保育士に向いてないと感じたら|きつい場面の正体と、適性か職場かの見分け方

保育士に向いてないと感じても、その原因が保育の仕事そのものにあるとは限りません。きつさの中には、園の体制や働く条件から来ているものが少なくないからです。
東京都の調査では、保育士として働く人の約7割が、仕事全体のやりがいには満足していました。満足が低かったのは、給与などの条件のほうです。
この記事では、向いてないと感じやすい場面ごとに、適性の問題か職場の問題かを見分ける方法と、保育士資格を活かせる別の働き方を整理します。
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保育士に向いてないと感じやすい6つの場面
保育士の「向いてない」は、たいてい具体的な場面と結びついています。よく挙がるのは次の6つです。
- 子どもの命を預かる責任が重い
- 保護者対応がつらい
- 書類や行事の準備が終わらない
- 体力が続かない
- 職員同士の人間関係に疲れる
- 子どもと過ごす時間そのものがしんどい
ここで見ておきたいのは、それぞれの場面に「保育士である限りどの園でも残る部分」と「園の運営しだいで変わる部分」が混ざっていることです。 法令や国の指針が保育士の仕事として定めているものと、園ごとに決め方が違うものを、場面ごとに分けていきます。
子どもの命を預かる責任が重い
午睡中の呼吸の確認、食事中の誤えん、散歩先での見守り。子どもの安全を守ることは、どの園で働いても保育士の仕事の中心にあります。責任の重さを感じるのは、仕事を真剣に受け止めている証拠でもあるでしょう。
ただし、安全の確保は保育士一人ひとりの注意力だけに任されているものではありません。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準は、保育所などの施設に、設備の安全点検や職員の研修・訓練を含む「安全計画」を策定し、それに従って必要な措置を講じることを求めています。職員に対しては、次のように定めています。
「前項の研修及び訓練」とは、安全計画に盛り込む職員の研修や訓練のことです。これは施設に課された義務で、安全を守る仕組みづくりは園の側の仕事だということになります。 安全計画を知らされていない、訓練の機会がない、ヒヤリとした場面を共有する場がない。そうした状態で一人で緊張を抱えているなら、それは個人の適性より職場の体制の問題に近いと言えます。
責任の重さが働き方の選択に影響していることは、調査にも表れています。東京都が令和4年度に行った東京都保育士実態調査(平成29年4月から令和4年3月までに東京都で保育士登録をした人などが対象)では、保育士として働いている11,277人のうち、副主任保育士やクラスリーダーなどの役職、またはいまより上の役職に今後就きたいと答えた人は23.6%、就きたくないと答えた人は67.1%でした。
就きたくないと答えた7,564人に理由を聞くと(複数回答)、「責任の重い仕事をしたくない」42.7%が最も多く、「役職に見合った昇給が見込めない」38.2%、「今の仕事やポジションに満足している」37.0%、「後輩の育成よりも子どもに向き合う仕事に取り組みたい」28.7%、「その他」17.1%と続きます。複数回答のため、合計は100%になりません。「責任の重い仕事をしたくない」は、男女とも20代で5割台半ばに上っていました。


