異業種転職とは?異職種との違いと難易度、転職後の賃金の変化を統計で確認

異業種転職とは、前の勤め先と違う業界(産業)の会社へ移る転職のことです。職種が変わる「異職種転職」とは別の軸で、営業のまま業界だけを移る形も異業種転職に入ります。
業界を移る人は、実は少数派ではありません。国の調査で前職が雇用者だった転職入職者を見ると、約6割は前職と違う産業(大分類)から移ってきた人でした。
この記事では、用語の整理から、業界を移った人の賃金の動き、難易度を左右する要素、進め方までを順に確かめます。
業界を変えたときに、自分の経験がどこまで評価されるのか。それは求人を見比べてみないと分かりにくい部分です。どの業界でどんな条件が狙えるかは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
異業種転職とは?異職種転職との違いと4つの組み合わせ
異業種転職は「どの業界で働くか」が変わる転職、異職種転職は「どんな仕事をするか」が変わる転職です。 2つは別々の軸なので、組み合わせると4通りになります。
- 異業種は業界(産業)、異職種は仕事の中身(職種)が変わる
- 業界と職種の組み合わせで、転職は4つの型に分かれる
- 型によって、前職から持ち越せるものと新しく覚えるものが変わる
| 観点 | 異業種転職 | 異職種転職 |
|---|---|---|
| 変わるもの | 勤め先の業界(産業) | 担当する仕事の中身(職種) |
| 例 | 食品メーカーの営業から、IT企業の営業へ | 食品メーカーの営業から、別の食品メーカーの商品企画へ |
| 持ち越しやすいもの | 職種の知識と仕事の進め方 | 業界の知識、商品や取引先への理解 |
| 新しく覚えるもの | 業界の商習慣、顧客、専門用語 | 職種の専門知識と道具の使い方 |
「業種」と「業界」はほぼ同じ意味で使われています。公的統計での呼び方は「産業」で、総務省の日本標準産業分類が区分の土台です。この記事で使う厚生労働省の雇用動向調査も、建設業、製造業、情報通信業、卸売業,小売業、医療,福祉など16の大分類で産業を集計しています。
4つの型のどれに当たるかで、準備の中身が変わります。 業界も職種も同じなら経験者としての転職。業界だけを変えるなら職種の経験が武器になり、職種だけを変えるなら業界の知識が武器になります。両方を変える場合、前職から持ち越せるのは、仕事の進め方や人との関わり方といった、職種や業界の名前の外側にある力が中心です。


この「名前の外側にある力」は、厚生労働省が「ポータブルスキル」として9つの要素に整理しています。中身と棚卸しの手順は、ポータブルスキルとは?9要素の一覧と例で詳しく扱っています。
参考:総務省「日本標準産業分類」
参考:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」
業界を変える転職はどれくらいあるのか
「業界を変えるのは珍しいのでは」と感じる人は多いのですが、公的統計を見るかぎり、むしろ業界を移る人のほうが多数です。
- 前職と違う産業(大分類)に移った人は57.0%
- 前職と違う職業(大分類)に移った人は34.4%で、業界を変えた人より少ない
- 同じ産業に入る割合は、前職の主な産業で比べると2割前後から7割まで開く
転職入職者の57.0%が、前職と違う産業に移っている
厚生労働省の令和7年雇用動向調査は、常用労働者5人以上の事業所について、入職者の前職の産業と現職の産業を集計しています。e-Statで公表されている結果表から、前職が雇用者で調査時点も在籍していた転職入職者447万5,900人を見ると、前職と同じ産業(大分類)に入ったのは192万3,200人。割合にすると43.0%で、残る57.0%にあたる255万2,700人は、前職と違う産業から移ってきた人でした(千人単位の表から編集部が計算)。
同じ方法で職業(大分類)を見ると、前職と同じ職業に就いた人は293万8,100人で65.6%、違う職業に移った人は34.4%です。業界を変えた人は、職業を変えた人よりずっと多いことになります。 業界を移っても、営業から営業、事務から事務のように、仕事の中身は持ち越している人が少なくないと読めます。


ただし、どちらも大分類で数えた結果です。製造業の中で扱う製品が変わる場合や、サービス業(他に分類されないもの)の中で事業が変わる場合は、同じ産業として数えられます。職業の大分類も「事務従事者」「販売従事者」のような大きなくくりです。区分の粗さが産業と職業で違う点は、差し引いて受け取ってください。
