医療事務から転職するには?レセプト経験が活きる転職先と言い換え方

医療事務から転職するなら、レセプトや窓口の経験を「医療の知識」ではなく、「ルールを読んで正確に処理し、相手に説明する力」として言い換えるのが近道です。
意外と知られていないのは、同じ事務の仕事でも、働く産業で給与の水準が違うこと。公的統計では、医療,福祉で働く事務従事者の所定内給与が産業別で最も低くなっています。
この記事では、医療事務の働き方を統計で確かめ、経験の言い換え方と、医療との距離で分けた転職先を整理します。
医療の世界に残るか、外に出るか。この判断を一人で抱え込む必要はありません。レセプトや窓口の経験がどの職種でどう評価されるかは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
医療事務の働き方を統計で確かめる|同じ事務でも産業で給与が違う
辞めたい理由を言葉にする前に、自分の職場の状況が業界全体の傾向なのかを確かめておきましょう。公的統計から言えるのは次の3点です。
- 主な統計では、医療事務は「一般事務」の区分のなかで数えられている
- 医療,福祉で働く事務従事者の所定内給与は、産業計より月6.61万円低い
- 医療,福祉は離職者数が最も多い産業で、パートタイム以外の一般労働者の離職率は産業計を上回る
医療事務は、統計ではどこに数えられているか
賃金構造基本統計調査と一般職業紹介状況の職業別の表では、医療事務員は単独の区分になっていません。 令和7年賃金構造基本統計調査の職種解説では、「医療事務員」「クラーク(医療)」「介護保険事務員」は「その他の一般事務従事者」に含まれる職種の例として挙がっています。もとになる総務省の日本標準職業分類(平成21年12月)でも、医療事務員は中分類「一般事務従事者」のなかの小分類「その他の一般事務従事者」に入ります。広報係や法務係の事務員と同じ区分で集計されているわけです。
一方、ハローワークで使う厚生労働省編職業分類(令和4年改定)には、中分類「医療・介護事務の職業」が設けられています。中身は医療事務員(調剤薬局を除く)、調剤薬局事務員、介護事務員の3つです。
そこでこの記事では、給与の比較に「医療,福祉の産業で働く事務従事者」の数値を使います。病院の総務・経理や介護事務も含む区分なので、医療事務だけの数値ではない点は差し引いて読んでください。
医療,福祉で働く事務従事者の給与は、産業計より月6.61万円低い
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(一般労働者・企業規模10人以上、令和7年6月分の賃金)で、事務従事者の賃金を産業別に見ると、医療,福祉は所定内給与額が26.80万円でした。事務従事者の産業計は33.41万円で、差は月6.61万円です。
| 項目 | 医療,福祉の事務従事者 | 産業計の事務従事者 |
|---|---|---|
| 所定内給与額 | 26.80万円 | 33.41万円 |
| きまって支給する現金給与額 | 28.47万円 | 35.98万円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 68.75万円 | 109.68万円 |
| 平均年齢 | 45.5歳 | 44.3歳 |
| 平均勤続年数 | 11.0年 | 13.3年 |
| 労働者に占める女性の割合 | 73.1% | 57.1% |
医療,福祉の事務従事者の所定内給与額は、産業大分類16のなかで最も低い値でした。 主な産業の事務従事者と並べると、製造業34.42万円、卸売業,小売業34.75万円、金融業,保険業38.81万円、情報通信業39.81万円、サービス業(他に分類されないもの)28.45万円。平均年齢は45.5歳で、産業計の44.3歳と大きくは変わりません。


きまって支給する現金給与額を12倍して年間賞与その他特別給与額を足す方法で年収に換算すると、医療,福祉の事務従事者は約410.4万円、産業計は約541.4万円でした(編集部の計算)。賞与の差だけで40.93万円あります。女性に限っても、所定内給与額は医療,福祉24.64万円に対して産業計28.79万円です。
