高卒の転職は不利?学歴が効く場面と効かない場面を公的データで整理

高卒の転職で学歴が影響するのは、応募資格に「大卒以上」と書かれた求人に出会う入口の部分です。選考が始まってからの比重は、そこまで大きくありません。
また、「高卒は生涯で大きな賃金差がつく」とよく言われますが、年齢ごとに見ると、20代前半の差はまだ小さく、大きく開くのは30代以降です。
この記事では、学歴が効く場面と効かない場面を統計で切り分け、置かれた状況ごとの打ち手と、無料で使える公的支援まで整理します。
応募資格の読み方や職務経歴書の書き方は、転職エージェントに登録すると添削とアドバイスを無料で受けられます。学歴不問の求人を自力で見分ける前に、一度使ってみてください。
高卒の転職で学歴が効く場面と、効かない場面
学歴の影響は、転職活動のどの場面かによって大きく変わります。整理すると次の4点です。
- 学歴が効くのは、応募資格と賃金テーブルという入口の条件
- 選考が始まると、比重は意欲・コミュニケーション・職業経験に移る
- 学歴差が金額として開くのは20代ではなく40代以降
- 会社の規模や産業による差は、学歴による差より大きい
| 場面 | 学歴の影響 | 代わりに見られるもの |
|---|---|---|
| 求人の応募資格 | 「大卒以上」と書かれていれば応募段階で外れる | 学歴不問と明記されているか、必須条件か歓迎条件か |
| 書類選考 | 経歴欄の一項目として見られる | 職務経歴の中身と在籍期間 |
| 面接 | 一般に比重は下がる | 職業意識・勤労意欲、コミュニケーション、マナー |
| 賃金テーブル | 新卒入社時点では学歴別に設定している会社がある | 中途採用では前職の給与水準と担当する職務 |
| 昇進・管理職登用 | 会社差が大きく、一律には言えない | 社内での実績と評価 |
学歴がはっきり効くのは、応募できるかどうかが決まる入口の部分です。 ここを通過すれば、あとは何をしてきた人かという話に移っていきます。とはいえ「学歴は関係ない」と言い切れるわけでもありません。応募資格に大卒以上と書く会社は現に存在します。学歴が効かない場面を広く見積もりすぎず、効く場面はあらかじめ避けて動くほうが現実的でしょう。
中途採用で企業が見ているのは、学歴より意欲と職業経験
採用する側が何を見ているかは、公的な調査で数字が出ています。若年層(15〜34歳)の中途採用に絞ると、順位ははっきりしています。
- 若年層の中途採用で「学歴・経歴」を重視した事業所は23.1%
- 「業務に役立つ職業経験・訓練経験」は42.3%で、学歴の1.8倍
- 上位3項目は意欲、コミュニケーション能力、マナー・社会常識
- 新規学卒者と比べると、職業経験の比重だけが大きく跳ね上がる
| 若年正社員の中途採用の選考で重視した点 | 重視した事業所の割合 |
|---|---|
| 職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神 | 72.7% |
| コミュニケーション能力 | 66.9% |
| マナー・社会常識 | 58.1% |
| 組織への適応性 | 51.8% |
| 業務に役立つ職業経験・訓練経験 | 42.3% |
| 業務に役立つ専門知識や技能 | 34.8% |
| 学歴・経歴 | 23.1% |
厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」表4より(調査年:令和5年/対象:5人以上の常用労働者を雇用する民営事業所。複数回答)。割合は、該当する若年正社員の採用選考をした事業所を100とした値です。
同じ調査で新規学卒者の採用について見ると、「学歴・経歴」は22.4%、「業務に役立つ職業経験・訓練経験」は14.7%でした。新卒から中途に視点を移すと、学歴を見る割合はほぼ変わらないのに、職業経験を見る割合だけが約3倍に上がります。 高卒であっても実務を数年積んだ時点で、評価の重心は職業経験の側に移っていきます。
上位に並ぶ項目の性質にも注目してください。職業意識・勤労意欲、コミュニケーション能力、マナー・社会常識は、いずれも学歴とは別の軸で測られるものばかり。書類と面接での伝え方しだいで差がつく領域です。過去の仕事のどの場面でそれを発揮したのかを、具体的な出来事に落として話せるかが分かれ目になります。言語化に詰まったら、自己PRが思いつかないときのエピソードの探し方も参考にしてみてください。新卒の就職活動を想定した記事ですが、材料の掘り起こし方は中途の選考でも変わりません。
学歴による賃金差は、入口では小さく年齢とともに開く
「高卒だと生涯で数千万円の差がつく」という言い方をよく見かけます。ただし年齢階級ごとに分解すると、見え方は変わります。
