製造業でキャリアアップするには?現場からの道筋と役職別の賃金、技能検定

製造業でキャリアアップするには、担当できる工程を増やし、班をまとめる役割や保全・品質といった専門の持ち場へ進んでいくのが基本の道筋です。令和7年の統計では、製造業の職長級の毎月の給与は、役職のない人より9万400円高くなっています。
意外と知られていないのが、都道府県の協会が実施する技能検定の職種なら、3級に受かれば2級は実務経験の年数を待たずに受けられることです。
この記事では、段階ごとの仕事と賃金の変わり方、技能検定と公的な学び直しの支援の使い方を整理します。
社内で上を目指す場合でも、いまの経験や技能が社外の求人でどう評価されるかを知っておくと、次の一手を選びやすくなります。転職エージェントを活用すれば、無料で確認できます。
製造業のキャリアアップは「仕事の幅」と「役割」で進む
生産現場からのキャリアアップは、一般に次の4つの段階で考えると整理しやすくなります。
- 一つの工程を任され、手順どおりに品質と量を守る
- 隣の工程や段取り替えも覚え、複数の工程をこなす
- 班長・職長として、班の作業の割り当てと指導を受け持つ
- 生産管理・品質管理・設備保全・生産技術などの専門の持ち場や、係長・課長へ進む
| 段階 | 主な仕事 | 身につくこと | 次に進む材料になるもの |
|---|---|---|---|
| 一つの工程を担当 | 決められた手順で加工・組立・検査をする | 品質の基準と安全のルール | 不良を出さない、ミスを報告できる |
| 複数の工程を担当 | 前後の工程や段取り替え、別ラインの応援 | 工程の流れ全体の理解 | 担当できる工程の数、新人への教え方 |
| 班長・職長 | 作業の割り当て、手順の決定、進み具合の監督、指導 | 人を動かして目標を守る力 | 班の不良や停止を減らした経験 |
| 専門の持ち場・管理職 | 計画、品質の分析、設備の保守、工程の改善、部門の運営 | 数字と記録で説明する力 | 改善の結果を数字で示した経験 |
段階は会社や工場の規模で呼び方も中身も変わり、班長を経ずに保全や品質の持ち場へ移る人もいます。大事なのは順番そのものより、いまの段階で何をできるようになれば次に進めるのかを、自分で言葉にしておくことです。
仕事の幅を広げる:担当できる工程を増やす
一つの工程に慣れたら、前後の工程や段取り替え、別のラインの応援など、担当できる仕事を増やしていく段階です。複数の工程をこなせる人は、一般に「多能工」と呼ばれます。急な欠員が出ても持ち場を埋められるため、班の中で頼られる場面が増えるでしょう。
覚えた工程は、日付と内容を手元に記録しておくと、面談や昇格の場面で説明しやすくなります。
役割を広げる:班をまとめる、専門の持ち場に移る
工程を広く知った先には、2つの方向があります。1つは、班長・職長として班の作業を割り当て、新人を指導する方向。もう1つは、設備の保守、品質の分析、生産の計画、工程の改善といった専門の持ち場に移る方向です。専門の持ち場の仕事内容と、工場の経験とつながる部分は、工場を辞めたいと感じたら|きつい理由と夜勤のルール、経験が活きる転職先で職種ごとに整理しています。
国の白書からは、教える側に回れる人が現場で求められている様子も読み取れます。2026年版ものづくり白書の厚生労働省担当パートの概要によると、能力開発や人材育成に問題があるとした製造業の事業所のうち、62.8%が「指導する人材が不足している」を挙げていました。 「人材を育成しても辞めてしまう」54.4%、「人材育成を行う時間がない」45.4%、「鍛えがいのある人材が集まらない」34.6%、「育成を行うための金銭的余裕がない」13.8%と続きます。厚生労働省「能力開発基本調査(事業所調査)」をもとにした複数回答の上位5つで、割合を足しても100%にはなりません。


正直なところ、現場のキャリアは年数を重ねれば自然に開けるものだと考えがちです。けれどこの数字を見ると、教えられる人、まとめられる人になること自体に、現場では大きな価値があるのだと私たちは感じます。
参考:厚生労働省「2026年版 ものづくり白書 概要(厚生労働省担当パート)」
参考:厚生労働省「「令和7年度ものづくり基盤技術の振興施策」(ものづくり白書)を本日閣議決定」
賃金は経験年数と役職でどう変わるか
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査から、生産現場の賃金の変わり方を2つの切り口で確かめます。
- 生産工程の仕事の経験年数が長いほど、所定内給与額と賞与は高い
