自己分析のやり方|書き込み式シートで進める5つの手順と無料の診断ツール

自己分析とは、これまでの経験を振り返って自分の価値観・強み・興味を言葉にし、仕事を選ぶ軸と応募書類の材料をつくる作業です。
立派な価値観を先に持っていなければ、と構える必要はありません。採用に関わる人の言葉を読むと、見られているのは正しい答えより、自分で考えた跡のほうだと分かります。
この記事では、5つの手順を書き込み式のシートで進め、無料の診断ツールや相談先、自己PR・志望動機へのつなげ方まで紹介します。
自己分析とは、経験から「価値観・強み・興味」を言葉にすること
自己分析は、自分の性格を診断して終わる作業ではありません。過去の経験を材料に、仕事選びと選考で使える言葉をつくるところまでが自己分析です。
- 言葉にするのは「価値観」「強み・弱み」「興味・関心」の3つ
- 企業研究や自己PRとは、向き合う相手と答える問いが違う
- 自分の条件を先に言葉にしておくと、入社前に確かめることがはっきりする
言葉にするのは「価値観」「強み・弱み」「興味・関心」の3つ
自己分析で最終的に手元に残したいのは、次の3つの言葉です。どれも、エントリーシートや面接のどこかで問われやすいものばかり。
| 言葉にするもの | 自分への問いかけ | 就活で使う場面 |
|---|---|---|
| 価値観 | 何を大事にして物事を選んできたか | 就活の軸、志望動機の「なぜこの会社か」 |
| 強み・弱み | どんな場面で力を出し、どこでつまずいたか | 自己PR、学生時代に力を入れたこと、面接の深掘り |
| 興味・関心 | 時間を忘れて取り組んだのはどんなことか | 業界・職種選び、入社後にやりたいこと |
厚生労働省のジョブ・カードの「キャリア・プラン作成補助シート(学生用)」は、冒頭で、より良い就職のためには「自分の興味・関心や強みなどをよく理解し、正しい就職目標を設定するとともに、そのために必要なことに着実に取り組んでいくことが必要」だと述べています。自己理解だけで止めず、目標とそこへ向けた行動まで書けたとき、自己分析は就活で使える形になるのです。
自己分析・企業研究・自己PRの違い
就活の準備には似た言葉が並びますが、向き合う相手と答える問いはそれぞれ違います。
| 作業 | 向き合う相手 | 答える問い | 手元に残るもの |
|---|---|---|---|
| 自己分析 | 自分 | 自分は何を大事にし、何が得意か | 就活の軸、強みを表す言葉と裏づけの経験 |
| 企業研究 | 会社・仕事 | その会社は誰に何を届け、どんな人が働いているか | 志望先の候補と、比べた結果 |
| 自己PR・志望動機 | 採用する側 | なぜ自分を採るとよいのか、なぜこの会社なのか | エントリーシートや面接での回答 |
順番は自己分析が先です。自分の軸がないまま企業研究を始めると、どの会社も良く見えて比べられなくなりがちだからです。逆に、自己PRや志望動機が書けずに手が止まったときは、自己分析の材料が足りていないサインでもあります。
自分の条件を先に言葉にしておくと、入社前に確かめることがはっきりする
厚生労働省が令和7年10月に公表した集計では、令和4年3月に大学を卒業して就職した人の就職後3年以内の離職率は33.8%でした。辞める理由も、同省の「令和5年若年者雇用実態調査」で確かめられます。働いている15〜34歳の若年労働者のうち、学校を出て初めて勤務した会社をやめた人にその理由を3つまで尋ねた結果は、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」28.5%、「人間関係がよくなかった」26.4%、「賃金の条件がよくなかった」21.8%、「仕事が自分に合わない」21.7%の順です。


自己分析をすれば離職を防げる、と統計が示しているわけではありません。ただ、上位に並んだ働く時間、職場の人、賃金、仕事の中身は、どれも自分が何を譲れないかによって受け止め方が変わるものです。譲れない条件を先に言葉にしておけば、それを説明会や面接で確かめる質問に変えられます。
