【代表者インタビュー】株式会社スタートアップラボ CEO 平川 喬・COO 佐野 雅彦

スタートアップ支援×補助金で描く「次世代への希望」
補助金の専門家集団が、スタートアップの挑戦を支える。採択から着金、その先の5年間まで伴走し続ける支援の全貌
新しい技術やサービスで社会を変えようとするスタートアップにとって、資金調達は常に大きな壁です。銀行融資やベンチャーキャピタルからの出資が金融市場の評価に左右される一方で、事業計画の内容や社会的意義によって挑戦できる資金調達手段として注目されているのが、国の「補助金制度」です。しかし実際には、申請や管理の負担の大きさから、制度が十分に活用されているとは言えません。
こうした課題に向き合い、スタートアップ企業に特化した補助金支援を行っているのが株式会社スタートアップラボです。CEOの平川 喬氏(以下、平川さん)は、NTTドコモやスタートアップで約20年にわたり事業開発に携わる中で補助金の可能性を実感し、2023年に同社を設立しました。創業以来15回連続採択という実績を積み重ねています。
「次世代へ、希望ある未来を創造する」を企業理念に掲げる同社の取り組みについて、平川さんと佐野さんに伺いました。
【プロフィール】

株式会社スタートアップラボ
CEO 平川 喬
趣味
筋トレ、釣り
座右の銘
過去に学び、今を尽くし、未来を拓く。
尊敬する人
田坂 広志
学生が読むべき本
「筋トレが最強のソリューションである」Testosterone
経営者におすすめの本
「サピエンス全史」ユヴァル・ノア・ハラリ
人生で一番熱狂したこと
高校野球、最後の夏の大会にすべてを懸けたあの時間

株式会社スタートアップラボ
COO 佐野 雅彦
趣味
カイトサーフィン、モルック、サウナ、ランニング、水泳、ゴルフ、野球
座右の銘
1に感謝、2に努力、そして最後は運。
学生が読むべき本
「苦しかったときの話をしようか」森岡 毅
経営者におすすめの本
「ニュータイプの時代、人生の経営戦略」山口 周
人生で一番熱狂したこと
楽楽明細の4年で30倍の成長をリードできたこと!
新規事業開発の現場で知った補助金の力。スタートアップ専業の支援会社を立ち上げるまで

大企業とスタートアップの連携で痛感した「資金」のボトルネック
小川:まず、御社がどのような事業をされているのか教えてください。
平川さん:当社はスタートアップ企業向けに、補助金を中心とした資金調達支援を行っています。補助金の申請サポートだけでなく、採択後の事業遂行から着金まで、最長5年間にわたって伴走するのが特徴です。
少し経緯をお話しすると、私は大学卒業後にNTTドコモへ入社しました。インフラエンジニアや官庁向けシステムのSEなどの技術職を経験した後、法人営業や新規事業などの事業開発にも携わってきました。その後スタートアップに転職し、結果として約20年間、一貫して事業開発の領域に関わってきたことになります。
その中でつねにボトルネックになっていたのが事業資金の問題でした。銀行借入やベンチャーキャピタルからの出資などさまざまな調達手段がありますが、その中で、現実的に自分たちの力で調達できる手段として「国の補助金」が非常に有効だったのです。
「返さなくて良い資金」の威力と、その獲得に立ちはだかるギャップ
小川:補助金は他の資金調達手段と比べて、どのような点が優れているのでしょうか?
平川さん:一言で言えば、返済が不要だという点です。銀行から借りれば利子を払って返済しなければなりませんし、ベンチャーキャピタルから出資を受ければ株式を渡すことになり、経営の自由度が制約されることもあります。補助金にはそうしたデメリットがありません。
さらに重要なのは、能動的に自分たちで突破できる仕組みだという点です。銀行やVCでは金融市場の評価軸で判断されますが、補助金は事業計画書の内容や社会的意義といった項目で評価されます。現在の財務状況に関係なく、計画の質を高めれば採択される可能性があるのです。
ただし、もらうためのハードルは高い。申請の倍率は4〜5倍になることもありますし、採択後の監査も厳しく、着金までのプロセスも長期にわたります。これらは国民の税金を原資とした社会的資本である以上、こうした歯止めが設けられているのも当然です。
いずれにしても素晴らしい制度ではある一方で、スタートアップ特有の体制・リソース・スキル面とのギャップがあります。だからこそ、私たちのような専門家の存在が必要だと身をもって感じました。
スタートアップに特化した「補助金専業」という唯一無二のポジション

