オンボーディングとは?意味とOJTとの違い、入社前から半年までの施策を解説

オンボーディングとは、新しく入った人が職場になじみ、力を発揮できるようになるまでを支える受け入れの取り組みのことです。
受け入れというと新卒の4月入社を思い浮かべがちですが、新しく職場に入る人の3分の2ほどは、直前の1年間にどこかで働いていた人です。経験があっても、その会社のやり方は入社してから知るしかありません。
この記事では、OJTや研修との違い、入社前から半年までの施策、中途採用の受け入れを確かめたうえで、応募前に受け入れの様子を知る方法まで整理します。
研修や配属後のフォローまで含めた受け入れの中身は、求人票だけでは見えにくいものです。入社後の受け入れ体制まで含めて求人を比べたいときは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
オンボーディングとは、新しく入った人が職場になじみ力を発揮できるようにする受け入れのこと
オンボーディングは、特定の研修や制度の名前ではなく、受け入れ全体を指す言葉です。押さえておきたい点は次の3つ。
- 法律や公的な定義はなく、どこまで含めるかは会社によって違う
- 仕事を覚えることに加え、人との関係や会社のルールになじむことまで含む
- 法律と国の指針は、若者の「職場への定着」と「能力の発揮」に向けた取り組みを企業に求めている
法律や公的な定義はなく、受け入れの流れ全体を指す
オンボーディングは、英語の on board(船や飛行機に乗り込んでいる状態)に由来する言葉とされます。新しい乗組員を迎え入れるように、新しく入った人を組織の一員として迎える取り組みを、人事の分野ではこう呼んでいます。
法律で定められた用語ではないため、どこまでを含めるかは会社によってまちまちです。共通しているのは、仕事を覚えることだけでなく、人と会社になじむことまでを受け入れの範囲に入れる点です。 なじむ対象を分けると、次の3つになるでしょう。
| なじむ対象 | 具体的な中身 | 主な手段の例 |
|---|---|---|
| 仕事 | 担当する業務の進め方、使う道具、仕上がりの基準 | OJT、マニュアル、先輩への同行 |
| 人 | 上司・同僚・他部署との関係、困ったときの相談先 | 顔合わせの場、相談役となる先輩、上司との面談 |
| 会社 | 就業規則や評価の仕組み、事業の全体像、大事にしている考え方 | 入社時研修、経営者や人事からの説明 |
なお、IT・SaaSの分野では、契約した顧客がサービスを使いこなせるようになるまでの支援もオンボーディングと呼びます。この記事で扱うのは、職場に人を迎え入れる意味のほうです。
公的なサイトにも、この言葉は登場します。厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」では、企業が任意で入力できる独自情報の一つに「オンボーディング制度・フォロー体制」という欄があり、研修制度やメンター制度と同じ「能力開発」の区分に並んでいます。意味までは定めていないものの、受け入れの仕組みを表す言葉として使われているのです。
参考:厚生労働省「しょくばらぼ(職場情報総合サイト)」
参考:厚生労働省 しょくばらぼ「独自情報入力画面で入力可能な項目」
法律と国の指針は「職場への定着」と「能力の発揮」を求めている
オンボーディングという言葉こそ出てきませんが、受け入れの考え方に近い条文もあります。若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)は、事業主の責務を次のように定めています。
条文の「青少年」は若者のこと、「職場への定着」は入った職場で働き続けることを指します。採用の方法、職業を選ぶための情報、職業能力の開発。この3つを通じて、若者の定着と力の発揮を図るよう事業主に求めているのです。結びが「努めなければならない」なので、罰則で強制される義務ではなく努力義務にあたります。
この法律にもとづいて国が定めた青少年雇用機会確保指針は、若者の職場への定着を図り、その能力を有効に発揮できるようにする観点から、OJTとOFF-JTを計画的に実施するよう努めることを事業主に求めています。入社前の情報と採用後の職場の実態に差を感じないよう、職場で求められる能力やキャリア形成についての情報を示すことも、努めるべき措置に挙げています。新入社員研修などの機会に労働法制の基礎を伝えることは、望ましいという位置づけです。入社前の説明、計画的な育成、働くルールの説明。指針が挙げるこれらの項目は、オンボーディングの中身と重なります。
