取締役とは?役割・任期と執行役員や監査役との違い、年収までわかりやすく解説

取締役とは、株主総会で選ばれて会社の経営を任される、会社法上の役員です。どの株式会社にも、少なくとも1人は置かなければなりません。

意外に知られていないのが、会社との関係は雇用ではなく委任だという点です。社員の解雇には厳しい要件があるのに対し、取締役は株主総会の決議でいつでも解任されうる立場にあります。

この記事では、執行役員・監査役・社員との違いを一覧で比べたうえで、任期や責任、社外取締役、年収の目安、取締役になる道筋までを整理します。

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目次

取締役とは、株主総会で選ばれて経営を任される会社法上の役員

取締役がどんな立場なのかは、次の3点を押さえると見通しがよくなります。

  • 会社法が定める「役員」のひとつ
  • 取締役会があるかないかで、担う役割が変わる
  • 会社との関係は、雇用ではなく委任

会社法第329条第1項は、取締役・会計参与・監査役の3つを「役員」と呼び、いずれも株主総会の決議で選ぶと定めています。そして第326条第1項は、すべての株式会社に1人以上の取締役を置くよう求めています。取締役とは、株主から会社の経営を託された人のことであり、どの株式会社にも必ずいる役員です。

取締役会がある会社とない会社で、役割はこう分かれる

取締役会は、一定の会社を除けば、置くかどうかを会社が定款で選べます。置いているかどうかで、取締役の仕事の中身は次のように分かれます。

比べる点取締役会がある会社取締役会がない会社
取締役の人数3人以上1人以上
業務執行の決定取締役会で決める取締役が2人以上なら過半数で決める
業務を執行する人代表取締役と、取締役会で選ばれた業務執行取締役各取締役
会社を代表する人取締役会が取締役の中から選ぶ代表取締役各取締役。代表取締役を定めた場合はその人

会社法第362条によれば、取締役会はすべての取締役で組織され、業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定と解職を担います。譲渡に会社の承認が要らない株式を一部でも発行できる「公開会社」は、取締役会を置かなければなりません。ここでいう公開会社は、上場しているかどうかとは別の区分です。

代表権も、専務・常務といった肩書きも持たない取締役は「平取締役」と呼ばれることがありますが、会社法にこの言葉はありません。会社法上、取締役会のある会社で業務を執行するのは代表取締役と選ばれた業務執行取締役で、ほかの取締役の役割は取締役会での意思決定と監督にあります。 取締役の中から会社を代表する立場に選ばれた人が代表取締役で、社長や会長、CEOといった肩書きは、代表取締役かどうかとは別に会社が付ける呼び名です。

参考:e-Gov法令検索「会社法」

会社との関係は「雇用」ではなく「委任」

会社法第330条は、会社と役員の関係は委任に関する規定に従うと定めています。委任とは、ある仕事を相手に託し、相手がそれを承諾することで成り立つ約束のこと。株主総会で選ばれた人が就任を承諾して初めて取締役になるのも、この関係だからです。民法第644条は、委任を受けた人に「善良な管理者の注意」をもって仕事を処理する義務を課しています。その立場にある人として当然求められる注意を払う義務、と言い換えられるでしょう。

社員は会社に雇われ、会社の指揮命令のもとで働きます。取締役は会社から経営を任され、自らの判断で職務を果たす側に立ちます。同じ会社で働いていても、取締役と社員とでは、会社と結んでいる約束の種類そのものが違うのです。

参考:e-Gov法令検索「民法」

取締役と執行役員・監査役・社員の違いを一覧で比較

取締役と混同されやすい立場は、主に次の3つです。

  • 執行役員は、会社法に定めのない社内の役職
  • 監査役は、取締役の仕事を監査する役員
  • 社員(従業員)は、会社に雇われて働く労働者
比べる点取締役執行役員監査役社員(従業員)
法律上の立場会社法上の役員会社が任意に置く役職会社法上の役員雇われて働く労働者
選ぶ人株主総会会社が規程にもとづいて任命株主総会会社が採用
主な役割経営の意思決定と監督、業務の執行決まった方針にそって担当分野を動かす取締役の職務の執行を監査する会社の指揮命令のもとで業務を行う
会社との契約委任雇用または委任委任雇用
任期原則2年法律の定めはない原則4年契約の内容による
社員との兼任部長などを兼ねる場合がある部長などを兼ねる場合がある兼ねられない該当しない
雇用保険原則として対象外労働者として扱われるかで決まる原則として対象外要件を満たせば加入