全国3万4,000社の支援機関の中で、なぜ当社なのか
小川:補助金の支援を行っている会社は他にも多いと思いますが、御社ならではの特徴はどこにあるのでしょうか?
平川さん:その多くは、税理士事務所や商工会議所、中小企業診断士など、地域の中小企業を支える重要な役割を担っている組織です。一方で、Web3やAI、バイオテクノロジー、宇宙工学といった先端領域のビジネスモデルは、技術理解や事業構造の把握が非常に複雑で、スタートアップ特有のスピード感や成長戦略に合わせた支援が求められる場面もあります。
そうした領域では、従来の支援体制だけでは十分に対応しきれないケースもあり、スタートアップに特化した支援の必要性を昔から感じてきました。当社は社名の通り、スタートアップ企業に特化し、先端技術を前提としたビジネスモデルへの理解を踏まえて補助金支援を行っています。スタートアップ向けに補助金支援を専業で行っている会社は国内でも多くなく、その点が当社の特徴だと考えています。
佐野さん:補助金支援の中には、SaaSサービスを販売するような感覚で提供されているケースもあります。たとえば「複数社申請して、そのうち1社通ればよい」という形で、効率的に進められている場合もあります。
しかし私たちは、コンサルタントとして関わる以上、1社1社の事業に丁寧に向き合いながら取り組んでいます。結果として、それぞれの案件に多くの時間をかけているのではないかと思います。こうした時間のかけ方も、当社の特徴の一つだと考えています。
採択がゴールではない。5年間の伴走で責任を持つ
小川:採択された後の支援まで手がけているとのことですが、具体的にはどのような内容なのでしょうか。
平川さん:補助金は、採択された時点で資金が入るわけではありません。事業計画書に記載した事業を実行し、成果を出し、監査を経て初めて補助金が支払われます。さらに多くの制度では、その後も5年間の義務期間があり、最近では賃上げ要件なども関係してきます。
つまり、採択はスタートラインにすぎません。事業を実行し、成果として形にしていくまでを見据える必要があります。そのためには、長期にわたって伴走する支援体制が不可欠だと考えています。
たとえば、採択された事業計画を踏まえた外注契約の整理といったリスクマネジメント、新規事業に関する法令や許認可の確認、さらにAIなどの技術革新を踏まえ、どこまでを自社開発として補助金の対象に位置づけるべきかといった技術的な論点まで助言を行っています。
スタートアップ向けに専業で支援を行い、採択から補助金制度上の義務期間である5年間まで伴走する支援モデルは、国内でも珍しい存在だと思います。
補助金サポート市場は、約300億円規模と言われています。そのため大企業は市場規模の観点から参入しづらく、中規模事務所も本業の方が安定した収益を得られるため、本格的に補助金支援に取り組むケースは多くありません。その結果、補助金支援を専業で行い、長期の伴走まで担う会社は多くないのが実情です。
私たちは単なる補助金コンサルティング会社ではなく、政策資本を戦略的に活用しながらスタートアップの成長を支える「政策資本ストラテジスト」でありたいと考えています。採択はゴールではなく、事業を社会に実装するところまで責任を持つ。それが私たちの考える補助金支援です。
「知っているのに使えていない」補助金の現実と、情報格差を埋める使命