前職の産業によって、とどまる割合は大きく違う
前職の産業ごとに、同じ産業へ入った人の割合を出すと、開きがはっきり出ます。前職の人数が10万人以上の産業について並べると次のとおりです。
| 前職の産業 | 前職がこの産業だった転職入職者 | 同じ産業に入った人 | 同じ産業に入った割合 |
|---|---|---|---|
| 医療,福祉 | 75万5,200人 | 53万2,200人 | 70.5% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 51万3,200人 | 26万6,300人 | 51.9% |
| 教育,学習支援業 | 28万4,200人 | 13万8,200人 | 48.6% |
| 情報通信業 | 16万人 | 7万2,600人 | 45.4% |
| 卸売業,小売業 | 45万1,200人 | 19万5,600人 | 43.4% |
| 製造業 | 65万800人 | 27万4,700人 | 42.2% |
| 運輸業,郵便業 | 20万7,300人 | 8万5,300人 | 41.1% |
| 建設業 | 20万5,300人 | 7万8,500人 | 38.2% |
| サービス業(他に分類されないもの) | 48万8,400人 | 15万3,800人 | 31.5% |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 13万1,800人 | 2万7,200人 | 20.6% |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 20万8,400人 | 4万2,700人 | 20.5% |
| 金融業,保険業 | 16万3,400人 | 3万2,200人 | 19.7% |
医療,福祉の出身者は7割が同じ産業に戻る一方、金融業,保険業や生活関連サービス業,娯楽業の出身者で同じ産業に入ったのは2割前後です。 裏を返せば、これらの産業の出身者は、約8割が別の産業で次の仕事に就いていることになります。


表の割合は、移った人の数から見た結果です。同じ産業に戻りにくい理由が「求人が少ないから」なのか「本人が業界を離れたかったから」なのかまでは、この統計からは分かりません。いまの業界の出身者が、どれくらい外へ移っているかの目安として使ってください。
参考:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」
参考:厚生労働省「雇用動向調査 令和7年 年計 第10-1表 現職産業(大分類)、企業規模(GT,E)、性、年齢階級、前職産業(大分類)、就業経験(経験1年未満)、就業形態、雇用形態、前従業上の地位別入職者数(就業経験有りで調査時在籍者)」
参考:厚生労働省「雇用動向調査 令和7年 年計 第19-1表 職業(大分類)、企業規模(生産工程)、性、年齢階級、前職職業(大分類)、前職企業規模(生産工程)、就業形態・前従業上の地位別 入職者数 及び 構成比(就業経験有りで調査時在籍者で前職雇用者)」
業界を変える転職で、賃金はどう動くのか
業界を移ると年収は下がる、というイメージを持つ人もいるでしょう。統計で言える範囲を確かめておきます。
- 転職入職者全体では、賃金が増えた人が減った人を9.8ポイント上回る
- 増加が減少を上回るのは45〜49歳まで。50〜54歳では減少が上回る
- 採る側が賃金を決めるときに最も多く考慮するのは「これまでの経験・能力・知識」
増えた人は40.8%、減った人は31.0%
厚生労働省の令和7年雇用動向調査によると、2025年の1年間に転職した人(前職が雇用者で調査時点も在籍していた人)のうち、前職より賃金が「増加」した人は40.8%、「変わらない」は25.5%、「減少」は31.0%でした。増加が減少を9.8ポイント上回っています。 内訳では「1割以上の増加」が28.2%、「1割以上の減少」が21.9%です。
ひとつ断っておくと、この集計は業界を変えたかどうかで分けたものではありません。異業種へ移った人と同じ業界で移った人を合わせた、転職入職者全体の数字です。業界を変えた人に限った賃金の動きは、ここからは読み取れません。
50代前半で、増加と減少が入れ替わる
同じ調査を年齢別に見ると、様子が変わってきます。
| 年齢 | 増加 | 減少 | 増加−減少 |
|---|---|---|---|
| 19歳以下 | 63.6% | 15.4% | 48.2ポイント |