取締役と監査役は株主総会で選ばれる会社法上の役員、執行役員と社員は会社が社内の手続きで任命・採用する立場です。 名前が似ていても、選ばれ方から雇用保険の扱いまで、法律上の位置づけははっきり分かれます。

執行役員との違いは、会社法に定めがあるかどうか

会社法の条文を確かめても、「執行役員」という言葉は出てきません。執行役員は会社が規程などで任意に設ける役職で、株主総会で選ばれる取締役とは成り立ちが異なります。役割の面では、方針を決めて監督するのは取締役、その方針を担当分野で実行するのは執行役員です。1人が両方を担う「取締役執行役員」という肩書きもあります。

監査役は、取締役の仕事を監査する役員

監査役も取締役と同じく、株主総会で選ばれる会社法上の役員です。ただし向いている方向は逆で、会社法第381条第1項は、監査役の仕事を、取締役の職務の執行を監査することと定めています。取締役会に出席して必要なら意見を述べること、取締役の不正やそのおそれ、法令・定款に違反する事実などを見つけたら報告することも、監査役の義務です。

監査役は、その会社や子会社の取締役・社員を兼ねることができません。 監査する人が監査される側に立たないための決まりで、厚生労働省の雇用保険に関する業務取扱要領も、この兼職禁止を理由に監査役を原則として被保険者にしないとしています。任期は原則4年です。取締役会を置く会社は、委員会を置く形の会社などを除き、監査役も置かなければなりません。

社員との違いは、雇われているか、任されているか

社員は雇用契約で会社に雇われ、取締役は委任で会社から経営を任されています。この違いがはっきり表れるのは、その立場を離れる場面です。会社法第339条は、役員を「いつでも、株主総会の決議によって解任することができる」と定めています。正当な理由のない解任なら、解任された取締役は会社に損害の賠償を請求できます。社員の解雇には労働契約法の厳しい要件があるのに対し、取締役は株主総会の判断でいつでも外されうる立場なのです。

参考:e-Gov法令検索「会社法」
参考:e-Gov法令検索「労働契約法」
参考:厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領 雇用保険適用関係」

取締役の選ばれ方・人数・任期|任期は原則2年、非公開会社は最長10年

取締役の就任から退任までには、会社法の決まりがあります。押さえたいのは次の3点です。

  • 株主総会の決議で選ばれ、1人以上置く
  • 任期は原則2年で、会社の形によって変わる
  • なれない人の定めはあるが、株を持っている必要はない

株主総会の決議で選ばれ、1人以上置く

取締役は株主総会の決議で選ばれます。決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成で行うのが原則。出席の要件は、定款で3分の1まで下げられます。選ばれた人が就任を承諾すると取締役になり、その氏名は登記事項として記録されます。

人数は、株式会社なら1人以上、取締役会を置く会社では3人以上が必要です。取締役1人の会社なら、業務の執行も会社の代表も、その1人が担うことになります。

任期は原則2年、非公開会社は定款で10年まで

取締役の任期について、会社法は次のように定めています。

“
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
会社法(平成17年法律第86号)
第332条第1項・第2項
条文を見る

「選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」とは、選ばれてから2年以内に終わる事業年度のうち、最後の年度について開かれる定時株主総会が終わるまで、という意味です。暦の上できっちり2年ではなく、決算と定時株主総会の時期に合わせて区切られます。「公開会社でない株式会社」は、すべての株式について譲渡に会社の承認が必要な会社のこと。任期は定款や株主総会の決議で短くすることができ、延ばせるのは非公開会社が定款で定めた場合に限られます。