- 新規学卒者どうしで比べた高校卒と大学卒の初任給の差は月55,000円
- 20〜24歳の年齢階級全体で比べると差は月38,700円
- 30代前半で64,100円、40代前半で116,300円
- 55〜59歳では197,000円まで開く
| 年齢階級 | 高校卒 | 大学卒 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 225.2 | 263.9 | 38.7 |
| 25〜29歳 | 251.7 | 296.4 | 44.7 |
| 30〜34歳 | 276.2 | 340.3 | 64.1 |
| 40〜44歳 | 309.0 | 425.3 | 116.3 |
| 55〜59歳 | 332.1 | 529.1 | 197.0 |
| 年齢計 | 297.2 | 396.3 | 99.1 |
単位は千円。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」第3表・第10表より(調査年:令和7年/概況の集計範囲:10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所の一般労働者。男女計の所定内給与額)。
新規学卒者の初任給は、高校207.3千円、専門学校230.7千円、高専・短大235.5千円、大学262.3千円。高校卒と大学卒の差は55,000円でした。一方、20〜24歳という年齢階級で全体を比べると、差は38,700円まで小さくなります。 新卒どうしの比較と年齢階級での比較は別の切り口ですが、高卒のほうが早く働き始めるぶん、同じ年齢では経験年数が上回るためだと読み取れます。
差が本格的に開き始めるのは30代以降です。40代前半で10万円を超え、50代後半では約20万円。この幅は、学歴そのものというより、その間に就いた職務や役職の違いが積み上がった結果と考えるのが自然でしょう。つまり20代の転職では、学歴の差より「これから何を経験するか」の選択のほうが金額に効いてくると考えられます。 年収の上がり方を年代別に確かめたい方は、年収1000万円は30代の何%かを年齢・男女別に整理した記事もあわせてどうぞ。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
転職で給料が上がる人は4割、下がる人は3割
転職すれば給料が上がるという話も、逆に下がるという話も、どちらも一面しか見ていません。実測値は公表されています。
- 前職と比べて賃金が増加した人は40.5%、変わらない人は28.4%、減少した人は29.4%
- 増加のうち1割以上の増加は29.4%、減少のうち1割以上の減少は21.7%(いずれも転職入職者全体に対する割合)
- 年齢別では20〜24歳の増加が50.5%と最も高く、19歳以下も48.8%
- 2025年の転職者数は330万人、転職等希望者数は1,023万人
| 前職と比べた賃金 | 割合 |
|---|---|
| 増加した | 40.5% |
| うち1割以上の増加 | 29.4% |
| 変わらない | 28.4% |
| 減少した | 29.4% |
| うち1割以上の減少 | 21.7% |
厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」表6・表7より(調査年:令和6年/対象:5人以上の常用労働者を雇用する16大産業の事業所。集計入職者59,412人)。
4割が上がり、3割が下がる。 これが転職市場の平均的な姿です。同じ資料では、雇用期間の定めのない一般労働者どうしの移動に限ると、増加が減少を16.3ポイント上回りました。正社員に近い区分どうしの移動のほうが賃金は上がりやすい、と読める数字です。年齢別に見ると賃金が増加した割合は20〜24歳の50.5%が最も高く、50代に入ると大きく下がります。20代のうちに動く根拠のひとつになるでしょう。
市場全体の需給も見ておきましょう。総務省統計局の労働力調査によると、2025年平均の転職者数は330万人で前年から1万人の減少、転職等希望者数は1,023万人で23万人の増加でした(対象:全国の15歳以上人口)。希望者は増えたのに、実際に動いた人は横ばい。求人側は令和8年7月の有効求人倍率が1.18倍で、正社員に限ると1.00倍という水準です。追い風でも向かい風でもなく、選び方しだいの環境と言えます。
参考:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」
参考:総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2025年平均結果」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)について」
