転職理由の例文|面接と履歴書で使える理由別の伝え方、ネガティブな本音の言い換え

転職理由は、「前の会社を辞めた理由」と「応募先で実現したいこと」をつなげて伝えるのが基本です。本音が給料や人間関係への不満でも、事実を偽る必要はありません。
実際に転職した人が自分の事情で前職を辞めた理由を見ても、労働条件や人間関係、収入が上位に並びます。言い換えるとは事実を変えることではなく、話す順番と比重を変えることなのです。
この記事では、7つの理由別に面接で話す1分版と書類に書く短い版の例文を紹介し、深掘りされたときの答え方まで整理します。
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転職理由は「辞めた理由」と「応募先で実現したいこと」をつなげて伝える
面接で転職理由を聞かれる時間は、前の会社の話をする時間に見えて、実際には応募先でどう働きたいかを説明する時間です。押さえておきたいのは次の3点です。
- 面接官は、同じ理由で辞めないかと、応募先で実現できるかを見ている
- 話す順番は「事実→考えたこと→応募先でやりたいこと」
- 転職理由・退職理由・志望動機は、時間軸で分けると整理しやすい
面接官が転職理由で確かめている2つのこと
一般に、面接官が転職理由から確かめようとしているのは2つです。1つは、前の会社を辞めた理由が自社でも起こり、同じように辞めてしまわないか。もう1つは、応募者が転職で実現したいことを、自社で本当に実現できるかどうかです。
どちらの疑問も、辞めた理由だけを聞いたのでは答えが出ません。辞めた理由と応募先でやりたいことがつながったとき、面接官は入社後の姿を具体的に思い描けるようになります。転職理由は過去の説明で終わらせず、応募先で働きたい理由の前半として話しましょう。
話す順番は「事実→考えたこと→応募先でやりたいこと」
転職理由は、次の3つの部分に分けて組み立てると、本音を偽らずに前向きな形へまとめられます。
| 順番 | 話すこと | 給与が理由の場合の例 |
|---|---|---|
| 1. 事実 | 担当していた仕事と、辞める判断につながった状況 | 成果が給与に反映されにくい仕組みだった |
| 2. 考えたこと | その状況で試したことと、そこから気づいたこと | 評価面談で基準を確かめたが、制度を変えるのは難しかった |
| 3. 応募先でやりたいこと | 応募先を選んだ理由と、入社後に取り組みたいこと | 成果が評価につながる環境で、営業の経験を伸ばしたい |
時間の配分は、事実と考えたことを短めにして、応募先でやりたいことに多くを使うのが目安です。本音を言い換えるとは、事実を変えることではなく、話す順番と比重を変えることなのです。
3つ目の部分に説得力を持たせるのは、前職で何をしてきたかという具体的な経験です。話せる経験がなかなか見つからないときは、自己PRが思いつかない人向けのエピソードの探し方の考え方を、転職の準備にも応用できます。
転職理由・退職理由・志望動機の違い
面接では「転職理由」「退職理由」「志望動機」を別々に聞かれることもあれば、まとめて聞かれることもあります。3つは、答える問いと時間軸で分けると整理しやすくなります。
| 言葉 | 答える問い | 時間軸 |
|---|---|---|
| 退職理由 | なぜ前の会社を辞めた(辞める)のか | 過去 |
| 転職理由 | なぜ会社を移るのか。辞めた理由と、次にやりたいことの両方を含む | 過去から未来 |
| 志望動機 | 数ある会社のなかで、なぜこの会社を選んだのか | 未来 |
「退職理由を教えてください」と聞かれた場合も、辞めた事情だけで話を終えず、次にやりたいことまで一言添えれば、転職理由と同じ形で答えられます。転職理由の後半と志望動機が同じ方向を向いていれば、2つの答えが互いを裏づけてくれるでしょう。
転職した人が前職を辞めた理由|令和7年雇用動向調査
実際に転職した人は、どんな理由で前の会社を辞めているのでしょうか。厚生労働省の統計から読み取れるのは次の3点です。