会社の形取締役の任期長さを変えられるか
公開会社(下の2つを除く)2年定款や株主総会の決議で短くできる
公開会社でない株式会社(下の2つを除く)2年短くできるほか、定款で10年まで延ばせる
監査等委員会設置会社1年。監査等委員である取締役は2年監査等委員以外の取締役は短くできる。監査等委員である取締役は短くできない
指名委員会等設置会社1年定款や株主総会の決議で短くできる

監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は、取締役会のなかに委員会を置く形の会社です。公開会社かどうかにかかわらず任期が別に定められ、10年への延長もできません。任期が満了すれば、株主総会で再び選ばれない限り取締役は退任します。

なれない人の定めはあるが、株を持っている必要はない

取締役になれない人は会社法第331条第1項に列挙されており、法人のほか、会社法や金融商品取引法などの罪で刑に処せられ、執行を終えるなどしてから2年が経っていない人などが含まれます。学歴や資格を求める定めは、この条文にはありません。公開会社では、取締役を株主に限る定めを定款に置けないため、株を持っていない社員や社外の人材も取締役に選ばれうるのです。 取締役を株主に限る定めを置けるのは、公開会社でない株式会社だけです。

参考:e-Gov法令検索「会社法」

取締役が負う義務と責任|任務を怠れば会社に賠償する責任を負う

取締役は、会社を任された人として重い義務を負います。整理すると次の3つです。

  • 会社のために忠実に職務を行う義務がある
  • 会社と利害がぶつかる取引には、承認が要る
  • 任務を怠れば、会社や第三者への賠償責任を負う

会社のために忠実に職務を行う

会社法第355条は、取締役に、法令・定款・株主総会の決議を守り、会社のため忠実に職務を行う義務を課しています。民法の善管注意義務と合わせて、取締役は自分や第三者の利益より会社の利益を優先して職務にあたることを求められているわけです。

会社と利害がぶつかる取引には承認が要る

取締役が、会社の事業と同じ種類の取引を自分や第三者のために行う「競業取引」や、自分や第三者のために会社と取引するなどの「利益相反取引」をするときは、その取引の「重要な事実」を開示し、株主総会の承認を受けなければなりません。取締役会のある会社では、承認するのは取締役会です。会社の利益と取締役個人の利益がぶつかる場面では、取締役が自分だけで決められない仕組みになっています。

任務を怠れば、会社や第三者への賠償責任を負う

取締役の責任の中心にあるのが、次の条文です。

“
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
会社法(平成17年法律第86号)
第423条第1項
条文を見る

「任務を怠った」とは、取締役として果たすべき職務を果たさなかったことです。善管注意義務や忠実義務に反する行為が、典型的にはこれに当たります。文末は「責任を負う」で、努力目標ではなく、任務を怠れば取締役個人が会社に賠償しなければならないという定めです。 条文が責任の条件にしているのは、任務を怠ったことと、それによって会社に損害が生じたことです。会社に損失が出たという結果だけで、責任を負うわけではありません。

会社の外に対する責任もあります。第429条第1項は、役員等が職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、それによって第三者に生じた損害も賠償しなければならないと定めています。取引先など、会社の外の人に損害を与えた場合の責任です。

参考:e-Gov法令検索「会社法」

社外取締役とは、会社から独立した立場で経営を監督する取締役

社外取締役のポイントは、次の3つです。

  • 会社法が要件を定めた、業務を執行しない取締役
  • 上場会社などには、社外取締役を置く義務がある
  • 東京証券取引所のコードが、独立社外取締役の人数の目安を示している

社外取締役は、会社法第2条第15号に要件が定められた取締役です。その会社や子会社の業務執行取締役・執行役・使用人でなく、就任前の10年間もそうでなかったこと。会社の経営を支配している個人や、親会社等の取締役・執行役・使用人でないこと。親会社等の子会社等、いわゆる兄弟会社の業務執行取締役等でないことも条件です。さらに、その会社の取締役・執行役・「支配人その他の重要な使用人」や会社を支配している個人の、配偶者・二親等内の親族も対象外です。主にこうした条件を満たす人だけが、社外取締役になれます。