ただし、この差が「産業を変えれば同じだけ上がる」ことを意味するわけではありません。企業規模や役職、担当業務の構成も産業ごとに違います。言えるのは、同じ「事務」という職種でも、どの産業の会社で働くかによって給与の水準が変わるという事実までです。
医療,福祉は離職者数が最も多い産業
厚生労働省の令和7年雇用動向調査(常用労働者5人以上の事業所)によると、2025年の1年間に医療,福祉を離職した人は120万200人で、16産業のなかで最も多くなりました。離職率は14.3%で、産業計の13.7%を0.6ポイント上回ります。
就業形態で分けると、傾向が分かれます。パートタイム以外の一般労働者では、医療,福祉の離職率は13.6%と、産業計の11.4%を2.2ポイント上回りました。 パートタイム労働者では15.9%で、産業計の19.9%より4.0ポイント低くなっています。


この数値は看護や介護の職種も含めた産業全体のもので、医療事務に限った離職率ではありません。とはいえ、パートタイム以外の同僚の入れ替わりが多いと感じているなら、産業全体の数字もその方向を示しています。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第20表 職種(大分類)、産業、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 役職及び職種解説」
参考:総務省(e-Stat)「日本標準職業分類(平成21年12月)小分類259 その他の一般事務従事者」
参考:厚生労働省「厚生労働省編職業分類の改定について」
参考:厚生労働省「令和7年 雇用動向調査結果の概要」
医療事務の忙しさは、制度の暦で決まる
医療事務の「つらさ」には、職場ごとの事情と、どこの医療機関でも避けられない制度上の事情が混ざっています。切り分けの手がかりは次の3つです。
- レセプトの請求期限は、国の命令で「翌月十日まで」と決まっている
- 診療報酬の改定があると、算定のルールを覚え直すことになる
- 忙しさの原因が制度にあるなら職場を変えても残り、人員配置にあるなら変わりうる
月初が忙しいのは、請求期限が法令で決まっているから
病院や診療所が健康保険などの費用を請求する期限は、国の省令で定められています。 根拠は「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」の第2条第1項で、条文はこうです。
「第一条第一項の請求」とは、保険医療機関や保険薬局が、診療や調剤にかかった費用のうち保険で支払われる分を審査支払機関へ請求することを指します。同じ命令の第1条第1項は、この請求を電子情報処理組織、つまりオンラインで行うことを原則としています。期限は「行わなければならない」と書かれた義務で、医療機関ごとに動かせるものではありません。 前月分のレセプトを月の初めの10日間で点検し、送り出す。月初に仕事が集中するのは、この期限があるからです。


診療報酬の改定のたびに、ルールを覚え直す
もうひとつの暦が、診療報酬の改定です。厚生労働省によると、令和8年度の診療報酬改定は、診療報酬本体と材料が令和8年6月1日施行、薬価が令和8年4月1日施行でした。改定があれば、点数や算定の要件が変わり、窓口の説明やレセプトの点検もそれに合わせて変わります。
裏を返せば、医療事務の人は、国が出した制度変更の資料を読み、自分の職場の運用に落とし込む作業を繰り返してきたことになります。この経験は、後で触れる言い換えの材料になります。
辞めたい理由を、原因の置き場所で分ける
制度の暦は職場を変えても変わりませんが、人の配置や役割の分け方は職場によって違います。辞めたい理由がどちらにあるかで、次の一手は変わってきます。
| 辞めたい理由 | 原因の置き場所 | 動く前に確かめること |
|---|---|---|
| 月初の残業がつらい | 請求期限という制度と、点検の人員配置 | 月初以外の残業時間、点検を何人で分担しているか |
| 窓口でのクレーム対応がつらい | 患者と直接向き合う窓口の性質 | 窓口とレセプトの担当が分かれている職場か |
| 給与が上がらない | 産業の給与水準と、職場の評価制度 | 昇給の基準と、資格手当・役職手当の有無 |
