【代表者インタビュー】株式会社ディライト 代表取締役 高橋 亮

自由と自律が人を熱狂させる—葬儀・お墓業界のニッチトップが挑む組織づくり
葬儀・お墓業界に特化し、数億円事業を複数育てるディライトの逆ピラミッド経営
人が亡くなったときにしか関わることのない、葬儀やお墓。多くの人にとって身近とは言えないこの領域で、「人の困った」と「集客の困った」を解決しているのが、株式会社ディライト代表取締役の高橋 亮さん(以下、高橋さん)です。
2007年に設立された同社は、葬儀業界・お墓業界に特化した人材支援と、「葬儀の口コミ」「お墓の口コミ」の運営やWeb集客支援を柱に、業界を知り尽くした専門家集団として「ニッチトップ」を走り続けてきました。掲げるミッションは「喜ばせ、喜ぶ、ぶっちぎりで!」。喜ばせることと喜ぶこと、その両方を表す社名「Delight」にも、その思想が込められています。
いま高橋さんがもっとも力を注ぐのは、事業そのものよりも「メンバーが熱狂できる環境づくり」です。命令もノルマもほとんどなく、採用も数字も現場に開かれている。自立・自律・自責の三つがそろってはじめて「自由」になるという信念のもと、逆ピラミッド型の組織づくりに挑む高橋さんに話をうかがいました。
【プロフィール】

株式会社ディライト
代表取締役 高橋 亮
趣味
スノーボード
座右の銘
質実剛健・自重自恃
尊敬する人
両親
学生が読むべき本
「サピエンス全史」ユヴァル・ノア・ハラリ
経営者におすすめの本
「反脆弱性」ナシーム・ニコラス・タレブ
人生で一番熱狂したこと
創業直後の3年間
専門特化だからこそ挑める、葬儀・お墓業界の「困った」

「人の困った」と「集客の困った」を解決する
小川:まずは、御社の事業について教えてください。
高橋さん:当社は葬儀業界とお墓業界に特化して、「人の困った」と「集客の困った」を解決する会社だと位置づけています。「人の困った」には人材派遣・人材紹介・業務請負(BPO)でお応えし、現在は約300人のメンバーが現場に入り込み、日々一緒に仕事をしています。
小川:もう一つの柱である「集客の困った」については、どのような支援をされているのでしょうか?
高橋さん:お葬式版・お墓版の食べログのような「葬儀の口コミ」「お墓の口コミ」を運営し、各社が弱みとするWeb集客の支援にも力を入れてきました。葬儀業界・お墓業界で戦う会社にとっての「武器」のような存在でありたいと考えています。
一般的なWebマーケティング会社にはない専門性
小川:専門性が高い分、参入のハードルも高そうです。競合はどれくらいいるのでしょうか?
高橋さん:じつは、競合だと思う会社はほとんどありません。一般的なWebマーケティング会社が参入しようとするケースはありますが、この業界は専門用語が多く、そのたびに翻訳が必要になります。消費者も一定の年齢層や心理状態にある特殊なターゲットで、一般的な会社は試行錯誤せざるを得ません。
その点、当社はターゲットが絞られ、アプローチの方法も心理的ハードルもノウハウとして蓄積しています。だからこそ、成果を出しやすいのです。
件数は増え、単価は下がる—構造変化のただ中にある市場

成長市場でありながら、単価は下落し続ける
小川:高齢化が進む中で、やはり成長市場ということになるのでしょうか?
高橋さん:死亡者数そのものは増えているので、マーケットとしては成長市場です。ただ、単価はずっと縮小傾向が続いています。
小川:件数は増えているのに、単価は下がる。それはなぜでしょう?
高橋さん:平均寿命が延び、社会との関係が希薄になってから亡くなる方が増えました。「家族だけで送ろう」という選択が一般的になり、「そこにお金をかけなくても良い」という価値観も広がっています。お墓も同じで、かつては100万円、200万円をかけて建てていたものが、その価値観自体が変わって単価は下落しました。ポータルサイトの市場は、横ばいといったところです。
ついていける会社と、そうでない会社の二極化
小川:そうした変化の中で、業界が抱える課題はどこにありますか?
高橋さん:一つは、変化についていける会社と、そうでない会社の二極化です。変化についていける会社はどんどん伸び、そうでない会社は衰退していく。伸びているのは資本力のある会社で、業界の外からの大手化も進んでいます。
もう一つは人材です。新卒でこの業界を志す若者はごくわずかで、高齢化と労働人口の減少も重なり、担い手が不足している。働き手が減って大手が効率化で拡大し、小規模な事業者は姿を消していく。構図としては、農業に近いのかもしれません。
数少ない「右肩上がり」の市場で戦う面白さ