- 本人の事情による具体的な理由では、労働条件、人間関係、収入が上位に並ぶ
- 回答は主な理由を1つ選ぶ形式で、「その他の個人的理由」も多い
- 今の勤め先を選んだ理由では、「仕事の内容に興味があった」が最も多い
令和7年雇用動向調査は、厚生労働省が2026年8月に結果を公表した統計です。2025年中に転職した人が入職者票に自分で記入する形で、直前の勤め先を辞めた主な理由を選択肢から1つだけ答えています。集計の対象は、前の勤め先で雇われて働いていて、調査時点でも新しい勤め先にいる人です。調査が「個人的理由」としてまとめている選択肢のうち、具体的な理由で多かったのは、男女計で「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」10.8%、「職場の人間関係が好ましくなかった」10.3%、「給料等収入が少なかった」9.3%でした。
| 前職を辞めた主な理由 | 男女計 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 10.8% | 8.5% | 12.9% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 10.3% | 8.9% | 11.5% |
| 給料等収入が少なかった | 9.3% | 9.9% | 8.6% |
| 会社の将来が不安だった | 5.5% | 6.9% | 4.3% |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 4.9% | 5.2% | 4.6% |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 4.6% | 5.2% | 3.9% |
| 結婚 | 1.0% | 0.5% | 1.4% |
| 出産・育児 | 1.1% | 0.5% | 1.6% |
| 介護・看護 | 0.9% | 0.8% | 1.0% |
| その他の個人的理由 | 20.4% | 16.8% | 23.8% |
| 定年・契約期間の満了 | 12.8% | 16.1% | 9.8% |
| 会社都合 | 5.8% | 5.3% | 6.2% |
| その他の理由(出向等を含む) | 9.8% | 12.1% | 7.8% |
割合が最も大きいのは、具体的な選択肢のどれにも当てはまらない「その他の個人的理由」の20.4%です。男性では「定年・契約期間の満了」も16.1%と多く、60〜64歳の男性では57.8%に達するなど、年齢の高い層で特に多くなっています。表の割合は理由が不詳の人を含む全体に対するもので、合計しても100%にはなりません。個人的理由の具体的な選択肢を性別で見ると、男性は「給料等収入が少なかった」9.9%、女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」12.9%が最も多い項目でした。
同じ調査は、今の勤め先を選んだ主な理由も1つ選んでもらっています。男女計で最も多いのは「仕事の内容に興味があった」24.7%で、「能力・個性・資格が生かせる」16.0%、「労働時間、休日等の労働条件が良い」15.4%と続きました。「通勤が便利」は8.7%、「とにかく仕事に就きたかった」は8.5%、「給料等収入が多い」は6.7%、「会社の将来性が期待できる」は3.3%です。辞めた理由と選んだ理由は別々の問いとして集計されたもので、同じ人の答えを組み合わせたものではありません。それでも対になる選択肢を並べると、辞めた理由では4.9%にとどまる「仕事の内容」が、選んだ理由では最も多くなっています。

面接で聞かれる転職理由と志望動機も、ちょうどこの「辞めた理由」と「選んだ理由」の2つの問いにあたるもの。本人の事情で辞めた理由の上位には、労働条件や人間関係、収入といった、面接で伝え方に迷いやすい理由が並んでいます。 自分の本音がこれらに当てはまっていても、それは珍しいことではありません。
