執行役員とは?取締役との違いや役員かどうか、年収までわかりやすく解説

執行役員とは、会社が任意に設ける役職で、取締役会が決めた方針にそって担当分野の業務を執行する幹部のことです。取締役が方針を決めて監督する側なら、執行役員はそれを担当分野で実行する側です。
名前に「役員」と付いていても、会社法上の役員には含まれません。会社法の全文を確かめても、「執行役員」という言葉は一度も出てこないのです。
この記事では、取締役や執行役との違い、雇用か委任かで変わる扱い、年収の目安、執行役員になる道筋までを順に整理します。
執行役員のように経営に近いポジションを目指すなら、管理職や役員候補の求人がどんな役割と待遇で出ているかを知っておくと、次の一手を考えやすくなります。こうしたポジションや待遇は、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
執行役員とは、取締役会の方針にそって業務を執行する幹部
執行役員という役職は、法律が用意したものではありません。まずは次の3点を頭に入れておきましょう。
- 会社法に「執行役員」という言葉は出てこない
- 役割は、取締役会などが決めた方針を担当分野で実行すること
- 常務・上席といった呼び名や序列も、会社ごとに決まる
会社法に「執行役員」という言葉は出てこない
執行役員は、会社法に定めのない役職です。 e-Gov法令検索で会社法の全文を確かめると、「執行役」という語は繰り返し登場する一方、「執行役員」は一度も出てきません。置くかどうか、何人置くか、どんな権限を与えるかは、会社が執行役員規程などの社内ルールで決めることになります。
会社法が「機関」として定めているのは、株主総会、取締役、取締役会、監査役などです。執行役員はそのどれにも当たらず、法律の目線で見れば、会社が自分で設けた社内の役職という位置づけになります。
担う仕事は、担当する事業や部門の業務執行
取締役会を置く会社では、業務執行の決定と、取締役の職務の執行の監督が取締役会の仕事と定められています。会社法上、業務を執行する取締役として定められているのは、代表取締役と、取締役会で選ばれた業務執行取締役です。執行役員は、こうして決まった方針を受け、営業や開発、管理部門といった担当分野の現場を動かします。
取締役会が「何をやるか」を決めて見張り、執行役員が「どうやるか」を引き受ける、という分担で捉えると全体がつかみやすくなります。 社長を補佐しながら複数の事業を統括する人もいれば、部長を兼ねて1つの部門を率いる人もいて、任される範囲は会社によってまちまちです。「執行役員COO」のように、CxOの呼び名と組み合わせる会社もあります。
常務執行役員・上席執行役員などの呼び名は会社ごとの序列
「常務執行役員」「専務執行役員」「上席執行役員」といった肩書きを目にすることもあるでしょう。これらは会社が執行役員の中に設けた序列を示す呼び名で、会社法に定めはありません。どの呼び名が上位か、何段階に分けるかは会社ごとに違うため、気になるときはその会社の役員紹介ページや組織図で並び順を確かめるのが確実です。
取締役が執行役員を兼ねる「取締役執行役員」「取締役常務執行役員」といった肩書きもあります。この場合は、1人が取締役としての立場と執行役員としての役割を両方持っている状態です。「社長執行役員」「執行役員社長」のように、社長の肩書きと組み合わせる会社も見られます。
取締役と執行役員の違いは「決めて監督する」か「実行する」か
取締役と執行役員は、名前が似ていても法律上の立場がまったく異なります。違いが表れるのは次の点です。
- 会社法上の位置づけと選ばれ方
- 役割と、会社との契約の形
- 任期、登記、雇用保険の扱い
| 項目 | 取締役 | 執行役員 |
|---|---|---|
| 会社法上の位置づけ | 会社法が定める役員 | 定めはなく、会社が任意に置く役職 |
| 選ばれ方 | 株主総会の決議で選任 | 会社の規程による。取締役会で選ぶ会社もある |
| 主な役割 | 経営の意思決定と、取締役の職務執行の監督 | 決まった方針にそって担当分野の業務を執行 |
| 会社との契約 | 委任 | 雇用契約の場合と委任契約の場合がある |
| 任期 | 原則2年。会社の形態などにより例外あり | 法律の定めはなく、会社の規程で決める |
| 登記 | 氏名が登記される | 登記されない |
| 雇用保険 | 原則として被保険者にならない | 労働者として扱われるかどうかで決まる |
