フリーランスとは?個人事業主との違い・主な職種・新法で守られること

フリーランスとは、特定の会社に雇用されず、仕事ごとに発注者と契約を結んで働く人のことです。会社員より働き方の自由度が高い一方で、収入や社会保険の手続きは自分で引き受けます。
意外なことに、「フリーランス」は法令上の用語ではありません。2024年に施行されたフリーランス新法でも、「特定受託事業者」という別の言葉で定められているのです。
この記事では、個人事業主・副業・業務委託との違いや主な職種、新法で発注者に課される義務、会社員との違いを整理します。
フリーランスとして独立するか、会社員として働き続けるかで迷っているなら、両方の選択肢を並べてから決めても遅くはありません。いまの経験を生かせる正社員の求人は、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
フリーランスとは|会社に雇われず、仕事ごとに契約して働く人
フリーランスは職業名でも資格名でもなく、働き方を表す言葉です。まず押さえておきたいのは次の3点です。
- 会社と雇用契約を結ばず、仕事ごとの契約で働く
- 法令上の用語ではなく、資料によって定義が少しずつ違う
- フリーランス新法では「特定受託事業者」と呼ばれる
雇用契約ではなく、仕事ごとの契約で働く
会社員は会社と雇用契約を結び、会社の指示のもとで働いて給与を受け取ります。これに対してフリーランスは、発注者から仕事を受けるたびに契約を結び、成果物の納品や作業の遂行に対して報酬を受け取る働き方。この契約は一般に業務委託契約と呼ばれ、国のガイドラインでも請負契約や準委任契約がその例として挙げられています。
業務委託で働くフリーランスは、本来、働く時間や場所、仕事の進め方を発注者から細かく指示される関係にはありません。 そのぶん、どの仕事をいくらで受けるかも自分で決めることになるのです。
定義は資料によって違い、法律では「特定受託事業者」と呼ばれる
公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省のガイドラインは、「フリーランス」とは法令上の用語ではなく、定義は様々であるとしたうえで、ガイドラインとしての定義を置いています。統計や法律も、それぞれ次のように範囲を決めています。
| 資料 | フリーランスにあたる人 | 範囲の特徴 |
|---|---|---|
| 国のガイドライン | 実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者 | 消費者向けの仕事も含む。自宅の一部やネット上の店舗は実店舗に数えない |
| 総務省「就業構造基本調査」(2022年) | 実店舗がなく、雇人もいない自営業主又は一人社長であって、その仕事で収入を得る者 | 「スキルを活用して」は条件にせず、農林漁業は含めない |
| フリーランス新法(2024年11月施行) | 業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しない個人と、代表者のほかに役員も従業員もいない法人 | 事業者から業務委託を受ける取引が対象。消費者との取引は対象外 |
ふだんフリーランスと呼ばれている人でも、法律の対象になるかどうかは別に確かめる必要があります。
参考:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」
参考:総務省統計局「統計Today No.197」
フリーランスと個人事業主・副業・業務委託の違い
似た言葉が多いのは、それぞれが別の物差しで働き方を表しているからです。違いは次の3点に集約できます。
- 個人事業主は「事業の形」、フリーランスは「働き方」
- 副業でも、事業者として業務委託を受けていればフリーランスとしての取引
- 業務委託は「契約の形」で、会社同士の取引でも使われる
| 言葉 | 何を表す言葉か | フリーランスとの関係 |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 会社をつくらずに、個人で事業を営む人 | 個人で働くフリーランスは、税の手続き上は個人事業主にあたる |
| 一人社長 | 自分のほかに役員も従業員もいない会社の代表者 | 法人でも、フリーランス新法の対象に含まれる |
| 副業 | 本業とは別に収入を得る仕事 | 会社員が副業で業務委託を受ければ、フリーランスとしての取引になる |
| 業務委託 | 仕事の完成や作業の遂行を外部に任せる契約 | フリーランスが事業者から仕事を受けるときの代表的な契約。会社同士でも使われる |
| 会社員 | 会社と雇用契約を結んで働く人 | 雇用契約か業務委託かが、いちばん大きな違い |
個人事業主との違い
個人事業主は、会社(法人)をつくらずに個人で事業を営む人を指す言葉です。新たに事業を始めた人は、事業を始めた年分の確定申告期限までに「個人事業の開業・廃業等届出書」を納税地の税務署へ出し、事業で得た所得は確定申告で申告します。個人で事業を営むフリーランスは、税金の面では個人事業主として扱われます。