高卒の転職は3つの型に分かれ、打ち手も変わる
同じ「高卒の転職」でも、置かれた状況はまるで違います。そこを一緒くたにしたアドバイスほど役に立たない、というのが取材や編集の現場で若手の話を聞いてきた実感です。統計を見ても、高卒者の進路は早い段階で分かれていました。
- 型A|初職を3年未満で辞めた、または辞めようとしている
- 型B|高卒で実務が3年以上ある
- 型C|卒業後に非正規で働き、これから正社員を目指す
厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査(個人調査)によると、最終学歴が高校の若年労働者(在学していない15〜34歳で、調査対象の事業所に勤めている人)のうち、卒業から1年間で正社員として勤務した人は64.8%、正社員以外の労働者として勤務した人は28.7%でした(大学卒はそれぞれ86.7%、11.1%)。さらに、初めて勤務した会社に現在も勤務している人は48.1%、勤務していない人は49.7%。調査の範囲で見るかぎり、高卒で働く34歳以下の人のおよそ半数は、すでに一度は職場を変えている計算になります。
| 型 | 状況 | 選考で効く材料 | 最初に使う窓口 |
|---|---|---|---|
| 型A | 初職を3年未満で離職、または離職を検討中 | 若さと定着の意思、辞めた理由の説明 | わかものハローワーク、転職エージェント |
| 型B | 高卒で実務が3年以上ある | 職業経験の中身と、数字で示せる実績 | 転職エージェント、教育訓練給付 |
| 型C | 非正規から正社員を目指す | 訓練で身につけた技能、就業を続けた記録 | ハロートレーニング、わかものハローワーク |
型A|初職を3年未満で辞めた、辞めようとしている
この層で最大の関門は、辞めた理由の説明です。同じ調査で初職をやめた主な理由を見ると、高校卒では「人間関係がよくなかった」28.0%、「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」24.8%、「賃金の条件がよくなかった」22.9%、「仕事が自分に合わない」21.6%の順でした(3つまでの複数回答)。大学卒では労働時間が32.8%で1位、人間関係は22.3%。高卒者の離職理由は、大卒者より人間関係の比重が高いという特徴があります。

人間関係を理由に挙げること自体は珍しくありません。ただ、面接で「人が合わなかった」とだけ答えると、また同じことが起きると受け取られやすくなります。起きた事実、自分がとった行動、次の職場に求める条件の3つを順に話すと、単なる不満ではなく判断の説明として伝わります。求めるものを条件の形にしておけば、志望動機とも自然につながるはずです。
型B|高卒で実務が3年以上ある
若年層の中途採用で「業務に役立つ職業経験・訓練経験」を重視した事業所は42.3%。この項目がそのまま強みになるのが型Bです。学歴欄より先に職務経歴が読まれる状態なので、書き方の精度がそのまま結果に響きます。
書くべきは、担当した業務の名前ではなく、範囲と結果です。何人の体制で、どの工程を任され、何がどれだけ変わったのか。件数、金額、時間、不良率のどれかで表せるものは数字にしておきましょう。同じ3年でも、「言われたことをやっていた3年」と「範囲と結果を説明できる3年」では、書類から伝わる中身がまるで違ってきます。 書き方に迷ったときは、履歴書のAI作成はバレるのかを解説した記事で、下書きの使いどころと手を入れるべき箇所を確認してみてください。
型C|非正規から正社員を目指す
高校卒のうち、卒業後1年間を正社員以外の働き方で過ごした人は28.7%。この型に当たるのは、そのなかで正社員を目指す人です。この型では、いきなり応募を重ねるより、先に訓練で職業経験の材料をつくったほうが早いことがあります。公的な職業訓練は受講料が原則無料で、要件を満たせば給付金を受け取りながら通えるためです。訓練で身につけた技能と、就業を続けた記録の2つが、選考で示せる材料になります。
学歴不問・未経験歓迎の求人で確かめたい4つのこと
マイナビ・リクナビといった求人サイトでも、転職エージェントの紹介案件でも、学歴不問と明記された求人は珍しくありません。ただし、学歴不問であることと、働き続けられることは別の話です。求人票では次の4点を見てください。
- 応募資格の「必須」と「歓迎」を分けて読む
- 未経験歓迎が多い産業は、離職率が高い産業と重なっていないか
- 同じ職種の求人が一年中出続けていないか
- 固定残業代の内訳が書かれているか