取締役の選ばれ方や任期、会社との関係には会社法の条文があり、執行役員にはそれに当たる条文がありません。 会社法は、取締役を含む役員を株主総会の決議で選ぶこと、会社と役員の関係は委任に関する規定に従うことを定め、取締役の任期を原則として選任後2年以内に終わる事業年度の定時株主総会までとしています。取締役の氏名は登記事項ですが、執行役員は登記の対象外です。雇用保険については、厚生労働省の業務取扱要領が株式会社の取締役を原則として被保険者にしないとしており、執行役員の扱いは契約と働き方によって分かれます。
参考:e-Gov法令検索「会社法」
参考:厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領 雇用保険適用関係」
執行役員と取締役はどちらが上か
会社法の仕組みで見ると、方針を決めて監督する取締役会の側が上に立ちます。 取締役会は代表取締役を選び、取締役の職務の執行を監督する立場にあります。執行役員は、その取締役会や代表取締役が決めた方針のもとで動く役職です。
ただし、実際の序列は肩書きの組み合わせで変わります。取締役が執行役員を兼ねている場合もあれば、執行役員の中に常務や専務といった段階を設けている会社もあるでしょう。報酬で見ても、人事院の令和5年調査が集計した令和4年の平均年間報酬では、従業員500人以上の企業の専任執行役員が専任取締役を上回っていました。肩書きの上下と報酬の高さは、必ずしも一致しないのです。
参考:e-Gov法令検索「会社法」
参考:人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」
執行役員と部長はどちらが上か
部長は社員としての職位、執行役員は会社が別に設けた役職です。どちらが上かは法律ではなく、その会社の規程と組織図で決まります。 執行役員を部長より上の役職として置いたうえで、部長を兼ねさせる会社もあります。名刺に「執行役員 営業本部長」のように並んでいれば、両方を兼ねている状態です。
違いが表れやすいのは、見ている範囲です。部長が自分の部門の成果に責任を持つのに対し、執行役員には会社全体の方針と担当分野をつなぐ役回りが期待されることが多くなります。
執行役員は「役員」なのか
名前に「役員」と付くため、ここで迷う人は少なくないでしょう。答えは、どの法律や場面での「役員」かによって変わります。
- 会社法上の役員には含まれない
- 税法上は、働き方しだいで役員として扱われることがある
- 統計や社内の呼び方では、役員の一員として数えられることもある
会社法上の役員に、執行役員は含まれません。 会社法第329条第1項が、株主総会の決議で選ぶ役員として挙げているのは、取締役・会計参与・監査役の3つです。執行役員はこのどれでもなく、株主総会で選ばれる立場でもないのです。
税金の世界では、もう少し複雑です。法人税法が役員として挙げるのは取締役・執行役・会計参与・監査役などで、執行役員の名前はここにもありません。ただし同法の施行令は、使用人以外の者で法人の経営に従事しているものも役員に含めると定めています。雇用契約を結ばない委任型の執行役員が経営に従事していれば、税法上は役員として扱われる可能性があるわけです。
一方で、言葉の使い方としては、執行役員を役員の一員として数える場面もあります。人事院の「民間企業における役員報酬(給与)調査」は、会長・社長・専務・常務などと並ぶ役名の区分として「専任執行役員」を集計しています。従業員500人以上の企業を対象にした令和5年調査では、集計された令和4年の常勤役員11,334人のうち、最も多い4,962人がこの区分でした。名刺や社内の会話で「役員」と呼ばれていても、会社法上の役員とは限りません。肩書きと法律上の立場を分けて考えておけば、混乱せずに済みます。
参考:e-Gov法令検索「会社法」
参考:e-Gov法令検索「法人税法」
参考:e-Gov法令検索「法人税法施行令」
参考:人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」
執行役と執行役員は、名前が似ていても別のもの
「執行役員」と一字違いの「執行役」は、会社法に定めのある立場です。混同しやすいので、次の3点で区別しておきましょう。
- 執行役は、指名委員会等設置会社に必ず置かれる
- 選び方や会社との関係、任期まで会社法が決めている
- 執行役員には、これに当たる定めがない
指名委員会等設置会社とは、指名委員会・監査委員会・報酬委員会の3つを置く株式会社のことです。会社法は機関を定めた章の中に「指名委員会等及び執行役」という節を設け、執行役について次のように定めています。