参考:e-Gov法令検索「青少年の雇用の促進等に関する法律」
参考:厚生労働省「青少年雇用機会確保指針(平成27年厚生労働省告示第406号)」
オンボーディングとOJT・OFF-JT・入社時研修の違い
OJT、OFF-JT、入社時研修は、いずれもオンボーディングの中で使われる手段です。違いのポイントは次の3つになります。
- オンボーディングは、受け入れ全体を指す言葉
- OJTとOFF-JTは、仕事の中で教えるか、仕事を離れて教えるかの違い
- 入社時研修の中身に全業種共通の決まりはなく、どの会社にも義務があるのは雇入れ時の安全衛生教育
| 言葉 | 何をするか | 主な担い手 | 期間の考え方 | 公的な定義 |
|---|---|---|---|---|
| オンボーディング | 新しく入った人が職場になじみ、力を発揮できるまでの受け入れ全体 | 人事、配属先の上司・先輩、経営者 | 入社前から、一人で仕事を進められるようになるまで | 法律や公的な定義はない |
| OJT | 日常の業務に就きながら行う教育訓練 | 配属先の上司・先輩 | 配属後、仕事を通じて続く | 能力開発基本調査に「計画的なOJT」の説明がある |
| OFF-JT | 通常の仕事を一時的に離れて行う研修 | 人事、社内外の講師 | 研修ごとに区切られる | 能力開発基本調査に説明がある |
| 入社時研修 | 入社直後にまとめて行う研修 | 人事、社内外の講師 | 入社直後の一定期間で、長さは会社による | 全業種共通の定めはない。雇入れ時の安全衛生教育は義務 |
OJTや研修が「何をどう教えるか」の手段なのに対し、オンボーディングは「誰が、いつまで、どう支えるか」まで含みます。 研修が充実していても、配属後に相談できる相手がいなければ、受け入れはそこで途切れてしまうでしょう。
OJTとOFF-JTは、国の調査に説明がある
OJTとOFF-JTには、厚生労働省の能力開発基本調査に説明があります。OFF-JTは「業務命令に基づき、通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練(研修)」。OJTは日常の業務に就きながら行われる教育訓練で、そのうち計画書を作るなどして「教育担当者、対象者、期間、内容などを具体的に定めて、段階的・継続的に実施する」ものを、計画的なOJTと呼んでいます。
常用労働者30人以上の事業所を対象にした令和7年度の同調査によると、令和6年度の1年間に正社員か正社員以外へ計画的なOJTを行った事業所は64.1%でした。対象を職層別にみると、正社員の新入社員が52.3%で最も多く、中堅社員38.7%、管理職層24.9%と続きます。OFF-JTも新入社員58.7%、中堅社員57.4%、管理職層49.0%と、新入社員が最も高い割合です。この調査でいう新入社員は、入社後3年程度までの人のこと。計画的なOJTの対象として最も多いのは入社3年程度までの新入社員ですが、その割合は事業所全体のおよそ半数にとどまります。
OJTで教える側の伝え方は、上司の叱り方と部下を育てる指導方法も参考になります。
参考:厚生労働省「令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」
参考:厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査 用語の説明」
入社時の教育で法律が義務づけているのは、安全衛生教育
入社時研修の中身や長さを、業種を問わず一律に決めた法律はありません。警備業法施行規則が新しく警備業務に就く人への教育事項を定めているように、業種ごとの決まりもあります。そのうえで、どの会社にも共通する義務として労働安全衛生法が定めているのが、雇い入れたときの安全衛生教育です。
「事業者」は会社などの使用者、「雇い入れたとき」は入社したときのことです。文末が「行なわなければならない」なので、これは努力義務ではなく義務です。 教える事項は労働安全衛生規則第35条に8項目が並び、機械や原材料の危険性と取り扱い方、作業手順、作業開始時の点検、事故のときの応急措置と退避などが含まれます。このうち、その人が就く業務の安全や衛生に必要な事項を教える決まりです。