| 改定のたびの勉強が負担 | 制度の改定 | 改定対応を職場で分担する仕組みがあるか |
| 人間関係に疲れた | 職場ごとの事情 | 部署異動の可能性、同じ地域の別の医療機関の評判 |
月初の忙しさや改定対応がつらいなら、医療事務を離れる選択に意味があります。 一方、人員配置や人間関係が原因なら、調剤薬局や介護事業所、規模の違う医療機関に移るだけで変わる可能性もあります。窓口でのクレーム対応がつらい場合に、会社に義務づけられたカスハラ対策と相談の仕方は、接客業のストレスの原因とカスハラ対策で確かめられます。
参考:e-Gov法令検索「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」
参考:厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(令和8年4月)について」
医療事務の経験を、転職先で通じる言葉に言い換える
医療事務の経験は、医療の外では「医療の仕事」とひとくくりに見られがちです。伝わる形にするコツは3つあります。
- 「医療の知識がある」ではなく「規則を読んで金額に落とし込める」と書く
- レセプト点検は「照合して誤りを見つける仕事」として伝える
- 窓口対応は、応対の件数と説明の中身で示す
| 医療事務でやっていたこと | 転職先で通じる言い方 | 書類に添える数字の例 |
|---|---|---|
| 診療報酬の算定 | 点数表の規則を読み、請求金額に落とし込む | 担当した診療科の数、月の請求件数 |
| レセプト点検 | 書類とデータを照合し、誤りや漏れを見つける | 月の点検件数、返戻を減らすために変えた手順 |
| 会計・窓口対応 | 金銭の受け渡しと、制度の説明を正確に行う | 1日の応対人数、締めの差額を出さなかった期間 |
| 電子カルテ・レセコンへの入力 | 業務システムへ速く正確に入力する | 使ったシステムの名前、入力を担当した範囲 |
| 改定への対応 | 制度変更を読み解き、職場の手順に反映する | 改定時に作った手順書や院内向けの資料 |
| 新人への指導 | 手順を標準化して人に教える | 指導した人数、独り立ちまでの期間 |
書類で伝わるのは、医療の用語ではなく、仕事の型です。 「レセプトの返戻対応」は医療機関の外では通じにくい言葉ですが、「請求書類の差し戻しの原因を調べ、次から起きない手順に直した」と書けば、経理事務やカスタマーサポートの採用担当にも意味が届きます。点数表や算定要件のように、細かい規則を正確に読み取ってきた経験は、契約書や社内規程を扱う仕事でも土台になるはずです。
数字が手元にない人は、在職中に控えておきましょう。1か月の点検件数や1日の応対人数は、辞めてからでは確かめられません。職務経歴書への落とし込み方は職務経歴書の書き方|4職種の見本とテンプレート、自己PRのコツと履歴書との違いで詳しく扱っています。
資格は「医療事務の資格」より、行き先に合わせて選ぶ
医療事務の資格として知られる試験は、民間の団体が実施する検定です。たとえば医療事務技能審査試験(メディカル クラーク)は、一般財団法人日本医療教育財団が実施しています。病院やクリニック、調剤薬局の求人では資格名が評価されることがありますが、医療から離れる転職では、資格名そのものより実務の中身のほうが見られやすいでしょう。
医療の外へ出るなら、行き先の仕事に合わせた学びを足すほうが効きます。 経理事務を狙うなら簿記、IT企業のサポート職ならIT全般の基礎知識、というように、求人票が求める作業から逆算して選んでください。事務職で名前を見かける資格の比べ方は、事務の資格おすすめ7つ|求人で評価される資格と見分け方にまとめています。
参考:一般財団法人日本医療教育財団「医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)」
医療事務からの転職先は、医療との距離で3つに分ける
転職先の候補を並べた一覧を眺めても、自分がどこに向いているかは決まりません。医療の制度知識をどこまで持ち出すかで3つに分けると、選びやすくなります。
