営業に疲れたら原因を4つに分ける|辞めたいときの確かめ方と転職の判断

営業に疲れたときは、辞めるかどうかを決める前に、疲れの原因が数字・顧客・移動と時間・社内調整のどれにあるかを分けてみてください。
国の調査を見ると、営業を含む販売の仕事で強いストレスを抱える人は、仕事の量よりも顧客や取引先からのクレームを多く挙げています。原因によっては、営業を辞めなくても変えられることがあるのです。
この記事では、原因ごとに確かめること、休み方と相談先、営業のまま環境を変えるか離れるかの判断を整理します。
営業に疲れたという悩みに、一人で結論を出す必要はありません。営業のまま会社を変えるのか、別の仕事に移るのか、いまの自分にどんな選択肢があるかは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
営業に疲れる原因は、数字・顧客・移動と時間・社内調整の4つに分かれる
「営業に疲れた」の中身は、人によって違います。国の調査から押さえておきたいのは次の3点です。
- 販売従事者(商品販売・営業)で強いストレスを感じる事柄がある人は68.4%
- その内容で最も多いのは「顧客、取引先等からのクレーム」52.7%で、労働者計の22.1%の2倍を超える
- 「仕事の量」を挙げた人は34.0%で、労働者計の39.5%より少ない
厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」は、常用労働者10人以上を雇う民営事業所と、そこで働く人に、令和7年10月31日現在の状況をたずねた調査です。職種別の集計に営業だけの区分はなく、「販売従事者(商品販売従事者、営業従事者)」として店頭の販売の仕事とまとめて集計されています。営業だけの数字ではない点は、差し引いて読む必要があります。
この販売従事者のうち、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある人は68.4%で、労働者計の67.5%とほぼ同じ水準でした。違いが出るのは中身です。その人たちが主なもの3つ以内で選んだ内容を見ると、「顧客、取引先等からのクレーム」が52.7%で最も多く、労働者計の22.1%を30.6ポイント上回ります。続いて「仕事の失敗、責任の発生等」39.8%、「仕事の質」34.6%、「仕事の量」34.0%、「会社の将来性」33.2%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」30.8%。残りは「役割・地位の変化等」15.7%、「その他の事柄」5.8%、「雇用の安定性」3.1%、「事故や災害の体験」1.4%です。労働者計の同じ項目は、仕事の失敗、責任の発生等39.5%、仕事の質30.7%、対人関係32.9%、役割・地位の変化等17.7%、その他の事柄11.1%、雇用の安定性7.6%、事故や災害の体験2.9%でした。会社の将来性は労働者計の20.5%より12.7ポイント高く、仕事の量は労働者計の39.5%より5.5ポイント低くなっています。3つまで選べる質問なので、割合を足すと100%を超えます。


この調査の販売従事者では、仕事の量よりも、顧客や取引先とのやり取りをストレスに挙げる人のほうが多いのです。 同じ「疲れた」でも、原因が違えば打てる手も変わります。営業の仕事に当てはめると、疲れの出どころは次の4つに分けられるでしょう。
| 疲れの原因 | 疲れが出やすい場面 | まず確かめること |
|---|---|---|
| 数字のプレッシャー | 月末や期末の追い込み、未達の報告、達成後に上乗せされる目標 | 目標が何を根拠に決まり、未達のときに何が起きるか |
| 顧客・取引先 | 無理な値引きや納期の要求、長時間の拘束、威圧的な言動 | 会社にカスハラの相談窓口と対処のルールがあるか |
| 移動と時間 | 訪問の合間の移動、帰社後の事務作業、夜や休日の連絡 | 自分の労働時間がどう把握されているか |
| 社内調整 | 納期や仕様をめぐる顧客と社内の板挟み、承認待ち | 調整の役割が自分一人に集まっていないか |
疲れの原因は1つとは限りません。いちばん重いものから順に確かめていくと、辞めずに変えられる部分と、環境を変えないと変わらない部分が見えてきます。
参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 調査の概要」
参考:e-Stat「労働安全衛生調査(実態調査) 1 事業所規模・産業・性、年齢階級・就業形態・経験年数・職種・勤務形態・深夜業務の有無、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスの有無及び内容(主なもの3つ以内)別労働者割合」
原因ごとに、いまの職場で確かめること
辞めるかどうかを考える前に、いまの職場で確かめられることがあります。原因ごとの要点は次の4つです。
- 数字のプレッシャーは、目標の水準より、達成のための支えと未達への対応を見る
- 取引先での行き過ぎた言動も、2026年10月からカスハラ対策の対象に入っている
- 外回りでも、会社は労働時間を把握しなければならない
- 社内調整の疲れは、決める権限が誰にあるかを確かめる
数字のプレッシャー:目標の高さより、支えと未達への対応を見る