社外取締役の主な要件を示した図。その会社や子会社の業務執行取締役・執行役・使用人でなく就任前の10年間もそうでなかったこと、会社の経営を支配している個人や親会社等の取締役・執行役・使用人でないこと、兄弟会社の業務執行取締役等でないこと、その会社の取締役・執行役・支配人その他の重要な使用人や会社を支配している個人の配偶者・二親等内の親族でないことの4項目。

社外取締役は、会社の業務からも経営陣の身内からも離れた立場で、経営を監督するための取締役です。 業務を執行しない取締役は、定款に定めがあれば、職務について善意で重大な過失がないときの賠償額の上限をあらかじめ決める「責任限定契約」を会社と結べます。

上場会社などに社外取締役を置く義務は、2021年3月1日に施行された改正会社法で設けられました。 会社法第327条の2が対象とするのは、監査役会を置く公開会社のうち、資本金5億円以上または負債200億円以上の大会社で、有価証券報告書を提出しなければならない会社です。法務省はこの改正を、上場会社等に社外取締役を置くことを義務付けるものと説明しています。

上場会社に向けて、さらに踏み込んだ目安を示しているのが、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードです。2026年7月21日に改訂された最新版の原則4-10は、プライム市場の上場会社は独立社外取締役を少なくとも3分の1以上、その他の市場の上場会社は2名以上選任すべきだとしています。 支配株主がいるプライム市場の上場会社に求める水準は、支配株主から独立した独立社外取締役の過半数です。独立性の見極め方についても、取締役会が取引所の独立性基準を踏まえ、一般株主と利益相反が生じるおそれがないかを実質的に評価する基準を定めるべきだとしています。

コードは法律ではなく、原則を実施するか、実施しない理由を説明するかを上場会社に求める仕組みです。 全原則が対象になるのはプライム市場とスタンダード市場の上場会社で、グロース市場の上場会社は基本原則が対象。改訂版について、上場会社は遅くとも2027年7月末までに、対応を記したコーポレートガバナンス報告書を出すことになっています。コードは独立社外取締役に、経営陣の選解任などを通じた経営の監督、会社と経営陣・支配株主等との利益相反の監督、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見の反映、経営の方針や改善への助言を期待しています。

参考:e-Gov法令検索「会社法」
参考:法務省「会社法の一部を改正する法律について」
参考:日本取引所グループ「コーポレートガバナンス・コード」
参考:東京証券取引所「コーポレートガバナンス・コード(2026年7月版)」
参考:金融庁・東京証券取引所「成長投資の促進に向けたコーポレートガバナンス・コードの改訂について」

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社員から取締役になると何が変わるか|部長を兼ねる取締役と雇用保険

社員が取締役に選ばれると、会社との関係そのものが切り替わります。変わるのは主に次の3点です。

  • 会社との契約が、雇用から委任に変わる
  • 雇用保険は、原則として対象から外れる
  • 部長などを兼ねる取締役は、労働者としての性格が強く雇用関係が認められる場合に限り、被保険者として残る

部長などを兼ねたまま取締役になる「使用人兼務取締役」

取締役に就いたあとも、部長や支店長といった社員としての職務を続ける人がいます。こうした取締役は一般に使用人兼務取締役、あるいは兼務役員と呼ばれます。会社法にこの言葉はなく、区分を定めているのは税法です。法人税法第34条第6項は、部長・課長など使用人としての職制上の地位を持ち、常時使用人としての職務に従事する役員を「使用人としての職務を有する役員」としています。

ただし、どの取締役でも兼務の扱いになるわけではありません。社長や代表取締役、副社長・専務・常務などの地位にある役員、監査役などは、法人税法と同法施行令でこの区分から外されています。会社法でも、指名委員会等設置会社の取締役は社員を兼ねることができません。部長の肩書きが付いていれば兼務になる、というほど単純ではないのです。