この規則には以前、一部の業種で一部の項目を省略できる規定がありましたが、2024年4月1日に廃止されました。いまも残っているのは、十分な知識と技能があると認められる人について、その事項に限って教育を省ける規定です。経験のある人でも、一律に省いてよいわけではありません。
入社のときに法律で決まっている手続きは、ほかにもあります。
| 手続き | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 労働条件の明示 | 労働契約を結ぶときに、賃金や労働時間、就業の場所と業務、その変更の範囲などを示す | 労働基準法第15条、同法施行規則第5条 |
| 雇入れ時の安全衛生教育 | 従事する業務に関する安全・衛生の教育を行う | 労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条 |
| 雇入時の健康診断 | 常時使用する労働者を雇い入れるときに、医師による健康診断を行う | 労働安全衛生規則第43条 |
オンボーディングそのものは義務ではありませんが、その入口には法律で決まった手続きがあるのです。
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
参考:厚生労働省「労働安全衛生法の新たな化学物質規制」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:e-Gov法令検索「警備業法施行規則」
オンボーディングが重視される理由|統計で言えることと言えないこと
入社してから1年ほどの間に、何が起きているのか。公的な統計から読み取れるのは、次の3つです。
- 1年目のうちに辞める人は大卒で約1割、勤続1年未満で辞めた若手の理由の筆頭は「人間関係」
- 若手の定着策として多いのは、職場の意思疎通と入社前の説明
- 受け入れる側は「指導する人材の不足」をいちばんの課題に挙げている
ただし、いずれの統計も「オンボーディングを行えば離職が減る」ことまでは示していません。分かるのは、入社してまもない時期にどんなつまずきがあり、会社がどこに手を打っているか、までです。
1年目に辞める人は大卒で約1割。理由の筆頭は「人間関係」
厚生労働省「新規学卒者の離職状況」によると、令和6年3月に卒業して就職した人のうち、就職1年目のうちに離職した人は大学卒で10.1%、高校卒で16.6%でした。令和7年6月時点で把握された数値です。
辞めた理由は、令和5年若年者雇用実態調査の個人調査から読み取れます。5人以上の事業所で働く15〜34歳のうち、学校を出て初めて勤めた会社を辞めた人に、理由を3つまで尋ねたものです。勤続期間別にみると、1年未満の各期間で最も多い理由は「人間関係がよくなかった」で、勤続3か月未満で52.3%、3か月〜6か月未満で40.1%、6か月〜1年未満で37.4%でした。勤続1年以上10年未満になると、最多は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」に入れ替わります。
入社して1年に満たない時期の離職では、人との関係が理由の先頭に来ているのです。 ただし、これは辞めた人に理由を尋ねた結果で、受け入れを手厚くした効果を測ったものではありません。
若手の定着策で多いのは、職場の意思疎通と入社前の説明
同じ調査の事業所調査によると、若年正社員の定着のための対策を行っている事業所は73.7%でした。行っている対策(複数回答)を多い順にみると、「職場での意思疎通の向上」59.7%、「採用前の詳細な説明・情報提供」58.4%、「本人の能力・適性にあった配置」55.6%、「労働時間の短縮・有給休暇の積極的な取得奨励」52.9%、「教育訓練の実施・援助」48.5%の順です。

「定着のための対策」は統計上の区分で、オンボーディングと同じものではありません。それでも上位には、職場の意思疎通、入社前の説明、配置、教育と、受け入れの中身に重なる項目が並びます。
受け入れる側の課題は「指導する人材の不足」