スタートアップの8割が補助金を活用できていない理由
小川:補助金という制度自体は知っているけれど、実際に活用できていないスタートアップは多いのでしょうか?
佐野さん:非常に多いですね。スタートアップの経営者であれば、「補助金」という言葉自体はほぼ全員が知っています。知っているのに詳しくは知らない。支援する側になって改めて、なぜ調べようとしないのかと感じるようになりました。
理由はいくつかあります。まず、成功しそうなスタートアップほど経営者が多忙で、自分で事業計画を書く時間がないということ。VCから資金を調達できるなら、面倒な補助金を調べる必要がないと思ってしまうのです。しかし実際には、VCからの出資と補助金は併用すべきものであり、勢いのある会社ほど本来は補助金を活用したほうが良いのです。
もう1つは、「ものづくり補助金」のように名前から製造業向けだと誤解され、IT企業やSaaS企業でも使えることが知られていないケースです。正しい情報を届けること自体が、今の私たちの大事な役割だと考えています。
過去の失敗体験が「補助金は面倒」という先入観をつくる
小川:一度補助金に挑戦したものの、うまくいかなかったという経営者も多いのでしょうか?
佐野さん:たくさんいます。知っていて、一度中途半端にチャレンジして失敗した方は、「結局面倒なだけで時間の無駄だった」というマイナスの体験が残ってしまっています。
原因の多くは準備不足です。現在の採択率は4分の1から5分の1程度まで下がっており、コロナ禍の時期に比べて大幅に厳しくなっています。当時の成功体験から「簡単に通るだろう」と臨んでしまい、準備が足りないまま申請して不採択になるケースは少なくありません。だからこそ、補助金の専門家に任せることが選択肢に入ります。
大企業での新規事業経験が原点。「自分で資金を引っ張ってくる」という発想

NTTドコモ時代に出会った補助金という可能性
小川:平川さんが補助金の支援を事業にしようと考えたきっかけは、どのような経験だったのでしょうか?
平川さん:ドコモ時代に新規事業を立ち上げようとしたときの経験が大きなきっかけです。当時、ドコモは年商5兆円規模の企業で、社内にはドコモ・ベンチャーズという国内有数のファンド機能もありました。外からみると、新規事業にはいくらでも資金を投じられるように思われがちです。しかし実際には、そうではありませんでした。
将来の市場がまだみえにくい事業には、どの部署からも「資金は出せない」と言われてしまう。一方で、連携していたスタートアップ側も資金が底をつきかけていました。お互いにやりたいことはあるのに、資金がない。そんな状況だったのです。
そのとき、スタートアップの方から「補助金という制度がある。大企業と組んで新しい事業を進める場合に活用できる。一緒に事業計画を書いてくれないか」と声をかけられました。それが、私にとって補助金との最初の出会いでした。
実際に補助金を獲得してプロジェクトが動き出したとき、その突破力を強く実感しました。
たとえば、農家向けのIoTプロジェクトでは、補助金の入金がなければ会社が存続できないという、非常に切迫した状況の中で事業が進んでいました。「この補助金が入らなければ、プロジェクトは止まるかもしれない」そんな緊張感が常にありました。それでも事業を止めるわけにはいきません。関係者と議論を重ねながら事業計画を磨き、採択されること、そして補助金を着金させることを前提に、プロジェクトを一歩ずつ前に進めていきました。
そうした強いプレッシャーの中で事業を推進する経験を積み重ねるうちに、私は補助金を単なる制度ではなく、「新しい事業を現実に動かす突破口となり得る資金」として強く認識するようになりました。このときの経験が、現在の事業の原点になっています。
40歳の転機。サラリーマンではなく「自分の人生」を歩む決断
小川:そうした経験を経て、ご自身で会社を立ち上げようと決意されたのはいつ頃でしょうか?
平川さん:人生80年の折り返し地点ともいえる、40歳のときでした。会社員としてではなく、自分の意思で人生を切り拓いていきたいと思うようになったのです。
創業にあたって、社会に対して、自分には何ができるのかを改めて棚卸ししました。その結果、約20年の経験の中で一番強みだと感じたのが、「スタートアップ × 補助金」という領域でした。この分野のノウハウは市場にほとんど出回っていないと感じていたので、それを事業として形にしようと決めました。
そしてもう1つ根底にあるのは、次世代に対して何かメッセージや行動を示すことで、社会を少しでも元気にしたいという思いです。
本質を見据えた支援への想い。「経済軸」ではなく「インパクト軸」で社会をみる

