るかどうかより、どう伝えるかです。
この記事では、そのまま使えるメールの例文と電話のトーク例、理由の書き方、引き止めやオワハラにあったときの相談先まで紹介します。
内定辞退メールの例文|承諾前に送る基本の形
内定の承諾を返事する前に辞退するときの、基本の例文です。
- 基本の例文(件名・宛名・本文・署名)
- 件名は用件と氏名が分かる1行にする
- 本文はお礼・辞退の意思・お詫びの3つで組み立てる
- 送る時間帯と、送ったあとにすること
基本の例文|件名・宛名・本文・署名
社名・氏名・連絡先はすべて架空の例です。〇〇の部分を自分の情報に置き換えて使ってください。
件名:内定辞退のご連絡(〇〇大学 山田花子)
株式会社サンプル商事
人事部 採用担当 佐藤様
お世話になっております。〇〇大学〇〇学部の山田花子です。
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
大変ありがたいお話をいただきながら恐縮ですが、検討を重ねた結果、貴社の内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
選考では多くのお時間を割いていただいたにもかかわらず、ご期待に沿えない結果となり、誠に申し訳ございません。
本来であれば直接お伺いしてお詫びすべきところ、メールでのご連絡となりましたことをお許しください。
末筆ながら、貴社のますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
山田花子
〇〇大学〇〇学部〇〇学科 4年
電話:090-0000-0000
メール:hanako.yamada@example.com
件名は「内定辞退のご連絡」と氏名を1行にする
採用担当者のもとには、選考や入社手続きのメールが毎日のように届くもの。件名だけで「誰から、何の連絡か」が分かるようにしておくと、ほかのメールに埋もれにくくなります。 用件を先に、学校名と氏名を後ろに置き、1行に収めましょう。
| 件名の例 | 受け取る側からの見え方 |
|---|---|
| 内定辞退のご連絡(〇〇大学 山田花子) | 用件と差出人がひと目で分かる |
| 〇〇大学の山田です | 用件が分からず、後回しにされやすい |
| ご連絡 | 開くまで何の連絡か分からない |
本文はお礼・辞退の意思・お詫びの3つで組み立てる
本文に欠かせないのは、内定へのお礼、辞退の意思、お詫びの3つです。前に宛名と名乗りを、後ろに結びと署名を置けば、例文と同じ形になります。担当者の名前が分からないときは、宛名を「採用ご担当者様」としてください。
| 要素 | 書くこと |
|---|---|
| 宛名 | 会社名・部署名・担当者名 |
| 名乗り | 学校名・学部・氏名。転職なら氏名と応募した職種 |
| お礼 | 内定と選考へのお礼 |
| 辞退の意思 | 辞退することを、迷いの残らない言い方で |
| お詫び | 期待に沿えないこと、メールでの連絡になったこと |
| 結びと署名 | 結びの挨拶、氏名と連絡先 |
いちばん気をつけたいのは、辞退の意思をぼかさないことです。 「もう少し考えさせてください」「辞退も含めて検討しています」と書くと、採用担当者は返事を待ち続けることになります。決めたことは、決めたこととして書きましょう。
送る時間帯と、送ったあとにすること
メールはいつ送っても届きますが、送信は平日の日中、相手の勤務時間内にしておくと無難です。夜のうちに書き上げたなら、送信予約を使うか、翌朝に読み直してから送りましょう。送ったあとは、送信済みのフォルダに残っているかを確かめておくと安心です。
電話とメールはどちらで伝えるか|電話のトーク例
辞退の意思は、電話でもメールでも伝わります。どちらを選ぶかの目安は、内定を承諾しているかどうかと、入社日までの近さです。
- 承諾前ならメール、承諾後や入社日が近いなら電話を先に
- 電話は名乗り・お礼・辞退・お詫びの順で話す
- 担当者が不在なら、戻る時間を聞いてかけ直す
- 学校推薦やエージェント経由の内定は、先に相談する人がいる
| 連絡の方法 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| メール | 内定の承諾を返事する前/企業とのやり取りがメール中心 | 件名で用件を伝え、届いたかを確かめる |
| 電話 | 内定を承諾したあと/入社日が近い/電話で内定の連絡を受けた | 始業直後・昼休み・終業間際を避け、静かな場所からかける |
