心理的安全性とは?意味とぬるま湯との違い|職場で高める方法と見分け方

心理的安全性とは、チームの中で質問や意見、ミスの報告をしても、対人関係上のリスクを恐れずにいられる状態のことです。
仲の良さやぬるま湯とは違います。ぬるま湯の職場は誰も言わないから穏やかで、心理的安全性が高い職場は、言いにくいことを言っても関係が崩れないから穏やかなのです。
この記事では、研究や国の資料での意味を確かめたうえで、上司とメンバーが高めるためにできることと、職場や応募先での見分け方を整理します。
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心理的安全性とは?研究と国の資料での意味
心理的安全性は、もともと組織の研究で使われてきた言葉です。押さえておきたいのは次の3点です。
- エドモンドソン氏の研究では、対人的なリスクをとっても安全だとチームで共有されている信念を指す
- 国の職員アンケートでは、質問・意見・誤りを認めることができる状態と説明されている
- 一人の性格ではなく、チームや職場の状態を表す
エドモンドソン氏の定義は「チームで共有される信念」
労働政策研究・研修機構が発行する『日本労働研究雑誌』の2026年2・3月号に載った多湖雅博氏らの研究ノートは、エイミー・エドモンドソン氏の1999年の論文を引き、心理的安全性を、チームの中で対人的なリスクのある行動をとっても安全だとメンバーが共有して信じている状態として説明しています。同じ研究ノートによれば、考え方の源流は1965年にシャイン氏とベニス氏が示したもの。試しにやってみることを促し、失敗しても罪悪感を負わせない状況を指し、人が互いに学び合うための最初の段階と位置づけていました。シャイン氏らが個人の単位で扱ったのに対し、エドモンドソン氏はチーム全体に備わるものとして定義した点が違うと整理されています。
対人的なリスクのある行動とは、質問する、助けを求める、ミスを報告する、違う意見を言うといった行動のことです。同誌2022年8月号に載った松下将章氏らの論文は、心理的安全が高いと本音を打ち明ける不安が軽くなるとし、発言や情報共有に影響することも実証研究で示されてきたと整理しています。エドモンドソン氏の論文も、心理的安全が高いときには人がメンバーに助けを求めやすくなることに触れているといいます。つまり心理的安全性は、仲の良さではなく、言いにくいことを口に出せるかどうかに関わる考え方です。
仕事への向き合い方との関係も報告されています。2026年2・3月号の研究ノートが2024年1〜2月に会社員417人を対象に行ったインターネット調査では、職場の心理的安全性を高く感じている人ほど、仕事への活力や熱意を表すワーク・エンゲイジメントも高いという関係が示されました。
参考:労働政策研究・研修機構「人を責めないコミュニケーションがもたらす効果(日本労働研究雑誌 2026年2・3月号)」
参考:労働政策研究・研修機構「インクルーシブ・リーダーシップが上司に対する援助要請意図に与える影響のメカニズム(日本労働研究雑誌 2022年8月号)」
国の職員アンケートでは、質問・意見・誤りを認めることができる状態
内閣人事局が2025年6月に公表した令和6年度の国家公務員の働き方改革職員アンケート結果では、上司のマネジメントの例に「心理的安全性を高める」が挙がり、注記でその意味が説明されています。中身は、率直に質問する、自分の意見を言う、誤りを認めるの3つができる状態。あわせて、部下の言うことを否定せずに丁寧に聴き、理解しようとする姿勢も、心理的安全性を確保する取組の一つとされています。
研究の定義と国の説明を職場の場面に置き換えると、心理的安全性が高い職場では次のような行動が出やすくなります。
| 行動 | 職場での例 |
|---|---|
| 質問する | 手順がわからないとき、その場で聞ける |
| 意見を言う | 会議で、上の立場の人と違う案を出せる |
| 誤りを認める | 自分のミスに気づいた時点で報告できる |
| 助けを求める | 仕事が回らなくなる前に、早めに相談できる |
どれも、口に出した人が損をしない職場でこそ起きやすい行動です。
参考:内閣官房内閣人事局「令和6年度 国家公務員の働き方改革職員アンケート結果」
一人の性格ではなく、チームや職場の状態を表す
「心理的安全性が高い人」という言い方を見かけることがありますが、エドモンドソン氏の定義では、心理的安全性はチームや職場に備わるものとされています。前述の研究ノートも、自らの分析の課題として、職場のコミュニケーションや心理的安全性は組織の単位で扱うのが最も適切だろうと述べています。一人ひとりの感じ方を質問票で集めて測る研究もありますが、そこで測っているのは「この職場で自分は言えるか」という職場への受け止め方です。同じ人でも、職場が変われば「言える」かどうかは変わりえます。
