銀行員を辞めたいと感じたら|理由を統計で確かめ、辞める前の確認と活きる転職先

銀行員を辞めたいと感じたら、まず理由が業界全体の変化なのか、いまの勤め先や担当の事情なのかを分けてみてください。実際に辞める人は多くなく、銀行を含む金融業,保険業の離職率は令和7年に6.6%と、全産業の半分を下回ります。
意外なのは、全国の銀行の店舗数がこの10年ほとんど変わっていないことです。減ってきたのは店舗ではなく、働く職員の数でした。
この記事では、辞めたくなる理由を公的データで確かめ、辞める前の確認と、銀行員の経験が活きる転職先・伝え方を整理します。
融資や渉外、窓口で積んだ経験が銀行の外でどう評価されるかは、在籍したままでも確かめられます。転職エージェントを活用すれば、相談は無料です。
銀行員が辞めたいと感じる理由を、公的データで確かめる
銀行員が辞めたい理由としてよく挙がるのは、営業目標(ノルマ)、店舗や人員の変化、仕事の中身の変化、転勤や異動です。公的なデータや資料で確かめられる範囲を、順に見ていきます。
- 金融業,保険業の離職率は、全産業の半分を下回る
- 営業目標と業績評価のあり方は、金融庁も取り上げている
- 銀行の店舗数はほぼ横ばいで、職員数は10年で約1割減った
- 銀行の仕事は、融資と預金の外へ広がっている
- 転勤や異動の負担は、統計ではなく自分の人事制度で確かめる
編集部の実感では、「銀行員を辞めたい」という言葉には、業界の先行きへの不安と、目の前の職場への不満が混ざっていることが多いように思います。どちらの話なのかを分けておくと、辞めずに変えられることと、外に出ないと変わらないことが見えてきます。
| 辞めたい理由 | 業界全体の動きとして見える部分 | 勤め先・部署ごとに違う部分 | 確かめる先 |
|---|---|---|---|
| 営業目標・ノルマ | 営業目標と業績評価のあり方を金融庁が取り上げている | 目標の配り方と、評価に占める販売実績の重さ | 評価制度の資料、評価面談 |
| 店舗・人員の変化 | 店舗数はほぼ横ばいのまま職員数が減っている | 自分の店舗の人数と、一人が受け持つ業務の範囲 | 担当件数や業務の種類の記録 |
| 仕事の中身の変化 | 融資・預金に加えて、取引先への提案業務が広がっている | 所属部署で求められる提案の中身 | 部署の目標と研修の内容 |
| 転勤・異動 | 公的な統計では確かめられない | 転勤の範囲、勤務地を限定するコースの有無 | 就業規則、人事制度の案内 |
金融業,保険業の離職率は6.6%で、全産業の半分を下回る
厚生労働省の令和7年雇用動向調査(2026年8月公表)は、5人以上の常用労働者を雇う事業所を対象に、2025年1年間の入職と離職をまとめています。金融業,保険業の離職率は6.6%で、産業計の13.7%より7.1ポイント低く、調査が扱う16の産業の中で最も低い値でした。 入職率は8.7%で、離職率を2.1ポイント上回っています。一般労働者に限ると、金融業,保険業の離職率は6.3%、産業計は11.4%です。
ただし、金融業,保険業には保険会社や証券会社なども含まれ、銀行員だけの数字ではありません。銀行員に限った離職率を示す公的な統計は、確認できた範囲では見当たりませんでした。
辞める人が少ない業界では、身近に比べられる例も少なくなります。周りの誰かの判断を参考にしにくいぶん、自分の理由を一つずつ確かめていくことに意味があるのです。
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要 2 産業別の入職と離職」
参考:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」
営業目標と業績評価のあり方は、金融庁も取り上げている
金融庁は2026年7月、投資信託や保険などのリスク性金融商品を販売する銀行・証券会社などを対象にしたモニタリング結果を公表しました。報告書は、営業目標や業績評価の仕組みが、各社の掲げる顧客本位の方針と整合していない場合には「販売行動の歪み」を招くおそれがあると指摘しています。前年の分析として、収益評価やフロー評価の比重が高い金融機関ほど、相対的に手数料の高い金融商品の販売割合が高い傾向がうかがわれた、とも書かれています。
取組の内容は会社によって分かれていました。個人の営業目標を廃止したり、営業部店が自ら目標を決めたりする取組がある一方で、人員や過去の実績に基づく十分な検証がないまま営業目標を上方修正していた事例も挙げられています。なお、営業目標を設けるかどうかは各社の経営判断であり、一律に求めるものではないと報告書は断っています。
こうした動きの背景には、法律の改正があります。2024年11月に施行された改正金融サービス提供法は、第2条第1項で次のように定めています。