| 電話のあとにメール | 承諾後の辞退/話した内容を記録に残したい | 電話で伝えた内容を短くまとめて送る |
承諾したあとの辞退は、会社が入社に向けた準備を始めている場合もあるため、まず声で直接伝えるのが誠実です。 メールだけでは、担当者が読むまでに時間がかかる場合もあります。
電話のトーク例
電話では、名乗り、お礼、辞退の意思、お詫びの順に伝えます。次のやり取りは架空の例です。
あなた:お世話になっております。〇〇大学〇〇学部の山田花子と申します。人事部の佐藤様はいらっしゃいますでしょうか。
受付:少々お待ちください。
あなた:お忙しいところ失礼いたします。〇〇大学の山田花子です。先日は内定のご連絡をいただき、ありがとうございました。内定の件でお伝えしたいことがあり、お電話いたしました。いま、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか。
採用担当者:はい、大丈夫ですよ。
あなた:大変申し上げにくいのですが、検討を重ねた結果、貴社の内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。選考では多くのお時間を割いていただいたにもかかわらず、このようなお返事となり申し訳ございません。
採用担当者:そうですか。差し支えなければ、理由を伺ってもいいですか。
あなた:自分の適性と将来を考え、別の会社への入社を決めました。貴社で働くことも真剣に考えたうえでの結論です。
採用担当者:分かりました。ご連絡ありがとうございます。
あなた:こちらこそ、本当にありがとうございました。失礼いたします。
電話を切るのは、相手が切ったのを確かめてからにします。
担当者が不在なら、戻る時間を聞いてかけ直す
辞退の意思は、担当者本人に伝えるのが基本です。担当者が席を外していたら、受付の人に辞退の内容まで託すのは避け、戻る時間を聞いてかけ直しましょう。伝言を頼むなら、次のように用件だけを伝えます。
「〇〇大学の山田と申します。内定の件でお電話いたしました。改めてお電話いたしますので、その旨をお伝えいただけますでしょうか。」
何度かけてもつながらないときは、先にメールで辞退を伝え、「改めてお電話いたします」と書き添えておけば、連絡が遅れることはありません。
学校推薦やエージェント経由の内定は、先に相談する
大学や教員の推薦で応募した会社の内定を辞退するときは、企業に連絡する前に、推薦してくれた先生や大学のキャリアセンターに相談しましょう。推薦は、大学と企業の関係のうえに成り立っているからです。転職エージェントを通じて応募した場合は、まず担当のアドバイザーに伝え、企業への伝え方を相談するのが一般的です。
承諾後の辞退と、返信へのお礼の例文
基本の形に、状況に合わせた一文を加えて使います。社名・氏名・連絡先は、ここでも架空のものです。
- 内定を承諾したあとに辞退するメール
- 転職活動で内定を辞退するメール
- 企業から返信が来たときのお礼メール
内定を承諾したあとに辞退するメール
承諾後は、お詫びを一段丁寧にし、提出した書類や受け取った資料の扱いを確かめる一文を入れます。電話で伝えたあとに送るときは、お礼の一文のあとに「先ほどお電話でもお伝えいたしましたが、」と添えてください。
件名:内定辞退のお詫びとご連絡(〇〇大学 山田花子)
株式会社サンプル商事
人事部 採用担当 佐藤様
お世話になっております。〇〇大学〇〇学部の山田花子です。
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
内定承諾書をお送りしておきながら大変申し訳ございませんが、熟慮を重ねた結果、貴社の内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
入社に向けてご準備を進めていただいていたなか、多大なご迷惑をおかけしますことを、心よりお詫び申し上げます。
お預けしている書類や、お送りいただいた資料の扱いについてご指示がございましたら、お知らせいただけますと幸いです。
本来であれば直接お伺いしてお詫びすべきところ、略儀ながらメールにてご連絡いたしました。
貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
山田花子
〇〇大学〇〇学部〇〇学科 4年
電話:090-0000-0000
メール:hanako.yamada@example.com
転職活動で内定を辞退するメール
転職では、名乗りに応募した職種を入れておくと、誰からの連絡かがすぐに伝わります。現職に残ると決めた場合も、理由は一文で十分です。