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」
参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」
参考:厚生労働省 マイジョブ・カード「ジョブ・カード様式のダウンロード」
自己分析のやり方5つの手順
自己分析の方法は、自分史、モチベーショングラフ、「なぜ」の深掘りなど数多く紹介されています。どれから手をつけるか迷ったら、厚生労働省のジョブ・カードにある「キャリア・プラン作成補助シート」の付録にある自分史シートから始め、補助シート(学生用)の本体へ進むのが近道です。
- 手順1:経験を「時代×テーマ」で書き出す
- 手順2:印象に残った経験を、2つの観点で掘り下げる
- 手順3:自分を表す言葉を選び、過去の出来事で裏づける
- 手順4:仕事選びのこだわりを選び、きっかけの経験に順位をつける
- 手順5:強みと弱みに印をつけ、将来像とこれからの行動に落とす
手順1と2で材料を集め、手順3から5で言葉にまとめる流れです。シートの様式はマイジョブ・カードのサイトから無料でダウンロードでき、アカウントを登録すれば、Web上で作成・保存したり例文をコピーして使ったりもできます。1日で全部を終わらせる必要はなく、材料集めと言葉づくりの2回に分けると続けやすくなります。 以下の表は、そのまま書き写して使える書き込み式のシートです。記入例はすべて架空の学生のものなので、自分の経験に置き換えてください。


手順1:経験を「時代×テーマ」で書き出す
最初の作業は、印象に残っている出来事をキーワードで書き出すことです。ジョブ・カードの付録シートは、「時代」と「テーマ」を絞って思い出す方法を示しています。「『中学校』の時に『部活動』では何があったのか?」のように、時代とテーマを1つずつ組み合わせて考えると、思い出せる出来事が増えていきます。
| 時代 | 学業 | 部活動・サークル | アルバイト・ボランティア | 趣味・特技・夢 | うれしかったこと・悔しかったこと |
|---|---|---|---|---|---|
| 小学校 | |||||
| 中学校 | |||||
| 高校 | |||||
| 大学(記入例) | ゼミで商店街の聞き取り調査 | 軽音楽サークルで会計を担当 | カフェで新人の教育を任された | 古着の買い付け | 学園祭ライブの集客が目標に届かなかった |
| 大学(あなた) |
書くのは文章でなくキーワードで十分です。付録シートには、うまくいった話だけでなく、悔しかったことや悲しかったことを書く欄もあります。埋まらないマスがあっても構いません。実績の大小は気にせず、「なぜか覚えている」出来事を拾うのがこの手順のコツです。
手順2:印象に残った経験を、2つの観点で掘り下げる
手順1で書き出した中から、特に印象に残っている出来事を2〜3個選び、掘り下げます。付録シートが示す観点は、次の2つ。
| 観点 | 考えること |
|---|---|
| 頑張ったこと・苦労したこと | 何に関心・興味を持って取り組んだのか、何を期待して・目標として取り組んだのか |
| 学んだこと・得たこと・成長したこと | どのような工夫をして乗り越えることができたのか、自分の特徴をどのように生かしたのか |
この2つに「なぜそう動いたのか」をもう一度たどる問いを足すと、行動の奥にある価値観まで届くはずです。
| 質問 | 記入例 | あなたの記入欄 |
|---|---|---|
| どんな出来事だったか | 大学2年のとき、カフェのアルバイトで新人の教育を任された | |
| 何を目標に取り組んだか | 新人が早く一人でレジに立てるようにしたかった | |
| 何に苦労したか | 先輩によって教える手順が違い、新人が混乱していた | |
| どんな工夫で乗り越えたか | 手順を1枚の紙にまとめ、教える側の言い方をそろえた | |
| 自分のどんな特徴を生かしたか | ばらばらな情報を整理して、人に伝わる形にすること | |
| なぜそう動いたのか | 自分が新人のとき、聞く人によって言うことが違って不安だったから |