若者が少ないからこそ、ブルーオーシャンになる
小川:厳しい話が続きましたが、逆に、この業界ならではの面白さはどこにあるのでしょうか?
高橋さん:右肩下がりの業界が多い中で、死亡者数という「件数」が増えるのは、数少ない右肩上がりの要素です。しかもプレイヤーの高齢化が進み、若者が入ってこない。裏を返せば、競合が少なく、今後さらに減っていく。だからこそ面白いのです。
私はよくスポーツにたとえます。「好きな種目」で選ぶのか、「勝てる場所」で選ぶのか。私自身、高校の部活は強い野球部でもサッカー部でもなく、あえてハンドボール部を選びました。
小川:勝てる場所かどうか、という視点ですね。
高橋さん:戦略です。就職活動にブルーオーシャン戦略で臨むなら、この業界はまさにブルーオーシャン。マイナースポーツでナンバーワンになるような、夢のある挑戦ができます。
自律的に動ける人が輝ける
小川:具体的には、どのような人が活躍できる業界だと思いますか?
高橋さん:価値観の変化が激しい業界なので、言われたことだけをやっていては、ただの作業員になってしまう。反対に、「こうしてはどうか」と自分で考え、新しいことを実行できる人には、非常に活躍しやすい場所です。若い世代がこれから入っていくという意味でも、良い市場だと思います。
小川:やりがいは、どんなところにありますか?
高橋さん:お客様からの「ありがとう」と、業績や給料といった成果。その両方があります。ただ、人の死に携わる仕事なので、感謝が大きいぶん、ときには厳しいお叱りも受ける。そこには常に緊張感がありますね。
ミッション「喜ばせ、喜ぶ、ぶっちぎりで!」に込めた利他の哲学

小川:そのやりがいは、ミッションにもつながっているように感じます。どんな思いが込められているのでしょうか?
高橋さん:私の持論は、利己を突き詰めると、利他にたどり着くというものです。自分が儲けたい、これが欲しい。ではどうするかといえば、人のために動くほど「ありがとう」と対価が返ってくる。
10の喜びを与えれば10返り、100やれば100返る。思考のスタートは自分でも、行動のスタートは人のために。それをどこよりもぶっちぎりで突き詰めよう、という願いです。社名の「Delight」には、喜ばせると喜ぶ、その両方の意味があります。
現場で体現されるミッション
小川:そのミッションは、社内に浸透しているのでしょうか?
高橋さん:どうでしょうか。現場のメンバーには、私自身も本当に頭が下がる思いです。
広報・福田さん:私はまだ入社して1年ほどですが、震災のときに交通インフラが止まり、自転車をこいで現場に向かったメンバーや、台風で電車が止まってもヒッチハイクで現場に行ったメンバーの話を聞くと、このミッションを体現しているのだと感じます。
高橋さん:多くの人は、特に新卒の方は、まず報酬や条件から仕事を探します。判断材料がそれしかないからです。けれども実際に使うのは、自分の人生の大切な時間。やりがいや楽しさを同時に満たせなければ、続きませんし、楽しくもありません。だからこそ、そうした環境をつくろうとしていますし、この市場はそれができる市場だと思っています。
「自由」を支える自立・自律・自責