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要 3 転職入職者の状況」
参考:政府統計の総合窓口 e-Stat「雇用動向調査(令和7年)第12表 前の勤め先を辞めた理由・現在の勤め先を選んだ理由別入職者数及び構成比」
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査 入職者票」
理由別の転職理由の例文|面接で話す1分版と書類に書く短い版
ここからは、雇用動向調査で多かった理由を中心に、7つの理由別に例文を紹介します。
- 給与・評価への不満
- 人間関係
- 残業の多さや休みの取りにくさ
- 仕事内容が合わない、やりたい仕事ができない
- 会社の将来への不安
- スキルアップ・キャリアアップ
- 介護や家族の転勤など家庭の事情
面接で話す例は1分程度で話せる長さに、書類に書く例は職務経歴書や履歴書の「志望の動機」欄に添えられる1〜2文にまとめました。例文はいずれも架空の例です。 〇の部分や業務の内容は、自分の経験に置き換えて使ってください。
給与・評価への不満が理由のとき
「給料が低い」とだけ伝えると、条件のよい会社ならどこでもよいのでは、と受け取られやすくなります。言い換えの軸は金額そのものではなく、成果がどう評価され、報酬に結びつくかという仕組みのほうです。希望する年収は転職理由とは切り分け、条件を確認する場や履歴書の本人希望記入欄で伝えれば足ります。
| 伝える場面 | 例文 |
|---|---|
| 面接で話す例(1分程度) | 前職では法人営業を〇年担当し、新規開拓で〇年続けてチームの目標を上回る受注を上げてきました。一方で、給与は勤続年数で決まる部分が大きく、成果がどこまで評価に反映されているのかが見えにくい仕組みでした。評価面談で基準を確かめ、上司にも相談しましたが、制度そのものを変えるのは難しいと分かりました。自分の出した成果がどう評価され、報酬につながるのかが分かる環境で、営業としての力をさらに伸ばしたいと考えています。御社は評価の基準と昇給の決まり方を募集要項で示されており、成果に向き合う働き方ができると考えて応募しました。 |
| 書類に書く例(短い版) | 成果が評価と報酬に反映される環境で、法人営業の経験を生かして新規開拓に取り組みたいと考え、転職を決意しました。 |
人間関係が理由のとき
上司や同僚と合わなかったことが本音でも、特定の人への評価を面接で話すと、前職の悪口として受け取られかねません。言い換えの軸は人ではなく、仕事の進め方や情報共有の仕組みです。ハラスメントのように自分では変えられない事情で辞めた場合は、詳しい経緯まで話さなくても構いません。「働く環境を変える必要があった」と短く伝え、次の職場で大切にしたい働き方に話を移す方法もあります。
| 伝える場面 | 例文 |
|---|---|
| 面接で話す例(1分程度) | 前職では店舗スタッフとして〇年働き、新人の教育係も担当しました。職場には売り場の課題をスタッフ同士で共有する場がなく、問題に気づいても改善につながりにくい状況でした。私からも週に一度、気づいた点をまとめて提案してきましたが、話し合う場を仕組みとしてつくるところまでは届きませんでした。この経験から、メンバーが情報を出し合い、役割を分担しながら仕事を進める環境で働きたいと考えるようになりました。御社ではチームで目標を立て、定期的に振り返る運営をされていると伺い、教育係の経験も生かせると考えて応募しました。 |
| 書類に書く例(短い版) | メンバー同士で情報を共有し、役割を分担しながら成果を上げる働き方をしたいと考え、転職を決意しました。 |
残業の多さや休みの取りにくさが理由のとき
「残業が多い」「休めない」とだけ伝えると、仕事への意欲が低いと誤解されることがあります。状況は事実として短く伝え、時間の使い方を変えて何に力を注ぎたいのかを話の中心に置きましょう。応募先にも忙しい時期はあるはずです。繁忙期があること自体は受け入れる姿勢を示しておくと、条件だけで選んでいるという印象を避けやすくなります。