- 同じ分類のなかで動く:調剤薬局事務、介護事務、審査支払機関のレセプト点検、医師事務作業補助、治験事務
- 医療とITの間に移る:電子カルテやレセプトコンピューターの導入支援・問い合わせ対応、医療機関向けのサービスを作る会社
- 医療から離れる:一般事務、経理事務、保険会社の事務、カスタマーサポート
| 転職先 | 医療との距離 | 活きる経験 | 新しく必要になること |
|---|---|---|---|
| 調剤薬局事務・介護事務 | 近い | 受付、会計、明細書の作成 | 調剤報酬や介護報酬の規則 |
| 審査支払機関などのレセプト点検 | 近い | 点数表の知識とレセプト点検 | 請求する側から審査する側への視点の切り替え |
| 医師事務作業補助 | 近い | 医療用語、診療の流れの理解 | 医療文書の作成補助、診療記録の入力 |
| 治験事務(SMA)・臨床開発モニター(CRA) | 近い | 医療機関の業務の流れ、書類の正確さ | 治験の手続きと関係法令の知識 |
| 電子カルテ・医療系システムのサポート | 中間 | 医療機関の現場の業務、システム操作 | 製品知識、問い合わせ対応の記録と報告 |
| 一般事務・経理事務 | 遠い | 正確な入力、金銭の管理、照合 | 会計の基礎、表計算ソフトの集計 |
| 保険会社の事務 | 遠い | 医療用語、診療明細を読む力 | 保険商品と約款の知識 |
| カスタマーサポート | 遠い | 窓口での説明とクレームの一次対応 | 商品知識、記録をシステムに残す習慣 |
この表は公的統計による分類ではなく、医療事務の経験をどこまで持ち出せるかで編集部が整理したものです。仕事の範囲や求められる知識は、会社や求人ごとに確かめてください。
同じ分類のなかで動く:調剤薬局事務・介護事務・レセプト点検
厚生労働省編職業分類の解説を読むと、医療事務員の範囲は受付と会計だけではありません。 病院・診療所でのレセプト作成や外来の受付、診療費の請求に加えて、次の仕事も医療事務員に含まれると解説されています。
- 診断書などの文書の請求受付・受け渡し
- 審査支払機関などでレセプトを点検する仕事
- 健康診断の予約管理、受診者の受付・案内
- 医療文書の作成補助や診療記録の入力代行など、医師の事務作業を補助する仕事
- 病棟での入院患者の受け入れ準備やカルテの管理、退院時の支援などの事務
- 治験の実施状況のモニタリングや治験書類の作成など、治験に関する事務


例示には、医師事務作業補助者、診療情報管理士、治験事務局担当者(SMA)、臨床開発モニター(CRA)、レセプト点検員まで並びます。同じ中分類「医療・介護事務の職業」には、調剤薬局事務員と介護事務員も入ります。医療事務から「医療事務の仕事のまま」働く場所と役割を変える道は、思っている以上に広いのです。
なかでもレセプトの点検は、請求する側から審査する側に回る動き方です。点数表の知識をそのまま使える一方、見る視点は逆になります。医師事務作業補助や治験の仕事は、医療用語と診療の流れを知っていることが前提になる仕事で、窓口よりも書類と調整の比重が大きくなります。
医療とITの間に移る:電子カルテの導入支援やヘルステック
医療機関のシステム化は、統計の上でも進んでいます。厚生労働省の医療施設調査によると、電子カルテシステムを導入している一般病院の割合は、平成26年の34.2%から、平成29年46.7%、令和2年57.2%と上がり、令和5年には65.6%になりました。一般診療所でも平成26年の35.0%から令和5年の55.0%まで上がっています。


令和5年の一般病院を病床規模別に見ると、400床以上は93.7%、200〜399床は79.2%、200床未満は59.0%。規模の小さい病院や診療所では、まだ導入していない医療機関が残っています。 これから導入する医療機関では、システムの設定や操作の説明、入れ替え時の問い合わせ対応といった仕事が生まれると考えられます。その場面で、受付から会計、レセプトまでの流れを体で知っている人は、医療機関の側の困りごとを言葉にしやすいはずです。
レセプトの請求はオンラインで行うのが原則とされている以上、医療事務の仕事は以前からシステムと切り離せません。毎日使ってきた電子カルテやレセプトコンピューターの名前、担当した操作の範囲は、それだけで応募の材料になります。