命令もノルマもなく、責任と権限は最前線へ
小川:環境づくりという点で、組織で大切にしていることは何でしょうか?
高橋さん:キーワードは「自由」です。自由とは、責任のある意思決定ができる状態のこと。自分で立つ「自立」、自分を律する「自律」、自分で責任を持つ「自責」。この3つがそろって、はじめて自由だと考えています。
小川:たとえば、社内ではどんな自由があるのですか?
高橋さん:わかりやすいのは採用です。どういう人を採用するかは、その事業のチームが自分たちで決めます。私は面接をしていません。現場で一緒に働く人が「この人と働きたい」と思う人を選べば良い。命令やノルマも、ほとんどありません。
人事担当・一藤さん:私自身、気づいたらいろいろなことを任せてもらっていました。ミッションのとおりに動いていたら、結果的にそうなっていた、という感覚です。
自分たちで決めるMVVと、オープンな情報
小川:自由度が高い一方で、組織としての方向性はどのようにそろえているのでしょうか?
高橋さん:まさにそこが肝で、軸になるのがミッション・ビジョン・バリューです。当社では全社から各事業、チーム、極端に言えば一人ひとりにまでMVVがあり、しかも自分たちで話し合って決めます。イメージは、全社のMVVが日本国憲法。そこからはみ出す法律はつくれません。人の支配ではなく、法の支配です。
そのためには判断材料も要るので、数字も含めて情報はすべてオープンにしています。本来は経営者が数字を頭に入れて指示すべきことを、みんながやってくれている。おかげで私はぼんやりしていられます(笑)。目指すのは、ティール組織のような形ですね。
40歳で「独裁者」をやめた—メンバーが熱狂できる環境へ

ワンマン経営からの転換
小川:このメディアのテーマは「熱狂」です。高橋さんご自身が、これまでで一番熱狂したことは何でしょうか?
高橋さん:私一人が馬力を出しても、できることは大したことではありません。だからこそ、メンバーが熱狂できる環境をつくることに、ずっと取り組んできました。
小川:それは、いつ頃からですか?
高橋さん:40歳のときです。創業からの10年間、30代の私は完全なワンマン社長、いわば独裁者でした。それをやめると決めたら、幸福度が格段に上がりました。「やらせなければ」という強制が、自分にも人にもなくなった。強制が、自発に変わったのです。
「初めに願いありき」
小川:とはいえ、自由と自立への切り替えは、簡単ではなかったのではないでしょうか?
高橋さん:本当に大変でした。人を自立させるのは、子育てに近い。最初は親に依存している子どもが、いつか自立していく。あの難しさと同じです。対話も重ねましたが、それ以上に仕組みそのものを変えました。仕組みには、すべてメッセージと願いが込められています。「こうしたいから、こうする」と、説明の手前にある願いを必ず伝える。8割は願いです。
人事担当・一藤さん:「初めに願いありき」は、社内でよく使う言葉です。全社で話すときも、必ず願いからスタートします。
コミュニケーションは設計する—席替えにもMVV
小川:日々のコミュニケーションも、丁寧に設計されている印象です。
高橋さん:大事にしています。コロナ禍でも一度もリモートにせず、全員出社を続けました。席のレイアウトも考え抜いていて、今朝の席替えでは、席をどう決めるかで社員が1時間ほど議論していました。この席替えにも、ちゃんとMVVがあるんです。
小川:席替えにまで、明確な目的や考え方があるのですね。
高橋さん:はい。席替えには、価値創出につながるコミュニケーションが生まれるチームをつくる、という目的があります。
たとえば、机を向かい合わせにすると、心理的に対立構造になりやすく、モニターが壁にもなる。そこで背中合わせに近い配置にし、壁や密室もつくらない。お互いの様子がみえ、良い意味での緊張感が保てます。人は弱いもので、誰にもみられない環境だと甘えが出る。性善説でも性悪説でもなく、「性弱説」で設計しているのです。
数億円規模の事業を、複数生み出す成長戦略