| 伝える場面 | 例文 |
|---|---|
| 面接で話す例(1分程度) | 前職では経理担当として、月次決算と請求業務を担当していました。欠員が埋まらない状態が続いて残業の多い月が重なり、業務の見直しや資格の勉強に時間を充てられない状況でした。手順書をつくって引き継ぎしやすくするなど、負担を減らす工夫はしてきましたが、人員の補充は難しいと分かりました。決算期のように忙しい時期があることは理解しています。そのうえで、働く時間の見通しを立てながら、経理の専門性を高めて長く貢献できる環境で働きたいと考えています。御社は月ごとの残業時間の目安を求人票で示されており、業務と学びを計画的に両立できると考えて応募しました。 |
| 書類に書く例(短い版) | 業務の見通しを立てて働ける環境で、経理の専門性を高めながら長く貢献したいと考え、転職を決意しました。 |
仕事内容が合わない、やりたい仕事ができないことが理由のとき
「仕事が面白くない」とだけ伝えると、入社前に調べなかったのか、応募先でも同じことにならないかと心配されやすくなります。仕事をするなかで何に関心が向いたのかを具体的な場面から話すと、次にやりたい仕事を選んだ理由として伝わるはずです。社内で異動を希望したかどうかも、よく確かめられる点です。
| 伝える場面 | 例文 |
|---|---|
| 面接で話す例(1分程度) | 前職では事務職として受発注の管理を担当していました。業務のなかで、取引先ごとの発注の傾向を表にまとめて担当者に共有したところ、在庫の過不足が減り、数字をもとに仕事を改善することにやりがいを感じるようになりました。データ分析に関わる部署への異動も希望しましたが、募集がなく、当面は難しいと分かりました。事務の仕事で身につけた正確さを生かしながら、データを扱う仕事を本業として担当したいと考えています。御社の営業企画職は、販売データの集計と分析から改善の提案までを担うと伺い、これまでの経験と関心が重なると考えて応募しました。 |
| 書類に書く例(短い版) | 受発注管理の業務を通じてデータを使った改善にやりがいを見いだし、分析を担う仕事に挑戦したいと考え、転職を決意しました。 |
会社の将来に不安を感じたことが理由のとき
業績の悪化や事業の縮小を理由にするときは、前職の内部事情を話しすぎないよう気をつけたいところです。会社として公表された事実や、自分の担当業務に起きた変化だけを短く伝えます。そのうえで続けたい仕事を軸に話せば、会社の批判ではなく、自分のキャリアの話として受け取ってもらえるでしょう。
| 伝える場面 | 例文 |
|---|---|
| 面接で話す例(1分程度) | 前職では、産業用機器の営業を担当していました。会社として主力事業の縮小が決まり、担当していた製品の取り扱いも段階的に終える方針が示されました。別の事業部への異動の案内もありましたが、営業として顧客の課題に長く向き合う仕事を続けたいと考え、転職を決めました。顧客の業務を聞き取り、提案につなげる力は、扱う製品が変わっても生かせると考えています。御社がこの分野の製品を中心に事業を広げていく方針を示されていることに引かれ、腰を据えて取り組みたいと考えて応募しました。 |
| 書類に書く例(短い版) | 事業の縮小にともない担当製品の取り扱いが終了することになり、顧客の課題に長く向き合える営業の仕事を続けるため、転職を決めました。 |
スキルアップ・キャリアアップしたいことが理由のとき
前向きな理由ですが、「成長したい」だけでは、どこの会社にも言える言葉になってしまいます。何ができるようになりたいのか、なぜ今の会社では難しいのか、応募先ならなぜできるのか。この3点を具体的にすると、志望動機まで一続きで話せます。
| 伝える場面 | 例文 |
|---|---|