とくに確かめたいのは、産業ごとの定着状況です。 厚生労働省が令和4年3月卒業者について集計した新規学卒就職者の離職状況では、高校卒の3年以内離職率は37.9%、大学卒は33.8%で、差は4.1ポイント。一方、事業所の規模で見ると、高校卒は1,000人以上で26.3%、5人未満で63.2%と36.9ポイントの開きがあります。学歴の差より、どんな規模の会社に入るかの差のほうがはるかに大きいのです。
| 産業(高校卒) | 3年以内離職率 |
|---|---|
| 宿泊業・飲食サービス業 | 64.7% |
| 生活関連サービス業・娯楽業 | 61.5% |
| 教育・学習支援業 | 53.6% |
| 医療・福祉 | 49.2% |
| 小売業 | 48.3% |
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」より(令和7年10月24日公表/対象:令和4年3月卒業の新規学卒就職者)。表は「その他」を除く離職率の高い上位5産業です。この数字は新卒で入った人の集計であり、中途入社の離職率ではない点にはご注意ください。
上位に並ぶのは、いずれも学歴不問・未経験歓迎の求人が多い産業です。入り口として選ぶこと自体が悪いのではありません。ただ、入りやすさと続けやすさは別物なので、会社ごとの労働時間や休日、教育の中身まで踏み込んで確かめてください。
採用側の姿勢についても参考になる数字があります。令和8年3月に高校を卒業する新卒者向けのハローワーク求人は、求人倍率4.12倍。求人数498,722人に対し求職者数は121,079人でした。これは新卒の高校生を対象にした求人であり、中途採用の数字ではありません。高校新卒の求人は学校を通した斡旋という独自の仕組みの下にあるため、中途の求人倍率と同じ土俵で比べられるものでもないのです。とはいえ、高卒人材を採りたい会社が数の上で余っている状況は読み取れます。地域差も大きく、東京16.12倍に対し鹿児島は1.72倍です。
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」
参考:厚生労働省「令和7年度『高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況』取りまとめ(3月末現在)の一部訂正について」
資格が効く職種と、資格では埋まらない部分
資格を取れば学歴を埋められるという言い方は、半分だけ当たっています。押さえておきたいのは次の4点です。
- 若年層の中途採用で「業務に役立つ専門知識や技能」を重視した事業所は34.8%
- 学歴・経歴の23.1%より上、職業経験の42.3%より下という位置づけ
- 法令で保有が求められる職種かどうかで、資格の重みはまったく変わる
- 費用は教育訓練給付金で経費の20%・上限10万円まで戻せる場合がある
効き方を分けるのは、資格の種類より職種のタイプです。大きく3つに整理すると、求人票で何を確かめるべきかも見えてきます。
| 職種のタイプ | 資格の効き方 | 求人での確かめ方 |
|---|---|---|
| 法令で資格の保有が求められる職種 | 資格がないと担当できない業務があり、採用条件に直結する | 応募資格が「必須」か「入社後取得可」かを見る |
| 資格が実務の裏づけになる職種 | 実務経験と組み合わせて評価される | 資格だけの応募者と何が違うかを面接で聞く |
| 実績で評価される職種 | 資格の有無は評価に直結しにくい | 数字で語れる実績を先に棚卸しする |
資格を選ぶ順番は、取りたい資格からではなく、就きたい職種からです。 厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「job tag」では、職業ごとの仕事内容、その職業に就くまでのルート、必要な知識やスキルを確認できます。志望する職種のページを開き、資格が就業の条件になっているのか、あれば有利という位置づけなのかを先に見極めてから講座を選ぶほうが、時間もお金も無駄になりません。
費用の負担を軽くする制度もあります。厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を修了した場合、教育訓練給付金として教育訓練経費の20%、上限10万円が支給されます(支給額が4千円以下の場合は不支給)。支給要件期間は在職者・離職者とも3年以上(初めて受給する場合は1年以上)。離職者はこれに加えて、離職日の翌日から1年以内に受講を開始することが条件になります。
一方で、資格では埋まらない部分もはっきりしています。若年層の中途採用で最も重視されているのは職業意識・勤労意欲の72.7%とコミュニケーション能力の66.9%で、どちらも資格証だけでは示しにくい項目です。営業のように実績で評価される職種なら、資格より数字を持っているかが問われます。その代表格である営業職の中身を具体的に知りたい方は、不動産営業の仕事内容を仲介・賃貸・管理に分けて解説した記事で、仲介・賃貸・管理それぞれの働き方を確かめてみてください。