目標があること自体は、営業の仕事の前提です。疲れが限度を超えやすいのは、目標の水準や、達成できなかったときの扱いが行き過ぎている場合でしょう。
厚生労働省のパワーハラスメント防止の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、代表的な言動の類型の1つに「過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)」を挙げています。該当すると考えられる例として示されているのが、「新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること」です。
一方で、該当しないと考えられる例として、「労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること」と、繁忙期に業務上の必要性から担当者に通常より一定程度多い業務を任せることも挙がっています。指針は、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導はパワーハラスメントに当たらないという立場です。高い目標がそのままパワハラになるわけではなく、分かれ目は、達成に必要な教育や支えがあるかと、未達への対応が業務上必要な範囲を超えていないかにあります。


自分の状況を確かめるなら、目標が何を根拠に決まったのか、達成のための研修や同行などの支えがあったか、未達のときに何を言われたかを、日付とあわせて書き出してみてください。叱責が人格を否定する言い方や長時間に及ぶものなら、社内のハラスメントの相談窓口に持ち込む材料になります。
参考:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」
顧客・取引先:取引先での行き過ぎた言動も、2026年10月から対策の対象に
2026年10月1日に施行された労働施策総合推進法の改正(令和7年法律第63号)で、カスタマーハラスメントへの対策が会社の義務になりました。会社が整える相談窓口や対処のルールの中身はコールセンターを辞めたい人へで詳しく扱っているので、ここでは営業の仕事に関わる点に絞ります。
国の指針(令和8年厚生労働省告示第51号)は、対策の対象となる「顧客等」の例に、取引先の担当者や、企業間で契約の締結に向けた交渉をする際の担当者を挙げています。今後取引する可能性のある相手も含まれるため、新規開拓の商談相手も対象です。「職場」も普段の勤務先に限られず、取引先の事務所、取引先と打合せをするための飲食店、顧客の自宅であっても、業務を遂行する場所であれば含まれます。外回りの営業が訪問先や商談の席で受けた行き過ぎた言動も、会社が対策を講じる範囲に入っているのです。


もっとも、値引きや納期の交渉そのものが問題になるわけではありません。指針によると、客観的にみて社会通念上許容される範囲で行われた申し入れは、いわば正当なもので、カスタマーハラスメントには当たりません。問題になるのは、要求の内容や、伝え方・手段がその範囲を超えている場合です。
相手が取引先の会社の社員なら、法律は会社どうしの協力にも触れています。
「第一項の措置」は、各社がカスタマーハラスメントに備えて講じる相談体制などの措置のこと。指針によると、行為者が取引先など他社の社員である場合、必要に応じて相手の会社に事実関係の確認や再発の防止への協力を求めることも、自分の会社が講じる措置に含まれます。協力を求められた相手の会社が応じることは「努めなければならない」という努力義務で、自分の会社が相談窓口などの措置を講じることは義務という違いがあります。 協力を求められたことを理由に、求めてきた会社との契約を解除するなどの不利益な扱いをすることは望ましくない、というのが指針の考え方です。
大事な取引先だからと一人で抱え込む前に、日時、相手、言われたことや求められたことを記録し、上司や社内の相談窓口に伝えてください。担当を一人に任せたままにするか、上司が同席するかを決めるのも、会社の対応の一部です。
参考:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
参考:厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
移動と長時間労働:外回りでも、労働時間の把握は欠かせない
訪問先から訪問先への移動、帰社してからの見積もりや日報、夜や休日に届く連絡。営業の疲れは、時間の長さだけでなく、時間の使われ方からも生まれます。厚生労働省のガイドラインは、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間とし、使用者の明示または黙示の指示で業務に従事する時間は労働時間に当たると説明しています。
外回りの多い営業で使われることがあるのが、労働基準法の事業場外みなし労働時間制です。
「所定労働時間」は就業規則などで決められた働く時間のことです。この制度を使えるのは「労働時間を算定し難いとき」に限られ、外回りの仕事なら何でも対象になるわけではありません。 厚生労働省のQ&Aは、何人かのグループで外勤し、その中に労働時間を管理する人がいる場合、無線などで随時指示を受けながら働く場合、事業場で訪問先や帰社時刻など当日の具体的な指示を受け、その指示どおりに働いて事業場に戻る場合は適用されないと示しています。営業社員に携帯電話を持たせ、随時連絡や指示ができる体制にしているときも、労働時間の算定が困難ではないので適用できないと考えられる、という説明です。