| 面接で話す例(1分程度) | 前職ではWeb制作会社のディレクターとして、〇年間、企業サイトの制作進行を担当してきました。担当は公開までの工程が中心で、公開後のアクセスの分析や改善に関わる機会はほとんどありませんでした。自分でも分析の手法を学び、担当案件で改善案をまとめて提案したこともありますが、運用はお客様の側や別の会社が担う形がほとんどでした。制作から公開後の改善までを一続きで担当し、成果まで責任を持てるディレクターになりたいと考えています。御社では制作と運用を同じチームが担当されていると伺い、進行管理の経験を生かしながら、運用の力も身につけられると考えて応募しました。 |
| 書類に書く例(短い版) | 制作から公開後の改善までを一貫して担当し、成果に責任を持てるディレクターを目指したいと考え、転職を決意しました。 |
介護や家族の転勤など、家庭の事情が理由のとき
家庭の事情は、言い換えを工夫する必要の少ない理由です。気をつけたいのは、家族の状況を詳しく話すうちに、肝心の働ける条件が伝わらなくなること。厚生労働省は「公正な採用選考の基本」で、家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴など)や生活環境・家庭環境といった応募者の適性・能力と関係のない事項を、応募用紙に記入させたり面接で尋ねたりして把握しないよう企業に求めています。把握すれば採否の決定に影響し、就職差別につながるおそれがあるためです。応募者の側も、事情は一言にとどめ、勤務地や勤務時間などの働ける条件と、その条件のなかでやりたい仕事を伝えれば足ります。
| 伝える場面 | 例文 |
|---|---|
| 面接で話す例(1分程度) | 前職では物流会社で配車の管理を〇年担当していました。家族の介護のため地元に戻ることになり、通勤できる範囲で、これまでの経験を生かせる職場を探して転職を決めました。勤務時間の見通しは立てているので、通常の勤務であれば支障なく働けます。前職では、ドライバーの勤務時間を守りながら配送の効率を上げる配車の組み方を工夫し、急な欠員にも対応してきました。その経験を、地域の配送を担う御社の配車業務で生かしたいと考えています。 |
| 書類に書く例(短い版) | 家族の事情で地元に戻ることになり、配車管理の経験を生かして、地域の配送を支える仕事に長く携わりたいと考えています。 |
NGになりやすい転職理由の伝え方と言い換え
伝わりにくい転職理由には共通点があります。理由そのものに問題があるのではなく、面接官が確かめたいことに答えていない、という点です。よくあるのは次の5つ。
- 前職の上司や会社への不満を並べる
- 給与や休日など、待遇だけを理由にする
- 応募先でも同じことが起こりうる理由を挙げる
- 「成長したい」「挑戦したい」だけで終える
- 事実と違う理由をつくる
| 伝わりにくい伝え方 | 面接官にどう聞こえるか | 言い換えの方向 |
|---|---|---|
| 上司が何も決めてくれなかった | 他人のせいにしているように聞こえ、入社後も同じ不満を持つのではと受け取られる | 人の評価ではなく、仕事の進め方の違いと、自分が試したことを話す |
| 給料が安く、休みも少なかった | 条件がよければどこでもよいと受け取られ、志望度が伝わらない | 条件を整えたうえで、何に力を注ぎたいかまで話す |
| 転勤が多いのが嫌だった(転勤のある会社に応募) | 応募先でも同じことが起こるため、入社してもまた辞めるのではと考えられる | 応募先の条件を確かめ、応募先で解決できる理由を軸にする |
| もっと成長したかった | どこの会社にも言える言葉で、何をしたいのかが分からない | 何ができるようになりたいかと、応募先でなぜできるかを具体的に話す |
| 実際とは違う前向きな理由 | 深掘りの質問で話が食い違い、ほかの答えまで信用されにくくなる | 事実のなかから、何をどこまで話すかを選ぶ |
正直なところ、前の職場への不満が言葉の端ににじむのは自然なことだと私たちは考えています。不満を消そうと力むより、不満の対象を人から仕組みへ、話の重心を過去から未来へと移すほうが、無理なく言い換えられるでしょう。どの言い換えも、事実はそのままに、応募先でやりたいことへ話をつなげるという点で共通しています。
履歴書・職務経歴書に転職理由を書くときのポイント