件名:内定辞退のご連絡(鈴木一郎)
株式会社サンプル商事
人事部 中途採用担当 高橋様
お世話になっております。営業職に応募いたしました鈴木一郎です。
このたびは内定のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。
検討を重ねた結果、現在の職場で役割を続けることを決め、貴社の内定を辞退させていただきたく、ご連絡いたしました。
選考に多くのお時間を割いていただいたにもかかわらず、このようなお返事となり申し訳ございません。
貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
鈴木一郎
電話:090-0000-0000
メール:ichiro.suzuki@example.com
企業から返信が来たときのお礼メール
辞退のメールに、採用担当者から「承知しました」といった返信が届くことがあります。返信へのお礼は短い1通で十分で、質問や依頼がなければ、そのあとのやり取りは続けなくて構いません。 書類の返送方法などを尋ねられたときは、その点にだけ答えましょう。
件名:Re:内定辞退のご連絡(〇〇大学 山田花子)
株式会社サンプル商事
人事部 採用担当 佐藤様
お世話になっております。〇〇大学の山田花子です。
ご丁寧にご返信をいただき、ありがとうございます。
こちらの都合で辞退を申し出たにもかかわらず、最後までお心遣いをいただき、恐縮しております。
最後になりましたが、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
山田花子
〇〇大学〇〇学部〇〇学科 4年
辞退の理由はどこまで書くか|詳しく書かなくてよい
正直なところ、辞退のメールでいちばん手が止まるのは、理由の一文ではないでしょうか。私たちも、お断りのメールを書くときは決まってそこで迷います。内定辞退の理由は「検討を重ねた結果」の一言で足り、事情を詳しく書く必要はありません。
- 理由は一言で足りる
- 入社を決めた会社の名前は出さなくてよい
- 電話で理由を聞かれたら、短く正直に答える
| 状況 | 書き方の例 | 避けたい書き方 |
|---|---|---|
| 別の会社への入社を決めた | 検討を重ねた結果、別の会社への入社を決めました | 社名や条件の比較を並べる |
| 迷った末に判断した | 自分の適性や将来を考え、熟慮のうえ決めました | 「なんとなく」「ほかに良い会社があったので」 |
| 家庭や健康などの事情 | 一身上の都合により、辞退させていただきます | 事情を細かく説明しすぎる |
| 転職で現職に残る | 現在の職場で役割を続けることを決めました | 現職に引き止められた経緯を詳しく書く |
入社を決めた会社の名前は出さなくてよい
辞退の連絡で、入社を決めた会社の名前を伝える必要はありません。尋ねられても、「〇〇業界の会社です」と業界を伝える程度で十分でしょう。条件や待遇を比べた話は、たとえ事実でも、受け取る側には返しようがないものです。
電話で理由を聞かれたら、短く正直に答える
採用担当者が理由を尋ねるのは、引き止めるためとは限りません。今後の採用の参考にしたいという場合もあります。答えられる範囲で短く伝え、言いにくいことは「自分なりに考え抜いた結果です」で構いません。事実と違う理由を作る必要はなく、作った理由ほど話を合わせるのが難しくなります。
内定承諾後でも辞退はできるか|民法と厚生労働省の説明
内定を承諾したあとでも、辞退を申し出ることはできます。ただ、一度「入社します」と返事をしたら断れない、と考えている学生も少なくありません。内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査」の2025年度調査では、「内定に対して口頭・メール等で「入社する」と伝えた後でも、内定を辞退することは可能」という説明を正しいと思う学生が77.6%、正しくないと思う学生が22.4%でした。
- 期間の定めのない雇用なら、働く側からもいつでも解約を申し入れられる
- 内定の段階で労働契約が成り立っていると判断される場合がある
- 厚生労働省は、辞退は基本的に問題ないとしつつ、誠実な対応を求めている
- 内々定と内定とでは、考え方が変わる
- 「損害賠償」と言われたら、その場で応じずに相談する
民法は、働く側からの解約の申入れを認めている
期間の定めのない雇用について、契約の終わらせ方を定めているのが民法第627条第1項です。