参考:e-Gov法令検索「法人税法」
参考:e-Gov法令検索「法人税法施行令」

雇用保険は原則として外れ、兼務なら雇用関係しだいで残る

雇用保険は、雇われて働く労働者のための保険です。厚生労働省の雇用保険に関する業務取扱要領は、株式会社の取締役について「原則として、被保険者としない」としています。代表取締役は被保険者になりません。社員だった人が被保険者として扱われない取締役になった場合は、その日に被保険者の資格を失います。

一方、部長や支店長、工場長などの従業員としての身分を持つ取締役は、「報酬支払等の面からみて労働者的性格の強い者であって、雇用関係があると認められるものに限り被保険者となる」とされています。兼務であれば自動的に雇用保険が続くわけではなく、雇用関係の実態があるかどうかで判断されるのです。 同要領は、その確認に使う書類として、就業規則や賃金規定、出勤簿、取締役会の議事録などを挙げています。

失業したときの給付にも違いが出ます。兼務の取締役が離職した場合、失業給付の計算のもとになる賃金に、取締役として受けていた役員報酬は含まれません。給付の計算に入るのは、社員としての立場で受けていた賃金の部分だけです。

取締役就任の話が出たら、社員としての職務と賃金が続くのか、役員報酬だけになるのかを、契約の段階で確かめておきましょう。雇用保険の扱いも、その答えによって変わってきます。

参考:厚生労働省「雇用保険に関する業務取扱要領 雇用保険適用関係」

取締役の年収|500人以上の企業の専任取締役は平均2,086.6万円

取締役の報酬を見るときのポイントは、次の3つです。

  • 報酬は、定款か株主総会の決議で決める
  • 数字で確かめられるのは、従業員500人以上の企業の平均
  • 専任の取締役は、部長を兼ねる取締役より平均が高い

報酬は、定款か株主総会の決議で決める

民法の委任は、特約がなければ報酬を請求できない契約です。取締役の報酬については、会社法第361条第1項が、報酬や賞与など職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益を、定款に定めがなければ株主総会の決議で決めるとしています。決めるのは、額が確定している報酬ならその額、確定していないなら具体的な算定方法、株式や新株予約権で渡すならその数の上限などです。取締役の報酬は、取締役自身ではなく株主の側が枠を決める仕組みになっています。 新株予約権、いわゆるストックオプションを報酬として渡すときも、株主総会でその数の上限などを決めます。

参考:e-Gov法令検索「民法」
参考:e-Gov法令検索「会社法」

従業員500人以上の企業では、専任取締役が平均2,086.6万円

取締役の報酬を役名別に集計した公的統計が、人事院の「民間企業における役員報酬(給与)調査」です。最新の令和5年調査で集計の対象になったのは、令和4年の1年間を通じて在任した常勤の役員。調査の母集団は従業員500人以上の企業の本店事業所4,232社で、うち1,169社が回答しています。小さい会社は対象に入っておらず、年間報酬は賞与を含んだ額です。取締役は、「専任取締役」と、部長などを兼ねる「部長等兼任」の取締役に分けて集計されています。

同調査の第3表によると、令和4年の専任取締役の平均年間報酬は全規模で2,086.6万円、部長等兼任は1,746.2万円でした。企業規模別に見ると、専任取締役は3,000人以上で2,990.8万円、1,000人以上3,000人未満で2,100.3万円、500人以上1,000人未満で1,836.6万円。部長等兼任は同じ順に1,968.6万円、1,743.3万円、1,707.7万円です。両者の差は3,000人以上では1,022.2万円、500人以上1,000人未満では128.9万円と、企業規模が大きいほど開いています。

専任取締役と部長等兼任の取締役の平均年間報酬を企業規模別に比べたグラフ。令和4年分、従業員500人以上の企業、賞与込み。専任取締役は3,000人以上2,990.8万円、1,000人以上3,000人未満2,100.3万円、500人以上1,000人未満1,836.6万円、全規模2,086.6万円。部長等兼任の取締役は同じ順に1,968.6万円、1,743.3万円、1,707.7万円、1,746.2万円。