- 製造業の職長級は、役職のない人より毎月の給与が9万400円高い
- 課長級・部長級では残業が短くなり、賞与の差が大きくなる
経験年数別:生産工程従事者の所定内給与額は15年以上で32万9,700円
同調査の職種別の表で、生産工程従事者(企業規模10人以上の一般労働者、男女計)の所定内給与額を経験年数別に見ると、0年が24万2,400円、1〜4年が24万5,500円、5〜9年が26万3,100円、10〜14年が28万500円、15年以上が32万9,700円でした。0年と15年以上の差は8万7,300円です。


| 経験年数 | 所定内給与額(月) | 年間賞与その他特別給与額 |
|---|---|---|
| 0年 | 24万2,400円 | 23万6,900円 |
| 1〜4年 | 24万5,500円 | 53万2,900円 |
| 5〜9年 | 26万3,100円 | 75万9,100円 |
| 10〜14年 | 28万500円 | 83万9,500円 |
| 15年以上 | 32万9,700円 | 114万7,500円 |
※令和7年賃金構造基本統計調査、生産工程従事者、企業規模10人以上の一般労働者、男女計、産業計。所定内給与額は残業代などを除いた6月分の額。
ここでいう経験年数は、今の会社の勤続年数ではなく、いまの職種の仕事に就いていた年数を、過去の勤め先の分も含めて通算したものです。所定内給与額は、毎月決まって支払われる給与から残業代や深夜勤務手当などを除いた額にあたります。
この統計で見るかぎり、0年と1〜4年の差は3,100円にとどまり、差が大きく開くのは経験を重ねた後半です。 10〜14年と15年以上の差は4万9,200円ありました。年間賞与は前年1年間の支給額なので、経験0年には在籍期間が短く賞与を満額受け取っていない人も含まれます。
なお、この表は産業計の数字で、製造業以外の事業所で生産工程の仕事をする人も含みます。また、経験年数の区分ごとに別の人を集計した平均であり、同じ人が経験を積んだときの伸びを追ったものではありません。
役職別:製造業の職長級は、役職のない人より毎月9万400円高い
同じ調査には、役職ごとの賃金を産業別に集計した表もあります。対象は、一般労働者のうち雇用期間の定めのない人です。製造業(企業規模10人以上、男女計)の毎月決まって支給される給与は、非役職者の33万9,300円に対し、職長級は42万9,700円、係長級は45万3,400円、課長級は54万1,000円、部長級は62万5,600円でした。
「職長級」は、生産現場の班をまとめる役職を表す区分。厚生労働省の調査票記入要領(令和8年調査用)では、職長、組長、班長、伍長、組頭が含まれる役職とされ、製造の現場で仕事の手順や割り当てを決め、進み具合を監督しながら生産労働者を指揮・監督する人を指します。集団の大きさは問わず、指揮・監督のかたわら同じ作業に従事する人も含まれます。
| 役職 | 平均年齢 | きまって支給する現金給与額(月) | 年間賞与その他特別給与額 | 年収換算(編集部試算) |
|---|---|---|---|---|
| 部長級 | 53.6歳 | 62万5,600円 | 247万200円 | 997.7万円 |
| 課長級 | 49.8歳 | 54万1,000円 | 230万4,700円 | 879.7万円 |
| 係長級 | 46.2歳 | 45万3,400円 | 164万8,100円 | 708.9万円 |
| 職長級 | 44.5歳 | 42万9,700円 | 148万5,200円 | 664.2万円 |
| 非役職者 | 41.8歳 | 33万9,300円 | 100万900円 | 507.3万円 |
※令和7年賃金構造基本統計調査、製造業、雇用期間の定めのない一般労働者、企業規模10人以上、男女計。年収換算は、きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額で編集部が計算した概算です。
年収換算で比べると、職長級は非役職者より156.9万円高くなります。 ただし、毎月の給与の差9万400円には残業代も含まれている点に気をつけたいところでしょう。6月の超過実労働時間数は職長級が21時間、非役職者が14時間で、残業代などを除いた所定内給与額で比べると、職長級35万8,400円、非役職者30万700円と、差は5万7,700円に縮まります。