業界構造に対する強い問題意識
小川:スタートアップ支援の業界全体について、お二人が感じている課題はありますか?
佐野さん:いくつかありますが、「支援のあり方がスタートアップ目線になっていない」という点は大きな課題だと感じています。
たとえば、アクセラレーターと呼ばれる支援者たちも、結局は自社のマネタイズが優先になり、お金を出してくれる大企業のほうを向いてしまいがちです。その結果、オープンイノベーションと言いながらも、スタートアップ側に本気で向き合っていないケースが多いのが現実です。
スタートアップの経営者たちは、文字どおり生きるか死ぬかの覚悟で事業に取り組んでいます。それなのに支援者側が経済合理性の短期視点でしか動いていないのでは、長続きしないし、誰もついてこないと思います。
平川さん:その会社の長期的な価値を見据えたサービス提供が、業界全体として十分に行われていないことも大きな課題だと感じています。
本来であれば、時間をかけてじっくり取り組むべきことを、目先の報酬や効率性だけで片づけようとしてしまっている。そこに構造的な問題があると思っています。
本領域のビジネスは、事業としてのボラティリティが非常に高く、不安定な側面もあり、決して楽な商売ではありません。しかし、だからこそ参入障壁があります。私たちと同じ覚悟で、この領域に本気で取り組める会社は、構造の側面からみてもそう多くないと思っています。
この事業を確立し、スタートアップ市場の中で「政策資本ストラテジスト」という、日本にはまだない新しいポジションを築ければ非常に面白くなると考えています。AI時代の到来とともに、新しい市場も広がっていくはずです。
なお「政策資本ストラテジスト」という概念は、日本ではまだ一般的ではありませんが、アメリカではすでに存在しています。政府資金や補助金、公的融資といった政策資本を戦略的に活用し、スタートアップの成長を支える専門家のことを指したりします。
若い世代に伝えたいこと。「経済軸」より「インパクト軸」を
小川:最後に、10代・20代の若い世代に向けてメッセージをお願いします。
佐野さん:社会の価値をみるときに「経済軸」と「インパクト軸」があるとしたら、インパクト軸のほうをみてほしいと思います。お金はあくまで物々交換の手段にすぎません。目先の年収だけを追いかけるのではなく、自分が生きることの意義を持って行動してほしいのです。
平川さん:愚直に日々の研鑽を積み重ねることが、何より大切だと考えています。AIが進展する時代だからこそ、目先の成功や効率に流されない姿勢が、より問われるようになると思います。
本質的な人間性や基本を磨き続ける。その積み重ねこそが、将来の大きなレバレッジとなり、確かな成果を生み出していく。私はそう信じています。
そしてもう1つ、若い世代の方々には「最初からやりたいことが明確でなくてもいい」とも伝えたいですね。日々の努力や経験を積み重ねていく中で、自分の道が少しずつみえてくることも多いからです。私自身も、まさにそうでした。
私たちは、その姿勢を自ら体現し続けることで、次世代に希望ある未来を届けていきたいと思っています。小さな積み重ねの先にこそ、未来を変える大きな挑戦が生まれてくると信じています。

会社概要
| 会社名 | 株式会社スタートアップラボ |
| HP | https://www.startup-lab.co.jp |
| 設立 | 2023年6月 |
| 事業内容 | スタートアップ企業向けコンサルティング(補助金支援・伴走型実務支援) |
※2026年3月3日時点の情報です。