「最善の利益を勘案しつつ」とは、顧客にとって何が一番よいかを考えたうえで、という意味です。同じ条の第2項第3号は、銀行業に係る業務について、銀行だけでなく「その役員及び使用人」もこの義務を負う者に含めています。文末は「しなければならない」で、努力義務ではなく、銀行で働く一人ひとりにかかる義務です。
ノルマがつらいと感じたら、その原因が自分の勤め先の目標の配り方や評価の重みにあるのか、それとも販売の仕事そのものが合わないのかを分けて考えてみてください。前者なら、評価制度の資料を読み、評価面談で「販売実績は評価の何割を占めますか」と確かめることが、最初の一歩になります。
参考:金融庁「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」
参考:e-Gov法令検索「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」
銀行の店舗数はほぼ横ばいで、職員数は10年で約1割減った
店舗の統廃合がよく話題になりますが、全国銀行協会の集計で見ると、国内の店舗数(本支店と出張所の合計)はほとんど変わっていません。2016年3月末の13,595、2021年3月末の13,544に対し、2026年3月末は13,515でした。
変わったのは職員数(役員を除く)のほうで、2016年3月末の296,595人から2026年3月末には264,295人へ、10年で32,300人(10.9%)減っています。 2021年3月末は280,702人でした。一方で、同じ一覧表に載る銀行代理業者(銀行のために預金や融資などの契約の代理・媒介を行う事業者)の数は、同じ期間に2,389から3,645へ、約1.5倍に増えています。


集計の対象は時点ごとに違い、2016年3月末は116行、2026年3月末は107行です。合併などで範囲が変わっているため、厳密に同じ銀行どうしの比較ではありません。また、この数字からは、店舗の形や営業時間、窓口に立つ人数の変化までは分かりません。店舗の数を保ちながら働く人の数が減ってきたことは確かめられますが、自分の職場で一人が受け持つ仕事がどう変わったかは、担当件数や業務の種類を記録して確かめるのが確実です。
参考:全国銀行協会「2025年度決算|全国銀行財務諸表分析」
参考:全国銀行協会「2020年度決算|全国銀行財務諸表分析」
参考:全国銀行協会「2015年度(平成27年度)決算|全国銀行財務諸表分析」
銀行の仕事は、融資と預金の外へ広がっている
仕事の中身も変わってきています。金融庁は2018年3月に監督指針を改正し、銀行やその子会社などが取引先企業に人材を紹介する業務を扱えることを明確にしました。2026年2月の改正では、顧客企業へ提案するソリューションの一つとして、人材紹介業務による人材確保の支援を明記しています。
融資と預金に加えて、取引先の経営課題に合わせた提案まで求められる場面が増えている、ということです。この変化を「仕事の幅が広がった」と感じるか、「入行したときに思い描いた仕事と違う」と感じるかで、辞めたい理由の中身は変わります。 前者なら社内でその仕事に近い部署を目指す道があり、後者なら、自分がやりたい仕事の軸をもう一度言葉にしておきたいところです。
参考:金融庁人材マッチング推進室「行政事業レビュー公開プロセス 地域企業経営人材マッチング促進事業(レビキャリ事業)」
転勤や異動の負担は、統計ではなく自分の人事制度で確かめる
転勤や数年ごとの異動を理由に挙げる人もいますが、銀行員の転勤の頻度や範囲を示す公的な統計は、確認できた範囲ではありません。転勤の範囲は銀行ごと、コースごとに決まっているため、辞めると決める前に就業規則や人事制度の案内を読んでおきましょう。
確かめたいのは、転勤がある地域の範囲、勤務地を限定するコースへの転換制度があるか、育児や介護など家庭の事情を申し出る仕組みがあるか、の3点です。制度があっても使える条件が厳しい場合もあるので、人事担当者に実際の運用まで聞いておくと判断しやすくなります。
辞める前に確かめたい4つのこと
辞めると決める前に、銀行員ならではの事情で確かめておきたいことがあります。
- 年収は、賞与まで含めて比べる
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)は、6か月以内に移換する
- 退職金や社内の制度、守秘義務の決まりを読んでおく
- 銀行の中で変えられる道がないかを探す
年収は、賞与まで含めて比べる
銀行を含む金融業,保険業は、統計で見ると年収の水準が高い業界です。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上の民営事業所で働く一般労働者)で、2025年6月分のきまって支給する給与の12か月分に2024年の年間賞与を足して編集部が年収に直すと、金融業,保険業は723.9万円、産業計は545.6万円でした。