同じ表で、監査役の平均は1,694.9万円です。また第2表の集計役員数(実人員)を見ると、部長等兼任の取締役は1,073人で、専任取締役の820人を上回っていました。

部長を兼ねる取締役でも平均で1,700万円台という水準が、会社員全体のなかでどのあたりにあたるのかは、年収1,000万円に届く人の割合を年齢・男女別に整理した年収1000万円は30代の何%?年齢・男女別の割合と見比べるとつかみやすくなります。

参考:人事院「民間企業における役員報酬(給与)調査」
参考:人事院「令和5年 民間企業における役員報酬(給与)調査の概要」

中小企業やベンチャーの取締役の報酬は

中小企業やベンチャーで働く取締役に限った報酬水準を示す公的統計は、確認できた資料の中にはありませんでした。 人事院の数字は従業員500人以上の企業の平均で、規模の小さい会社の取締役にそのまま当てはめることはできません。報酬の決め方は会社の規模を問わず同じで、定款か株主総会の決議で定めます。ベンチャーでは、ストックオプションを報酬に組み合わせる会社もあるでしょう。

取締役になるには|社内昇格・創業メンバー・外部からの招聘

取締役になるための資格試験はなく、最終的には株主総会で選ばれるかどうかで決まります。道筋は大きく3つです。

  • 社員として実績を重ね、取締役に選ばれる
  • 創業まもない会社に加わり、経営を担う立場になる
  • 経営人材や社外取締役として、外から迎えられる

社員として実績を重ね、取締役に選ばれる

まず思い浮かぶのは、勤めている会社で実績を重ね、株主総会で取締役に選ばれるルートです。株式会社トライグループで専務取締役を務める髙橋義定さんは、入社後の歩みをこう振り返っています。

“
もともとは起業や外資系コンサルティングでキャリアを積もうと思っていたのですが、トライグループに入社し、社内で色々と挑戦し続けた結果、今は経営を任せてもらえる立場になりました。
株式会社トライグループ 専務取締役
髙橋 義定
インタビューを読む

同社では、新卒採用のうち毎年3〜5名ほどを経営者を目指す人材として採用し、5年で執行役員を目指す目標を置いているといいます。経営を担う人材をどう育てるかを言葉にしている会社かどうかは、社内昇格を目指すなら確かめておきたい点です。

創業まもない会社に加わり、経営を担う立場になる

創業期の会社では、事業をともに立ち上げたメンバーが取締役に就くことがあります。madoguchi株式会社で取締役COOを務める福士雅也さんは、大学2年の後半にインターン先を探すなかで同社に出会いました。当時の会社は社長と社員1人、事務員の3人体制で、まもなく社長と2人だけになったといいます。

“
最終的に大学4年の4月、大手の内定を辞退してこの会社で働くことを決断しました。入社後半年で不用品回収領域を自らみつけて提案する機会もあり、サービス視点で考え、会社と共に成長していく環境が自分に合っていると確信しています。
madoguchi株式会社 取締役COO
福士 雅也
インタビューを読む

会社が小さいうちに加わると、新しい事業の提案から組織づくりまで、経営に近い仕事に早くから関われることがあります。年次や経歴にかかわらず、事業を一緒に形にしてきた人が経営を担う道もあるのです。

経営人材や社外取締役として、外から迎えられる

事業を広げる局面で、経営に関わる人材を外から迎える会社もあります。株式会社CockPitホールディングスの取締役・竹内解さんは、取材時点の採用計画をこう話していました。

“
15億円から25億円への成長には新たな事業の立ち上げが必要で、経営に関わる人材を5名採用する予定です。経営ポジションでの挑戦機会があり、本格的なホールディングス経営陣と仕事ができるのは貴重な経験になると思います。
株式会社CockPitホールディングス 取締役
竹内 解
インタビューを読む

経営に関わるポジションで採用されても、取締役に就くには株主総会での選任が必要です。他社での経営経験や専門性を生かし、社外取締役として別の会社の経営を監督する道もあります。

私たちが取締役の方に話を聞いていると、新しい事業や仕事を自分から提案して形にしてきた経験を語る人が多いと感じます。入口が社内昇格でも創業期の参画でも、そこはよく似ているのです。自分から仕事をつくっていく働き方を考えるなら、成長が早い人の特徴9選|共通点と今日からの行動も参考になるでしょう。

取締役に関するよくある質問

取締役と役員の違いは何ですか?