「置かなければならない」とある以上、指名委員会等設置会社にとって、執行役は置くかどうかを選べる役職ではなく、必ず置く義務のある立場です。 「取締役会の決議によって選任する」は株主総会ではなく取締役会で選ぶという意味、「委任に関する規定に従う」は雇用ではなく仕事を任せる委任の関係だという意味になります。執行役員はこの逆で、置くかどうかも、選び方も、契約の形も会社しだいです。指名委員会等設置会社でない会社に「執行役」という肩書きの人がいたとしても、それは会社法上の執行役ではなく、社内で付けた呼び名にすぎません。
| 項目 | 執行役 | 執行役員 |
|---|---|---|
| 法律の定め | 会社法に定めがある | 会社法に定めがない |
| 置く会社 | 指名委員会等設置会社は必ず置く | どの会社でも任意に置ける |
| 選び方 | 取締役会の決議 | 会社の規程による |
| 会社との関係 | 委任 | 雇用または委任 |
| 任期 | 原則1年。定款で短くできる | 会社の規程による |
| 登記 | 氏名が登記される | 登記されない |
| 取締役との兼任 | 兼ねることができる | 会社の規程による |
さらに執行役は、任務を怠ったときに会社への損害賠償責任を負う「役員等」にも、取締役や監査役と並んで含まれています。会社法上の責任の重さという点でも、執行役と執行役員は別物です。
雇用か委任かで、執行役員の扱いは変わる
執行役員には、会社と雇用契約を結ぶ場合と、委任契約を結ぶ場合があります。どちらになるかで、働く側の扱いは次のように変わります。
- 労働基準法などで守られる「労働者」に当たるかどうか
- 雇用保険の被保険者になるかどうか
- 辞めるとき、辞めさせられるときのルール
| 項目 | 雇用型 | 委任型 |
|---|---|---|
| 会社との契約 | 雇用契約。社員として雇われたまま執行役員を務める形 | 委任契約。雇用ではなく仕事を任される形 |
| 労働者としての扱い | 労働者として扱われるのが基本 | 原則として労働者に当たらない。実態しだいで判断が変わる |
| 雇用保険 | 要件を満たせば被保険者 | 労働者に当たらなければ被保険者にならない |
| 契約の終わり方 | 解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要 | 民法上は双方がいつでも解除できるのが原則。実際は契約の定めによる |
| 受け取るお金 | 給与 | 契約にもとづく報酬 |
とくに見落とされやすいのが、契約の終わり方の違いです。 雇用契約の解雇について、労働契約法第16条は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇を無効としています。一方、委任契約について民法第651条第1項は「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」と定めています。相手に不利な時期の解除などには損害賠償の定めがあるものの、雇用契約とは前提が違うのです。実際の扱いは、結んだ契約の中身で決まります。
参考:e-Gov法令検索「労働契約法」
参考:e-Gov法令検索「民法」
労働者かどうかは、契約の名前ではなく働き方の実態で決まる
委任契約を結んでいれば必ず労働者でなくなる、というわけではありません。厚生労働省は、労働基準法上の「労働者」に当たるかどうかを、仕事が他人の指揮監督のもとで行われているか、報酬がその労働の対価として支払われているかで判断するとしています。そのうえで、「請負契約や委任契約といった契約の形式や名称にかかわらず」、契約の内容や働き方、報酬などから個別に総合的に判断する、というのが厚生労働省の示す考え方です。
役員についても考え方は同じです。厚生労働省労働基準局がまとめた通達集には、業務執行権や代表権を持たない重役が工場長や部長の職について賃金を受けている場合は、その限りで労働基準法上の労働者に当たるとする昭和23年の通達が収められています。逆に、大阪労働局は労働保険の対象となる労働者の範囲を示したページで、「いわゆる執行役員のうち、代表権・業務執行権を有する者は労働者として取扱いません。」と明記しています。
ここでいう業務執行権は、担当分野の仕事を任されていることとは別のものです。同じページは取締役などについて、法令・定款や、取締役会規則などの社内規定で業務執行権を認められているかどうかで扱いを分け、業務執行権を持つ人の指揮監督を受けて働き、賃金を得ている人は原則として労働者として扱うとしています。分かれ目は肩書きでも契約書の題名でもなく、どんな権限を持ち、誰の指揮監督のもとで働いているかなのです。