年代別に見ると、25〜29歳は金融業,保険業530.5万円・産業計448.2万円、30〜34歳は651.4万円・507.3万円、35〜39歳は761.0万円・556.7万円、40〜44歳は851.8万円・594.7万円です。この4つの年代では、年代が上がるにつれて差が82.3万円、144.1万円、204.3万円、257.1万円と広がっていました。


年収に占める賞与の割合も、金融業,保険業は23.3%と、産業計の18.5%より大きくなっています。同じ年収でも、月給と賞与の配分は会社によって違います。応募先の提示額と比べるときは、月給だけでなく賞与まで含めた年額で並べることが欠かせません。 賞与の算定期間や支給日に在籍していることを支給の条件にしている会社もあるため、退職日を決める前に、いまの勤め先の就業規則や賃金規程も確かめておきましょう。
これらは業界全体の平均で、銀行以外の会社や、年齢・勤続年数の違いも含んでいます。移った先で必ず年収が下がる、と読める数字ではありません。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類 第1表 学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・産業別)(e-Stat)」
企業型確定拠出年金は、6か月以内に移換する
勤め先で企業型確定拠出年金(企業型DC)に入っている場合は、辞めたあとの手続きを忘れないようにしてください。厚生労働省によると、転職や退職で加入者の資格を失ったら、6か月以内に資産をiDeCo(個人型確定拠出年金)や転職先の企業型DCなどに移す必要があります。
手続きをしないまま期限を過ぎると、資産は国民年金基金連合会に移されます。これを「自動移換」と呼びます。自動移換された資産は運用されず、管理手数料がかかり、その期間は老齢給付金を受け取るための通算加入者等期間に数えられません。 受け取れる年齢が遅くなる場合もあるので、加入しているかどうかは給与明細や入行時の資料で確かめておきましょう。
参考:厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
退職金や社内の制度、守秘義務の決まりを読んでおく
退職金の額は、勤続年数と退職の理由で変わるのが一般的です。自己都合で辞めた場合の支給率は、退職金規程で確かめられます。社宅や借り上げ住宅、社内の融資制度などを使っているなら、辞めたあとにいつまで使えるのか、返済や退去の条件も見ておくと安心です。
銀行員は取引先や顧客の情報に日々触れる仕事でもあります。入行時に提出した誓約書や就業規則に、守秘義務や退職後の取扱いの定めがないかも確認しておきましょう。転職先で経験を語るときも、取引先が特定される話し方は避けるのが基本です。
銀行の中で変えられる道がないかを探す
辞めたい理由が特定の店舗や担当業務にあるなら、銀行の中で環境を変えられないかも見ておきたいところです。社内公募やトレーニー制度、本部の専門部署への異動、グループ会社や取引先への出向、海外拠点への赴任など、銀行によって用意されている道は違います。先に触れたように、取引先への提案や人材紹介など、仕事の幅が広がっている分野もあります。
心身の不調が続いているなら、辞めるか続けるかを決める前に、休むことと相談を優先してください。不調のサインや相談先は、仕事を辞めたいのは甘え?原因別の対処法で詳しく整理しています。
銀行員の経験が活きる転職先
決算書を読み、資金繰りを見て、経営者と向き合ってきた経験は、金融の外でも通用します。マイナビ・リクナビなどの求人サイトで求人票を見比べたり、転職エージェントに相談したりするときに、候補に入れたい転職先は次の5つです。
- 事業会社の財務・経理
- コンサルティング会社(事業再生、M&A、財務のアドバイザリーなど)
- フィンテック企業・金融系のIT企業
- ベンチャー・スタートアップの管理部門やCFO候補
- 証券・資産運用など、ほかの金融の仕事
| 転職先 | 銀行での経験がつながる場面 | 移る前に確かめたいこと |
|---|---|---|
| 事業会社の財務・経理 | 決算書を読む、資金繰りを見る、金融機関と交渉する | 担当する範囲が経理中心か、資金調達まで含むか |
| コンサルティング会社 | 企業の財務を分析し、改善の筋道を示す | 担当する案件の種類と、評価の決まり方 |
| フィンテック・金融系IT | 金融の業務の流れと、守るべきルールを知っている | 担う役割が企画・営業・審査のどれに当たるか |
| ベンチャーの管理部門・CFO候補 | 資金調達の相手の考え方が分かる | 入社時の役割と、任される権限の範囲 |
| 証券・資産運用など | 金融商品の知識と、顧客への説明の経験 | 評価に占める販売実績の重さ |
事業会社の財務は、「貸す側」から「使う側」に移る仕事