ただし、2つの言葉はぴったり重なるわけではありません。店舗を構えて人を雇っている個人経営のお店は、個人事業主ではあってもフリーランスの定義からは外れます。反対に、会社をつくって一人で経営する一人社長は個人事業主ではないものの、役員も従業員もいなければフリーランス新法の対象に含まれるのです。
参考:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
副業との違い
会社員が本業のかたわら、自分の事業として他社から仕事を受けている場合、その副業はフリーランスとしての取引になります。公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省のリーフレットも、雇用されている個人が副業で他の事業者から業務委託を受けている場合は、フリーランス新法のフリーランスにあたると明記しています。
会社員でも、副業の所得が増えると確定申告が必要です。 給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象になっている人は、給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると申告しなければなりません。
参考:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」リーフレット
参考:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
業務委託との違い
業務委託は、働き方ではなく契約の形を表す言葉です。会社が別の会社に仕事を頼むときにも使われるため、業務委託で働く人がすべてフリーランスというわけではありません。フリーランス新法も「業務委託」を、事業者がその事業のために他の事業者に、物品の製造や情報成果物の作成、役務の提供を委託することと定めています。
参考:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」
フリーランスの人数は本業で209万人|公的統計で見る主な職種
フリーランスの人数は、資料によって200万人台から400万人台まで開きがあります。数字を見るときのポイントは次の3つです。
- 国の基幹統計では、本業がフリーランスの人は209万人
- 内閣官房の調査では462万人で、差が大きいのは副業の数え方
- 人数が多いのは建設業、割合が高いのは専門・技術サービスの分野
本業がフリーランスの人は209万人
総務省の就業構造基本調査は、全国の約54万世帯を対象にした国の基幹統計調査で、2022年の調査で初めてフリーランスの数を把握しました。本業がフリーランスの人は209万人で、有業者に占める割合は3.1%です。 男性が146万人、女性が63万人。副業だけがフリーランスの48万人を合わせると、総数は257万人になります。
調査によって人数が違うのは、定義と調べ方が違うから
内閣官房日本経済再生総合事務局の「フリーランス実態調査結果」(2020年)は、フリーランスを462万人と試算しています。内訳は本業214万人、副業248万人。本業は就業構造基本調査の209万人とほぼ同じ水準ですが、副業は248万人と48万人で大きく違います。
この調査はWebモニターを使ったインターネット調査で、自身で事業等を営んでいる、従業員を雇用していない、実店舗を持たない、農林漁業従事者ではない、という条件で数えたものです。どちらかが間違っているのではなく、何をどう数えたかが違うと受け取るのが自然でしょう。 人数を引用するときは、調査名と年、本業だけか副業を含むかをセットで確かめてください。
フリーランスが多い職種と産業
就業構造基本調査では、本業がフリーランスの人を産業別にも集計しています。人数の多い上位10の産業を並べると次のとおりです。
| 産業 | 本業がフリーランスの人数 | 有業者に占める割合 |
|---|---|---|
| 建設業 | 49.7万人 | 10.7% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 36.7万人 | 13.5% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 18.2万人 | 4.0% |
| 卸売業,小売業 | 17.5万人 | 1.8% |
| 不動産業,物品賃貸業 | 16.4万人 | 10.7% |
| 製造業 | 16.2万人 | 1.5% |
| 情報通信業 | 15.3万人 | 5.2% |
| 教育,学習支援業 | 12.5万人 | 3.7% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 10.7万人 | 4.8% |
| 運輸業,郵便業 | 9.4万人 | 2.7% |