参考:厚生労働省「労働基準法における『労働者』とは」
参考:厚生労働省労働基準局「労働基準法における労働者性の関連通達」
参考:大阪労働局「労働保険の適用単位と対象となる労働者の範囲」
雇用保険は「労働者として扱われるか」で決まる
雇用保険の被保険者は、適用事業に雇用される労働者です。厚生労働省の業務取扱要領も、雇用される労働者に当たらない人は被保険者にならないと整理しています。雇用契約で働き、指揮監督のもとで賃金を受けている執行役員であれば、ほかの社員と同じように被保険者になるのが基本と考えてよいでしょう。
反対に、代表権や業務執行権を持ち、労働者として扱われない執行役員は被保険者になりません。前出の大阪労働局のページは、労働者から役員になった場合にはハローワークで被保険者資格の喪失手続きを適正に行うよう、事業主に求めています。社員から執行役員になるときは、雇用保険の扱いがどう変わるのかを、就任前に会社へ確認しておくと安心です。
参考:厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領 雇用保険適用関係」
就任前に確認しておきたいこと
執行役員の扱いは会社の規程で決まる部分が大きく、同じ肩書きでも中身はさまざまです。打診を受けたときや、執行役員として転職するときは、次の点を書面で確かめておきましょう。
| 確認すること | 確認する理由 | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 契約が雇用か委任か | 労働者としての扱い、雇用保険、契約の終わり方が変わる | 辞令や契約書、執行役員規程を見せてもらう |
| 与えられる権限 | 社内規定で業務執行権を与えられると、労働者として扱われない場合がある | 規程にある職務権限の定めを確認する |
| 雇用保険の扱い | 労働者に当たらなくなると資格喪失の手続きが入る | 人事・労務の担当者に聞く |
| 任期と再任の決まり | 法律に定めがなく、会社ごとに違う | 執行役員規程を確認する |
| 報酬・賞与・退職金 | 給与か報酬かで決まり方が変わる | 規程と契約書を確認する |
| 退任後の扱い | 社員として働き続けられるかは会社ごとに違う | 規程を確認し、前例を聞く |
大切なのは、雇用型か委任型かという一点より、こうした中身を会社が書面で説明できるかどうかです。 どちらの型にも向き不向きがあり、説明が具体的に返ってくる会社なら、就任してからの食い違いも起きにくくなります。
執行役員の年収は、従業員500人以上の企業で平均2,368.9万円
執行役員の報酬を示す公的統計には、人事院の役員報酬調査があります。数字を読むときのポイントは次の3つです。
- 対象は従業員500人以上の企業の常勤役員
- 会社の規模で、平均額におよそ2倍の開きがある
- 500人未満の会社の執行役員を示す公的統計は見当たらない
人事院の「令和5年民間企業における役員報酬(給与)調査」の母集団は、企業規模500人以上の本店事業所4,232社。そのうち1,169社が有効回答を寄せています。役名の区分に「専任執行役員」があり、令和4年の1年間を通じて在任した常勤の専任執行役員に支払われた賞与込みの年間報酬は、全規模の平均で2,368.9万円でした。
会社の規模別に見ると、3,000人以上で3,469万円、1,000人以上3,000人未満で2,156.9万円、500人以上1,000人未満で1,701.6万円と、最も大きい区分と小さい区分でおよそ2倍の開きがあります。 同じ表で全規模の平均を見ると、専任取締役は2,086.6万円です。平均で比べるかぎり、執行役員の報酬が取締役より低いとは言い切れません。

ただし、この数字の範囲には気をつけてください。対象は従業員500人以上の企業の常勤役員に限られ、指名委員会等設置会社は集計されていません。従業員500人未満の会社やベンチャーで働く執行役員については、報酬の水準を示す公的統計を今回の調べでは見つけられませんでした。 検索で見かける執行役員の平均年収には、民間の調査機関がまとめた数字も含まれます。目にした数字は、だれがどんな規模の会社を対象に集計したものかを出典で確かめておくと、人事院の数字と取り違えずに済むでしょう。
報酬の形も契約で変わります。雇用型なら給与として、委任型なら契約にもとづく報酬として支払われ、賞与や退職金の扱いは会社の規程しだいです。年収1,000万円を超える給与所得者の割合を年齢別・男女別に見たいときは、年収1000万円は30代の何%?年齢・男女別の割合が参考になります。