書類では、面接ほど詳しく転職理由を書く必要はありません。書く場所ごとの考え方は次の4つです。
- 履歴書の職歴欄には、退職の事実だけを書く
- 理由に触れるなら、「志望の動機」欄で志望動機とつなげて1〜2文
- 勤務地や勤務時間の条件は、本人希望記入欄に書く
- 職務経歴書に書くなら、末尾に短く
厚生労働省が作成した履歴書の様式例には、氏名や連絡先などの欄のほか、学歴・職歴、免許・資格、「志望の動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど」、本人希望記入欄があり、転職理由だけを書く専用の欄はありません。通勤時間・扶養家族数(配偶者を除く)・配偶者・配偶者の扶養義務の4つの欄は、応募者のプライバシーの要素が非常に高い情報であることなどを踏まえて設けられていません。応募先から指定された書式があれば、そちらに従いましょう。
| 書く場所 | 書き方 | 記載例 |
|---|---|---|
| 履歴書の職歴欄(自己都合) | 退職の事実だけを書く。自己都合なら「一身上の都合により」とするのが一般的 | 一身上の都合により退職 |
| 履歴書の職歴欄(会社側の事情・契約の終了) | 理由となった事実をそのまま書く | 会社都合により退職/契約期間満了により退職 |
| 履歴書の「志望の動機」欄 | 転職理由に触れるなら、志望動機につながる形で1〜2文 | 理由別の例文にある「書類に書く例(短い版)」 |
| 履歴書の本人希望記入欄 | 勤務地や勤務時間に条件があれば、事情の詳細ではなく条件を書く | 家庭の事情により、〇〇市内での勤務を希望します |
| 職務経歴書 | 書く場合は末尾に2〜3行。職務経歴の内容と食い違わないようにする | 担当業務の実績を踏まえて「書類に書く例(短い版)」を添える |
残業や転勤に対応できるかは、面接で確かめられることがあります。厚生労働省は様式例の案内で、こうした確認は質問例を参考に面接の場で行い、応募者全員に同じ質問をするよう企業に求めています。聞かれたら、働ける条件を具体的に答えましょう。
書類に書いた転職理由は、面接で話す内容の要約になっているかを最後に確かめておくと安心です。 書類と面接で理由が食い違うと、どちらが本当なのかを確かめる質問が増えてしまいます。生成AIで文章を整えるなら、自分の経験にない表現が混ざっていないかの読み直しも欠かせません。見抜かれやすい文章の特徴は、履歴書をAIで作成するときのコツと注意点で紹介しています。
深掘りされたとき、転職回数が多いときの答え方
転職理由は、一度答えて終わるとは限りません。面接官は答えを聞いたうえで、同じ理由で辞めないかを確かめるために、もう一歩踏み込んだ質問をすることがあります。
- 深掘りには「試したこと」と「応募先で確かめたこと」で答える
- 在職期間が短いときは、想定と違った点と今回確かめたことを話す
- 転職回数が多いときは、1本の軸でつないで話す
深掘りには「試したこと」と「応募先で確かめたこと」で答える
| よくある深掘りの質問 | 面接官が確かめたいこと | 答え方の方向 |
|---|---|---|
| なぜ今の会社で解決しなかったのですか | 自分から動いたか、ほかの手段を試したか | 試したことと、その結果を事実で話す |
| 当社でも同じことが起きたらどうしますか | 入社後、同じ理由で辞めないか | 応募先について確かめた事実をもとに、起きたときの動き方を話す |
| ほかにも理由はありますか | 話していない本音がないか | 主な理由とつながる補足を1つ、短く話す |
| なぜこのタイミングなのですか | 勢いで決めていないか | きっかけになった出来事と、準備してきたことを話す |
| 前の上司はどんな人でしたか | 他人のせいにする傾向がないか | 人柄の評価ではなく、仕事の進め方の違いとして話す |