人数が最も多いのは建設業の49.7万人で、人を雇わず、店舗も持たずに現場ごとの仕事を請け負う職人も、この調査の定義に当てはまればフリーランスに数えられます。割合が最も高いのは学術研究,専門・技術サービス業の13.5%。日本標準産業分類では、この分類にデザイン業、著述家業、翻訳業、通訳業、写真業、経営コンサルタント業、法律事務所や税理士事務所などが含まれます。
ITエンジニアやWebの仕事が入る情報通信業には、ソフトウェア業やインターネット附随サービス業などがあります。学習塾や音楽・スポーツの教室は教育,学習支援業、美容業は生活関連サービス業,娯楽業、軽貨物の配送は運輸業,郵便業という分類です。美容師の場合のフリーランスという働き方は、美容師のキャリアパス|トップスタイリスト&スキルアップ術でも取り上げています。
参考:総務省統計局「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」
参考:総務省統計局「統計Today No.197」
参考:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」
参考:総務省「日本標準産業分類(令和5年7月改定)分類項目表」
フリーランス新法とは|2024年11月施行、発注者に7つの義務
フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」で、通称はフリーランス・事業者間取引適正化等法。2024年11月1日に施行されました。フリーランスに仕事を頼む事業者に、取引と働く環境の両面でルールを守らせる法律です。
- 守られるのは、従業員を使わずに事業者から仕事を受けるフリーランス
- 発注者の義務は、従業員の有無と委託期間の長さで増えていく
- 契約が業務委託でも、実態が労働者なら労働基準法などが適用される
法律が守る「フリーランス」の範囲
法律の中でフリーランスにあたるのが「特定受託事業者」です。条文はこう定めています。
「業務委託の相手方である事業者」は、事業者から仕事を頼まれた側のことです。「従業員を使用しない」の従業員は、週の労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれる人を指し、短時間・短期間だけ人を雇う場合は含みません。二号は、代表者のほかに役員も従業員もいない一人社長の会社のこと。
一方で、ふだんフリーランスと呼ばれる人でも、従業員を雇っている人や、消費者だけを相手にしている人はこの法律の対象外です。 たとえば同じカメラマンでも、企業から宣材写真の撮影を頼まれた仕事は対象になり、消費者から家族写真の撮影を頼まれた仕事や、自作の写真集をネットで売ることは対象になりません。
参考:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法」リーフレット
発注者に課される7つの義務
従業員を使わない個人や一人社長の会社が発注する場合、義務項目は取引条件の明示だけ。フリーランスがフリーランスに仕事を頼む場合もこれにあたります。従業員を使う発注者や役員が2人以上いる会社には支払期日などの義務が加わり、委託期間が長くなるほど守る項目が増えていきます。
取引条件の明示は、業務の内容、報酬の額、支払期日などを、業務委託をしたらすぐに書面やメールなどで示す義務です。報酬は、成果物などを受け取った日から60日以内のできる限り早い日を支払期日に定め、その日までに支払わなければなりません。1か月以上の業務委託では、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しの7つが禁止行為。募集広告では虚偽や誤解を生む表示をせず内容を正確で最新に保つこと、ハラスメントについては相談に応じる体制を整えることも義務です。6か月以上の業務委託では、育児や介護と両立できるよう申出に応じて配慮すること、契約を途中で解除したり更新しなかったりするときは原則30日前までに予告することも求められます。

支払期日のルールは、条文ではこう書かれています。
「特定業務委託事業者」は従業員を使う発注者や役員が2人以上いる会社、「給付を受領した日」は成果物を受け取った日で、作業などの役務なら提供を受けた日のこと。発注者が検査(検収)を終えていなくても、60日の期限は受け取った日から数え始めます。 支払期日を決めていなかったときは、受け取った日が支払期日とみなされる決まりです。
義務か努力義務かで扱いが変わる項目もあります。育児介護等への配慮は、6か月以上の業務委託では「必要な配慮をしなければならない」義務です。それより短い業務委託では、第13条第2項が「配慮をするよう努めなければならない」と定める努力義務にとどまります。
施行後は行政の調査も進んでいます。公正取引委員会が公表した令和7年度の運用状況では、同委員会による勧告が10件、指導が1,542件。違反の類型別では、期日における報酬の支払義務に関するものが41.6%、取引条件の明示義務に関するものが41.3%を占めました。発注者がこれらの義務を守っているかどうかは、取引先を選ぶときの目安にもなります。 条件をメールなどで出してくれない、支払期日をはっきりさせない相手とは、仕事を始める前に確かめておくと安心です。