読むときの要は「各当事者」と「いつでも」の2語です。各当事者には雇う会社だけでなく働く人も含まれ、時期を問わず契約の解消を申し出られます。そのうえで、契約が終わるのは申し出た日から2週間がたった時点、というのが後半の意味です。入社後の契約に期間の区切りがない内定であれば、承諾後の辞退も、この「解約の申入れ」に当てはめて考えることができます。条文には、承諾書を出したかどうかで申し出を制限する定めはありません。
契約社員のように、あらかじめ契約期間が決まっている内定は扱いが変わるため、迷うときは大学のキャリアセンターや労働局に確かめてください。
内定の段階で、労働契約が成り立っていると判断される場合がある
厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、採用内定に法的な定義はないとしたうえで、一般には「労働者と使用者との間で一定の始期及び採用内定通知書又は誓約書に記載されている採用内定取消事由が生じた場合は解約できるという解約権留保を付して労働契約を締結した状態」を指すことが多い、と説明しています。入社日が決まっていて、一定の事情があれば会社が取り消せるという条件のついた労働契約が、内定の時点で結ばれていると認められることが多い、という意味です。
働く側からの辞退については、同じページで次のように整理しています。
| 論点 | 厚生労働省の説明の要旨 |
|---|---|
| 内定の辞退 | 基本的に問題ないものの、あまりに信義則に反するような場合は、損害賠償を求められる可能性もあり得る |
| 入社を強いられるか | 労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできず、責任が生じるとしても損害賠償にとどまる |
| 内々定の辞退 | 職業選択の自由があるため、辞退が違法になることはほとんど考えにくい |
信義則とは、民法第1条第2項が「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と定める原則のことで、契約の相手の信頼を裏切らないようにふるまうことを指します。承諾後の辞退そのものは基本的に問題なく、そのうえで誠実に伝えることが求められている、というのが国の説明の骨子です。 どこからが信義則に反するのかという線引きまでは、このページには書かれていません。だからこそ、決めたらすぐ伝える、直接伝える、預かった書類の扱いを確かめるという当たり前の対応を重ねておくことが、自分を守ることにもつながります。
参考:厚生労働省「確かめよう労働条件 採用の内定・内々定について、取消や辞退する場合の注意点」
内々定と内定とでは、考え方が変わる
新卒の就職活動では、正式な内定の前に「内々定」が出るのが一般的です。政府が経済団体などに出している就職・採用活動の要請では、正式な内定日は卒業・修了年度の10月1日以降。大学側の申合せも、9月30日以前の内々定は学生を拘束するものではないと学生に周知する、としています。
| 段階 | 時期の目安 | 辞退についての考え方 |
|---|---|---|
| 内々定 | 新卒で、正式な内定日より前 | 多くの場合、労働契約を結んだという認識には至っていないと考えられ、辞退が違法になることはほとんど考えにくい |
| 内定 | 新卒なら卒業・修了年度の10月1日以降。転職では内定の通知を受けたとき | 労働契約が成り立っていると判断される場合があり、辞退は基本的に問題ないものの、誠実な対応が求められる |
ただし、内々定でも会社との拘束関係が強ければ「採用内定」と認められる場合がある、と厚生労働省は説明しています。呼び名がどちらでも、決めた時点で伝えることに変わりはありません。就活全体の流れを月別に確かめたいときは、就活スケジュール完全ガイド|27卒・28卒の流れを月別に解説もあわせてどうぞ。
参考:内閣官房ほか「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」
参考:文部科学省「令和9年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(申合せ)」
「損害賠償を請求する」と言われたら
承諾後の辞退で、会社から損害賠償を持ち出されたらと心配する人もいるでしょう。先に見た厚生労働省の説明は「損害賠償を求められる可能性もあり得る」という書き方で、可能性がまったくないとも、必ず請求されるとも書かれてはいません。
手がかりになる統計は、内定の承諾後ではなく、内々定を辞退する場面のものに限られます。内閣府の2025年度調査で、オワハラを受けたと答えた学生238人のうち、「内々定辞退の際、損害賠償金などお金を要求された」と答えた割合は0.0%、前年度の調査では1.2%でした。金銭を持ち出す行為は、オワハラのなかでも少ないほうだと読み取れます。