取締役は、会社法が定める「役員」のひとつです。 会社法上の役員は、取締役・会計参与・監査役の3つ。取締役は役員ですが、役員は取締役に限られません。統計や税法では「役員」の範囲が変わることもあり、国税庁の民間給与実態統計調査は役員を「法人の取締役、監査役、理事、監事等」としています。名前に「役員」と付く執行役員は、会社法上の役員には含まれません。

参考:国税庁「令和7年分 民間給与実態統計調査 −調査結果報告−」

取締役と社長はどちらが上ですか?

会社法上は物差しが違うため、どちらが上と一律には言えません。 会社法には「社長」という役職の定めがなく、社長は会社ごとに付ける呼び名です。社長が代表取締役を兼ねている場合でも、取締役会のある会社では、その代表取締役を選び、解職するのは取締役会です。一方、日々の業務で誰が誰に指示を出すかは会社の規程や組織図で決まり、社長が他の取締役を率いる形をとる会社もあります。

常務取締役や専務取締役は、会社法で決まった役職ですか?

会社法に「専務」「常務」という役職の定めはありません。 専務取締役・常務取締役は、取締役のなかの序列や担当を示すために会社が付ける呼び名です。会社法上はどちらも取締役で、選ばれ方や任期、負う責任は他の取締役と同じ条文に従います。なお税法では、副社長・専務・常務などの地位にある役員は、部長などを兼ねる「使用人としての職務を有する役員」に当たらないとされています。

取締役の任期が切れたらどうなりますか?

株主総会で再び選ばれれば続投し、選ばれなければ退任します。 再任の回数に上限はありません。任期の満了によって、法律や定款で定めた取締役の人数を欠くことになる場合は、新しい取締役が就任するまで、退任した取締役が引き続き取締役としての権利義務を持ちます。取締役会のある会社で取締役が3人を下回るときなどが、これに当たります。

取締役になるデメリットはありますか?

責任が重くなることと、雇用で守られていた部分が外れることが挙げられます。 任務を怠って会社に損害を与えれば賠償する責任を負い、職務について悪意や重大な過失があれば第三者への責任も生じます。雇用保険は原則として対象外になり、株主総会の決議でいつでも解任されうる立場です。その一方で、会社の方向を決める意思決定に加わり、その結果を引き受ける立場に立てます。

まとめ

取締役は、株主総会で選ばれて会社の経営を任される、会社法上の役員です。取締役会のある会社では業務執行の決定と監督を担い、ない会社では自ら業務を執行します。会社との関係は委任。任期は原則2年で、非公開会社なら定款で10年まで延ばせます。任務を怠れば会社に賠償する責任を負い、株主総会の決議でいつでも解任されうる立場でもあるのです。執行役員は会社が任意に置く役職、監査役は取締役を監査する役員、社員は雇われて働く労働者と、似た言葉でも立場はそれぞれ違います。

部長などを兼ねる取締役は、労働者としての性格が強く、雇用関係があると認められる場合に限り、雇用保険の被保険者として残ります。報酬は、従業員500人以上の企業で専任取締役が平均2,086.6万円、部長等兼任の取締役が1,746.2万円(令和4年分)。規模の小さい会社の取締役の報酬は、確認できた公的統計からは分かりません。

私たちが取材で出会う取締役の方々も、肩書きは同じでも、創業期から加わった人、社内で積み上げてきた人、外から迎えられた人とさまざまです。取締役という立場が会社の中で実際にどう動いているのかは、経営者インタビューを読むと、本人の言葉で見えてきます。

社内での選任とは別に、いまの経験で狙えるマネジメント職や役員候補のポジションがあるかどうかは、実際の求人で確かめられます。

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編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

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新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
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