参考:公正取引委員会「令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況及びフリーランスに係る取引の適正化に向けた取組」
契約が業務委託でも「労働者」と判断されることがある
フリーランス新法は、働き方の実態が労働者にあたる人には適用されません。その場合に使われるのは、労働基準法などの労働関係法令です。労働者にあたるかどうかは、請負や委任といった契約の名前では決まりません。厚生労働省は、契約の内容や仕事の進め方、報酬の決まり方などから一件ずつ総合的に判断するとしています。
判断の中心になるのは、仕事の依頼を断る自由があるか、仕事の進め方について指揮監督を受けているか、勤務場所や勤務時間を拘束されているか、報酬が指示を受けて働いたことへの対価になっているか、といった点です。業務委託のはずなのに、会社員と同じように時間と場所を決められ、細かく指示を受けているなら、労働者にあたる可能性があります。 新法の施行に合わせて、全国の労働基準監督署には労働者性に疑義がある人のための相談窓口が設けられました。
参考:厚生労働省「労働者とは」
フリーランスと会社員の違い|収入・社会保険・税金を自分で引き受ける
会社員からフリーランスになると、会社が代わりにしてくれていた手続きの多くを自分で担うことになります。違いが大きいのは次の3つです。
- 収入は仕事ごとに決まり、取引が途切れると止まる
- 年金と健康保険は自分で切り替え、保険料の会社負担がなくなる
- 労災は特別加入で備え、税金は確定申告で自分で納める
| 項目 | 会社員 | フリーランス |
|---|---|---|
| 契約 | 会社と雇用契約を結ぶ | 発注者と仕事ごとに業務委託契約を結ぶ |
| 収入 | 毎月の給与として支払われる | 仕事ごとの報酬で、取引が途切れれば止まる |
| 労働時間・休日 | 労働基準法のルールが適用される | 労働者でなければ適用されず、自分で管理する |
| 年金 | 厚生年金。保険料は会社と半分ずつ | 国民年金の第1号被保険者。保険料は全額自分で払う |
| 健康保険 | 勤め先の健康保険。保険料は会社と分担 | 国民健康保険などに自分で加入する |
| 労災保険 | 仕事中や通勤中のけがなどが補償の対象 | 特別加入すれば補償を受けられる |
| 税金 | 給与から天引きされ、年末調整で精算 | 1年分の所得を確定申告し、自分で納める |
収入は仕事ごとに決まり、取引先の数に左右される
内閣官房の2020年の調査で、フリーランスとして働くうえでの障壁を複数回答で聞くと、「収入が少ない・安定しない」が59.0%で最多でした。本業かつ世帯の主たる生計者であるフリーランスの年収は「200万円以上300万円未満」が19%で最も多く、この年収は売上から必要な経費などを差し引いた所得の額を指します。
取引先の数も、収入の安定を左右します。 事業者から業務委託を受けて働くフリーランスのうち、直近1年の取引先が1社だけという人は40.4%でした。取引先が1社しかない状態は、その契約が終わった時点で収入の大部分を一度に失いかねない状態でもあります。
参考:内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」
年金と健康保険は自分で切り替える
会社を辞めて自営業者などになった人は、配偶者の扶養に入る場合などを除き、国民年金の第1号被保険者として市区町村の窓口で手続きをします。厚生年金の保険料は会社と本人が半分ずつ負担していましたが、国民年金の保険料は全額を自分で払うもの。令和8年度の国民年金保険料は月額17,920円です。
健康保険は、勤め先の健康保険を個人で続ける任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者の3つから選びます。協会けんぽの任意継続は、退職日までに被保険者期間が継続して2か月以上あれば、退職日の翌日から20日以内の手続きで2年間続けられる仕組み。ただし会社が負担していた分も自分で払うため、保険料は原則として退職前の2倍になります。
参考:日本年金機構「会社を退職したときの国民年金の手続き」
参考:日本年金機構「国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?」
参考:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
参考:全国健康保険協会「任意継続」
労災保険は特別加入で備えられる
雇われていないフリーランスは、会社員と違って、そのままでは労災保険の対象外です。2024年11月1日からは、企業などから業務委託を受けているフリーランスであれば、業種や職種を問わず労災保険に特別加入できるようになりました。申し込みは、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体を通じて行います。