実際に請求を口にされたら、その場で支払いや書類への署名に応じず、言われた内容と日時を記録して相談しましょう。 新卒の就職活動なら、大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークが窓口になります。各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などに置かれた総合労働相談コーナーは、募集・採用を含む労働問題の相談を予約なし・無料で受け付けており、学生・就活生も、転職で内定を得た人も利用できます。
参考:内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査(令和7年度)報告書」
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
引き止めやオワハラを受けたら|国のルールと相談先
辞退を伝えたときに強く引き止められたり、内定と引き換えにほかの会社の選考をやめるよう迫られたりしたら、一人で抱え込む必要はありません。こうした行為をしないよう、国は企業に求めています。
- 国の指針は、内定と引き換えに就職活動をやめさせる行為をしないよう求めている
- 政府の要請は、オワハラを「許されない行為」と明記している
- 引き止められたら、結論を変えずに短く伝える
- 困ったら、大学のキャリアセンター・新卒応援ハローワーク・労働局に相談できる
国の指針と政府の要請は、オワハラをしないよう企業に求めている
若者雇用促進法第7条にもとづいて厚生労働省が定めた指針は、内定や内々定を出す企業に向けて、次のように書いています。
「青少年」は、若者雇用促進法が若者を指して使っている言葉です。「職業選択の自由を妨げる行為」とは、内定を出す条件として、ほかの会社の選考を受けさせないようにすることなどを指します。この指針に反した場合の罰則は法律に定められていませんが、国が企業に向けて「行わないこと」とはっきり書いている行為です。
政府が経済団体などに出した2026年3月24日付の2027年度卒業・修了予定者向けの要請も、内定や内々定と引き換えに他社への就職活動をやめるよう強要する、いわゆるオワハラなどを「職業選択の自由を侵害するおそれがある許されない行為」と明記しました。内定辞退を防ぐために、内定の承諾に保護者の同意を強要する、いわゆる「オヤカク」も、オワハラに当たり得るケースがあると注意を促しています。
それでも、オワハラはなくなっていません。内閣府の2025年度調査では、内々定を1社以上から受けた学生のうち8.3%が、オワハラを受けたことがあると答えています。受けた内容(238人)は、「内々定を出す代わりに他社への就職活動をやめるように強要された」が64.1%、「内々定の段階で、内定承諾書の提出を求められた」が46.0%、「内々定辞退を申し出たところ、引き留めるために何度も説明を受けたり、拘束を受けた」が12.8%でした。
参考:厚生労働省「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」
参考:内閣官房ほか「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」
引き止められたら、結論を変えずに短く伝える
辞退を伝えると、「もう一度考えてほしい」「一度会って話をしよう」と引き止められることがあります。迷いがないなら、感謝は伝えつつ、結論は変えずに繰り返すのが基本です。
「ありがたいお言葉をいただき、恐縮です。ただ、熟慮のうえで決めたことですので、辞退させていただきたく存じます。」
「直接お会いしてお詫びすべきところですが、結論は変わりませんので、お電話でのご連絡とさせてください。」
呼び出しに応じるかどうかは、自分で決めて構いません。応じる場合も、その場で結論を変える必要はないのです。何度も説明を受けたり、長い時間引き留められたりして、自分の意思で決められないと感じたら、そこから先は一人で対応する場面ではありません。
困ったときに相談できる窓口