課長級・部長級になると、超過実労働時間数はそれぞれ3時間・2時間と短くなり、代わりに賞与が230万円を超えます。平均年齢も職長級より5歳以上高く、役職ごとに年齢や勤続年数の構成が違う点には注意してください。この差のすべてが役職によるものとは言い切れません。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(大分類)、性、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(e-Stat)
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職、学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(C 鉱業,採石業,砂利採取業)(D 建設業)(E 製造業)」(e-Stat)
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査で使用されている主な用語の説明」
参考:厚生労働省「主な用語の定義」(令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況)
参考:厚生労働省「賃金構造基本統計調査の対象事業所に選ばれた事業主の方へ」(令和8年調査用 調査票記入要領 資料2 役職一覧と解説)
班長・職長になったら受ける「職長教育」
班長・職長に就くと、作業の段取りだけでなく、班の安全を守る役目も加わります。製造業の多くの事業場では、新しく職長になった人に会社が安全衛生の教育を行うことが、法律で決まっています。
- 対象は、新たに職長など作業中の労働者を直接指導・監督する立場に就く人
- 製造業は一部の業種を除いて対象
- 教育の項目と時間は省令で決まっていて、合計12時間以上
除かれている「作業主任者」は、労働災害を防ぐための管理が必要な政令で定める作業ごとに、免許や技能講習の修了者から選ぶ別の立場です(同法第14条)。文末は「行なわなければならない」で、会社の努力義務ではなく義務です。 対象の業種は労働安全衛生法施行令第19条が定めており、製造業はたばこ製造業、繊維工業(紡績業と染色整理業を除く)、衣服その他の繊維製品製造業、紙加工品製造業(セロファン製造業を除く)を除いて含まれます。
教える中身は、条文が挙げる「作業方法の決定及び労働者の配置」「労働者に対する指導又は監督の方法」に加え、労働安全衛生規則第40条が、危険性・有害性の調査と対策、異常時や災害発生時の措置などを定めています。同条が示す時間は、作業手順の定め方と労働者の適正な配置の方法が2時間、指導・教育の方法と作業中の監督・指示の方法が2.5時間、危険性・有害性等の調査とその結果に基づく措置、設備や作業の改善の方法が4時間、異常時と災害発生時の措置が1.5時間、設備・作業場所の保守管理の方法と労働者の創意工夫を引き出す方法などが2時間。項目ごとの時間を足すと12時間以上になり、十分な知識と技能があると認められる項目は省略できます。


職長教育の中身は、そのまま職長の仕事の中身でもあります。 班長や職長を目指すなら、作業手順の決め方や新人への教え方を、いまの持ち場で先輩の動きから学んでおくと、任されたときに慌てずに済むでしょう。
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
技能検定で、身につけた技能を外から見える形にする
現場で積んだ技能は、職場の外からは見えにくいものです。国家検定の技能検定は、それを等級つきの資格として示せる仕組みで、押さえておきたいのは次の4点です。
- 133職種あり、機械加工・機械保全・電子機器組立てなど製造の職種が多い
- 等級は3級(初級)から1級(上級)、職種により特級(管理・監督者向け)。等級を分けない単一等級の職種もある
- 都道府県職業能力開発協会が実施する職種では、3級は実務経験があれば年数を問わず受けられる
- 合格すると「技能士」と名乗れる
合格者だけが「技能士」と名乗れる
技能検定は、職業能力開発促進法にもとづき、厚生労働大臣が職種ごとに等級に分けて行う検定で、実技試験と学科試験の両方があります。合格者の名称は、同じ法律の第50条が定めています。
第1項は合格者が「技能士」を名乗れること、第4項は合格していない人がその名称を使えないことを定めています。名乗れる人が法律で限られているので、「〇級〇〇技能士」という肩書きは、社外の人にもそのまま技能の水準として伝わります。
職種は全部で133(令和8年3月3日時点)。製造の現場に近いものだけでも、機械加工、金属プレス加工、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、シーケンス制御、プラスチック成形などがあります。いまの持ち場の作業と、次に移りたい持ち場の作業の両方から職種を探してみてください。