参考:厚生労働省「フリーランスの労災保険の特別加入について」
税金は確定申告で自分で納める
フリーランスは、1月1日から12月31日までの1年間の所得と税額を自分で計算し、原則として翌年2月16日から3月15日までに確定申告をして納めます。
帳簿をつけて申告する青色申告を選ぶと、要件に応じて最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。 承認申請書の期限は原則としてその年の3月15日まで、1月16日以後に新しく業務を始めた場合は開始日から2か月以内です。
参考:国税庁「No.2020 確定申告」
参考:国税庁「No.2070 青色申告制度」
フリーランスが困ったときの公的な相談窓口
取引のトラブルは、一人で抱え込まずに公的な窓口へ相談できます。内容によって窓口が分かれているので、使い分けを押さえておきましょう。
- 契約や報酬のトラブル全般は「フリーランス・トラブル110番」
- 新法違反の申出は、取引の内容なら公正取引委員会・中小企業庁、働く環境なら厚生労働省
- 実態が労働者に近いと感じたら労働基準監督署
| 窓口 | 相談できること | 受付 |
|---|---|---|
| フリーランス・トラブル110番 | 契約や報酬など取引上のトラブル全般。弁護士に無料で相談でき、和解あっせんも利用できる | 電話0120-532-110(9:30〜16:30、土日祝日を除く)、メール、Webビデオ通話 |
| 公正取引委員会・中小企業庁 | 取引条件の明示、支払期日、禁止行為など、新法の取引に関する違反の申出 | オンラインの申出受付フォーム、郵送 |
| 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | 募集情報、育児介護等への配慮、ハラスメント対策、中途解除の予告に関する違反の申出・相談 | オンラインの申出受付フォーム、郵送。相談は各労働局へ |
| 労働基準監督署 | 業務委託でも働き方の実態が労働者に近い場合の、労働基準法などの違反の相談 | 平日8時30分〜17時15分 |
フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省の委託事業として第二東京弁護士会が運営する窓口で、匿名でも相談できます。令和7年度に寄せられた相談は13,400件。令和8年4〜8月の相談内容では「報酬の支払い」が30.9%で最も多く、次いで「契約条件の明示」が15.6%でした。
使い分けで知っておきたいのは、行政への申出が法律違反を正すための手続きだという点です。公正取引委員会の申出窓口も、当事者同士の話し合いの仲裁や和解などの仲介はできないと案内しています。報酬を払ってほしい、話し合いで解決したいという場合は、110番の和解あっせんが選択肢になります。 なお、110番の弁護士が代理人になって相手と直接交渉することはありません。相談の前に、発注のメールや契約書、納品の記録、やり取りの履歴をそろえておくと、話が早く進むでしょう。
参考:第二東京弁護士会「フリーランス・トラブル110番」
参考:厚生労働省「フリーランス・トラブル110番の相談及び和解あっせん件数」
参考:公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法の違反被疑事実についての申出窓口」
参考:厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法の違反被疑事実についての申出窓口」
フリーランスと会社員、どちらが向いているかの判断軸
どちらが正解ということはなく、いまの自分の状態と、何を優先したいかで向き不向きは変わります。正直なところ、働いてみるまで分からない部分も残るでしょう。それでも、次の5つの軸で照らすと判断しやすくなります。
- 仕事を取ってくる経路があるか
- 収入の波を受け止められるか
- 人に売れるスキルと実績があるか
- 契約や請求、申告を自分で回せるか
- 組織の中で学ぶ環境をどれだけ求めるか
| 判断軸 | フリーランスが合いやすい状態 | 会社員が合いやすい状態 |
|---|---|---|
| 仕事の取り方 | 取引先や紹介など、仕事が入ってくる経路がある | 仕事は会社から割り振られるほうが力を出せる |
| 収入の波 | 収入が途切れる時期に備えた蓄えがあり、波を受け止められる | 毎月決まった収入を前提に生活を組み立てたい |
| スキル | 人に売れる専門スキルと、見せられる実績がある | 会社の仕事を通じて、経験の幅とスキルを広げたい |
| 事務とお金 | 契約・請求・確定申告を自分で回せる | 手続きは会社に任せて、仕事そのものに集中したい |
| 学び方 | 自分で調べ、仕事を通じて学んでいける | 先輩や上司から体系立てて教わりたい |
