ベンチャー企業のメリット・デメリット|働く前に知りたい給与と成長の実態

ベンチャー企業で働くメリットとデメリットの多くは、「人が少なく、変化が速い」という同じ特徴の表と裏です。
たとえば「ベンチャーは給料が安い」と言われがちですが、企業規模別の統計で見ると20代前半の差は月3万円ほど。差がはっきり開くのは、30代以降、年齢が上がってからです。
この記事では、働く側から見たメリット・デメリットを厚生労働省の統計と照らし合わせて整理し、入社前に面接で確かめたい点まで紹介します。
ベンチャーと大手のどちらが合うかは、条件の違う求人を並べてみると見えやすくなります。転職エージェントを活用すれば、規模の異なる会社の求人を無料で比べながら相談できます。
ベンチャー企業のメリットとデメリットは、同じ特徴の表と裏
ベンチャーで働くことの良し悪しは、「メリット○個、デメリット○個」と分けて数えるより、一つの特徴がどちらにも転ぶと考えたほうが実態に近くなります。
- 人が少ないので、早く任される一方、教わる時間は短くなりやすい
- 仕事の範囲が決まり切っていないので、経験の幅は広がる一方、専門を深める順序は自分で組むことになる
- 事業が変わり続けるので、新しいことに関われる一方、計画どおりに進まない場面も増える
| 特徴 | メリットとして出る面 | デメリットとして出る面 |
|---|---|---|
| 人数が少ない | 若いうちから役割やポストを任される | 教えてくれる先輩や前例が少ない |
| 仕事の範囲が広い | 職種をまたいだ経験が積める | 苦手な仕事も引き受けることになる |
| 決める人との距離が近い | 提案がすぐ形になり、結果も早く見える | 経営者の方針に働き方が左右されやすい |
| 事業が伸びる途中にある | 成長の過程を内側から経験できる | 方針や担当が変わる可能性がある |
| 制度がこれから整う | 仕組みをつくる側に回れる | 研修や福利厚生が手薄なことがある |
どちらの列が重く感じられるかは、その人がいまどんな時期にいて、何を優先したいかで変わります。同じ会社でも、入る人によってメリットにもデメリットにもなる、という前提で読み進めてください。
もうひとつ、数字の扱いについて。この記事で使う厚生労働省の統計は、会社を従業員数や業種で分けて集計したもので、「ベンチャーかどうか」では分けていません。この記事では、規模の小さい会社の傾向を統計で示し、任され方や働き方の手触りは経営者自身の言葉で補います。ベンチャーそのものの定義や中小企業との違いは、ベンチャー企業とは?意味・定義を簡単に|中小企業との違いと働き方の特徴で詳しく解説しています。
ベンチャー企業で働くメリット
働く側にとってのメリットは、大きく次の3つにまとまります。
- 若いうちから、役割や責任のある立場を任されやすい
- 担当の範囲が広く、職種をまたいだ経験が積み上がる
- 20代のうちは、規模による給与の差が思われているほど大きくない
若いうちから、役割と責任を任されやすい
社員が少ない会社では、上の席が空いているぶん、早い時期に責任ある立場が回ってきます。 大きな組織のように、年次に沿って一段ずつ役職を上がっていく仕組みが、まだできていないことが多いからです。
株式会社ディライトの高橋亮代表は、自社のキャリアの道筋をこう説明しています。
同社は一つの事業を大きくするのではなく、数億円規模の事業を複数つくる方針をとっており、そのぶん責任者の席も増えていきます。任される速さは、会社の大きさだけでなく、事業をどう増やしていくかという方針からも生まれています。 面接で「入社3年目の人は、どんな役割を担っていますか」と聞くと、その会社での任され方が具体的に見えてくるはずです。
担当の範囲が広く、職種をまたいだ経験が積める
人数が限られる会社では、一人が受け持つ仕事が一つの職種に収まりません。 営業の担当者が請求書の発行や入社手続きまで受け持つ、といった形で、ほかの職種の仕事が回ってくることがあります。大きな会社なら別の部署が担う仕事に、早いうちから触れられる機会でもあります。
株式会社アイランド・ブレインの鈴木徹社長は、入社した当時をこう振り返っています。
鈴木社長はその後、役員を経て社長を引き継いでいます。ここで目を留めたいのは、「苦手な分野も多かった」という一言です。範囲の広さは、得意なことだけを選んで経験できるという意味ではありません。幅広い経験はメリットですが、その中には自分で選んでいない仕事も含まれる、と分かったうえで入るのが現実的でしょう。 取材で話を聞いていても、兼務の経験を語る経営者は、楽しかった話と同じくらい、苦労した話をしてくれることが多いと私たちは感じています。
20代のうちは、規模による給与の差は小さめ