答えの材料になるのは、前職で試したことの事実と、応募先について確かめたことです。「御社なら大丈夫だと思います」という印象だけでは、同じことが起きないと考える根拠になりません。マイナビ・リクナビなどの求人サイトに載っている募集要項や、転職エージェントから届いた求人票、説明会や面接で聞いた話のなかから、残業時間の目安や評価の仕組みといった具体的な事実を挙げて答えましょう。深掘りされても、話の裏づけを確かめられていると考えれば、落ち着いて事実を返せます。 なお、ここで紹介した答え方は面接官の疑問に正面から答えるための準備で、こう答えれば必ず通過するという正解があるわけではありません。
在職期間が短いときは、想定と違った点と今回確かめたことを話す
入社から短い期間で辞める場合、一般に面接官がまず気にするのは、次の会社でも早く辞めてしまわないかという点です。入社前に想定していたことと実際の違いを事実として短く伝え、今回の転職では応募先について何を確かめたのかを話しましょう。短い期間でも担当した業務と身につけたことがあれば、それも添えます。違いの原因が前の会社の説明にあったとしても、相手を責める言い方は避けたいところ。「入社前に確かめきれなかった」と自分の側の振り返りとして話すほうが、次の会社選びの基準として伝わります。
転職回数が多いときは、1本の軸でつないで話す
転職の回数が多い場合、一社ずつ辞めた理由を同じ重さで説明しようとすると、話が長くなり、辞めた事情ばかりが印象に残ります。これまでの転職を通じて何を身につけてきたのかという軸を1つ決め、その軸に沿って経歴を整理しておきましょう。面接では直近の転職理由を中心に話し、それ以前の転職には軸に沿って一言ずつ触れる程度で足ります。軸がどうしても見つからないなら、これから何を軸にしたいかを先に決め、そこから経歴を読み直すのも一つの方法です。
経営者は自分の転職理由をどう語っているか
取材で経営者に会社員時代の転職の話を聞いていると、辞めた事情より先に、次に何を身につけたかったのかを話す人が多いと感じます。3人の言葉から、転職理由の語り方を見てみましょう。
- 本音と目的を、両方そのまま話している
- 10回以上の転職を、1つの目標でつないでいる
- 前職で合わなかった点を、自社に合う理由として見ている経営者もいる
本音と目的を、両方そのまま話す
株式会社エムラボの三上真央社長は、新卒で博報堂に入社し、その後アドネットワークの会社で2.5年ほど役員を務めました。そのときの転職理由を、こう振り返っています。
勢いという本音を隠さず、そのうえで経験してきた領域と、次に知りたい領域を並べて話しています。本音の理由は1つでなくても構いません。伝えるときは、そのなかから応募先につながる部分を選び、これまでの経験と結びつければ足ります。
10回以上の転職を、1つの目標でつなぐ
フィグニー株式会社の里見恵介社長は、ゲーム制作を志してプログラマーの道に進み、起業するまでに10回以上の転職を重ねています。
転職の回数は多くても、どの転職も「全部をできるようになる」という目標から説明がつきます。回数そのものより、それぞれの転職で何を身につけ、どこへ向かっていたのかを1本の線で話せるように準備しておきたいところです。
前職で合わなかった点が、応募先では相性の説明になる
Avalon Consulting株式会社の竹内健登社長は、どんな転職者に自社が合うかを次のように話しています。
ルールに縛られていた、意見を取り入れてもらえなかったという理由は、言い方しだいで前職への不満にも聞こえます。同社は2025年5月時点の取材で、朝礼や出社義務がなく在宅勤務も自由に選べる働き方だと説明しており、こうした環境に応募するなら、辞めた理由はそのまま相性の説明になるでしょう。応募先の働き方を調べたうえで辞めた理由と照らし合わせておくと、ネガティブな事実も伝わる形に変えやすくなります。
志望する会社や同じ業界の社長が、どんな人と働きたいと考えているのか。それを知っておくと、応募先で実現したいことを具体的に描きやすくなるはずです。会社員時代の転職をどう決めたのか、いまどんな仲間を求めているのかを、社長たち自身が語っています。
転職理由の例文に関するよくある質問
転職理由で一番多いのは何ですか?