参考:人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」
参考:人事院「令和5年 民間企業における役員報酬(給与)調査の概要」
会社が執行役員を置く理由と、本人にとっての意味
執行役員の制度は、会社の側にも働く本人の側にも置く理由があります。それぞれの立場から見ていきましょう。
- 会社にとっては、方針を決める役割と実行する役割を分けられる
- 株主総会を通さず、社内の手続きで幹部を任命できる
- 本人にとっては、経営に近い場所で担当分野の結果を引き受ける立場になる
会社にとっては、決める人と動かす人を分けられる
取締役会の仕事は、業務執行の決定と、取締役の職務の執行の監督です。会社が大きくなり、事業や部門が増えるほど、取締役会が現場の判断を一つひとつ抱えるのは難しくなります。そこで担当分野の実行を執行役員に任せ、取締役会は方針の決定と監督に力を注ぐ、という分担が生まれます。一般に「監督と執行の分離」と呼ばれる考え方で、執行役員制度はそれを社内で形にする方法のひとつです。
私たちが経営者に話を聞いていても、執行役員という肩書きは大企業に限らず、設立から間もない会社でも目にします。事業の数が増え、社長ひとりでは現場の判断が回りきらなくなったときに、任せる相手へ肩書きと権限を渡す仕組みとして使われている、というのが取材を通じた実感です。
取締役を増やさずに幹部を任命できる
取締役を新たに選ぶには、株主総会の決議が必要です。執行役員にはそれに当たる会社法の定めがないため、取締役会の決議など、会社が決めた社内の手続きで任命できます。現場で成果を上げてきた社員や、外から迎えた専門人材に、取締役の席を用意しなくても経営に近い役割と肩書きを渡せるわけです。会社にとっては、幹部の層を厚くしながら、次の経営陣を育てる場にもなります。
本人にとっては、経営に近い場所で結果を引き受ける立場
働く本人から見ると、執行役員は担当分野の結果に責任を持ち、経営の方針を現場に落とし込む立場です。会社全体の方針を話し合う場に加わることもあり、部門の中だけを見ていたときとは視野の広さが変わってきます。
一方で、契約の形によっては労働者としての保護の範囲が変わり、任期を区切って再任を判断される立場になることもあります。肩書きだけで引き受けるのではなく、契約や権限の中身を確かめたうえで判断したいところです。
執行役員になるには
執行役員になるのに、法律上の資格は要りません。取締役には会社法に就任できない人の定めがありますが、執行役員にはそれに当たる条文がなく、誰を任命するかは会社の判断です。道筋を考えるうえでは、次の3点が手がかりになります。
- 社内で昇格するルートと、外から迎えられるルートがある
- 問われるのは、担当分野の成果と人やチームを動かした経験
- 実際に執行役員を務める人の言葉に、求められるものが表れている
社内で昇格するか、外から迎えられるか
道筋は大きく2つです。ひとつは、いまの会社で担当分野の成果を積み上げ、部長などの部門長を経て執行役員に任命されるルート。もうひとつは、専門性や事業を立ち上げた経験を買われ、転職で執行役員として迎えられるルートです。
どちらのルートでも、担当分野で結果を出してきたことに加え、人とチームを動かして成果を出した経験が問われるでしょう。自分ひとりの成果から、組織の成果へ。 評価の軸がそう移っていく段階が、執行役員に近づく時期だと考えておくと、準備の方向が定まります。
日々の仕事の中で伸びていく人の共通点は、成長が早い人の特徴9選にまとめています。
執行役員を務める人は、何を大事にしているか
実際に執行役員の肩書きを持つ人の言葉からも、求められるものが見えてきます。株式会社CINC Capitalで取締役 執行役員社長を務める阿部泰士さんは、入社後のキャリアの段階をこう説明しています。
段階を上がるとき、何が変わるのでしょうか。株式会社日本M&Aセンターで執行役員を務める中村健太さんは、2005年に新卒1期生として入社し、M&Aコンサルタントとして現場に立ち続けた時期をこう振り返っています。
中村さんはその後、2020年に人材戦略部を立ち上げました。株式会社FCEで取締役 上級執行役員を務める尾上幸裕さんが、これから入社する人に求める条件として挙げたのは次の点です。
取材を重ねていると、執行役員に就いた人の話は、自分が上げた成果の話から、人を育てて組織で成果を出す話へと重心が移っていくように感じます。肩書きより先に、責任を引き受ける範囲を自分から広げていけるかどうか。 3人の言葉は、その一点で重なっています。
執行役員に関するよくある質問
執行役員と取締役はどちらが上ですか?