「ベンチャーは給料が安い」というイメージは根強くあります。ただ、年齢を区切って統計を見ると、印象は少し変わります。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」で、一般労働者の所定内給与(2025年6月分、男女計)を年齢別に比べると、20〜24歳では常用労働者1,000人以上の大企業が25万8,400円、10〜99人の小企業が22万6,300円でした。差は月3万2,100円で、小企業は大企業の87.6%にあたります。25〜29歳では大企業30万1,700円に対して小企業25万8,200円(85.6%)です。所定内給与とは、毎月決まって支払われる給与から残業代を除いた額で、賞与は入っていません。
20代のうちは、小企業の月給は大企業の85〜88%ほどで、差は月3〜4万円台にとどまっています。 入社時点の給与だけで、ベンチャーと大手の損得を決めてしまう必要はありません。
ただし、この差は50代後半まで、年齢が高い層ほど大きくなります。その点は次のデメリットの節で見ていきます。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
ベンチャー企業で働くデメリット
デメリットとして挙がりやすいのは、次の4つです。どれも「ベンチャーだから必ずそうなる」ものではなく、規模の小ささや事業の段階から起こりやすい、という性質のものです。
- 研修や学ぶ機会を、自分から取りに行く必要がある
- 50代後半まで、年齢が高い層ほど規模による給与の差が大きい
- 方針や担当が変わりやすく、計画どおりに進みにくい
- 事業がまだ固まっておらず、会社の先行きが読みにくい
研修や学ぶ機会を、自分から取りに行く必要がある
規模の小さい会社では、会社が用意する研修を受ける人も、自分で学ぶ人も少ない傾向があります。 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査」の個人調査によると、2024年度に仕事を一時的に離れて受ける研修(OFF-JT)を受講した正社員の割合は、常用労働者30〜49人の企業で31.8%、50〜99人で34.7%、100〜299人で42.0%、300〜999人で49.6%、1,000人以上で50.6%でした。
意外なのは、自分で学ぶ人の割合にも同じ傾向が出ていることです。同じ調査で、自己啓発を行った正社員は、30〜49人の企業で27.5%、50〜99人で33.2%、100〜299人で34.7%、300〜999人と1,000人以上ではともに52.3%でした。


「研修が少ないぶん、小さな会社の社員は自分で学んでいる」とは、統計からは言えないわけです。調査は常用労働者30人以上の企業が対象で、30人未満の会社は含まれていません。それでも、会社の研修が手薄な環境では、学ぶ時間そのものを意識して確保しないと、学びが日々の業務の中だけに限られやすい、という読み方はできるでしょう。
面接では「入社後の最初の3か月で、誰から何を教わりますか」「業務外の勉強や資格に、会社の支援はありますか」と聞いてみてください。仕組みがまだなくても、答えが具体的な会社なら、学ぶ時間をどう確保するかを相談しやすいはずです。
参考:厚生労働省「令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」
50代後半まで、年齢が高い層ほど規模による給与の差が大きい
メリットの節で見たとおり、20代のうちは規模による月給の差は大きくありません。ところが同じ統計を年齢ごとに見ると、55〜59歳までは年齢が高い層ほど差が大きくなっています。
| 年齢 | 大企業(1,000人以上) | 小企業(10〜99人) | 大企業を100としたとき |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 25万8,400円 | 22万6,300円 | 87.6 |
| 25〜29歳 | 30万1,700円 | 25万8,200円 | 85.6 |
| 30〜34歳 | 34万4,600円 | 28万6,500円 | 83.1 |
| 40〜44歳 | 42万2,000円 | 31万8,900円 | 75.6 |
| 55〜59歳 | 46万5,900円 | 33万5,100円 | 71.9 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(一般労働者・男女計、2025年6月分の所定内給与。主な年齢階級を抜粋)
20〜24歳で月3万2,100円だった差は、55〜59歳では13万800円になります。年齢が高い層ほど大企業の給与が高くなるのに対して、小企業では年齢による違いが小さいためです。なお、60〜64歳では大企業の給与水準が下がるため、小企業は大企業の88.3%まで差が縮まります。また、これは2025年時点で各年齢にいる人を比べた数字で、同じ人の給与がどう伸びたかを追ったものではありません。