心理的安全性と「ぬるま湯」「仲良し」の違い
心理的安全性が高い職場は、ぬるま湯の職場と混同されがちです。違いは次の3点に表れます。
- ぬるま湯は「言わなくて済む」職場、心理的安全性が高い職場は「言える」職場
- 仕事に求める基準の厳しさと、言えるかどうかは別の話
- 仲の良さや居心地のよさは、心理的安全性の高さと同じではない
| 場面 | 心理的安全性が高いチーム | ぬるま湯のチーム | 緊張感だけのチーム |
|---|---|---|---|
| 意見が分かれたとき | 立場に関係なく違う案を出し、議論して決める | 波風を立てないよう黙り、なんとなく決まる | 上の人の案に合わせ、反対意見は出ない |
| ミスが起きたとき | 早く共有され、原因と次の手を話し合う | 指摘されないまま流される | 報告が遅れ、誰の責任かが先に問われる |
| 仕事の基準 | 高い基準を共有し、届かない点を率直に伝え合う | 基準があいまいで、指摘もしない | 基準は厳しいが、理由の説明や支えがない |
| わからないこと | その場で聞ける | 聞かなくても成果を問われない | 聞くと評価が下がりそうで聞けない |
| 会議 | 若手も含めて発言が分散する | 雑談は多いが結論が出にくい | 一部の人だけが話す |
| 居心地 | 率直だが、人を攻撃しない | 居心地はよいが、成長の実感が乏しい | 張りつめていて、疲れやすい |
ぬるま湯のチームも、表面上は穏やかで、責められることもありません。けれども、その穏やかさは誰も言わないことで保たれています。心理的安全性が高いチームが穏やかに見えるとしたら、それは言いにくいことを言っても関係が壊れないからでしょう。同じ「居心地がよい」でも、言わないから保たれる穏やかさと、言っても崩れない穏やかさは別物です。
仕事の基準の厳しさと、言えるかどうかは別の軸
仕事の基準が高いことと、心理的安全性が低いことは同じではありません。研究上の定義が問題にしているのは、対人的なリスクをとっても安全かどうか。求める水準の高さそのものではないのです。基準が高くても、ミスを報告した人が責められず、足りない点を率直に伝え合えるなら、心理的安全性は保たれています。反対に、基準がゆるくても、意見を言うと嫌な顔をされる職場では、心理的安全性は低いままでしょう。
仕事上必要な注意や指摘を受けること自体も、心理的安全性が低いしるしとは限りません。分かれ目になるのは、指摘が仕事の事柄に向いているか、人そのものに向いているか。事柄への指摘が率直に交わされる職場は、むしろ「言える」職場の姿に近いといえます。
心理的安全性が低い職場で起きやすいこと
心理的安全性が低い職場では、次のようなことが起きやすくなります。
- 質問や相談が出てこない
- ミスの報告が遅れる
- 問題が起きると、原因より先に責任者探しが始まる
- 会議で一部の人しか発言しない
- 「これはおかしい」と思っても、上に届かない
どれも、口に出した人が損をすると感じたときに起きやすい行動です。前述の研究ノートは、問題が起きたときに原因探しや「責任者探し」、互いの欠点の話が多い職場の会話を「問題志向」と呼んで分析しました。その結果、こうした会話が多いと答えた人ほど、職場の心理的安全性を低く感じる傾向が示されています。
人事院の令和4年度年次報告書には、国家公務員倫理審査会が各界の有識者から聴いた意見として、組織文化としての心理的安全性は不祥事を防ぐ観点でも大切で、おかしいと思ったことを上司や仲間に伝えるハードルの低さに関わる、という指摘も載っています。言いにくいことが上に届かない状態は、居心地の問題にとどまらず、不祥事の防止にも関わるという見方です。
参考:労働政策研究・研修機構「人を責めないコミュニケーションがもたらす効果(日本労働研究雑誌 2026年2・3月号)」
参考:人事院「令和4年度 年次報告書 第2編第1章 公務員倫理に関する広報、意見聴取」
職場の心理的安全性を高める方法|上司ができること・メンバーができること
心理的安全性を高める方法は、特別な制度より日々のやりとりの中にあります。ただ、大事だと分かっていても、実行は簡単ではありません。2024年11〜12月に実施され63,329人が回答した内閣人事局の令和6年度の職員アンケートでは、心理的安全性を高めることなどを例に挙げた上司のマネジメントについて、重要だと考える職員が91.1%だったのに対し、職場の上司が実施していると感じる職員は64.8%でした。国家公務員を対象にした結果ですが、大切だという認識と現場での実感にはずれがあることがうかがえます。押さえておきたいのは次の3点です。