受け入れる会社の側にも事情があります。令和7年度能力開発基本調査では、能力開発や人材育成に何らかの問題があると答えた事業所は80.1%。その内訳(複数回答)は「指導する人材が不足している」59.5%、「人材を育成しても辞めてしまう」51.6%、「人材育成を行う時間がない」45.5%の順でした。
受け入れの仕組みを整えたくても、教える人と時間が足りないと答える職場は少なくありません。 現場の先輩一人に任せきりにせず、上司や人事、他部署の人と役割を分けておくと、教える側の負担も偏りにくくなるでしょう。
参考:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」
参考:厚生労働省「令和5年若年者雇用実態調査の概況」
参考:厚生労働省「令和7年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」
オンボーディングの施策|入社前から半年までに何をするか
オンボーディングの中身は会社ごとに違いますが、時期で区切ると整理しやすくなります。受け入れる側がすることと入社する人が確かめたいことを、次の6つの時期に分けて並べました。
- 入社前
- 初日
- 1週目
- 1か月
- 3か月
- 半年
| 時期 | 受け入れる側がすること | 入社する人が確かめたいこと |
|---|---|---|
| 入社前 | 労働条件通知書を渡す。初日の予定と持ち物を伝え、パソコンやアカウント、相談役を決めておく | 就業の場所と業務、その変更の範囲。初日の集合場所と予定 |
| 初日 | 職場を案内し、一緒に働く人を紹介する。就業規則の見方と安全衛生の注意点を伝え、1週目の予定を共有する | 困ったときに誰に聞けばよいか。就業規則をどこで見られるか |
| 1週目 | 業務の全体像を説明し、関わる人と顔を合わせる。小さな仕事を1つ任せる | 自分の仕事が、誰の仕事とつながっているか |
| 1か月 | 上司との面談で、できるようになったことと困りごとを確かめる | 期待されている役割と、最初の目標 |
| 3か月 | 役割と目標をすり合わせる。試用期間がある会社は、その区切りでも面談する | 評価の基準と、次に任される仕事 |
| 半年 | 評価とフィードバックを行い、受け入れのやり方を本人と振り返る | 受け入れで足りなかったことを伝える場があるか |
入社前は、労働条件と初日の見通しを渡す
労働契約を結ぶときに会社が必ず行うのが、労働条件の明示です。労働基準法第15条は、労働契約を結ぶときに賃金や労働時間などの労働条件を示すよう使用者に義務づけており、主な事項は書面で渡すのが原則。本人が希望すれば、電子メールなどで受け取ることもできます。2024年4月からは、就業の場所と業務に加えて、それらの「変更の範囲」も明示する事項に加わりました。
入社する側は、労働条件通知書の内容が、求人票や面接で聞いた話と同じかを確かめておきましょう。 違うところがあれば、入社前に問い合わせて構いません。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」
参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
初日から1か月は、相談先と小さな仕事をつくる
最初の1か月でまず決めておきたいのは、困ったときに誰に聞けばよいかです。相談役の先輩を一人決めておく仕組みは、メンター制度やバディ制度などと呼ばれます。就業規則については、労働基準法第106条が、見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付などの方法で労働者に周知させるよう会社に求めています。初日に置き場所を伝えておけば、入社した人は休暇や手当のルールを自分で確かめられるはずです。
1週目のうちに小さな仕事を1つ任せ、終わったら一緒に振り返る。この繰り返しで、入社した人は職場の進め方を少しずつ覚えていくでしょう。
3か月から半年は、役割と評価をすり合わせる
3か月を過ぎたら、仕事を覚える段階から、役割と評価をすり合わせる段階に移ります。期待している役割と目標をあらためて言葉にし、評価の基準を説明しておきましょう。
半年たったら、受け入れそのものを本人と振り返ります。どの説明が足りなかったか、最初の週に何があれば助かったかを聞けば、次に入ってくる人の受け入れに生かせるでしょう。半年の時点で、入社した人が「次に何を任されるか」を自分の言葉で説明できれば、受け入れは一つの区切りを迎えたといえます。