参考:厚生労働省「電子カルテシステム等の普及状況の推移」
参考:e-Gov法令検索「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」
医療から離れる:一般事務・経理事務・保険会社・カスタマーサポート
医療から離れて「一般事務」に移る場合、競争の厳しさは大きくは変わらないと考えておきましょう。 厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年9月、常用・パートを含む)で、ハローワークの職業別の有効求人倍率を見ると、職業計1.08倍に対して一般事務従事者は0.30倍。医療事務員はこの統計の区分では一般事務従事者に含まれるため、一般事務への移動は、倍率で見れば同じ区分の中での移動です。パートを除いても、一般事務従事者は0.29倍でした。
同じ事務でも、会計事務従事者は0.55倍、営業・販売事務従事者は0.91倍と、一般事務従事者より求職者1人あたりの求人が多い区分もあります。金銭の受け渡しや締めの照合をしてきた経験は、経理事務で生かしやすいでしょう。いずれもハローワークに出された求人と求職の集計で、民間の求人サイトの状況とは異なります。
保険会社では、保険金や給付金の支払いの事務で診断書や診療明細を読む場面があり、医療用語に慣れていることが助けになることがあります。窓口での説明やクレームの一次対応を続けてきた人は、カスタマーサポートも候補に入るでしょう。業界ごと変える転職の考え方は、異業種転職とは?異職種との違いと難易度、転職後の賃金の変化を統計で確認で整理しています。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)について」
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)参考統計表」
参考:総務省(e-Stat)「日本標準職業分類(平成21年12月)小分類259 その他の一般事務従事者」
医療機関を支える会社は、どんな人を求めているか
医療とITの間にある会社がどんな人を求めているかは、実際に採用している側の言葉から読むのが早道です。医療機関の現場を知っていることが、こうした会社でどう受け止められるのか。私たち編集部も気になって、医療の領域で事業をする会社のインタビューを読み返しました。
医師向けのサービスに加えて、病院やクリニック、薬局向けの業務支援システムを手がけるメドピア株式会社。その執行役員COO・都築巧真氏は、採用で重視することをこう語っています。
医療機関の業務を支えるシステムは、使う側の業務を知らなければ作れません。医療事務の人が毎日こなしてきた受付、会計、請求の流れは、こうした会社から見れば顧客の仕事そのものです。ただし発言にあるとおり「自分の強みを活かして」が前提で、その強みを自分の言葉で説明できることが出発点になります。 医療事務の経験を言い換えた表は、そのための材料です。面接では「医療機関出身の社員はどんな仕事から始めていますか」「医療機関の現場と直接やり取りする場面はありますか」と聞いてみてください。答えが具体的なら、現場の経験を生かす場所が用意されている会社と考えてよいでしょう。
熱狂ベンチャーナビでは、経営者や役員に、事業の中身や採用で見ている点を直接聞いています。
医療事務からの転職に関するよくある質問
医療事務から未経験の職種に転職できますか?
できます。ただし、経験を医療の外でも通じる言葉に直すことが前提です。 厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年9月、常用・パートを含む)では、医療事務員が含まれる一般事務従事者の有効求人倍率は0.30倍で、職業計1.08倍を下回ります。一般事務に移るだけでは競争の厳しさは大きく変わらないため、会計事務(0.55倍)のように経験が生かせて求人が比較的多い区分を探す、医療系システムのサポートのように医療の知識が強みになる仕事を選ぶ、といった工夫が効いてきます。
医療事務の資格は転職で評価されますか?