等級と受検資格:3級に受かれば2級は実務経験の年数を問わない
都道府県職業能力開発協会が実施する職種では、等級ごとに必要な実務経験の年数が決まっています。実務経験だけで受ける場合の年数は次のとおりです。
| 等級 | 技能の程度 | 必要な実務経験(実務経験のみの場合) |
|---|---|---|
| 3級 | 初級の技能労働者が通常有すべき技能 | 検定職種の実務経験があれば年数は問わない |
| 2級 | 中級の技能労働者が通常有すべき技能 | 2年(3級合格後は0年) |
| 1級 | 上級の技能労働者が通常有すべき技能 | 7年(2級合格後は2年、3級合格後は4年) |
| 特級 | 管理者または監督者が通常有すべき技能 | 1級合格後5年 |
※厚生労働省の受検案内(令和8年度)と中央職業能力開発協会の案内による。等級を分けない単一等級の職種は実務経験3年。学歴や職業訓練の修了で短縮される場合があり、指定試験機関が実施する職種は試験機関ごとに定めています。
3級から順に受ければ、2級は実務経験の年数を待たずに挑戦でき、1級も実務経験7年を待たずに受けられます。 3級は、検定職種に関する学科の在学者や、訓練科で職業訓練を受けている人も受検できます。


都道府県職業能力開発協会が実施する職種の受検手数料の目安は、学科試験3,100円、実技試験18,200円です。都道府県によって異なる場合があり、23歳未満の人はものづくり分野の3級の実技試験の手数料が減額されます。合否は100点満点で、原則として実技60点以上、学科65点以上が合格ライン。指定試験機関が実施する職種の手数料と合否の基準は、試験機関ごとに定められています。
会社によっては、技能検定を社内の評価に結びつけています。ものづくり白書の概要には、技能検定の受験を推奨し、合格者に技能手当を支給している金属加工メーカー(サンフウ精密株式会社)の取組がコラムとして載っています。自分の会社に資格手当や受検費用の補助があるかは、就業規則や社内の案内で確かめておきましょう。
参考:e-Gov法令検索「職業能力開発促進法」
参考:厚生労働省「技能検定制度について」
参考:厚生労働省「技能検定職種一覧表」
参考:厚生労働省「技能検定 受検案内 令和8年度(一般用パンフレット)」
参考:中央職業能力開発協会「技能検定のご案内」
参考:厚生労働省「2026年版 ものづくり白書 概要(厚生労働省担当パート)」
働きながら学ぶ公的な支援|ポリテクセンターと教育訓練給付
技能を広げるための学びには、国の仕組みも使えます。在職中と離職後で使えるものが違うので、先に全体を見ておきましょう。
- 在職中なら、ポリテクセンターなどの在職者訓練(能力開発セミナー)
- 離職後なら、受講料無料の公的職業訓練(ハロートレーニング)
- 講座の費用には、条件を満たせば教育訓練給付金
- 勤め先の自己啓発支援
| 制度 | 主な対象 | 費用 | 問い合わせ先 |
|---|---|---|---|
| 在職者訓練(能力開発セミナー) | ものづくり分野で働いている人 | 教材などの経費を受講料として負担(コースにより異なる) | ポリテクセンター、ポリテクカレッジ |
| 公的職業訓練(ハロートレーニング) | 仕事を探している人 | 受講料無料(テキスト代などは自己負担) | ハローワーク |
| 教育訓練給付金 | 雇用保険の加入期間などの要件を満たす人 | 受講費用の20〜80%が支給(講座の種類と条件による) | ハローワーク |
在職者訓練:2日から5日程度の実習中心のコース
高齢・障害・求職者雇用支援機構が行う在職者訓練は、ものづくり分野で働いている人を対象に、仕事に必要な専門的知識と技能・技術を高めるための職業訓練です。設計・開発、加工・組立、工事・施工、設備保全などのコースが、実習を中心に組まれています。
期間は2日から5日間程度の短期間で、平日の昼間だけでなく夜間や土日に開くコースもあります。受講料は、教材などの経費をコースごとに受講者が負担する仕組み。実施するのは職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)と職業能力開発大学校など(ポリテクカレッジ)で、東京都を除く全国で行われています。
保全や制御の持ち場に移りたいときは、社内で機会を待つより先に、こうした短期のコースで基礎をつかんでおく方法があります。 ものづくり白書の概要でも、ポリテクセンター富山の能力開発セミナーで制御システム関連のコースを受講させ、費用に事業主向けの人材開発支援助成金を使っているプラスチック製品メーカーの例が紹介されていました。会社の費用で受けられないか、上司や人事に聞いてみるのもよいでしょう。