中途採用のオンボーディングは、新卒と何が違うか
オンボーディングというと新卒の一斉入社を思い浮かべがちですが、新しく入ってくる人の多くは中途採用です。違いは次の3点に表れます。
- 新しく入職する人の多くは、前の仕事を持っていた人
- 中途で採用した若手にOFF-JTを行う事業所は、新卒より少ない
- 経験があっても、その会社のやり方や人間関係は入社してから知るしかない
新しく入職する人の多くは、前の仕事を持っていた人
厚生労働省の令和7年雇用動向調査は、5人以上の常用労働者を雇う事業所を対象に、1年間の入職と離職を集計しています。令和7年に入職した人は752.7万人で、そのうち入職前の1年間に仕事をしていた転職入職者が506.2万人、新規学卒者は127.6万人でした。パートタイム労働者を除く一般労働者に限っても、転職入職者が317.7万人、新規学卒者が88.6万人です。
新しく職場に入ってくる人の3分の2ほどは、直前の1年間にどこかで働いていた人なのです。 受け入れの段取りを新卒の4月入社に合わせて作っていると、入社の時期も経歴もばらばらな中途の人には合わない場面が出てきます。
中途で採用した若手にOFF-JTを行う事業所は、新卒より少ない
令和5年若年者雇用実態調査は、34歳以下の正社員を新卒で採用した人と中途で採用した人に分け、事業所がどう育成しているかを尋ねています。育成を行っている事業所の割合は、新卒で採用した人がいる事業所で73.2%、中途で採用した人がいる事業所で72.6%と、ほとんど変わりません。差が開くのは方法別にみたときで、OFF-JTは新卒37.5%に対し中途27.8%と、約10ポイント低くなっています。ほかの方法も中途のほうが低めで、OJTは65.9%と63.5%、自己啓発への支援は33.2%と29.7%、ジョブローテーションは23.8%と19.2%でした。育成を「行っていない」と答えた事業所は、新卒の6.1%に対し、中途は9.7%です。

統計から言えるのは、中途で採用した若手にOFF-JTを行う事業所は新卒より少ない、というところまでです。 中途で入った人が放っておかれていると言い切れる数字ではありません。ただ、職場を離れて学ぶ機会が少ないぶん、会社のやり方を知る場が日々の仕事の中に限られやすいとは考えられます。
経験があっても、その会社の「当たり前」は入社してから知る
中途で入る人は、仕事そのものの経験を持っています。一方で、その会社ならではの進め方は、入社してから知るしかありません。
| 前職から持ち込めること | 入社してから知る必要があること |
|---|---|
| 職種の専門知識やスキル | 社内の用語、決裁の流れ、書類の作り方 |
| 業界の知識や取引の常識 | その会社の顧客や商品の経緯、社内外との約束事 |
| 仕事の進め方の型 | 評価の基準と、自分に期待されている役割 |
| 人と働いてきた経験 | 誰に何を聞けばよいか、部署どうしの関係 |
受け入れる側が気をつけたいのは、「経験者だから説明は要らないだろう」と省いた話が、入社した人にとってはいちばん知りたいことだった、という行き違いです。経験を尊重することと、会社のやり方を説明しないことは、別の話です。
入社する側にとっても、最初の1か月は「この会社ではどうしていますか」と尋ねやすい時期です。前の職場のやり方を持ち込む前に、まず今の職場のやり方を確かめてみてください。新しい職場で早く立ち上がる人の動き方は、成長が早い人の特徴9選でもまとめています。
経営者は新しいメンバーの受け入れをどう語っているか
取材で経営者に育成の話を聞いていると、制度の名前より先に「最初の数か月、誰がどう隣にいるか」を具体的に話す人が多いと、私たちは感じています。新しく入った人の受け入れについて語った2人の言葉を紹介しましょう。
- 最初の3か月の計画を立てて受け入れる
- 経験がある人も「未経験から」の前提で教える
最初の3か月の計画を立てて受け入れる
トライプレックス株式会社の泉拓磨社長は、未経験で入った人も働ける環境かを尋ねられ、教育への投資の話に続けてこう答えています。
計画があると、入社した人は自分がいまどの段階にいるのかを確かめながら進めます。3か月の計画と「その人のペース」を並べて語っている点に、受け入れの考え方がよく表れています。