外勤のあとに帰社して会議や事務をした場合も、社内で働いた時間はみなし時間とは別に把握し、両方を合わせた時間がその日の労働時間になります。合計が法定の時間を超えれば、残業代の支払いが必要です。
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(常用労働者30人以上の民営法人が対象)では、事業場外みなし労働時間制の適用を受ける労働者は10.5%でした。適用されているかどうかは、就業規則や労働条件通知書で確かめられます。
面接指導のための把握もあります。労働安全衛生法第66条の8の3は、医師による面接指導を行うため、高度プロフェッショナル制度で働く人を除く労働者について、労働時間の状況を把握するよう会社に義務づけています。方法はタイムカードやパソコンの使用時間の記録などの客観的な方法その他の適切な方法とされ、記録は3年間保存しなければなりません。
極端な長時間労働については、令和7年労働安全衛生調査で、過去1年間に1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった人は、販売従事者で0.3%、労働者計で1.4%でした(いずれも派遣労働者を除く)。月80時間を超えるような長さでなくても、移動や細切れの作業、時間外の連絡が重なれば疲れはたまります。 始業と終業、移動、帰社後の作業、夜や休日に対応した連絡を、自分の手元にも残しておくと、上司に相談するときの材料になります。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
参考:厚生労働省 スタートアップ労働条件「営業職については事業場外みなし労働時間制を採用しています。営業の方法もだいぶ変わってきているのですが、どんな点に気をつければよいでしょうか?」
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「外勤業務後の内勤業務も事業場外みなし労働が適用されますか?」
参考:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概要 労働時間制度」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
参考:e-Stat「労働安全衛生調査(実態調査) 4 事業所規模・産業・性、年齢階級・就業形態・経験年数・職種・勤務形態・深夜業務の有無、過去1年間における1か月間の時間外・休日労働が80時間を超えた月の有無及び医師による面接指導の有無別労働者割合」
社内調整:板挟みの役割が自分に集まっていないか
営業は、顧客の要望と社内の事情のあいだに立つ仕事でもあります。納期を早められないか製造や開発に頼み、値引きの承認を上司に取り、請求の不備を経理と詰める。どれも必要な仕事ですが、決める権限がないまま調整だけを任されると、顧客からも社内からも責められる板挟みになりがちです。
確かめたいのは、値引きや納期の変更を誰が決めるのか、その判断を待つあいだ顧客にどう説明するかのルールがあるか、営業事務や上司との分担が決まっているか、の3点。権限のない調整を一人で抱えているなら、それは本人の努力不足ではなく、仕事の割り振りの問題として上司に相談してよい事柄です。 私たちは、板挟みの疲れは外から見えにくいぶん、本人も言葉にしにくいものだと感じています。何を誰に頼み、どこで止まったかを書き出すだけでも、相談の入口になるでしょう。
疲れが体に出ているなら、辞める前に休む・相談する
眠れない、休日も数字や商談のことが頭から離れない、朝になると体調が崩れる。こうした状態なら、辞めるかどうかより先に、受診することと休むことを優先してください。押さえておきたいのは次の3点です。
- 休み方や限界のサインは、公的な制度とセルフチェックで確かめられる
- 長時間労働で疲れがたまったら、医師の面接指導を申し出られる
- 社内で言いにくいことは、社外の窓口に相談できる
年次有給休暇、休職、傷病手当金といった休むための仕組みと、こころの耳の「働く人の過労徴候度セルフチェック」で見る限界のサインは、仕事を辞めたいほど疲れたらにまとめています。
長時間労働が続いているなら、医師の面接指導も使えます。労働安全衛生規則第52条の2は、休憩時間を除いて1週間に40時間を超えて働いた時間が1か月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる人を対象としています。第52条の3によると、面接指導は本人の申出で行われ、申出があれば会社は遅滞なく実施しなければなりません。産業医が申出を勧めることもできます。面接指導の結果について会社が医師の意見を聴くこと、必要があると認めるときは作業の転換や労働時間の短縮などの措置を講じることも、労働安全衛生法第66条の8に定められています。外回りが多くても、会社には面接指導のために労働時間の状況を把握する義務があるので、遠慮せずに申し出てかまいません。