計画と実行を一致させる
小川:入社した人は、どんな環境で挑戦できるのでしょうか?
高橋さん:当社の戦略は、単一の事業を大きくするのではなく、数億円規模の事業を複数展開することです。単一事業を大きくすると、ピラミッドが巨大になり、「決める人」と「実行する人」が分離してしまう。計画と行動が分かれると、仕事は面白くなくなります。
小さな事業を複数つくるほうが市場にもマッチし、働く人も計画と実行が一致する。自分ごとになり、やりがいや楽しさにつながるのです。
小川:事業を自分で動かしてみたい人は、新規事業にも挑戦できるのでしょうか?
高橋さん:全然できます。お客様を知るほど「こういうニーズがある」とみえてくる。大きな投資が要る事業はほとんどないので、思いついたら、どんどんやってみれば良いのです。
若くして、事業責任者になれる
小川:キャリアアップを目指す人には、どんな道がありますか?
高橋さん:大企業のように階段を一段ずつ登るのではなく、一人ひとりが経営者の視点で事業に主体性を持ちます。大企業なら40代で管理職になるところを、当社では30歳ほどで事業責任者になれる。社員の平均年齢も、30歳ほどです。
風通しの良い組織と、これから仲間になる人へ

朝のグータッチと、肩書きのないフラットな組織
小川:普段のオフィスは、どんな雰囲気ですか?
高橋さん:風通しは良くないといけないと考えているので、壁も密室もできる限りつくりません。肩書きもなく、「社長」と呼ぶ人も、部長もいません。名刺の肩書きは、自分でつけて良いことにしています。
人事担当・一藤さん:朝は、一人ひとりとグータッチで挨拶するんです。後から来た人が、先に来ている人に挨拶して回るので、「挨拶があった、なかった」といったことも起きません。
高橋さん:目指すのは、完全な逆ピラミッド型です。お客様を一番よく知るのは最前線のメンバーなので、責任と権限はできる限り最前線に持たせる。私たちの仕事は、最前線が苦戦したときの後方支援です。限られた資源を全体でみわたし、厳しいところに回していく。それが、経営の役割だと考えています。
採用で重視する、5つの「採用コア」
小川:これから入社する人に、一番求めることは何でしょうか?
高橋さん:それは、採用を担当している人事担当の一藤に聞くのが良いかもしれません。
人事担当・一藤さん:「採用コア」として、5つの項目を定めています。
一つ目は「相手の喜びを自分の喜びにできる人」。ミッションが「喜ばせ、喜ぶ、ぶっちぎりで!」ですから、「誰かのために動いた経験」をうかがいます。
二つ目は「挑戦を楽しめる人」。「失敗をどう次につなげたか」をお聞きします。
三つ目は「自分の仕事に自分で責任を持つ人」。「最後までやり切った経験」を質問します。
四つ目は「昨日の自分を越えられる人」。フィードバックを素直に受け、変化を面白がれる柔軟性を重視します。
五つ目は「チームで勝っていく人」。一人で完結する仕事はほとんどないので、チームで成果を上げられるかを大切にしています。
一人ひとりが熱狂する会社へ

小川:最後に、これから会社をどんな姿にしていきたいか、展望を聞かせてください。
高橋さん:事業としては、お客様の困りごとから生まれる数億円規模の事業を、これからも複数生み出していく。組織としては、命令やノルマではなく、一人ひとりが自立・自律・自責で動く、逆ピラミッド型の、ティール組織のような形に、もっと近づけていきたいと思っています。
葬儀業界・お墓業界は、若者が少なく、競合も減っていく市場です。だからこそ、自分の頭で考えて動ける人にとっては、これ以上ないブルーオーシャン。そういう人たちが思いきり熱狂できる環境を、どこよりもぶっちぎりでつくり続けること。それが、これからも変わらない私たちの目指す姿です。
会社概要
| 会社名 | 株式会社ディライト |
| HP | https://delight.co.jp |
| 設立 | 2007年 |
| 事業内容 | ・人材支援事業 ・人材派遣/人材紹介 ・電話対応AI ・寝台安置 ・施行代行 ・集客支援事業 ・葬儀の口コミ ・葬儀のウェブ担当 ・お墓の口コミ ・お墓のウェブ担当 |
| 採用情報 | https://delight.co.jp/recruit |
※2026年6月16日時点の情報です。