融資の審査や渉外で、取引先の決算書を読み、資金繰りを確かめてきた経験は、事業会社の財務でそのまま土台になります。違うのは立場です。銀行では返してもらえるかを見る「貸す側」でしたが、事業会社の財務では、借りたお金を何に使い、どう増やして返すかを考える「使う側」に回ります。多くの取引先の決算書を外から読んできた立場から、自社の事業計画と数字を内側から組み立て、金融機関に説明する立場に変わるわけです。


金融機関がどんな資料を見て、どこで判断に迷うかを知っていることは、借りる側に回ったときの強みになります。 一方で、経理の決算業務や税務の実務は、銀行では担当しないことも多い領域です。応募先の財務が経理中心なのか、資金調達や予算管理まで含むのかを確かめておきましょう。
ベンチャーのCFO候補は、資金調達の経験が問われる
ベンチャーやスタートアップでは、財務責任者(CFO)の候補や、管理部門の立ち上げを担う人を募集することがあります。融資を受ける相手の考え方が分かる銀行員の経験は、銀行借入を組み合わせて資金を回す会社で生きる場面があるでしょう。
ただし、出資による資金調達や上場の準備は、融資とは別の知識が要ります。CFOに求められる役割の広さはCEOとCOOの違いとは?役割分担とCFO・CTOなどCxO一覧で、大きな組織から移る前に確かめたいことはスタートアップ転職で後悔しないためにで詳しく紹介しています。
コンサルティングとフィンテックは、金融の知識を別の形で使う
コンサルティング会社のうち、事業再生やM&A、財務のアドバイザリーを扱う分野では、企業の財務を読み解く力がそのまま求められます。フィンテック企業や金融系のIT企業では、銀行の業務の流れや、守るべきルールを分かっていること自体が評価の材料になるはずです。どちらも、銀行での担当業務と応募先の役割がどこで重なるかを、求人票の仕事内容で具体的に照らし合わせておきましょう。
経験の伝え方|「貸す側」で見てきたことを、相手の言葉で書く
銀行の中で通じる言葉は、外ではそのまま伝わらないことがあります。職務経歴書や面接では、業務の名前より、何を見て何を判断したかを書くほうが伝わります。
- 業務の名前を、何を判断したかに言い換える
- 担当した範囲は、数字で示す
- 辞めたい理由は、次にしたいことに置き換える
たとえば「融資の審査と稟議書の作成」は、「決算書と資金繰りを読み、返済できるかを判断して、社内の決裁資料にまとめた」と書けます。「法人の渉外」なら「担当地域の企業を訪ね、経営者から課題を聞き取り、融資やほかの解決策を提案した」、「窓口の事務」なら「本人確認や法令に沿った手続を、正確さを保ちながら決められた時間内に処理した」と言い換えられるでしょう。担当した社数や件数、扱った残高の規模など、数字で範囲を示せるものは添えてください。
辞めたい理由をそのまま話す必要はありません。「ノルマがつらかった」は「商品を売ることより、取引先の課題から考える仕事に軸足を置きたい」に、「転勤が多かった」は「一つの事業に腰を据えて関わりたい」に置き換えられます。面接で話す「次にしたいこと」は、そのまま応募先を選ぶ物差しとしても使えます。 理由別の言い換え方は転職理由の例文|面接と履歴書で使える理由別の伝え方で詳しく紹介しています。
銀行員出身の経営者は、銀行の仕事をどう見ているか
取材で経営者の経歴を聞いていると、銀行員から出発した人に出会うことがあります。株式会社Japan Naviの飯田広助社長は、三井住友銀行で東京の営業部や本部を経て、6年目に希望していた海外駐在の機会を得てインドネシアで3年間働き、その後30歳で起業しました。
銀行を離れたあとも、銀行員と関わる仕事を選んだ人もいます。株式会社バンクライトの笹島敦史社長は、三井住友銀行の法人営業からキャリアを始め、人材サービスの会社2社を経て独立しました。これまで2,000人を超えるバンカーと対話してきたという笹島氏は、いまの銀行員の状態をこう語っています。
笹島氏が原点として挙げるのは、銀行員1年目に担当したネジ工場の社長からの問いかけです。その会社が何をつくっているかではなく、どんな価値を届け、その価値が誰を幸せにしているのかまで想像できるのが一流のバンカーだ、お前はどんなバンカーになるのか、と問われたといいます。
取引先が何をつくり、誰に価値を届けているのかを想像する力は、銀行に残っても、外に出ても使える力です。 辞めたいと感じたときこそ、自分が銀行の仕事で何を面白いと思ってきたのかを思い出してみると、残るにしても移るにしても、次に選ぶ仕事の軸が見えてきます。
熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューには、銀行をはじめ前職で積んだ経験を、いまの事業にどう生かしているかを語る社長が登場します。銀行の外に出た人が何を持ち出し、何を手放したのかを知る手がかりになるはずです。
銀行員を辞めたいときによくある質問
銀行員は辞める人が多い仕事ですか?