| 困りごと | 相談先 | 持っていくと話が早いもの |
|---|---|---|
| 寝つけない、朝起きられないなど体や気持ちの不調 | 医療機関、こころの耳の相談窓口 | いつから、どんな場面で不調が出るかのメモ |
| 長時間労働や移動の多さによる疲れ | 産業医などの社内の産業保健スタッフ | 始業・終業時刻、移動、帰社後の作業の記録 |
| ノルマをめぐる叱責や、取引先からの言動 | 社内のハラスメント相談窓口、総合労働相談コーナー | 日時、相手、言われたことや求められたことの記録 |
こころの耳の相談窓口は、全国の働く人やその家族などが匿名・無料で使える窓口。電話相談は平日17時から22時、土日10時から16時(祝日・振替休日・年末年始を除く)で、メール相談は24時間受け付けています。職場の問題は、全国378か所にある総合労働相談コーナーで、予約不要・無料で面談か電話で相談できます。いじめ・嫌がらせやパワハラも、扱う相談の対象です。
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
参考:厚生労働省「こころの耳の相談窓口」
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
営業を続けるか離れるかは、原因と変えられる範囲で決める
原因を分けたら、次はそれが営業のままで変えられるものかどうかです。判断の目安は次の3つ。
- 原因が会社の目標の決め方や仕事の割り振りにあるなら、営業のまま会社を変える
- 原因が商材や顧客層、訪問中心の働き方にあるなら、商材や営業のスタイルを変える
- 社外の相手に数字を背負って向き合うこと自体がつらいなら、営業から離れる
| 疲れの原因 | 営業のままで変えられること | 営業から離れることも考えたいサイン |
|---|---|---|
| 数字のプレッシャー | 目標の決め方や評価の仕組みが違う会社に移る | 目標を持つこと自体で体調を崩してしまう |
| 顧客・取引先 | 個人向けから法人向け、新規開拓から既存顧客中心へと相手を変える | 社外の相手と交渉すること自体が苦痛 |
| 移動と時間 | 内勤で商談するインサイドセールスや、担当エリアの狭い営業に移る | 働き方を変えても、時間の負担が軽くならない |
| 社内調整 | 営業事務や企画との分担が決まっている会社に移る | 調整役そのものを降りたい |
同じ「営業」でも、新規開拓とルート営業、法人向けと個人向けでは、疲れ方がまるで違います。型ごとの違いは営業に向いている人の特徴で整理しているので、いまの疲れがどの型に由来しているかを見比べてみてください。営業を離れる場合の転職先と、営業経験の伝え方は営業から転職するにはで扱っています。
判断の順番も大切です。体に出ているなら、まず休む。次に原因を分け、いまの会社で変えられるかを上司や相談窓口に確かめる。変わらないなら営業のまま会社や商材、スタイルを変え、営業という仕事そのものが原因だと分かったときに、営業から離れる道を選ぶ。疲れ切った状態で一度に全部を決めようとせず、変えられる範囲の小さいほうから順に試すと、後悔の少ない選び方になります。


求人を比べるときは、マイナビ転職やリクナビNEXTなどの求人サイトや転職エージェントで、目標の決め方、担当エリア、訪問中心か内勤かを確かめてください。求人票に書かれていなければ、面接で「目標はどのように決まり、達成した人はその後どう扱われますか」と聞くのが確実です。
私たちは、営業の疲れを「営業に向いていない」の一言でまとめてしまうのは、もったいないと考えています。原因が会社のやり方にあるなら、営業で積んだ経験はそのまま次の職場に持っていけるからです。
経営者は、ノルマと疲れをどう見ているか
採用する側の経営者は、営業の数字と疲れをどう見ているのでしょうか。営業の現場を経験した経営者の言葉を2つ紹介します。
- 目標を達成した人ほど、期末に他の人の分まで背負わされやすい
- 与えられたノルマをこなす働き方から、主体的に動く働き方に変えた
株式会社Nexorの髙橋優斗社長は、前職で営業を続けて体力が持たずに倒れた経験から、社員が休める制度を設けたと語っています。そのうちの1つについて、こう説明しています。
同社では、目標を達成した人は給料が出る休みを取れるようにしたそうです。数字がつらい原因は、目標の高さだけでなく、達成したあとにどう扱われるかにもある。 面接で「目標を達成した人は、その後どう扱われますか」と聞くと、その会社の数字の考え方が見えてきます。
合同会社S.FARMSの蛯名洸CEOは、大学を卒業後、ハウスメーカーの営業職として3年ほど働いたのち、会社を辞めて留学し、のちに農業の会社を立ち上げています。一緒に働きたい人物像を語る中で、営業時代の自分をこう振り返りました。
同じ数字を追う仕事でも、与えられた目標をこなすだけなのか、自分で考えて動ける余地があるのかで、受け止め方は変わりうるものです。いまの疲れが仕事の中身から来ているのか、動き方を選べないことから来ているのかを考える手がかりになるでしょう。
経営者インタビューでは、社長たちが社員の働き方や評価のしかたを自分の言葉で語っています。
営業に疲れたときによくある質問
営業に疲れて辞めたいと思うのは甘えですか?