| 20〜24歳 | 55.2% | 17.5% | 37.7ポイント |
| 25〜29歳 | 49.8% | 23.9% | 25.9ポイント |
| 30〜34歳 | 48.6% | 29.0% | 19.6ポイント |
| 35〜39歳 | 43.5% | 23.9% | 19.6ポイント |
| 40〜44歳 | 44.9% | 27.4% | 17.5ポイント |
| 45〜49歳 | 41.1% | 30.1% | 11.0ポイント |
| 50〜54歳 | 29.4% | 42.0% | −12.6ポイント |
| 55〜59歳 | 25.5% | 38.9% | −13.4ポイント |
| 60〜64歳 | 21.1% | 54.3% | −33.2ポイント |
| 65歳以上 | 22.2% | 42.3% | −20.1ポイント |
45〜49歳までは、どの年齢でも増加が減少を上回っています。 差が大きいのは20代までで、30代から40代は11.0〜19.6ポイントの幅に収まります。一方で50〜54歳になると減少が42.0%となり、増加の29.4%を上回りました。


雇用形態をそろえた比較もあります。雇用期間の定めのない一般労働者どうしの移動に限ると、増加44.5%に対し減少29.0%で、差は15.5ポイントでした(就業形態が前職と異なる人を除いた集計)。
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 3 転職入職者の状況」
採る側は、前職の賃金より経験を見て決めている
賃金がどう決まるかは、採る側の調査に出ています。厚生労働省の令和7年転職者実態調査(事業所調査・有効回答9,154事業所)で、転職者の賃金を決める際に考慮した要素を見ると、「これまでの経験・能力・知識」が59.2%で最も多く、「年齢」35.3%、「賃金の世間相場」34.2%、「免許・資格」30.6%、「前職の賃金」27.0%と続きます(転職者がいる事業所についての複数回答)。最も重視した要素も「これまでの経験・能力・知識」で38.4%でした。
業界を変える転職では、前職の経験のうち、新しい業界で使える部分がどれだけあるかが賃金の出発点になると考えられます。前職の年収をそのまま引き継げるとは限りません。前職の賃金を考慮した事業所は27.0%で、経験・能力・知識を考慮した59.2%の半分に届かない水準でした。
参考:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」
異業種転職の難易度を左右する3つの要素
異業種転職が難しいかどうかは、人によって大きく違います。差がつくのは主に次の3つです。
- 年齢:法律は年齢不問が原則だが、例外として認められた年齢制限がある
- 職種を残すか変えるか:職種によって、採る側が見ているものが違う
- 持ち運べる経験を言葉にできるか:採る側が賃金を決める軸と重なる
年齢:募集は年齢不問が原則。ただし例外がある
会社が労働者を募集・採用するとき、年齢にかかわりなく均等な機会を与えることは法律上の義務です。 根拠は労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)の第9条で、条文はこう書かれています。
「均等な機会を与えなければならない」とあるとおり、努力義務ではなく義務です。ただし、条文中の「厚生労働省令で定めるとき」には例外があります。同法の施行規則第1条の3は、定年を下回ることを条件にする場合や、法令で年齢による就業制限がある業務などを挙げています。異業種転職で関係が深いのは、長期間の勤続でキャリアを形成するために、若年者などに限って募集する例外です。 期間の定めのない雇用であること、職業経験を条件にしないこと、新卒者と同じ処遇で募集することなどが要件になっています。「〇歳未満・未経験歓迎」という求人は、この例外にもとづいている場合があります。
また、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の第20条第1項は、やむを得ない理由で一定の年齢(65歳以下)を下回ることを条件にするとき、会社は求職者にその理由を示さなければならないと定めています。年齢の条件がついた求人を見かけたら、どんな理由が示されているかを確かめてください。
賃金の面では、先に見たとおり、令和7年雇用動向調査では45〜49歳まで賃金の増加が減少を上回り、50〜54歳で逆転しています。年齢によって賃金の動き方が変わることは、統計にも表れているわけです。ただ、年齢だけで異業種転職が閉ざされるわけではないことも、条文から読み取れます。