- 上司は、聴き方とミスへの反応を変える
- メンバーも、質問や報告の出し方で職場の空気に関われる
- ハラスメントを防ぐ措置は会社の義務で、心理的安全性はその上に積み重ねるもの
上司ができること
上司の反応ひとつで、次に口を開くかどうかは変わります。場面ごとに、心理的安全性を下げやすい反応と高めやすい反応を並べました。
| 場面 | 心理的安全性を下げやすい反応 | 高めやすい反応 |
|---|---|---|
| 部下が意見を言ったとき | 途中で遮り、すぐに否定する | 最後まで聴き、そう考えた理由を尋ねる |
| ミスの報告を受けたとき | 「誰がやったのか」から始める | 何が起きたかを確かめ、次の手を一緒に考える |
| 自分が判断を誤ったとき | なかったことにする | 自分の誤りだったと先に口にする |
| 仕事が立て込んでいるとき | 「何かあれば言って」で終わらせる | 仕事の量や優先順位を見直す |
| 意見が出たあと | 聞きっぱなしにする | 採るか採らないかと、その理由を返す |
内閣人事局のアンケートは、部下の言うことを否定せずに丁寧に聴く姿勢を、心理的安全性を確保する取組の一つに挙げていました。ミスへの反応については、前述の研究ノートで、問題が起きても人を責めず、強みや成功、どうすればできるかに目を向ける会話(解決志向)が多いと答えた人ほど、心理的安全性を高く感じる傾向が示されています。研究者は、経営者や管理者が研修などでこの考え方を身につければ、職場の心理的安全性を高められるのではないかと述べています。
仕事の量も見落とせません。『日本労働研究雑誌』2022年8月号の論文は、2020年7月の調査をもとに、従業員1,000人以上の企業に勤め、新たに在宅勤務になった東京勤務の正社員273人を分析したものです。新しいアイデアに寛大で相談にも応じる上司のもとでは、部下が職場の心理的安全を高く感じ、悩みを上司に相談しようとする気持ちも強まる関係が示されました。ただし、仕事の負担が重い人ほどその関係は弱く、研究者は業務の割り当てを見直すといった対応も必要だとしています。「いつでも相談して」と声をかけるだけでは、忙しすぎる部下の口は開きにくいのです。
自分のことを先に話すのも一つの手です。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」が2022年3月に掲載した監査法人の取組事例では、管理職向けの研修で、上司が相談を歓迎していても部下からはなかなか言い出せないこと、上司の自己開示や対話の大切さを伝えていると紹介されています。前述の人事院の年次報告書に載った有識者の意見も、率直に言える職場にするには、リーダーが方針を示し、自ら行動で示すことが大切だとしていました。
叱るべき場面での伝え方は、デキル上司の叱り方【部下を育てる指導方法】で具体的に紹介しています。人格を否定しない、感情をぶつけないといった点は、心理的安全性の考え方とも重なるはずです。
参考:内閣官房内閣人事局「令和6年度 国家公務員の働き方改革職員アンケート結果」
参考:労働政策研究・研修機構「インクルーシブ・リーダーシップが上司に対する援助要請意図に与える影響のメカニズム(日本労働研究雑誌 2022年8月号)」
参考:厚生労働省 こころの耳「EY新日本有限責任監査法人(東京都千代田区):職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
メンバーができること
心理的安全性は、上司だけがつくるものではありません。チームで共有される信念である以上、メンバー一人ひとりのふるまいも、その職場の空気の一部になります。立場に関係なくできることは、次の4つです。
- わからないことは、小さいうちに短く聞く
- ミスに気づいたら、その時点で報告する
- 反対の意見は、人ではなく案に向けて「どうすればできるか」の形で出す
- 同僚の成果や手助けに、感謝や称賛を言葉で返す
最初の2つは、内閣人事局の説明にある質問すること、誤りを認めることを、自分から実践するものです。後の2つは、前述の研究ノートが解決志向の会話の例に挙げている、障害にぶつかったときに「どうすればできるのか」を語る、互いに賞賛や感謝の言葉を交わすといった項目と重なります。言いやすい空気は、誰かが先に言ってみせることで少しずつ広がっていくものでしょう。