また、これは小さな会社全体の平均で、会社ごとの差は大きく、平均を上回る水準を払う会社もあります。逆に言えば、ベンチャーで働く場合の給与は、入社時の金額より、その後どう上がっていくかの道筋で見ておく必要があります。 昇給の基準や、役割が変わったときの給与の決まり方を、面接で確かめておきましょう。
スタートアップの中には、給与とは別にストックオプションを報酬に組み込む会社もあります。会社の成長と連動する報酬で、仕組みや税金の扱いはストックオプションとは?仕組み・税金・税制適格の要件と入社前の確認点で解説しています。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
方針や担当が変わりやすく、計画どおりに進みにくい
事業がまだ形になりきっていない会社では、うまくいかないと分かった施策をすぐにやめ、別のやり方に切り替えます。会社としては正しい判断でも、働く側から見れば、担当していた仕事が途中でなくなる、配属が変わる、といった形で影響が及びます。
長い時間をかけて一つの専門を順序立てて深めたい時期には、この変化の多さが負担になることもあります。 変わること自体を避けたいのか、変わる理由が分かれば納得できるのか。自分がどちらに近いかを考えておくと、入社後のずれを小さくできます。
事業がまだ固まっておらず、会社の先行きが読みにくい
創業からまもない会社は、資金や取引先の状況によって、事業の続け方が大きく変わることがあります。長く経営している会社より先行きが読みにくいのは確かです。
ただし、「ベンチャーだから危ない」と一括りにする必要はありません。手がかりになるのは、決算の数字の良し悪しそのものより、会社がいまどの段階にあり、これから何に力を入れるのかを、経営陣が自分の言葉で説明できるかどうかです。会社の公開情報や面接で、先行きを確かめる具体的な方法はベンチャー企業は危ない?見分け方10項目と良いベンチャーの共通点にまとめています。
メリット・デメリットを自分に当てはめるための3つの問い
メリットとデメリットを並べても、それだけでは「自分にとってどうか」は決まりません。決め手になるのは、自分がいまどんな時期にいて、会社の側がどこまで説明できるかです。次の3つの問いで整理してみてください。
- いまの自分が優先したいのは、経験の幅か、一つの専門の深さか
- 給与は、入社時の金額ではなく何年後の姿で比べるか
- 学ぶ時間を、会社の仕組みと自分の工夫のどちらでどれだけ確保できるか
いまの自分が優先したいのは、経験の幅か、専門の深さか
経験の幅を広げたい時期には、範囲の広さや兼務はそのままメリットになります。一方で、一つの技術や資格を順を追って身につけたい時期には、同じ環境が遠回りに感じられるかもしれません。どちらが正しいという話ではなく、いまの自分がどちらを優先したいかで、同じ会社の評価が変わります。
給与は、何年後の姿で比べるか
統計で見たように、規模による給与の差は50代後半まで、年齢が高い層ほど大きくなる傾向があります。入社時の月給だけで比べると、この変化を見落とします。3年後、5年後にどんな役割を担い、そのとき給与がどう決まるのか。そこまで聞いたうえで比べると、判断の材料がそろいます。
学ぶ時間を、どこでどれだけ確保できるか
研修の仕組みが手薄な会社でも、毎日の振り返りや指導役を決めている会社はあります。仕組みの有無だけで判断せず、入社後に誰から何を教わるのか、業務外の学びにどんな支援があるのかを具体的に聞いてみてください。
3つの問いを、面接での聞き方に置き換えると次のようになります。
| 確かめたいこと | 面接での聞き方 | 答えの見方 |
|---|---|---|
| 任され方 | 入社3年目の人は、どんな役割を担っていますか | 具体的な役割名や担当範囲が返ってくるか |
| 給与の上がり方 | 昇給や、役割が変わったときの給与はどう決まりますか | 基準と時期をセットで説明できるか |
| 学ぶ機会 | 最初の3か月で、誰から何を教わりますか | 担当者と内容が決まっているか、決める予定があるか |
| 変化の多さ | 直近1年で、事業や組織にどんな変更がありましたか | 変えた理由まで説明できるか |
| 先行き | これから1〜2年で、事業のどこに力を入れる予定ですか | 理由と優先順位まで話してくれるか |
答えがすべてそろっている会社は、ベンチャーには多くありません。大事にしたいのは、まだ整っていない部分を、整っていないと率直に話してくれるかどうかです。 私たちが経営者に話を聞くときも、できていないことを具体的に語れる会社ほど、次に何をするかの話も具体的だと感じます。
若手にどう仕事を任せ、どんな順番で制度を整えてきたのかを経営者が自分の言葉で語ったインタビューは、面接で聞く前の予習にもなります。
ベンチャー企業で働くメリット・デメリットに関するよくある質問
ベンチャー企業の一番のメリットは何ですか?