参考:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
参考:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則」
参考:e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 3 転職入職者の状況」
職種を残すか変えるか:事務・販売・サービスでは適応力も見られている
厚生労働省の令和7年転職者実態調査で、事業所が転職者を採用した理由を職種ごとに見ると、職種によって見ているものが違います(3つまでの複数回答・その職種で転職者を採用した事業所が対象)。
| 職種 | 専門知識・能力があるから | 経験を活かし即戦力になるから | 職場への適応力があるから | 離職者の補充のため |
|---|---|---|---|---|
| 管理的な仕事 | 50.2% | 60.7% | 19.1% | 30.9% |
| 専門的・技術的な仕事 | 51.2% | 64.1% | 27.6% | 44.3% |
| 事務的な仕事 | 22.6% | 41.5% | 36.5% | 51.8% |
| 販売の仕事 | 20.7% | 52.9% | 35.3% | 54.6% |
| サービスの仕事 | 16.6% | 41.7% | 31.6% | 60.8% |
| 保安、生産工程、輸送・機械運転、建設・採掘、運搬・清掃・包装等、その他の仕事 | 18.3% | 41.5% | 32.8% | 59.4% |
管理的な仕事と専門的・技術的な仕事では、専門知識・能力が5割を超えます。 職種そのものを変えて専門職に入る場合は、知識の裏づけが求められやすいということです。一方、事務・販売・サービスなどでは、職場への適応力が3割台と、専門知識・能力(2割前後)を上回りました。こうした職種では、専門知識より、新しい職場になじめるかどうかも採用の理由に挙がっています。


先に見たとおり、令和7年雇用動向調査の結果表から計算すると、職業(大分類)を変えた転職入職者は34.4%で、産業(大分類)を変えた57.0%より少数でした。業界と職種の両方を一度に変えるより、どちらかを残すほうが、前職の経験を採用の理由として示しやすくなります。 両方を変えたい場合は、まず職種を残して業界を移り、その会社の中で職種を変えていく、という2段階の道もあります。
参考:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」
参考:厚生労働省「雇用動向調査 令和7年 年計 第10-1表 現職産業(大分類)、企業規模(GT,E)、性、年齢階級、前職産業(大分類)、就業経験(経験1年未満)、就業形態、雇用形態、前従業上の地位別入職者数(就業経験有りで調査時在籍者)」
参考:厚生労働省「雇用動向調査 令和7年 年計 第19-1表 職業(大分類)、企業規模(生産工程)、性、年齢階級、前職職業(大分類)、前職企業規模(生産工程)、就業形態・前従業上の地位別 入職者数 及び 構成比(就業経験有りで調査時在籍者で前職雇用者)」
持ち運べる経験を、相手の業界の言葉にできるか
採る側が賃金を決めるときに最も多く考慮していたのが「これまでの経験・能力・知識」でした。業界が変わると、前職の経験がそのまま伝わるとは限りません。業界特有の言葉で語った実績は、別の業界の面接官には響きにくいからです。
たとえば「新規開拓で年間〇件を受注」は、業界が違っても通じる言い方です。一方で「〇〇(業界用語)の案件を担当」だけでは、何をしたのかが伝わりません。業界の名前を外しても伝わる言い方に直せるかが、異業種転職の書類づくりの分かれ目になります。 職務経歴書への落とし込み方は、職務経歴書の書き方|4職種の見本とテンプレートが参考になります。
ベンチャーが異業種出身者を採る理由を、経営者の言葉で読む
採る側がなぜ異業種の人を迎えるのかは、統計より経営者の言葉のほうが具体的に見えます。取材を重ねていると、業界の外から来た人を「穴埋め」ではなく「必要な人材」として語る経営者が思いのほか多いと、私たちは感じています。
キュリオシティ株式会社の金田隼人代表取締役CEOは、事業会社で働いてきた人をコンサルタントとして育てています。その人たちが評価される理由を、こう話しています。
前の業界での経験を、新しい業界では「お客様側の視点」として持ち込める。異業種から来た人の強みは、移った先の業界の人が持っていない視点そのものにあるという見方です。