自分から動く姿勢については、成長が早い人の特徴9選|共通点と今日からの行動が参考になるはずです。
参考:労働政策研究・研修機構「人を責めないコミュニケーションがもたらす効果(日本労働研究雑誌 2026年2・3月号)」
ハラスメントの防止は会社の義務、心理的安全性はその上に積み重ねるもの
職場のパワーハラスメント防止について定めている労働施策総合推進法にも、心理的安全性という言葉は出てきません。この法律が定めているのは、その土台にあたる部分です。事業主には、上司などの立場を背景にした行き過ぎた言動を防ぐため、相談に応じる体制を整えるなどの措置が第31条第1項で義務づけられています。厚生労働省の案内でいう、パワーハラスメント防止措置にあたるものです。
働く一人ひとりに向けた条文もあります。
条文の「優越的言動問題」は、上司などの立場を背景にした行き過ぎた言動、いわゆるパワーハラスメントにかかわる問題のことです。働く人に求められているのは、そうした問題に関心と理解を持ち、ほかの労働者への言動に注意を払い、会社の防止措置に協力すること。ただし文末は「努めなければならない」で、第31条第1項が事業主に課した「講じなければならない」という義務とは違い、努力義務にとどまります。 同じ条の第3項は、事業主や法人の役員自身にも、労働者への言動に注意を払うよう努めることを求めているのです。なお、これらの条番号は2026年10月1日の改正法の施行で移ったもので、それ以前の資料では第30条の2、第30条の3として紹介されています。
整理すると、ハラスメントを防ぐ措置は法律が事業主に課した最低限の線で、心理的安全性はその上に、日々のやりとりで積み重ねていくものです。ハラスメントがないことと、質問や反対意見が出やすいことは、イコールではありません。
参考:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
自分の職場や応募先の心理的安全性を見分ける方法
心理的安全性は目に見えにくいものの、手がかりはあります。確かめる順番は次のとおりです。
- 自分の職場は、研究で使われている問いに照らして振り返る
- 応募先は、まず採用サイトやインタビューに書かれた出来事から読み取る
- 公表情報で足りない点だけを、面接で最近の出来事として尋ねる
自分の職場は、研究で使われている問いで振り返る
自分の職場の心理的安全性をチェックするなら、研究で使われている問いが手がかりになります。心理的安全性を測る研究では、質問票を使うのが一般的です。前述の研究ノートによれば、最もよく使われているのはエドモンドソン氏の1999年の論文にある7項目で、組織の単位で測る形のもの。日本の職場を対象にした研究では、一人ひとりの受け止め方を尋ねる項目も使われてきました。『日本労働研究雑誌』2022年8月号の論文が使った5項目を言い換えると、次のような問いになります。
| 振り返る問い | 思い当たる場面の例 |
|---|---|
| 自分の考えを、自由に口に出せているか | 会議で、上の立場の人と違う案を出したことがある |
| 本音を言うことが、歓迎されていると感じるか | 率直な意見を言ったあと、礼を言われたり採り入れられたりした |
| 自分の仕事について、本心を打ち明けられるか | 進め方がきついと感じたとき、上司にそのまま話せる |
| 違う意見を持っても、そのことで嫌がらせを受けないか | 反対したあとも、扱いが変わらなかった |
| 本音を言っても、傷つけられる心配がないか | 本音を言った人が、あとで陰口や皮肉の対象になっていない |
当てはまらない問いがあっても、すぐに悪い職場だと決めつける必要はありません。相手や時期によって言いやすさは変わりますし、自分一人の感じ方で職場全体は測れないからです。
会話の中身も手がかりになります。問題が起きたときに、なぜ起きたのか、誰の責任なのかばかりが話題になるのか。それとも、どうすればうまくいくかまで話が進むのか。前述の研究ノートが示した傾向に照らせば、前者が続く職場では言いにくさが増しやすいと考えられます。印象で判断するより、ミスや反対意見が出たときに実際どう扱われたかを一つずつ思い出すほうが確かです。
参考:労働政策研究・研修機構「インクルーシブ・リーダーシップが上司に対する援助要請意図に与える影響のメカニズム(日本労働研究雑誌 2022年8月号)」
参考:労働政策研究・研修機構「人を責めないコミュニケーションがもたらす効果(日本労働研究雑誌 2026年2・3月号)」
応募先は、採用サイトやインタビューの「出来事」から読み取る