総務省の就業構造基本調査(2022年)で、本業がフリーランスの人が今の働き方を選んだ主な理由を見ると、「専門的な技能等を生かせるから」32.5%と「自分の都合のよい時間に働きたいから」29.5%が上位を占めました。「正規の職員・従業員の仕事がないから」は3.5%にとどまります。多くの人は、技能を生かすため、時間を自分で決めるために、この働き方を選んでいるということです。
どちらの道を選ぶにしても、伸びる人に共通する行動は成長が早い人の特徴9選|共通点と今日からの行動にまとめています。
フリーランスを経験した経営者は、働き方をどう見ているか
私たちが話を聞いてきた経営者の中にも、独立する前にフリーランスとして働いた人がいます。前職で5年働いたあとに独立し、半年間フリーランスとして活動した株式会社LiKGの近藤光生社長は、その時期をこう振り返っています。
株式会社mafの深江暢社長は、フリーランスとして仕事を受けていた時期に、取引先から与信の関係で個人には発注できないと言われて会社を設立しました。フリーランスが多いアニメ業界にあって、アニメーターを社員として雇う道を選んだ経営者です。
反対に、財務・経理・税務の分野でフリーランスの活用を広げている株式会社PRIMASの鈴木翔晴社長は、企業側の見方についてこう話しています。
3人の話を並べると、同じ仕事でもフリーランスとして受ける道と、会社員として担う道の両方があることが見えてきます。働き方の名前より、そこで自分のスキルが育ち、正当に評価される仕組みがあるかどうかで選ぶほうが、納得のいく選択になりやすいはずです。
熱狂ベンチャーナビで話を聞いてきた経営者の会社は、創業まもない段階から数百人規模までさまざまです。どんな人と、どんな契約の形で一緒に働いているのかという話も、働き方を選ぶ手がかりになるでしょう。
フリーランスに関するよくある質問
フリーランスと個人事業主は同じ意味ですか?
同じ意味ではありません。 フリーランスは雇われずに仕事ごとに契約する働き方、個人事業主は会社をつくらずに個人で事業を営む人を指す言葉です。個人で働くフリーランスは税の手続き上は個人事業主にあたりますが、店舗を構えて人を雇う個人経営の店主はフリーランスの定義から外れます。
フリーランスになるのに資格や届け出は必要ですか?
フリーランスという働き方そのものに資格は要りません。 ただし、弁護士や税理士のように、資格がなければできない仕事はあります。届け出は、事業を始めた年分の確定申告期限までに「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署へ出すのが基本。青色申告をするなら、承認申請書はそれより早く、1月16日以後に始めた場合は開始日から2か月以内に出します。
副業でもフリーランス新法の対象になりますか?
対象です。 会社員として雇われている人が、副業で行う事業について他の事業者から業務委託を受けている場合は、フリーランス新法のフリーランスにあたると、公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省のリーフレットに明記されています。一方、副業先と雇用契約を結んでアルバイトとして働く場合は業務委託ではないため、新法ではなく労働基準法などのルールが適用されます。
会社を辞めてフリーランスになったら、年金や健康保険の手続きは必要ですか?
必要です。 次の会社にすぐ入らずに自営業者などになる場合は、配偶者の扶養に入る場合などを除いて、国民年金の第1号被保険者として市区町村で手続きをします。健康保険は、任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者のいずれかを選ぶことになります。協会けんぽの任意継続を選ぶなら、退職日の翌日から20日以内の手続きが必要で、保険料は原則として退職前の2倍です。
まとめ
フリーランスとは、特定の会社に雇用されず、仕事ごとに契約して働く人のことです。法令上の用語ではなく、ガイドライン、統計、フリーランス新法でそれぞれ定義が少しずつ違います。本業がフリーランスの人は2022年時点で209万人で、建設業から専門・技術サービス、ITまで幅広い分野にいます。
2024年11月に施行されたフリーランス新法は、発注者に取引条件の明示や60日以内の支払期日の設定などを義務づけました。その一方で、年金や健康保険の切り替え、労災の特別加入、確定申告といった手続きは自分で引き受けることになります。困ったときに頼れるのが、フリーランス・トラブル110番などの公的な窓口です。
取材で経営者の話を聞いていると、会社員かフリーランスかを一度で決めきったというより、そのときの自分に合う働き方を選び直してきた人が多いと感じます。まずは判断軸に照らして、いまの自分の状態を確かめるところから始めてみてください。
フリーランスとして独立するにしても、会社員として次の職場を探すにしても、正社員の求人にどんな選択肢があるかを知っておくと、両方を比べたうえで決められます。