よく挙がるのは、若いうちから役割や責任を任されやすいことです。 社員が少ないぶん上の席が空いており、年次に関係なく事業や組織の責任者を任される会社もあります。ただし任される速さは会社の方針によって違うため、入社数年の社員がどんな役割を担っているかを確かめるのが確実です。
ベンチャー企業の一番のデメリットは何ですか?
人によって違いますが、研修などの学ぶ機会が手薄になりやすい点はよく挙がります。この記事で使った厚生労働省の統計はベンチャーかどうかではなく企業規模で分けたものですが、「令和7年度 能力開発基本調査」では、OFF-JTを受講した正社員の割合は常用労働者30〜49人の企業で31.8%、1,000人以上で50.6%でした。会社が用意する仕組みが少ないぶん、学ぶ時間を自分で確保する意識が求められます。
ベンチャー企業は大手より給料が低いですか?
この記事で使った厚生労働省の統計は、ベンチャーかどうかではなく企業規模で分けたものです。規模の小さい会社の平均で見ると低い傾向がありますが、差の大きさは年齢によって変わります。「令和7年賃金構造基本統計調査」の所定内給与では、20〜24歳の小企業(10〜99人)は大企業(1,000人以上)の87.6%、55〜59歳では71.9%でした。会社ごとの差も大きいため、昇給の道筋まで含めて確かめましょう。
新卒でベンチャー企業に入るのはデメリットが大きいですか?
一概には言えません。早く任される経験は新卒からでも積めますが、教わる人や時間が限られる会社では、基礎を身につける順序を自分で組む必要があります。入社後に誰から何を教わるのか、最初の数か月の過ごし方を具体的に聞けるかどうかが、判断の分かれ目になります。
ベンチャー企業と中小企業では、メリット・デメリットは違いますか?
重なる部分が多くあります。ベンチャー企業の多くは規模の上では中小企業に含まれるため、研修の手薄さや給与の上がり方といった規模に由来する点は共通しやすいからです。違いが出やすいのは、事業の変化の速さです。新しい事業で急成長を目指す会社ほど、方針や担当が変わる場面が増え、任される機会もそのぶん生まれやすくなります。
まとめ
ベンチャー企業で働くメリットとデメリットは、「人が少なく、変化が速い」という同じ特徴の表と裏です。若いうちから役割を任され、職種をまたいだ経験が積める一方で、研修などの学ぶ機会は手薄になりやすく、規模による給与の差は50代後半まで、年齢が高い層ほど大きくなる傾向があります。
統計が示すのはあくまで規模別の平均で、個々の会社の実態は、面接での聞き方次第でかなり見えてきます。任され方、給与の上がり方、学ぶ機会、変化の多さ、先行きの5つを、自分がいま何を優先したいかと照らし合わせてみてください。取材を続けていると、ベンチャーという言葉でひとまとめにされる会社の中に、驚くほど違う働き方があることを実感します。
ベンチャーと大手、どちらの求人も並べて比べてみたいときは、転職のプロに相談してみるのもひとつの方法です。