付録シートは、こうして掘り下げることで「自分がなぜそのような行動をしたのか、自分にはどのような特徴があるのか」への理解が深まると説明しています。最後の「なぜ」の欄に書いた理由は、手順4で選ぶ価値観の手がかりです。
参考:厚生労働省 マイジョブ・カード「ジョブ・カード様式のダウンロード」
手順3:自分を表す言葉を選び、過去の出来事で裏づける
次は、自分の性格を表す言葉を決めます。キャリア・プラン作成補助シート(学生用)には、「明るい」「好奇心」「協調性」「慎重」「負けず嫌い」など45の言葉が並び、当てはまるものを直感的に5つ以上選ぶよう求めています。そのうえで特に当てはまる3つを選び、その言葉を選んだ理由を過去の出来事をもとに書く、という2段構えです。
| 質問 | 記入例 | あなたの記入欄 |
|---|---|---|
| 当てはまる言葉(5つ以上) | 慎重、責任感、凝り性、協調性、緻密 | |
| 特に当てはまる言葉1とその出来事 | 慎重:手順書を配る前に、店長と先輩の両方に内容を確認してもらった | |
| 特に当てはまる言葉2とその出来事 | 責任感:サークルの会計で、1円単位で合わない月は原因が分かるまで調べた | |
| 特に当てはまる言葉3とその出来事 | 凝り性:古着の年代を見分けたくて、タグの種類を自分で一覧にした |
一覧には「神経質」「優柔不断」「短気」のように、短所に見える言葉も含まれています。選んで構いません。短所に見える言葉も、出来事とセットにすれば自分の性格の説明になります。 「優柔不断」を選んだなら、迷った場面で何と何を比べていたのかを書くと、慎重さや比較の丁寧さとして語り直せることもあるでしょう。
手順4:仕事選びのこだわりを選び、きっかけの経験に順位をつける
手順4では、仕事を選ぶうえで大事にしたいこと、つまり価値観を言葉にします。補助シートには「専門性を生かしたい」「世の中をよくするための仕事をしたい」「安定よりも挑戦を求めて仕事がしたい」「仕事だけではなくプライベートを大事にしたい」など、こだわりの選択肢が16項目と自由記入欄2つ並んでいます。ここも「あまり考え込まずに、直感的に選びましょう」というのがシートの指示です。
選んだあとは、なぜそのこだわりを選んだのか、理由と思われる経験を3つ以上書き出し、影響を大きく受けた順に1から順位をつけます。どこで、誰と・誰に対して、何をしたかまで具体的に書くのが、シートの求める書き方です。
| 質問 | 記入例 | あなたの記入欄 |
|---|---|---|
| 選んだこだわり | 専門性を生かしたい、仕事だけではなくプライベートを大事にしたい | |
| 影響を受けた経験1位 | 大学2年、カフェで新人教育を任され、教え方を工夫するほど店が回るようになった | |
| 影響を受けた経験2位 | 高校3年、部活と受験勉強の両立がうまくいかず、どちらも中途半端になった | |
| 影響を受けた経験3位 | 大学3年、ゼミの調査で商店街の店主に話を聞き、専門知識のある人ほど頼られていると感じた | |
| 書き出して感じたこと | 人に教えられる専門性を持ちたい。そのためには、仕事以外の時間も確保したい |
選択肢には「中小企業よりも大企業で仕事がしたい」「新たな組織の起業や、組織の再建等の仕事がしたい」のように、向きの違うこだわりが並んでいます。どちらに丸をつけても正解・不正解はありません。両方に丸がついたら、どちらを優先するかを考えること自体が、就活の軸を決める作業になります。
手順5:強みと弱みに印をつけ、将来像とこれからの行動に落とす
最後に、強みと弱みを整理して、将来の目標と行動に落とし込みます。補助シートには30の行動が並び、非常に自信があるものに◎、ある程度自信があるものに○、あまり自信がないものに△、自信がないものに×をつけます。すべての項目に印をつける必要はありません。
そこから、生かしたい強みと改善したい弱みをそれぞれ最大5つまで選びます。続く将来の欄は、できれば5年後、10年後、20年後といった時期とともに書き、これから取り組むことの欄には、身につけたい力や資格を「いつ、どのように」まで書くのがシートの指示です。