離職後なら、受講料無料の公的職業訓練
すでに仕事を離れて次を探している人は、ハロートレーニングと呼ばれる公的職業訓練を使えます。主に雇用保険を受給している人向けの公共職業訓練と、主に受給できない人向けの求職者支援訓練があり、受講料は無料です(テキスト代などは自己負担)。ものづくりから事務、介護サービス、プログラミングまでコースがそろっています。
教育訓練給付金と勤め先の支援
教育訓練給付金は、厚生労働大臣の指定を受けた講座を修了した人に、受講費用の一部を国が支給する制度です。一般教育訓練は20%(上限10万円)、特定一般教育訓練は40%(上限20万円。資格取得などの条件を満たすと50%、上限25万円)、専門実践教育訓練は50%(年間上限40万円)で、専門実践は資格取得や修了後の賃金上昇などの条件を満たすと最大80%(年間上限64万円、令和6年10月以降に開講する講座)まで上がります。
受給するには、受講開始日に雇用保険に加入していた期間が3年以上必要です。初めて受け取る人は、一般・特定一般で1年以上、専門実践で2年以上あれば対象になります。離職した人は、離職日の翌日から受講開始日までが1年以内であることも条件。受講開始日の前日から3年以内に教育訓練給付金を受けたことがある人は対象になりません。給付の種類ごとの手続きは、社会人におすすめの資格4つ|転職に有利かは求人で決まる、合格率と費用も比較で詳しく整理しています。
勤め先の制度も見逃せません。ものづくり白書の概要によると、製造業で正社員の自己啓発を支援している事業所は83.7%。支援の内容では「受講料などの金銭的援助」が最も多く、支援している事業所の79.9%が行っていました。
参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「在職者訓練について」
参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)」
参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「求職者の方へ」
参考:厚生労働省「教育訓練給付金」
参考:ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金」
参考:厚生労働省「2026年版 ものづくり白書 概要(厚生労働省担当パート)」
社内でキャリアアップを進める5つのステップ
制度を知ったうえで、いまの職場で何から動くかを順に並べると、次のようになります。


- いま担当できる工程と、できない工程を書き出す
- 隣の工程や段取り替えを覚え、覚えた日付と内容を記録する
- 次に移りたい持ち場に合う技能検定の職種を決め、3級から受ける
- 面談や日ごろの会話で、目指したい持ち場や役割を上司に伝える
- 新人への指導や改善の提案を引き受け、結果を数字で残す
希望は、言わなければ伝わらない
いちばん後回しにされやすいのが、4つ目の「上司に伝える」です。保全に移りたい、班長を目指したいという希望は、口に出さなければ周りには分かりません。
経営する側にも、現場の考えを知りたいと考える人はいます。銅加工を手がける株式会社ハタメタルワークスの畑敬三社長は、経営で大切にしていることを聞かれ、こう答えています。
聴こうとする上司や経営者がいる職場なら、希望を伝えることは、わがままではなく判断の材料を渡すことです。 面談で話す内容の組み立て方は、キャリアプランの例文|20代・30代・40代と状況別の立て方、面接での答え方が参考になります。
社内で道が見えないときは
希望を伝えても持ち場が変わらない、評価の基準が示されないといった状態が続くなら、社外に目を向けるのも一つの選択です。工場の経験とつながる転職先は工場を辞めたいと感じたら|きつい理由と夜勤のルール、経験が活きる転職先で、図面に関わる仕事に進む道は機械設計の転職は難しい?求人倍率と年収、未経験からの道と転職先の選び方で紹介しています。覚えた工程や改善の結果を書類にまとめるときは、職務経歴書の書き方|4職種の見本とテンプレート、自己PRのコツと履歴書との違いも使ってみてください。
経営者インタビューでは、ものづくりの会社を含むさまざまな業種の社長が、社員の声をどう聞き、どこまで任せているのかを語っています。
製造業のキャリアアップに関するよくある質問
製造業でキャリアアップするには、何から始めればいいですか?