参考:厚生労働省「教育訓練給付金制度(一般教育訓練)関係手引」
参考:厚生労働省「職業情報提供サイト job tag」
学歴を問わない会社が、実際に見ているもの
求人票の「学歴不問」という4文字だけでは、何を見て採否を決めているのかまでは分かりません。経営者3人の言葉から読み取れるのは、次の3点です。
- 採用難の業界では、大卒中心だった会社が高卒にも目を向け始めている
- 未経験からの採用は、製造の現場でもIT領域でも珍しくなくなっている
- 見られているのは入社時点の知識量ではなく、入社後に伸びるかどうか
経営者への取材を重ねていると、判断の基準は思っていたよりはっきり言葉になっている、という印象を持ちました。
設備の設計・施工からメンテナンスまでを手がける株式会社USEN FIELDINGの寺見俊吾社長は、採用の現場で起きている変化をこう話しています(2025年6月時点の取材)。
採用難が続く業界では、応募資格を広げる動きが実際に起きています。 同社は求める人物像についても「学歴や経歴は問いません。主体的に学び、チャレンジできる方を求めています」と明言し、専門知識は入社後に身につけられるという前提で採用を組んでいるといいます。
東大阪で銅加工を手がける株式会社ハタメタルワークスの畑敬三代表取締役は、製造の現場で見ている点をこう語ります。
未経験からの採用は、IT領域でも珍しくなくなりました。デジタル人材の育成と派遣を手がけるコクー株式会社の入江雄介代表取締役CEOは、社内の構成をこう説明しています。
3人に共通しているのは、入社時点の知識量ではなく、入社後に伸びるかどうかを見ているという点です。面接で問われているのは「何を知っているか」ではなく「これからどう学ぶか」だと考えると、準備すべき材料も変わってきます。 過去に自分で調べて身につけたこと、やり方を変えて結果が動いたことを、具体的な場面つきで話せるようにしておきましょう。成長が早い人の特徴を9つに整理した記事も、話す材料を見つける手がかりになります。
型別に使い分けたい公的な就職支援
転職エージェントだけが選択肢ではありません。無料で使える公的な窓口があり、型によって向き不向きが分かれます。
- わかものハローワークは担当者制の相談から職場定着支援まで無料で、型A・型C向き
- ハロートレーニングは受講料が原則無料で、離職中の型Cと相性がよい
- 教育訓練給付金は在職しながら動く型B向き
- job tagはどの型でも、職種選びの入口として使える
| 支援 | 対象 | 内容 | 向く型 |
|---|---|---|---|
| わかものハローワーク | おおむね35歳未満で正社員を目指す人 | 担当者制の職業相談から職場定着支援まで無料 | 型A・型C |
| ハロートレーニング | 主に離職中の求職者 | 受講料は原則無料。テキスト代等は自己負担 | 型C |
| 教育訓練給付金 | 支給要件期間を満たす在職者・離職者 | 教育訓練経費の20%、上限10万円 | 型B |
| job tag | 誰でも利用できる | 職業ごとの仕事内容・就くまでのルート・必要な知識やスキル | すべての型 |
わかものハローワークは、担当者制の職業相談から応募準備、就職後の職場定着支援までを無料で行う窓口です。設置数は全国21か所。これとは別に、ハローワーク内に置かれた「わかもの支援コーナー」「わかもの支援窓口」が199か所あり、あわせて220か所が用意されています。卒業後おおむね3年以内なら新卒応援ハローワーク、働くことに一歩を踏み出せない状態であれば地域若者サポートステーションという選択肢もあります。
応募を重ねる前に、訓練を挟んだほうが早いこともあるでしょう。 離職者向けの公共職業訓練は受講料が原則無料で、訓練期間はおおむね3か月から2年。令和5年度の実績(速報値)では、施設内訓練の就職率が86.4%、委託訓練が73.6%でした。雇用保険を受給できない方が対象の求職者支援訓練は、基礎コース59.5%、実践コース60.3%。こちらは一定の要件を満たすと、職業訓練受講給付金として月10万円と通所手当が支給されます。
在職中に動く型Bなら、教育訓練給付金のほうが使いやすいでしょう。どの制度も要件と手続きが決まっているため、最寄りのハローワークで自分が対象になるかを先に確認してください。
参考:厚生労働省「わかものハローワーク」
参考:厚生労働省「若者への就職支援」
参考:厚生労働省「ハロートレーニング(公的職業訓練)の実施状況」
参考:厚生労働省「地域若者サポートステーション」
高卒の転職に関するよくある質問
高卒で正社員に転職できるのは何歳までですか?