| 質問 | 記入例 | あなたの記入欄 |
|---|---|---|
| 特に自信がある強み | 必要な情報を集める、事実と意見を混同せず客観的に状況を判断する | |
| 改善したい弱み | 相手にやってほしいことを明確に指示、要求する | |
| 5年後・10年後にしていたい仕事 | 5年後は店舗や現場で人を育てる仕組みをつくる側に、10年後はその仕組みを他の拠点にも広げる立場に | |
| そのために、いつ何をするか | 卒業までに、アルバイト先で新人教育の手順書を改訂し、頼みごとを言葉で伝える練習を重ねる | |
| 自己PRや志望動機に使えそうなこと | 情報を整理して人に伝わる形にする力と、それを生かして人を育てたいという思い |
将来の仕事が思い浮かばないときは、職業興味検査を受けたり職業の一覧を眺めたりしながら考えるよう、シート自体が案内しています。最後の行に書いた言葉が、手順1から5を通した自己分析の結論です。 ここまで書いた補助シートは、ジョブ・カード様式1-2の一部としてそのまま使えます。
参考:厚生労働省 マイジョブ・カード「ジョブ・カード様式のダウンロード」
参考:厚生労働省 マイジョブ・カード「学生の方」
一人で進めにくいときは、無料の診断ツールと相談先を使う
シートを前にしても手が止まることはあります。そんなときは、国の無料ツールや人の目を借りましょう。
- job tagの自己診断ツールで、興味・価値観・能力面の特徴を確かめる
- 家族や友人に聞く他己分析で、自分では気づかない面を拾う
- 大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークで、書いたものを一緒に見てもらう
| ツール・窓口 | 運営 | できること | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| job tag(職業情報提供サイト)の自己診断ツール | 厚生労働省 | 職業興味検査・仕事価値観検査・職業適性テスト(Gテスト)で特徴を調べ、合う職業を検索する | 手順4・5で手が止まったとき |
| マイジョブ・カードの自己診断 | 厚生労働省 | 興味診断・スキルチェック・価値観診断の3種類 | シートを書き始める前の準備 |
| 大学のキャリアセンター | 各大学 | ジョブ・カードの書き方やキャリアプランの相談 | 書いたものを人に見てもらいたいとき |
| 新卒応援ハローワーク | 厚生労働省・都道府県労働局 | 担当者制の個別支援、エントリーシートの添削、模擬面接、就活フェア | 自己分析を応募書類や面接につなげたいとき |
job tagの自己診断ツールで、興味・価値観・能力面の特徴を確かめる
job tagは、厚生労働省が運営する職業情報提供サイト。500を超える職業について、仕事の内容、求められるスキルや知識、就業経路、どんな人が向いているかなどがまとめられています。自己診断ツールには「職業興味検査」「仕事価値観検査」「職業適性テスト(Gテスト)」があり、結果から自分に合う職業を検索することもできるのです。厚生労働省のリーフレットは、各検査の結果から「自分が楽しいと思えることや、やりがいがあると考えることが分かるので、自己分析としても活用できます」と案内しています。
診断の結果は、自分を言い当てる答えではなく、シートを書くための材料として使いましょう。結果に出た言葉を手順3・4の欄に写し、それを裏づける出来事を自分の経験から探すと、診断が自分の言葉に変わります。
参考:厚生労働省「職業情報提供サイト job tag でできること(学生・求職者の皆様へ)」
参考:厚生労働省 マイジョブ・カード「学生の方」
家族や友人に聞く他己分析で、自分では気づかない面を拾う
他己分析は、身近な人に自分の印象を聞く方法です。漠然と「私の長所って何?」と聞くより、場面を指定したほうが具体的な答えが返ってきます。
- 私が一番楽しそうにしていたのは、どんなときだった?
- 何か頼みごとをするとしたら、私に何を頼む?
- 私が困っているように見えたのは、どんな場面だった?
- 私の短所を一つだけ挙げるとしたら何?