いま担当できる工程を書き出し、隣の工程や段取り替えを覚えるところから始めるのが現実的です。 担当できる工程が増えると、班長・職長として班をまとめる役割や、設備保全・品質管理などの専門の持ち場に進む材料になるでしょう。覚えた技能は、国家検定の技能検定で等級つきの資格として示すこともできます。目指したい持ち場があるなら、面談などで上司に伝えておきましょう。
班長・職長になると、給料はどのくらい上がりますか?
令和7年賃金構造基本統計調査では、製造業の職長級の毎月決まって支給される給与は42万9,700円で、非役職者の33万9,300円より9万400円高くなっています。 雇用期間の定めのない一般労働者(企業規模10人以上、男女計)の平均で、残業代を含んだ額。残業代などを除いた所定内給与額では差は5万7,700円です。年齢構成も違うため、昇格した人の給与がこの差だけ上がるという意味ではありません。
技能検定は何級から受けられますか?
都道府県職業能力開発協会が実施する職種なら、検定職種の実務経験があれば3級から年数を問わず受けられます。 実務経験だけで受ける場合に必要な年数は、2級が2年(3級合格後は0年)、1級が7年(2級合格後は2年、3級合格後は4年)。学歴や職業訓練の修了で短縮される場合があり、指定試験機関が実施する職種は試験機関ごとに条件が異なります。
参考:厚生労働省「技能検定 受検案内 令和8年度(一般用パンフレット)」
働きながら受けられる公的な訓練はありますか?
ポリテクセンターなどが行う在職者訓練(能力開発セミナー)があります。 高齢・障害・求職者雇用支援機構によると、ものづくり分野で働いている人を対象に、設計・開発、加工・組立、設備保全などの実習中心のコースを2日から5日間程度で行うもので、夜間や土日に開くコースも用意されているのです。受講料はコースごとに異なり、東京都を除く全国で実施されています。
職長になると、何か研修を受ける必要がありますか?
製造業の多くの事業場では、新たに職長になった人に会社が安全衛生教育を行う義務があります(労働安全衛生法第60条)。 たばこ製造業や繊維工業(紡績業・染色整理業を除く)など一部の業種は対象外です。作業手順の定め方、指導・監督の方法、危険性・有害性の調査、異常時の措置などを、労働安全衛生規則第40条の定めで合計12時間以上学びます。
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
まとめ
製造業でのキャリアアップは、担当できる工程を増やし、班長・職長として班をまとめる役割や、設備保全・品質管理・生産管理・生産技術といった専門の持ち場へ進む形で進みます。令和7年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上の一般労働者)では、生産工程従事者(産業計)の所定内給与額は経験0年の24万2,400円に対し15年以上で32万9,700円、製造業の雇用期間の定めのない人では、職長級の毎月の給与が非役職者より9万400円高い結果でした。
身につけた技能は、技能検定で外から見える形にできます。都道府県職業能力開発協会が実施する職種では、3級は検定職種の実務経験があれば年数を問わず受けられ、3級に合格すれば2級は実務経験の年数を待たずに挑戦できるのです。在職中ならポリテクセンターの在職者訓練、講座の費用には教育訓練給付金や勤め先の支援も使えます。
私たちは、現場のキャリアは待っていれば順番が回ってくるものではなく、覚えた工程と希望を自分の言葉で示した人から動いていくものだと感じています。
社内で上を目指すにしても外に出るにしても、いまの経験がどんな求人でどう評価されるのかを知っておくと、判断の材料が一つ増えます。