経験がある人も「未経験から」の前提で教える
小児の訪問看護を手がける株式会社ARIAの宮崎大輔社長は、小児の経験がない人が入社したときの教育について、こう話しています。
発達の領域については、小児病棟で働いた経験がある人も含めて、全員が未経験から始める前提で教える考え方です。中途で入る人の受け入れを考えるときも、前職の経験を尊重しつつ、その職場で求められることは一から教えるという姿勢は参考になります。
2人とも最初の3か月を区切りにしていますが、期間に決まりはありません。ほかの経営者が受け入れや育成をどう語っているかは、経営者インタビューで読めます。
入社する前に、オンボーディングを確かめる方法
受け入れの様子には、入社してみないと分からない部分もあります。それでも、私たちが取材前に採用ページを読むとき、入社後の最初の1か月まで書いてある会社だと社内の様子をずいぶん思い描きやすい、というのが正直な実感です。応募の段階で確かめる順番は、次のとおりです。
- まずは公表されている情報を読む
- 公表情報で分からなかった点だけを、面接で聞く
- 制度の有無より、最初の1か月の過ごし方を聞く
まずは公表されている情報を読む
最初に見るのは、マイナビ・リクナビなどの求人サイトや転職エージェントから受け取る求人票の研修・教育制度の欄、会社の採用サイト、社員や経営者のインタビュー記事です。「研修あり」の一言だけでなく、期間や内容、誰が教えるのかまで書かれているかを見てみましょう。
厚生労働省の職場情報総合サイト「しょくばらぼ」では、掲載されている152,380件の企業の職場情報を検索し、比べられます(2026年10月1日時点)。企業が任意で入力する独自情報には、「オンボーディング制度・フォロー体制」や「中途採用・経験者採用の定着率」の欄もあります。入力するかどうかは企業に任されているため、空欄だからといって受け入れの仕組みがないとは限りません。
新卒で応募する場合は、若者雇用促進法にもとづく職場情報も手がかりになります。厚生労働省のリーフレットによると、新卒者などを対象にした募集では、応募者などから求めがあれば、企業は3つの類型それぞれについて1つ以上の情報を提供しなければなりません。類型の一つ「職業能力の開発・向上に関する取組の実施状況」には、研修の有無及び内容、メンター制度の有無などが含まれます。どの項目を出すかは企業が選べるため、まず公表されている情報を確かめ、それでも分からなければ尋ねる、という順番で十分です。気になる会社をすべて調べる必要はなく、応募を決めかけている会社に絞って構いません。
参考:厚生労働省「しょくばらぼ(職場情報総合サイト)」
参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「就労実態等に関する職場情報を応募者に提供する制度について」
公表情報で分からなかった点だけを、面接で聞く
公表情報で分からなかったことは、面接の逆質問や内定後の面談で聞けば足ります。「オンボーディングはありますか」と制度の有無を尋ねるより、最初の1か月をどう過ごすかを聞くほうが、答えに中身が出るでしょう。
| 確かめたいこと | 聞き方の例 | 答えから分かること |
|---|---|---|
| 入社後の流れ | 入社して最初の1か月は、どのように仕事を覚えていく方が多いですか | 流れが決まっているか、現場に任されているか |
| 相談できる相手 | 配属後、仕事の相談に乗ってくださる先輩や担当の方は決まっていますか | 相談役がいるか、どう決まるか |
| 中途入社の受け入れ | 中途で入った方は、最初の数か月でどんな役割を任されることが多いですか | 経験者への期待の水準と、受け入れの段取り |
| 研修の中身 | 入社時の研修は、新卒と中途で内容が分かれていますか | 中途向けの説明があるか |
| 振り返りの場 | 入社後、上司の方と面談する機会はありますか | 困りごとを伝えられる場があるか |
全部を聞く必要はなく、公表情報で分からなかった1〜2点に絞れば十分です。期間や担当者まで具体的に返ってくるなら、受け入れの流れは実際に動いていると見てよさそうです。
オンボーディングに関するよくある質問
オンボーディングとは、簡単に言うと何ですか?