アニメ制作を手がける株式会社mafの深江暢代表取締役は、未経験者の採用について次のように答えています。
業界の慣習を変えようとしている会社にとっては、慣習を知らないことが不利にならない場合があるわけです。
ただし、どの会社もこう考えているわけではありません。 異業種出身の社員が実際にどんな仕事から始めたのかは、面接で確かめる価値があります。育て方を決めている会社なら、立ち上がりの期間と最初の担当業務を具体的に説明できるはずです。熱狂ベンチャーナビでは、採用や育成の考え方も含めて、経営者本人に話を聞いています。会社ごとの考え方の違いを比べる材料にしてください。
異業種転職の進め方5ステップ
異業種転職は、求人を探す前の準備で差がつきます。進める順番は次の5つです。
- 業界と職種のどちらを変えるかを決める
- 経験を棚卸しし、業界の名前を外した言葉に直す
- 移りたい業界の仕組みを調べる
- 求人票と面接で、受け入れの体制を確かめる
- 在職中に応募し、内定を得てから退職を伝える
1. 業界と職種のどちらを変えるかを決める
最初に、4つの型のどれを目指すかを決めます。変えたいのが「業界」なのか「仕事の中身」なのかを分けておくと、応募先の探し方がまるで変わります。 業界の将来性や働き方を変えたいなら職種を残す、仕事そのものを変えたいなら業界を残す、といった整理です。営業職の人がどの方向に動けるかは、営業から転職するには?経験が活きる転職先と辞めたい理由別の進め方で3つの型に分けて整理しています。
2. 経験を棚卸しし、業界の名前を外した言葉に直す
担当した仕事を書き出し、業界用語を一般的な言葉に置き換えます。扱った金額、件数、関わった人数、期間のような、業界が違っても比べられる数字を添えるのが基本です。
3. 移りたい業界の仕組みを調べる
誰が顧客で、何を売り、どう利益が出るのか。業界の仕組みを最低限つかんでおくと、志望動機に具体性が出ます。求人票だけでなく、その業界の会社の経営者が自社の事業をどう説明しているかを読むと、業界の言葉に慣れることもできます。
4. 求人票と面接で、受け入れの体制を確かめる
業界が変わる人ほど、入社後の教育が大事になります。厚生労働省の令和7年転職者実態調査では、転職者がいる事業所の82.6%が転職者に教育訓練を実施しており、実施した事業所のうち79.8%が計画的なOJT(日常の業務に就きながら行う計画的な教育訓練)を挙げています(複数回答)。転職者に教育訓練を行う事業所は多数派なので、面接で中身を具体的に聞いても不自然ではありません。 研修の期間、教える担当者、独り立ちまでの目安を確かめておきましょう。
参考:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」
5. 在職中に応募し、内定を得てから退職を伝える
業界を変える転職は、準備に時間がかかりやすいぶん、在職中に進めるほうが安全です。 収入を保ったまま比べられるうえ、条件が合わなければ見送る選択も残せます。応募先の集め方は、マイナビ転職やリクナビNEXTなどの求人サイトと転職エージェントを併用すると、自分で探せる求人と紹介される求人の両方を見られます。


異業種転職に関するよくある質問
異業種転職は何歳までできますか?
法律上の年齢の上限はありません。 労働施策総合推進法第9条は、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを会社の義務としています。ただし施行規則第1条の3に例外があり、長期勤続によるキャリア形成を目的に、期間の定めのない雇用で、職業経験を問わず、新卒者と同等の処遇で若年者などに限って募集することは認められています。賃金の面では、厚生労働省の令和7年雇用動向調査(常用労働者5人以上の事業所、前職が雇用者の転職入職者)で、45〜49歳までは賃金が増えた人が減った人を上回り、50〜54歳では減少42.0%が増加29.4%を上回りました。この数字は業界を変えたかどうかで分けた集計ではない点に注意してください。
参考:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
参考:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則」
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 3 転職入職者の状況」
未経験の業界に移ると年収は下がりますか?