応募先の心理的安全性は、入社前に完全には分かりません。それでも、公表されている情報から読み取れることはあります。手始めに目を通したいのは、会社の採用サイト、社員インタビュー、経営者インタビュー、行動指針やバリュー。マイナビ・リクナビなどの求人サイトに載る募集要項や、転職エージェント経由で届く求人票の自由記述にも、手がかりが見つかることがあるでしょう。
見たいのは、制度の名前より具体的な出来事です。若手の提案で何かが変わった話、失敗をどう扱ったかの話、会議の様子。1on1や提案制度があると書かれていても、それだけで心理的安全性が高いとは言い切れません。仕組みが実際に動いた場面まで書かれているかどうかが、読み取りの分かれ目になります。
「風通しのよい職場です」という一文だけでは、経営者に話を聞く仕事をしている私たちでも、職場の姿までは思い描けないのが本音です。読み込むのは、本命として考えている数社だけで構いません。
面接では「心理的安全性」という言葉を使わず、最近の出来事を尋ねる
採用サイトや求人票を読んでも見えてこない部分は、逆質問などの機会に面接で尋ねてみましょう。「心理的安全性は高いですか」と尋ねても、たいていは「高いです」と返ってくるだけでしょう。言葉そのものは使わず、最近の出来事として聞くほうが、中身のある答えになります。
| 知りたいこと | 尋ね方の例 | 答えのどこを見るか |
|---|---|---|
| 意見が採り入れられるか | 最近、現場からの提案で変わったことはありますか | いつ、誰の提案で、何が変わったかまで出てくるか |
| ミスの扱われ方 | 仕事でミスが起きたとき、チームではどのように共有していますか | 共有の手順があり、次に生かす話になっているか |
| 会議での発言 | 会議では、入社して間もない方が発言する場面もありますか | 具体的な場面が返ってくるか |
| チームの課題 | いまのチームで課題に感じていることは何ですか | 弱いところも率直に話してくれるか |
尋ねるのは、いちばん気になる点の1つか2つで足ります。面接官の受け答えそのものも材料になるでしょう。逆質問を歓迎してくれるか、課題を尋ねたときに言葉を濁さずに答えてくれるか。面接の場での質問のしやすさも、その会社の空気を映す手がかりの一つです。
経営者は「意見を言える職場」をどう語っているか
取材で職場の雰囲気を尋ねると、「仲がいいです」より先に、意見の扱い方や失敗の扱い方を話してくれる経営者がいます。そうした言葉には、心理的安全性を職場でどう形にしているかが表れていると感じます。3人の言葉を紹介しましょう。
- 心理的安全性と挑戦を、セットで掲げる
- 失敗を、挑戦の証として扱う
- 社員の意見を、経営の判断に反映させる
心理的安全性と挑戦を、セットで掲げる
株式会社Ballistaの中川貴登社長は、会社の雰囲気についての質問に、次のように答えています。
中略した部分では、定期的な1on1ミーティングやメンターメンティ制度、自由に席を選べるオフィスを、部署を超えた関係づくりの仕組みとして挙げています。同じ回答の中で、飲み会などの交流の場はそれほど多くないと話しているのも印象的です。心理的安全性は、にぎやかな交流の多さではなく、意見を率直に伝えられるかどうかで語られているのです。
失敗を、挑戦の証として扱う
Ultra FreakOut株式会社の宇木大介社長は、グループで共有しているバリューをこう紹介しています。
失敗を責めないだけでなく、学びを次の挑戦に生かすところまでをひと続きにしている点がポイントです。宇木社長は採用について語る中で、職場はいつもにぎやかなわけではなく、静かに進める時間もあれば、新しい挑戦について議論を戦わせる場面もあると話しています。失敗を許すことと、議論を避けることは違う、という姿勢が読み取れます。
社員の意見を、経営の判断に反映させる
deex株式会社の牛丸順登社長は、社内のカルチャーについて次のように語っています。
同社では、社内からの新規事業提案を積極的に採用する仕組みも設けているといいます。言えることに加えて、言ったあとに何が起きるかまで語られている点が、見分けるときの手がかりになります。 面接で「最近、現場からの提案で変わったことはありますか」と聞いたときに返ってきてほしいのは、まさにこうした具体的な話でしょう。
熱狂ベンチャーナビでは、経営者本人が、会社の雰囲気や大切にしている文化を自分の言葉で語っています。「風通しがいい」という同じ言葉の裏にある仕組みは会社ごとに違い、その違いは複数の記事を並べて読むとよく分かります。
心理的安全性に関するよくある質問
心理的安全性を簡単に言うと、どういう意味ですか?