新しく入った人が職場になじみ、力を発揮できるようにする受け入れの取り組みのことです。 入社前の準備から初日の案内、OJTや研修、配属後の面談までをまとめて指します。法律や公的な定義はないため、どこまで含めるかは会社によって異なります。
オンボーディングの期間はどれくらいですか?
決まった期間はありません。 入社前から始まり、入社した人が一人で仕事を進められるようになるまでが一つの目安でしょう。この記事で紹介した経営者の話でも、最初の3か月を区切りにした計画や研修が語られていました。期間の長さにこだわるより、区切りごとに何を確かめるかを決めておくとよいでしょう。
中途採用でも、オンボーディングは必要ですか?
経験があっても、その会社のやり方や人間関係は入社してから知るしかないため、中途採用でも受け入れは必要です。 令和5年若年者雇用実態調査でも、中途で採用した若手にOFF-JTを行う事業所は27.8%と、新卒の37.5%を下回っていました。受け入れる側は経験者向けの説明を用意し、入社する側も最初の1か月は社内の進め方を遠慮なく尋ねてみてください。
受け入れ体制が整っていない会社は、避けたほうがいいですか?
整っていないことだけを理由に、候補から外す必要はありません。 人数の少ない会社では、制度の名前がなくても、社長や先輩が日々の仕事の中で教えていることがあります。見たいのは仕組みの有無より、最初の1か月を誰がどう支えるのかを具体的に説明できるかどうか。面接で入社後の流れを聞き、答えに中身があるかを確かめてみましょう。
入社後、受け入れが不十分だと感じたらどうすればいいですか?
まずは上司や相談役に、困っていることを具体的に伝えましょう。 何が分からないかを書き出してから話すと、相手も手を打ちやすくなります。面談の機会がなければ、自分から短い時間を取ってもらうよう頼んで構いません。なお、明示された労働条件と実際が違う、労働条件が明示されないといった労働基準法に関わる問題は、都道府県労働局や労働基準監督署に相談できます。
参考:厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」
まとめ
オンボーディングとは、新しく入った人が職場になじみ、力を発揮できるようにする受け入れの取り組みです。法律や公的な定義はなく、OJTや入社時研修はその中で使われる手段という位置づけです。入口には、労働条件の明示や雇入れ時の安全衛生教育のように、法律で決まった手続きもあります。
統計からは、大学を出て就職した人の約1割が1年目のうちに離職し、勤続1年未満で辞めた若手の理由の筆頭が「人間関係がよくなかった」であることが分かります。中途で採用した若手にOFF-JTを行う事業所は、新卒より少ないという結果も出ていました。受け入れる側は入社前から半年までを時期で区切り、誰がいつ何を支えるかを決めておくと、抜け漏れが見えやすくなるでしょう。
新しい職場の最初の数週間は、誰にとっても心細いものです。取材で出会った経営者の言葉を並べてみると、受け入れが上手な会社ほど、特別な制度より「隣に誰がいるか」を大事にしているように、私たちには思えます。入社する側も、求人票や面接で最初の1か月の過ごし方を確かめてから、次の職場を選んでみてください。
受け入れの様子まで含めて応募先を比べたいときは、求人ごとの事情を転職のプロに聞いてみるのも一つの手です。