聞いた答えは、手順3・5で自分が書いた言葉と並べてみてください。自分の言葉と他人の言葉が重なった部分は強みの裏づけになり、ずれた部分は掘り下げる材料になります。 聞く相手は、家族、友人、アルバイト先の先輩など、自分を見ている場面が違う人を2〜3人選ぶと、答えが偏りにくいでしょう。
大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークで、書いたものを一緒に見てもらう
マイジョブ・カードの学生向けページは、ジョブ・カードに何を書けばよいかわからない、キャリアプランの考え方に迷うといったときは、学内のキャリアセンターや進路指導部などに相談するよう案内しています。同じページによれば、全国の新卒応援ハローワークでは、新卒者等を専門とするナビゲーターによる担当者制の個別支援、エントリーシートの添削、模擬面接などを受けられるとのこと。
相談に行くときは、白紙で行くより、手順1と2だけでも書いたシートを持っていくほうが話は早く進むはずです。 書けなかった欄こそ、相談で一緒に考えてもらう価値があるところです。
採用する側の言葉に見る、自己分析の「結論」より大切な「考えた跡」
自己分析を進めていると、「立派な価値観を持っていないといけないのでは」と不安になるかもしれません。採用に関わる人たちの言葉を読むと、少し違う見方が見えてくるでしょう。
- 自分の人生やキャリアについて、何らかの考えを持っているか
- 価値観は、最初から完璧である必要はない
- 経験を重ね、自分の考えを言葉にして外に出す
取材で経営者や人事の方に「どんな人と働きたいか」を尋ねると、立派な答えより、自分で考えた形跡のある答えに反応する方が多いと感じます。freeks株式会社の篠竹将太朗社長は、これから入社する人に期待することを聞かれ、こう答えています。
篠竹社長が求めているのは、正しい答えではなく「何らかの考え」です。自己分析で書いた言葉は、面接で会話を広げるための入り口になります。
一方で、価値観が固まっていないことを気にする必要はない、という声もあります。株式会社オプティムで経営企画本部ディレクターとして人事に携わる神谷哲央さんの言葉です。
自己分析の結論は、いまの時点での仮の答えで十分です。 手順4で選んだこだわりが入社後に変わっても、それは考え続けている証拠といえるでしょう。
考えが浮かばないときの手がかりについては、株式会社mafの深江暢社長が、アニメ業界を目指す若い人たちへのメッセージとしてこう語っています。
シートの欄が埋まらないのは、材料になる経験がまだ少ないだけかもしれません。新しい経験を足し、それを言葉にして人に話す。手順1から5は、一度で終わらせるものではなく、経験が増えるたびに書き足していくものです。
経営者が自分の仕事観や、若手に何を期待しているかを語った言葉は、熱狂ベンチャーナビのインタビューで読めます。
自己分析の結果を、就活の軸・自己PR・志望動機につなげる
自己分析は、書いたシートを選考で使える形に組み替えて、ようやく役に立ちます。つなげ方は3段階です。


- 手順4のこだわりと手順5の強みを組み合わせ、就活の軸を1文にする
- 軸を会社の公表情報と照らし、説明会や面接で確かめる質問に変える
- 手順2で掘り下げた経験を、自己PRと志望動機の根拠に使う
こだわりと強みを組み合わせ、就活の軸を1文にする
就活の軸は、「〇〇を大事にしながら、△△を生かせる仕事」という1文にまとめると扱いやすくなります。〇〇には手順4のこだわりを、△△には手順5の強みを入れます。
記入例の学生なら、「人に教えられる専門性を大事にしながら、情報を整理して伝える力を生かせる仕事」。この1文があれば、業界や職種を選ぶときに「この仕事は軸に当てはまるか」と照らし合わせられます。軸は1本に絞らなくても構いませんが、どれを優先するかの順位だけは決めておきましょう。
軸を会社の公表情報と照らし、確かめる質問に変える
軸が決まったら、次は会社の情報と照らす段階です。厚生労働省は、職業を調べるjob tag、求人を探すハローワークインターネットサービス、企業の職場情報を調べる「しょくばらぼ(職場情報総合サイト)」の3つを連携させています。しょくばらぼなら、新卒者の採用・定着状況、月平均所定外労働時間、正社員の有給休暇取得日数、教育制度などを企業ごとに比べられるので、軸に関わる項目だけを拾い出してみてください。
公表情報で分からないことは、説明会やOB・OG訪問で聞きましょう。ジョブ・カードの付録シートは、志望する企業に質問するときの観点として次の5つを挙げています。
| 観点 | 付録シートの質問例 | 照らし合わせる自己分析の欄 |
|---|---|---|
| 人材像 | どんな人が活躍していますか? | 手順3の性格の言葉、手順5の強み |
| 育成・研修 | 入社して3年間の過ごし方は? | 手順5の「いつ何をするか」 |
| 企業風土 | 社内の人から見た会社の雰囲気は? | 手順4のこだわり |
| 働き方 | どんな働き方、勤務形態がありますか? | 手順4のこだわり |
| コミュニケーション | 上司や先輩との関係は? | 手順2で苦労した場面 |
付録シートには、ホームページなどで自分で調べられる質問は控えるよう添え書きがあります。自己分析で決めた譲れない条件を、調べても分からない部分に絞って質問にするのが、ここでの使い方です。 面接の終わりに聞く逆質問を考えるときにも、この表が下書きになります。