医療機関や調剤薬局の求人では評価されることがありますが、医療の外では資格名より実務の中身が見られやすくなります。 医療事務の資格として知られる試験は民間の団体が実施する検定で、たとえば医療事務技能審査試験は一般財団法人日本医療教育財団が実施しています。医療から離れるなら、経理事務なら簿記のように、行き先の求人が求める作業に合わせた学びを足すほうが現実的です。
医療事務から転職すると給料は上がりますか?
上がるとは限りませんが、同じ事務でも産業によって給与の水準は違います。 厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査(一般労働者・企業規模10人以上)では、医療,福祉で働く事務従事者の所定内給与額は26.80万円で、事務従事者の産業計33.41万円より6.61万円低く、産業大分類16のなかで最も低い値でした。ただしこの区分には医療事務以外の事務も含まれ、企業規模や役職の構成も産業ごとに違います。産業を変えれば同じだけ上がるという意味ではない点に注意してください。
医療事務の経験が一番活きる転職先はどこですか?
医療の制度知識をそのまま使えるのは、同じ職業分類のなかで働く場所や役割を変える転職です。 厚生労働省編職業分類(令和4年改定)では、医療事務員の範囲に、審査支払機関などでのレセプト点検、医師の事務作業の補助、治験に関する事務も含まれています。同じ中分類には調剤薬局事務員と介護事務員も入ります。医療から少し離れるなら、電子カルテなど医療機関向けシステムの導入支援や問い合わせ対応も候補です。
月初が忙しいのは、どこの医療機関でも同じですか?
保険診療を行う医療機関なら請求の期限は共通なので、月初に点検が集まる構造は変わりません。 「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」の第2条第1項は、保険医療機関などの費用の請求を「各月分について翌月十日までに行わなければならない」と定めています。違いが出るのは、その作業を何人で分担しているかです。月初以外の残業時間や点検の担当人数を、面接で確かめてください。
参考:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年9月分)参考統計表」
参考:総務省(e-Stat)「日本標準職業分類(平成21年12月)小分類259 その他の一般事務従事者」
参考:一般財団法人日本医療教育財団「医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)」
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第20表 職種(大分類)、産業、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
参考:厚生労働省「厚生労働省編職業分類の改定について」
参考:e-Gov法令検索「療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令」
まとめ
医療事務から転職するときに効くのは、レセプトや窓口の経験を「医療の知識」としてではなく、規則を読んで金額に落とし込む力、照合して誤りを見つける力、相手に制度を説明する力として言い直すことです。
統計で見ると、令和7年賃金構造基本統計調査(一般労働者・企業規模10人以上)の事務従事者のうち、医療,福祉で働く人の所定内給与額は26.80万円で、産業計より月6.61万円低く、産業大分類16のなかで最も低い値でした。令和7年雇用動向調査では、医療,福祉は離職者数が最も多い産業で、パートタイム以外の一般労働者の離職率は産業計を2.2ポイント上回ります。月初の忙しさは、請求期限を「翌月十日まで」と定めた命令に由来するもので、保険診療を行う医療機関であれば職場を変えても残る部分です。
転職先は、同じ職業分類のなかで役割を変える道、電子カルテなど医療とITの間に移る道、医療から離れる道の3つに分けると考えやすくなります。正直なところ、医療事務の経験がこれほど幅広い仕事につながっていることは、職業分類の解説を読み込むまで私たちも知りませんでした。辞めたい理由がどこにあるのかを見極めたうえで、どの距離まで動くかを決めてみてください。
経験の言い換えができたら、次はその言葉で実際の求人を見比べて、どこで評価されるかを確かめる段階です。