令和7年雇用動向調査の男女計で、個人的理由のうち具体的な選択肢として多かったのは「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」10.8%、「職場の人間関係が好ましくなかった」10.3%、「給料等収入が少なかった」9.3%でした。 前の勤め先を辞めた主な理由を1つ選ぶ形式で、具体的な選択肢に当てはまらない「その他の個人的理由」が20.4%と最も多くなっています。
参考:政府統計の総合窓口 e-Stat「雇用動向調査(令和7年)第12表 前の勤め先を辞めた理由・現在の勤め先を選んだ理由別入職者数及び構成比」
本音の転職理由をそのまま話してもいいですか?
事実を変える必要はありませんが、どの順番で、どこまで話すかは選べます。 たとえば「残業が多くてつらかった」が本音なら、残業が続いていた状況を事実として短く伝え、時間の使い方を変えて何に取り組みたいかへ話の比重を移すとよいでしょう。事実と違う理由をつくると、深掘りの質問に答えるうちに細部が食い違いやすく、ほかの答えまで信用されにくくなってしまいます。
転職理由が複数あるときは、全部話したほうがいいですか?
面接では、応募先で実現できることにつながる理由を1つ軸にして話すと、要点が伝わりやすくなります。 辞めた理由がいくつも重なっていても構いません。雇用動向調査が「主な理由」を1つだけ選ぶ形で尋ねているように、話すときも中心に置く理由を1つ決めておくと整理しやすくなります。ほかの理由は、「ほかにも理由はありますか」と聞かれたときに、主な理由とつながる形で1つ補足する程度で十分です。
会社都合や契約期間の満了で辞めた場合は、どう伝えればいいですか?
事実をそのまま短く伝え、次の仕事に何を求めて応募したのかへ話を進めます。 事業所の閉鎖や事業の縮小、契約期間の満了は本人の希望とは別の事情なので、言い換えを工夫する必要はあまりありません。履歴書の職歴欄も「会社都合により退職」「契約期間満了により退職」のように、事実を書くのが一般的です。令和7年雇用動向調査の男女計では、前の勤め先を辞めた主な理由として「会社都合」が5.8%、「定年・契約期間の満了」が12.8%を占めていました。
「新しいことに挑戦したい」は転職理由になりますか?
なりますが、それだけでは何に挑戦したいのかが伝わりません。 前職で何をしてきたのか、前職ではなぜその挑戦が難しいのか、応募先ならなぜできるのかの3点を添えると、転職理由として成り立ちます。たとえば「営業で顧客の声を聞くうちに、商品の企画から関わりたいと考えるようになりました。御社は営業と企画の距離が近く、顧客の声を企画に生かせると考えています」というように、挑戦したい中身と応募先を結びつけて話しましょう。
まとめ
転職理由は、前の会社を辞めた事実と、応募先で実現したいことをつなげて伝えます。話す順番は「事実→考えたこと→応募先でやりたいこと」。給与や人間関係、労働時間のように本音がネガティブな理由でも、事実を偽らず、不満の対象を人から仕事の進め方や仕組みへ移し、応募先で解決できる形に整えれば伝わります。令和7年雇用動向調査でも、前の勤め先を辞めた本人の事情による具体的な理由では労働条件・人間関係・収入が上位に並び、今の勤め先を選んだ理由では「仕事の内容に興味があった」が最も多くなっていました。
深掘りの質問には前職で試したことと応募先で確かめたことで答え、在職期間の短さや転職回数の多さは、何を身につけてきたかという軸で説明します。家庭の事情なら、事情そのものより働ける条件を優先して伝えましょう。
辞めたきっかけが不満でも勢いでも、転職の価値を決めるのは、その後に何を積み上げたかのほうではないでしょうか。これまでの取材を通じて、私たち編集部が実感してきたことでもあります。問われているのは辞めた理由の良し悪しではなく、その先で何をしたいのかを自分の言葉で話せるかどうかです。
応募する会社ごとに言い回しを整えるのが一人では難しいと感じたら、面接対策を手伝ってくれる相手に頼るのも一つの手です。