同じ内閣府の2025年度調査では、オワハラを受けた学生のうち「相談した」のは50.8%で、49.2%は相談しませんでした。相談先の想定と実際にも開きがあります。まだ受けたことのない学生に、受けたらどこに相談するかを尋ねると、大学のキャリアセンターが70.1%、家族・親戚が50.8%、まわりの友達が36.2%、ハローワークや労働局が9.3%。一方、実際に受けた学生の相談先は、キャリアセンターが11.2%、家族・親戚が25.2%、まわりの友達が25.3%で、ハローワークや労働局は0.2%でした。想定と実際は別々の学生に尋ねた結果で、同じ人の考えが変わったことを示すものではありません。

受けていない学生の7割が頼るつもりでいるキャリアセンターも、実際に受けた学生の相談先としては約1割にとどまります。 政府の要請は、都道府県労働局とハローワークが学生からの相談を受け付け、相談者の意向も踏まえて事実を確かめたうえで対処すること、大学のキャリアセンターなどと事例を共有して連携することを示しています。
| 窓口 | 使える人 | 相談できること |
|---|---|---|
| 大学のキャリアセンターなど | 在学中の学生 | 辞退の伝え方、引き止めやオワハラを受けたときの対応 |
| 新卒応援ハローワーク | 大学・大学院・短大・高専・専修学校などを卒業予定の学生と、卒業後おおむね3年以内の人 | 担当者制の就職相談。必要に応じて、心理的な悩みや不安を臨床心理士などに相談することもできる |
| 都道府県労働局・ハローワーク | 就職活動中の学生 | オワハラなどの相談 |
| 総合労働相談コーナー | 働く人・事業主のほか、学生・就活生も | 募集・採用を含む労働問題全般。予約なし・無料 |
新卒応援ハローワークは各都道府県に1か所以上、全国56か所にあり、利用は無料です。
参考:厚生労働省「新卒応援ハローワーク」
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
参考:内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査(令和7年度)報告書」
内定辞退は珍しいことではない|採用する側の受け止め方
辞退の連絡をためらう理由のひとつは、「自分だけが迷惑をかけているのでは」という気持ちでしょう。数字で見ると、内定や内々定を断る場面は、就職活動のなかで多くの人が通るものです。
- 約6割の学生が、複数社から内々定を受けている
- 大学側も、辞退する場合は連絡するよう学生に伝えている
- 入社前のミスマッチを防ぎたいと考える経営陣もいる
内閣府の2025年度調査では、公務員や教職員を志望する人を除いた大学4年生・大学院2年生2,732人のうち、8月1日時点で「複数社から内々定を受けた」が59.8%、「1社から内々定を受けた」が32.6%、「内々定は受けていない」が7.6%でした。複数の内々定を受けた人は、入社する1社を選べば、残りの会社には辞退を伝えることになります。

大学側も、辞退が起こることを前提に学生を指導しています。国公私立の大学などの団体でつくる就職問題懇談会は2026年3月の申合せで、複数の内々定を持ち続けるのは企業やほかの学生にとって望ましい行動とは言えないとして、希望先を絞り込むことや、辞退する場合は連絡することなど誠意ある対応を学生に指導するとしました。内定を受諾したあと、入社直前になって辞退する事例も見られるとして、節度ある行動も求めているのです。求められているのは辞退しないことではなく、決めたら連絡することです。
取材で経営陣から採用の話を聞いていると、入社してからのすれ違いをどう防ぐかに心を砕いている人が多いと感じます。madoguchi株式会社の福士雅也取締役COOは、採用で「お互いのミスマッチを防ぐこと」を最も重視していると話し、選考の進め方をこう説明しています。
会社の現実を隠さずに伝え、そのうえで決めてもらう。この考え方に立てば、学生が「合わない」と判断して辞退を伝えることは、入社後のミスマッチを防ぐ判断でもあります。
株式会社リオエンターテイメントデザインの竹林良太代表取締役は、これから入社する人に向けてこう話しています。
悩み抜いて1社を選んだのなら、選ばなかった会社に辞退を伝えることは、その道を自分で引き受ける最初の一歩です。熱狂ベンチャーナビでは、経営者や経営陣に、採用で何を大切にしているのか、どんな人と働きたいのかを聞いています。会社を選ぶ物差しを増やしたいときにどうぞ。
参考:内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等に関する調査(令和7年度)報告書」
参考:文部科学省「令和9年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(申合せ)」
内定辞退に関するよくある質問
内定辞退はマナー違反ですか?