参考:厚生労働省 しょくばらぼ「就職活動に役立つ3サイトを活用して自分に合う企業を見つけよう」
掘り下げた経験を、自己PRと志望動機の根拠に使う
手順2で掘り下げた経験は、そのまま自己PRや志望動機の根拠になります。自己PRには「どんな工夫で乗り越えたか」「自分のどんな特徴を生かしたか」の欄を、志望動機には「なぜそう動いたのか」と手順4のこだわりを使うと、書く材料がそろうでしょう。補助シートの最後にも、志望した動機や自己PR、キャリアコンサルティングで相談したいことを書く欄が用意されています。
厚生労働省はジョブ・カード制度の案内で、自分自身のことを理解し、将来どのようなキャリアを目指したいのかが明確になると、「就職活動で自分の言葉でしっかりと自己アピールできるようになります」としています。自己PRのエピソードの選び方は自己PRが思いつかない人へ|エピソード探し方と書き方、志望動機の組み立て方は志望動機の書き方と例文|新卒・転職別の型、思いつかないときの考え方と文字数が参考になるはずです。
自己分析でよくある失敗と、その防ぎ方
自己分析でつまずく原因は、やり方そのものより、進め方の癖にあることが多いものです。よくあるのは次の5つでしょう。
| 失敗 | 起きる理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| いつまでも終わらない | ゴールを決めずに書き続けている | 就活の軸の1文と、出来事つきの強み3つが書けたら一区切りにする |
| 理想の自分を書いてしまう | 選考で評価されそうな言葉を先に選んでいる | 言葉を選ぶ前に出来事を書き、出来事で裏づけられない言葉は外す |
| 診断結果をそのまま答えにする | 結果の言葉を自分で確かめていない | 結果の言葉ごとに、当てはまる出来事を1つ探す |
| 1つの経験ばかり掘り下げる | 一番の成功体験だけを材料にしている | 手順1の表で時代とテーマを変え、別の経験も2〜3個掘る |
| 書いて満足し、選考に使わない | シートと応募書類がつながっていない | 書き終えたら、自己PRと志望動機の下書きを1本ずつ作る |
特に気をつけたいのは、理想の自分を書いてしまう失敗です。面接では、書いた言葉に対して「具体的には?」と深掘りされることが少なくありません。 出来事で裏づけられる言葉だけを残しておけば、どこまで聞かれても自分の言葉で答えられます。
新卒と転職で変わる自己分析の進め方
自己分析の手順そのものは、新卒でも転職でも変わりません。変わるのは、振り返る経験と使う様式、相談先です。
- 新卒は、学業や課外活動、アルバイトの経験を材料にする
- 転職は、仕事で担当した業務と身につけた力を材料にする
- 転職者には、ジョブ・カードを使った無料のキャリアコンサルティングの窓口がある
| 項目 | 新卒 | 転職 |
|---|---|---|
| 振り返る経験 | 学業、部活動・サークル、アルバイト、ボランティア | 担当した業務、果たした役割、仕事で出した結果 |
| 使う様式 | キャリア・プラン作成補助シート(学生用)、様式1-2 | キャリア・プラン作成補助シート(在職者用・求職者用)、職務経歴シート |
| 主な相談先 | 大学のキャリアセンター、新卒応援ハローワーク | キャリア形成・リスキリング支援センター、ハローワーク |
| 自己分析で特に言葉にしたいこと | 何を大事にし、どんな仕事に関心があるか | 前の仕事で何を身につけ、次に何をしたいか |
転職の自己分析は、法律の言葉でいう「職業生活設計」に重なる
社会人になってからの自己分析は、職業能力開発促進法が定める「職業生活設計」と重なる考え方です。条文はこうなっています。
言い換えると、仕事を通じて何を目指すのかを自分で決め、自分の適性や職業経験をふまえて、仕事選びや能力の伸ばし方を自分で計画すること。なお、この法律の「労働者」には、雇われている人に加えて仕事を探している求職者も含まれます。同法第3条の3は、労働者は職業生活設計を行い、それに沿って能力の開発に「努めるものとする」と定めており、これは努力を求める規定で、やらなければ罰則がある義務ではありません。
そのうえで、国は相談の場を用意しています。厚生労働省の委託事業では、全国47都道府県のキャリア形成・リスキリング支援センターとハローワークの相談コーナーで、ジョブ・カードを使ったキャリアコンサルティングを無料で受けられます。対象は在職者と求職者で、時間は60分、対面かオンラインを選べ、職業紹介は行っていません。事前にジョブ・カードを作成しておく形ですが、難しければ書けるところまでで申し込めます。


職務経験の棚卸しを、業種や職種が変わっても持ち運べる力の観点で進めたい方は、ポータブルスキルとは?9要素の一覧と例|見える化ツールと棚卸しの手順もあわせて読んでみてください。
参考:e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」
参考:厚生労働省委託事業「キャリア形成・リスキリング推進事業 個人の方へ」
自己分析のやり方に関するよくある質問
自己分析はまず何から始めればいいですか?