会社法の仕組みでは、方針を決めて執行を監督する取締役の側が上位にあたります。 取締役は株主総会で選ばれる会社法上の役員で、取締役会を置く会社では、その一員として業務執行の決定と取締役の職務執行の監督を担う立場です。執行役員は、その方針にそって担当分野を動かす役職。ただし、取締役が執行役員を兼ねる肩書きもあります。報酬についても、従業員500人以上の企業を対象にした人事院の令和5年調査では、令和4年の全規模の平均で専任執行役員の2,368.9万円が専任取締役の2,086.6万円を上回っていました。
執行役員と部長はどちらが上ですか?
法律で決まった上下はなく、会社の規程と組織図で決まります。 部長は社員としての職位、執行役員は会社が別に設けた役職です。執行役員を部長より上に置いたうえで、部長を兼ねさせる会社もあります。迷ったときは、その会社の組織図や役員紹介ページで並び順を確かめてください。
執行役員の年収はいくらですか?
執行役員の報酬を示す公的統計として確認できたのは、従業員500人以上の企業を対象にした人事院の調査です。 令和5年調査によると、令和4年に専任執行役員へ支払われた賞与込みの平均年間報酬は、全規模で2,368.9万円、3,000人以上の企業では3,469万円でした。従業員500人未満の会社で働く執行役員は、この調査の対象に入っていません。
執行役員になれる人は?
法律上の資格要件はなく、誰を任命するかは会社が決めます。 社内で部長などを経て昇格するルートと、専門性や事業経験を買われて転職で迎えられるルートがあります。どちらでも、担当分野の成果に加えて、人とチームを動かして成果を出した経験が問われることが多いでしょう。
執行役員は雇用保険に入れますか?
雇用契約で働き、労働者として扱われる執行役員は、ほかの社員と同じく被保険者になるのが基本です。 一方、大阪労働局は、いわゆる執行役員のうち代表権・業務執行権を有する者は労働者として取り扱わないとしています。委任型の場合や、社内規定で代表権・業務執行権を与えられる場合は扱いが変わりうるため、就任前に会社へ確認しておくと安心です。
参考:大阪労働局「労働保険の適用単位と対象となる労働者の範囲」
まとめ
執行役員は、会社法上の機関ではなく、会社が任意に設ける役職です。取締役会が決めた方針にそって担当分野の業務を執行する幹部で、経営の意思決定と監督を担う取締役とは、役割も選ばれ方も違います。名前に「役員」と付いていても会社法上の役員ではなく、指名委員会等設置会社に置かれる「執行役」とも別物です。
働く側にとって大きいのは、契約が雇用か委任かで、労働者としての扱いや雇用保険、契約の終わり方が変わる点でしょう。報酬は、人事院の調査で従業員500人以上の企業の専任執行役員が平均2,368.9万円(令和4年分)。規模による差が大きく、500人未満の会社の公的統計は見当たりません。
経営者や役員への取材を続けるなかで実感しているのは、同じ「執行役員」という肩書きでも、任されている範囲や働き方が会社ごとにまるで違うということです。肩書きの名前より、権限と契約の中身を見てください。実際に役職に就いた人がどんな判断を重ねてきたかは、経営者インタビューで本人の言葉からたどれます。
執行役員を目指す道は社内での昇格だけではないので、管理職や役員候補を迎える求人がどんな条件で出ているかも知っておくと、選択肢を具体的に比べられます。