統計で見る限り、銀行を含む金融業,保険業は辞める人の割合が低い業界です。 厚生労働省の令和7年雇用動向調査(5人以上の常用労働者を雇う事業所が対象)では、2025年の離職率は金融業,保険業で6.6%、産業計で13.7%でした。ただし金融業,保険業には保険会社や証券会社なども含まれ、銀行員だけの離職率ではありません。
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要 2 産業別の入職と離職」
銀行を辞めると年収は下がりますか?
移る先の業界や職種によるため一概には言えませんが、業界平均で見ると金融業,保険業の年収は高い水準にあります。 令和7年賃金構造基本統計調査(企業規模10人以上の民営事業所で働く一般労働者)をもとに編集部が年収に直すと、金融業,保険業は723.9万円、産業計は545.6万円でした。年収に占める賞与の割合も金融業,保険業は23.3%と高いため、応募先の提示額とは賞与まで含めた年額で比べてください。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 産業大分類 第1表 学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計・産業別)(e-Stat)」
ノルマがつらいのは、自分の努力が足りないからですか?
努力だけの問題と決めつける必要はありません。 金融庁が2026年7月に公表したリスク性金融商品の販売会社へのモニタリング結果は、営業目標や業績評価の仕組みが顧客本位の方針と整合していないと、販売行動の歪みを招くおそれがあると指摘しています。個人の営業目標を廃止した会社がある一方、十分な検証なしに目標を上方修正した事例も挙げられており、目標の配り方は会社によって違います。評価に占める販売実績の重さを、まず自分の勤め先の評価制度で確かめてみてください。
参考:金融庁「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」
企業型確定拠出年金に入っている場合、辞めたら何をすればいいですか?
資格を失ってから6か月以内に、iDeCoや転職先の企業型DCなどへ資産を移す手続きをしてください。 厚生労働省によると、期限を過ぎると資産は国民年金基金連合会に自動移換され、運用されないまま管理手数料がかかります。自動移換中の期間は通算加入者等期間に含まれないため、老齢給付金を受け取れる年齢が遅くなる場合もあります。
参考:厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
銀行員からベンチャーのCFOを目指せますか?
目指すことはできますが、融資の経験だけで足りるとは限りません。 取引先の財務を読み、金融機関の判断の仕方を知っている経験は、銀行借入を使う会社の財務で生きる場面があります。一方で、出資による資金調達や上場の準備、経理の決算実務は別の知識が要ります。「CFO候補」という求人名だけで判断せず、入社時に任される役割と権限の範囲を確かめてから応募しましょう。
まとめ
銀行員を辞めたいと感じたら、その理由が業界全体の変化から来ているのか、いまの勤め先や担当から来ているのかを分けてみてください。令和7年雇用動向調査では、銀行を含む金融業,保険業の離職率は6.6%と全産業の半分を下回りました。全国銀行協会の集計では、国内の店舗数がほぼ横ばいのまま、職員数は2016年3月末から2026年3月末の10年で約1割減っています。営業目標と業績評価のあり方は金融庁も取り上げており、2024年11月からは、顧客の最善の利益を考えて業務を行う義務が銀行で働く一人ひとりにかかっています。
辞める前には、年収を賞与まで含めて比べること、企業型DCを6か月以内に移すこと、退職金や社内の制度の決まりを読むこと、銀行の中で変えられる道を探すことを確かめておきましょう。外に出るなら、事業会社の財務・経理、コンサルティング、フィンテック、ベンチャーの管理部門やCFO候補と、経験を持っていける先はいくつもあります。
参考:厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概要 2 産業別の入職と離職」
参考:全国銀行協会「2025年度決算|全国銀行財務諸表分析」
参考:全国銀行協会「2015年度(平成27年度)決算|全国銀行財務諸表分析」
参考:e-Gov法令検索「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」
私たち編集部は、銀行で取引先の決算書を読み、経営者の話を聞いてきた経験は、思っている以上に持ち運べるものだと考えています。迷っている時間を、数字と制度を一つずつ確かめる時間に変えてみてください。
残るか移るかを決める前に、融資や渉外で積んだ経験をどの業界が求めているのかを知っておくと、迷いの中身がはっきりしてきます。