最初は、経験をキーワードで書き出すところから始めましょう。 手順1の表のように、「大学のときのアルバイト」「高校のときの部活動」と時代とテーマを1つずつ組み合わせると、思い出しやすくなります。いきなり強みや価値観を考えようとすると手が止まりやすいので、言葉にする作業は材料が集まってからで十分です。
自己分析は自分一人でもできますか?
一人でも進められますが、書いたものを誰かに見てもらう段階は作っておくと安心です。 手順1から5までは、ジョブ・カードの様式やこの記事の表を使えば一人で書けます。ただ、自分の言葉だけでは思い込みに気づきにくいため、他己分析で身近な人の見方を聞いたり、大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークで見てもらったりすると、ずれや抜けが見つかります。
自己分析はどこまでやれば十分ですか?
就活の軸を1文で言え、強みを出来事つきで3つ説明できれば、一区切りと考えてよいでしょう。 そこから先は、企業研究や選考を進めながら書き足していくほうが実用的です。面接で答えに詰まった質問や、比べても選べない会社が出てきたら、そのとき手順2や4に戻ればよいのです。
自己分析はいつから始めればいいですか?
公的に決まった時期はありませんが、エントリーシートを書き始める前に一通り終えておくと慌てずに済みます。 インターンシップの応募書類でも自己PRや志望動機を聞かれることがあるため、手順1と2だけでも早めに済ませておくと、その後の準備が楽になるでしょう。就活全体の流れは、就活スケジュール完全ガイド|27卒・28卒の流れを月別に解説で確認しておきましょう。
自己分析にAIを使ってもいいですか?
問いかけの相手や、書いた内容の整理に使う方法はあります。 ただ、AIはあなたの経験を知りません。手順1と2の材料を自分で書き出してから使わないと、誰にでも当てはまる言葉が返ってくるだけになりがちです。最後は、面接で深掘りされても自分の言葉で答えられるかで確かめましょう。氏名や大学名などの個人情報を入力する前には、サービスの情報の扱いも確認してください。
まとめ
自己分析は、経験を材料にして、自分の価値観・強み・興味を言葉にする作業です。経験を時代とテーマで書き出し、印象に残った経験を掘り下げ、自分を表す言葉とこだわりを選び、強みと将来像をまとめる。この5つの手順は、厚生労働省のジョブ・カードの補助シートと同じ流れで、様式は無料で手に入ります。
一人で進めにくいときは、job tagやマイジョブ・カードの自己診断、他己分析、大学のキャリアセンターや新卒応援ハローワークを使ってください。書き終えたら、こだわりと強みを就活の軸の1文にまとめ、会社の公表情報と照らし、自己PRと志望動機の根拠に使いましょう。
採用に関わる方々の話を聞いていて思うのは、自己分析に完成形はないということです。いまの時点の仮の答えを持って会社に会いに行き、話してみて違ったら書き直す。その繰り返しのほうが、机の上で正解を探し続けるより、自分に合う仕事に近づけるのではないかと私たちは考えています。
すでに社会人で、転職を考えながら自己分析をしている方なら、棚卸しした経験がどんな求人で生きるのかを、転職エージェントに無料で相談してみる方法もあります。