チームの中で、質問や意見、ミスの報告をしても、責められたり評価を下げられたりする心配をせずにいられる状態のことです。 内閣人事局の令和6年度の職員アンケートでは、率直に質問し、自分の意見を言い、誤りを認めることができる状態と説明されています。仲が良いことや、仕事が楽なことを指す言葉ではありません。
心理的安全性が高い人の特徴はありますか?
心理的安全性は、個人の性格ではなく、チームや職場の状態を表す言葉です。 『日本労働研究雑誌』に載った研究ノートでも、エドモンドソン氏の定義はチームで共有される信念とされ、一人ひとりの感じ方として測る場合も、職場という自分の外にある環境への受け止め方だと説明されています。そのため「心理的安全性が高い人」という言い方は、研究で使われてきた意味からは少しずれます。職場の言いやすさに関わる個人の行動としては、わからないことを早めに聞く、ミスをすぐに報告する、ほかの人の意見を遮らずに聴くといったものが挙げられるでしょう。
心理的安全性の「4つの因子」や「4つの段階」とは何ですか?
民間の企業や著者などが、心理的安全性をいくつかの観点に分けて捉えるために示している考え方です。 国の資料や法令で定められた区分ではなく、どんな観点に分けるかは提唱する側の考え方によります。参考にするのは構いませんが、自分の職場を見るときは、区分を覚えるより、質問や相談、ミスの報告、違う意見が実際に出ているかを一つずつ確かめるほうが確実です。
上司に厳しく注意されるのは、心理的安全性が低いということですか?
仕事上必要な注意を受けること自体は、心理的安全性が低いしるしとは限りません。 労働施策総合推進法の第31条第1項が事業主に防止の措置を求めているのは、優越的な関係を背景にした言動のうち、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものです。厚生労働省の指針も、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は、パワーハラスメントにあたらないとしています。見るべきは、注意が仕事の事柄に向いているか、人格の否定になっていないか、そして注意を受けたあとも質問や報告をしやすい関係が続いているかです。
参考:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年10月1日適用)」
心理的安全性が低い職場にいると感じたら、どうすればいいですか?
まずは自分にできる範囲で質問や報告を早めに出しつつ、信頼できる上司や同僚に、具体的な場面を挙げて話してみてください。 一人で職場全体の空気を変えるのは難しいものの、話しやすい相手が一人いるだけでも状況は変わりえます。言いにくさの原因が、上司などの立場を背景にした行き過ぎた言動にあるなら、会社の相談窓口を頼って構いません。労働施策総合推進法は、相談に応じて適切に対応するための体制づくりを、事業主に義務づけています。それでも変わらない状態が続き、働き続けるのがつらいなら、職場を変えることも選択肢の一つになるでしょう。
まとめ
心理的安全性とは、チームの中で質問や意見、ミスの報告をしても、対人関係上のリスクを恐れずにいられる状態のことです。エドモンドソン氏の研究ではチームで共有される信念として定義され、国の職員アンケートでも、率直に質問し、意見を言い、誤りを認められる状態として説明されています。ぬるま湯の職場が言わなくて済むことで穏やかなのに対し、心理的安全性が高い職場は、言っても関係が崩れないことで穏やかです。仕事に求める基準の厳しさとは、別の軸で考えましょう。
高めるために上司ができるのは、最後まで聴くこと、ミスの報告に責任者探しで応えないこと、自分の誤りを先に認めること、仕事の量に目を配ること。メンバーも、早めの質問と報告、案に向けた意見、感謝の言葉で職場の空気に関われます。ハラスメントを防ぐ措置は法律が事業主に課した義務で、心理的安全性はその上に積み重ねていくものです。
私たち編集部が経営者の話を聞いていても、言える職場をつくっている会社ほど、制度の名前より「最近こんな意見が出て、これが変わった」という出来事を具体的に話してくれます。自分の職場を振り返るときも、応募先を選ぶときも、印象ではなく出来事で確かめてみてください。
確かめる会社の候補を広げるなら、転職エージェントに求人を紹介してもらうのも一つの方法です。