疲れを感じること自体は珍しくありません。 厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、常用労働者10人以上の民営事業所で働く販売従事者(商品販売従事者、営業従事者)のうち、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスと感じる事柄がある人は68.4%でした。その人たちが挙げた内容(主なもの3つ以内)は、「顧客、取引先等からのクレーム」52.7%が最も多くなっています。甘えかどうかを考えるより、疲れの原因が数字・顧客・移動と時間・社内調整のどれにあるかを分け、営業のままで変えられるかを確かめるほうが先に進めます。
取引先からの無理な要求も、カスタマーハラスメントになりますか?
内容や伝え方が社会通念上許容される範囲を超えていれば、なりえます。 2026年10月1日に施行された改正労働施策総合推進法にもとづく国の指針は、「顧客等」の例に取引先の担当者や、企業間で契約の締結に向けた交渉をする際の担当者を挙げ、取引先の事務所や打合せのための飲食店も業務を遂行する場所なら「職場」に含まれるという立場です。一方で、苦情や要望のすべてが該当するわけではなく、許容される範囲の申し入れは正当なものとされています。判断に迷う段階でも、記録を持って社内の相談窓口に相談してください。
参考:厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
外回りの営業でも、残業代は出ますか?
外回りだからといって、残業代が出ないと決まるわけではありません。 労働基準法第38条の2の事業場外みなし労働時間制は、事業場外で働き「労働時間を算定し難いとき」に限って、一定の時間働いたものとみなす制度です。厚生労働省のQ&Aは、携帯電話などで随時指示を受けながら働く場合や、当日の訪問先や帰社時刻の具体的な指示を受けて動く場合は適用されないとしています。適用される場合でも、帰社後に社内で働いた時間は別に把握してみなし時間と合算し、法定の時間を超えれば残業代の支払いが必要です。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「外勤業務後の内勤業務も事業場外みなし労働が適用されますか?」
ノルマを達成できないと強く叱られるのは、パワハラですか?
目標を課すことや指導すること自体は、パワハラには当たりません。 厚生労働省のパワーハラスメント防止の指針(令和2年厚生労働省告示第5号)は、客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導は該当しないとしています。一方で、「新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること」を、過大な要求に該当すると考えられる例に挙げています。個別の判断は状況によるため、言われた内容と日時を記録し、社内の相談窓口や総合労働相談コーナーに相談してください。
参考:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)」
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
まとめ
営業に疲れたときは、辞めるかどうかを決める前に、原因が数字・顧客・移動と時間・社内調整のどれにあるかを分けてください。令和7年労働安全衛生調査では、販売従事者(商品販売・営業)で強いストレスを感じる事柄がある人の52.7%が「顧客、取引先等からのクレーム」を挙げ、労働者計の22.1%を大きく上回りました。
原因ごとに、いまの職場で確かめられることがあります。数字は目標の高さより、達成のための支えと未達への対応。取引先での行き過ぎた言動は、2026年10月1日からカスハラ対策の対象です。外回りでも事業場外みなしが使えるのは労働時間を算定し難いときに限られ、会社には労働時間の状況を把握する義務があります。体に出ているなら、辞める前に休み、医師の面接指導や社外の相談窓口も使ってください。
そのうえで、原因が会社のやり方にあるなら営業のまま会社を、商材や働き方にあるなら商材やスタイルを変え、営業という仕事そのものが原因なら営業から離れる。私たち編集部は、この順番で考えた結論なら、続けるにしても移るにしても納得しやすいと考えています。
どの選択肢が自分に合うかは、実際の求人を並べてみると具体的に見えてきます。