下がるとは限りません。 厚生労働省の令和7年雇用動向調査では、前職が雇用者だった転職入職者のうち賃金が増加した人が40.8%、減少した人が31.0%でした。ただしこれは業界を変えた人だけの数字ではなく、1割以上減少した人も21.9%います。令和7年転職者実態調査では、事業所が転職者の賃金を決める際に考慮した要素の最多が「これまでの経験・能力・知識」59.2%で、「前職の賃金」は27.0%でした(複数回答)。前職の経験のうち新しい業界で使える部分を示せるかが、提示額に関わってきます。
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況 3 転職入職者の状況」
参考:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」
異業種と異職種では、どちらが難しいですか?
一般に、前職から持ち越せるものが少ないほど難しくなります。 業界だけを変えるなら職種の経験を、職種だけを変えるなら業界の知識を持ち越せますが、両方を変えると持ち越せるのは仕事の進め方などが中心です。令和7年雇用動向調査の結果表から計算すると、前職が雇用者だった転職入職者のうち、前職と違う産業(大分類)に移った人は57.0%、違う職業(大分類)に移った人は34.4%でした。業界を変えた人のほうが、職業を変えた人より多いことになります。
参考:厚生労働省「雇用動向調査 令和7年 年計 第10-1表 現職産業(大分類)、企業規模(GT,E)、性、年齢階級、前職産業(大分類)、就業経験(経験1年未満)、就業形態、雇用形態、前従業上の地位別入職者数(就業経験有りで調査時在籍者)」
参考:厚生労働省「雇用動向調査 令和7年 年計 第19-1表 職業(大分類)、企業規模(生産工程)、性、年齢階級、前職職業(大分類)、前職企業規模(生産工程)、就業形態・前従業上の地位別 入職者数 及び 構成比(就業経験有りで調査時在籍者で前職雇用者)」
異業種転職の志望動機は、どう書けばいいですか?
「なぜその業界か」と「前職の何を持ち込めるか」を1つの話としてつなげます。 業界への憧れだけでは、経験者と比べたときの理由になりません。前職で身につけた進め方が、移りたい業界のどんな場面で使えるのかを、業界の名前を外した言葉で示してください。令和7年転職者実態調査の個人調査(転職者7,310人の回答)でも、転職者が今の勤め先を選んだ理由は「仕事の内容・職種に満足がいくから」40.2%、「自分の技能・能力が活かせるから」38.4%が上位でした(3つまでの複数回答)。
参考:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」
異業種転職に資格は必要ですか?
多くの職種では、資格がなくても応募できます。 資格が応募の条件になるのは、業務に免許や資格が欠かせない仕事などです。令和7年転職者実態調査では、事業所が転職者の賃金を決める際に「免許・資格」を考慮したのは30.6%で、「これまでの経験・能力・知識」の59.2%を下回りました(転職者がいる事業所についての複数回答)。資格は学ぶ姿勢を示す材料にはなりますが、取得を待ってから動くより、経験の言い直しと並行して進めるほうが現実的でしょう。
参考:厚生労働省「令和7(2025)年転職者実態調査の概況」
まとめ
異業種転職とは、業界(産業)が変わる転職のことで、仕事の中身が変わる異職種転職とは別の軸です。2つを組み合わせると4つの型になり、どの型かによって前職から持ち越せるものが変わります。
令和7年雇用動向調査の結果表から計算すると、前職が雇用者だった転職入職者のうち57.0%が前職と違う産業(大分類)に移っており、違う職業に移った34.4%より多数でした。賃金は全体で増加40.8%、減少31.0%。45〜49歳までは増加が上回り、50〜54歳で逆転します。採る側は経験・能力・知識を見て賃金を決めており、事務・販売・サービスなどの採用では職場への適応力も理由に挙がっていました。年齢による募集の制限は法律上の例外に限られます。
私たちが経営者の話を聞いていて感じるのは、業界を移った人の強みは、前の業界の名前ではなく、そこで身につけた見方のほうにあるということです。まずは業界と職種のどちらを変えるかを決め、自分の経験を業界の名前を外した言葉で言い直してみてください。
言い直した経験が、移りたい業界の求人でどう評価されるかは、実際の求人と照らし合わせてみると見えてきます。