年齢そのもので線を引く公的な基準はありません。 ただし公的支援には対象の目安があり、わかものハローワークはおおむね35歳未満で正社員を目指す人、新卒応援ハローワークは卒業後おおむね3年以内が対象です。賃金の動きにも年齢による差があります。令和6年雇用動向調査で前職より賃金が増加した転職入職者の割合は、全体40.5%に対して19歳以下48.8%、20〜24歳50.5%でした。もっとも、これは賃金がどう動いたかを示す数字であって、応募できる求人の幅を測ったものではありません。年齢の上限を気にするより、いま動いた場合に何年ぶんの職業経験を積み直せるかで考えるほうが判断しやすいでしょう。
参考:厚生労働省「わかものハローワーク」
参考:厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」
高卒と大卒では、生涯でどのくらい賃金差が開きますか?
ひとつの金額では表せません。差は年齢とともに変わるためです。 令和7年賃金構造基本統計調査の所定内給与額(男女計)で見ると、20〜24歳の差は38.7千円ですが、55〜59歳では197.0千円まで広がります。「生涯で何千万円」という数字は、この開き方をならして掛け合わせた結果です。実際の金額は40代以降にどんな職務や役職に就いているかで大きく振れるため、いま確かめたいのは差の総額よりも、志望する会社に高卒から役職に就いた人がいるかどうかのほうでしょう。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
高卒でとっておいたほうがいい資格はありますか?
資格から選ぶのではなく、就きたい職種から逆算するのが順番です。 令和5年若年者雇用実態調査によると、若年層の中途採用の選考で「業務に役立つ専門知識や技能」を重視した事業所は34.8%。ただし、法令で保有が求められる職種と、実績のほうが見られる職種では資格の重みがまったく違います。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」で志望職種のページを開き、その資格が就業の条件なのか、あると有利という位置づけなのかを確かめてから講座を選んでください。費用は、厚生労働大臣指定の一般教育訓練であれば教育訓練給付金で経費の20%、上限10万円が支給されます。
参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」
参考:厚生労働省「教育訓練給付金制度(一般教育訓練)関係手引」
高卒で転職回数が多いと不利になりますか?
回数そのものより、それぞれの在籍期間と辞めた理由の説明が見られます。 令和5年若年者雇用実態調査では、最終学歴が高校の若年労働者(在学していない15〜34歳)のうち、初めて勤務した会社に現在も勤務していない人は49.7%でした。1回目の転職はごく一般的だと言えます。ただしこれは「1回以上」の割合であって、回数が多くても不利にならないことを示す数字ではありません。回数が重なる場合は、それぞれの在籍期間と辞めた理由をひと続きの説明にできるかが分かれ目になります。若年層の中途採用で最も重視されているのは職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神の72.7%。短期で辞めた経歴があるなら、そのとき何を判断してどう動いたのかを話せるようにしておくと、意欲の説明とつながります。
まずは3年働いてから転職したほうがいいですか?
「まず3年」と区切る公的な基準は見当たりません。 判断材料になるのは、いまの職場で職業経験として書けるものが積み上がっているかどうかです。令和5年若年者雇用実態調査によると、若年層の中途採用で職業経験を重視する事業所は42.3%あり、新規学卒者の14.7%と比べて約3倍。実務が説明できる状態になっているほど、選考で示せる材料は増えていきます。一方で、令和4年3月卒業者の3年以内離職率は高校卒37.9%、大学卒33.8%と、早期の離職自体は珍しいことではありません。高校卒に限ると、事業所規模5人未満では63.2%に達します。長時間労働や賃金の未払いなど法令に関わる問題がある場合は、3年を待つ理由はないと考えてよいでしょう。
参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」
参考:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します」
まとめ
高卒の転職で学歴が効くのは、応募資格と賃金テーブルという入口の部分です。選考が始まると比重は下がり、若年層の中途採用で学歴・経歴を重視した事業所は23.1%にとどまる一方、業務に役立つ職業経験・訓練経験は42.3%が重視していました。賃金差も、20〜24歳の年齢階級で見れば月38,700円で、大きく開いていくのは30代以降です。学歴より、事業所の規模や産業、これから積む職業経験のほうが結果を左右すると数字は示しています。
打ち手は型によって変わります。初職を3年未満で離れた型Aは辞めた理由の説明、実務3年以上の型Bは職務経歴の書き方、非正規から正社員を目指す型Cは訓練で経験の材料をつくること。わかものハローワーク、ハロートレーニング、教育訓練給付金、job tagは、いずれも自分の手で使える窓口です。正直なところ、学歴を気にしている時間より、次に何を任される会社かを調べている時間のほうが結果に効いてくると感じます。学歴を問わない会社が何を見ているかは、熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューで、社長本人の言葉として読めます。
学歴が効く場面と効かない場面が分かったら、次は自分の経歴で応募できる求人を並べて比べる段階です。