辞退することそのものは、マナー違反ではありません。 内閣府の2025年度調査では、8月1日時点で複数社から内々定を受けていた学生が59.8%にのぼり、その多くは入社する1社以外に辞退を伝えることになります。避けたいのは、連絡をしないまま回答期限や入社日を迎えることでしょう。
内定辞退のメールに返信が来ないときは、どうすればいいですか?
数日たっても返信がなく、届いたかどうかが気になるなら、電話で確認しましょう。 採用担当者は多くの連絡に対応しているため、返信までに時間がかかることもあります。「〇月〇日に内定辞退のご連絡をメールでお送りしたのですが」と切り出し、届いていれば改めてお詫びを伝えて終えます。返信がないことを責めるような言い方は避けてください。
内定辞退はいつまでに伝えればいいですか?
辞退を決めたら、その日のうちに伝えるのが確実です。 民法第627条第1項は、期間の定めのない雇用について、各当事者はいつでも解約の申入れができ、申入れの日から2週間で雇用が終わると定めています。承諾の返事をする前なら、回答期限を待たずに連絡しましょう。
複数の内定を保留したまま考えてもいいですか?
入社先を決めるまで複数の内定を持つこと自体は珍しくありませんが、決めたら残りの会社には早めに辞退を伝えましょう。 2027年度卒業・修了予定者向けの政府の要請は、不必要に複数の内々定を保持する行為などは厳に慎むよう、大学が学生に周知することとしています。回答期限を延ばしてもらえるかどうかは、企業に率直に相談して構いません。
参考:内閣官房ほか「2027(令和9)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請等について」
内定を承諾したあとに辞退する人は、どのくらいいますか?
承諾後に辞退した人の割合をまとめた公的な統計は見当たりません。 一方で、大学側の申合せは、内定を受諾したあと、入社直前になって辞退する事例も見られるとして、学生に節度ある行動を求めています。承諾後の辞退も起こりうるものとして扱われているからこそ、早めの連絡と丁寧なお詫びが欠かせないのです。
参考:文部科学省「令和9年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業・修了予定者に係る就職について(申合せ)」
まとめ
内定を辞退すると決めたら、できるだけ早く採用担当者に伝えます。承諾前ならメールで、承諾後や入社日が近いときは電話で直接伝えてからメールでも送ると確実です。メールは件名に「内定辞退のご連絡」と氏名を入れ、本文はお礼・辞退の意思・お詫びの3つで組み立てます。理由の説明は一言で構いません。
承諾後でも、辞退を申し出ることはできます。民法第627条第1項は期間の定めのない雇用について働く側からの解約の申入れを認めており、厚生労働省も、内定辞退は基本的に問題ないとしたうえで、信義則に反しない誠実な対応を求めています。引き止めやオワハラで自分の意思を通しにくいと感じたら、大学のキャリアセンター、新卒応援ハローワーク、都道府県労働局に相談してください。
辞退の連絡は気が重いものです。それでも、短くても自分の言葉で伝えた一通は、選ばなかった会社との関係を気持ちよく締めくくってくれると、私たちは考えています。辞退したうえで就職活動を続けるなら、自己PRが思いつかない人へ|エピソード探し方と書き方も参考にしてください。
社会人になってから働き方を見直したくなったときや、転職活動で届いた内定のどれを選ぶか迷ったときは、転職エージェントに無料で相談することもできます。