責任を重く感じることと、保育の仕事に向いていないことは、同じではありません。 子どもに向き合う仕事を続けたいから役職は望まない、という選び方をしている人も一定数いるのです。
参考:e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
保護者対応がつらい
送迎時のやり取り、連絡帳、要望や苦情への対応。保護者との関わりがつらくて向いてないと感じる人は少なくありません。ここで知っておきたいのは、保護者への関わりが、法律上の保育士の定義そのものに含まれていることです。
「児童の保護者に対する保育に関する指導」とは、子育てについての相談に乗ったり、子どもの育ちを保護者と共有したりすることを指します。保育士である限り、保護者と関わらない働き方はほぼありません。 保護者とのやり取りそのものが強い苦痛なら、それは適性を考える材料になります。
一方で、保護者への対応を一人の保育士に背負わせる前提にはなっていません。保育所保育指針は、保護者に対する子育て支援について、地域の関係機関等との連携や協働を図り「保育所全体の体制構築に努めること」を求めています。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準の第36条も、保護者と密接な連絡をとり理解と協力を得るよう努める役目を、「保育所の長」に置いています(努力義務)。難しい要望を担任がその場で一人で受け止め続けている、園長や主任に相談しても引き取ってもらえない、といった状態は、園の体制の問題として見るべきでしょう。
同じ東京都の調査では、保育士として働いている人のうち、職場での「保護者や地域との関係性」に満足している人(大変満足・満足・やや満足の合計)は63.6%、不満の人(やや不満・不満・非常に不満の合計)は7.6%でした。保護者との関係に満足している人のほうがずっと多いのです。
参考:e-Gov法令検索「児童福祉法」
参考:e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」
参考:こども家庭庁「保育所保育指針(平成30年度~)」
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
書類や行事の準備が終わらない
保育士の「きつい」でよく挙がるのが、子どもが帰ったあとに残る書類や行事の準備です。計画を書く仕事そのものは、保育の一部として位置づけられたものです。保育所保育指針は、保育所が長期的な指導計画と短期的な指導計画を作成しなければならないとし、3歳未満児については一人ひとりの個別的な計画を作ることとしています。
ただ、計画をどんな様式で、どこまで細かく書くか、行事をどの規模で行うかは、一般に園ごとに大きく違うでしょう。事務の負担が現場の不満の上位にあることは、東京都の調査からも読み取れます。保育士として働いている11,277人に、いまの職場で改善してほしいことを聞くと(複数回答)、「給与・賞与等の改善」62.7%、「職員数の増員」48.6%に次いで、「事務・雑務の軽減」が40.1%でした。正規職員に限ると「事務・雑務の軽減」は5割台半ばです。今後は保育士を辞めて別の職種で働きたいと答えた2,186人では53.6%で、保育士として働き続けたいと答えた8,877人の36.7%より16.9ポイント高くなっています。
書く量を減らす手段として広がっているのが、登降園の管理などを行う保育業務支援システムです。同じ調査で、職場にこうしたシステムが導入されていると答えた人は68.2%。導入されている人(7,694人)のうち、業務負担の軽減につながっていると感じる人は70.7%(「そう思う」29.5%と「ややそう思う」41.2%の合計)でした。


書類に追われて保育に集中できない、という悩みは、仕事の向き不向きより、園の仕組みで差がつきやすい部分です。 見学や面接では、計画や日誌をどんな形で書いているか、勤務時間内に書く時間があるか、システムを使っているかを聞いておくと、入ったあとの負担を見通せます。
参考:こども家庭庁「保育所保育指針(平成30年度~)」
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
体力が続かない
乳児クラスでは抱っこやおんぶ、低い姿勢での着替えやおむつ替えが続き、幼児クラスでは外遊びで走り回る時間が長くなりがちです。保育が体を使う仕事であることは、どの園でも変わりません。
それでも、負担の大きさは職場によって変わります。担当する年齢、1クラスを何人の保育士で見ているか、早番・遅番の組み方、1日の勤務時間。どれも園や雇用形態によって違う部分です。保育所に置く保育士の数の基準と、正規職員以外の働き方の比べ方は、保育士を辞めたい理由と、辞める前の選択肢で詳しく扱っています。
休んでも疲れが抜けない、眠れないといった状態が続いているなら、向き不向きを考えるのはいったん後回しにしてください。限界のサインと休み方は仕事を辞めたいほど疲れたときの休み方と相談先にまとめています。
職員同士の人間関係に疲れる
保育はクラスの担任同士、早番と遅番、看護師や調理員など、多くの人と連携して進める仕事です。保育所保育指針も、保育の質を上げるために保育士等の役割分担の見直しなどに組織として取り組むことを求めています。人と協力すること自体は、保育士の仕事から切り離せません。
ただ、どんな人間関係になるかは職場によって大きく違います。東京都の調査では、保育士として働いている11,277人のうち、職場の人間関係に満足している人(大変満足・満足・やや満足の合計)は69.9%でした。同じ人たちが職場を選ぶときに重視した項目(複数回答)は「勤務地」72.3%に次いで「職場の人間関係」が51.9%。いまの職場で働き続けるために充実してほしい項目(複数回答)でも、「給与」79.4%に次いで「職場の人間関係」が58.0%でした。
多くの人が満足している一方で、職場選びでも働き続ける条件としても重く見られているのが、人間関係なのです。 特定の人との関係がつらいなら、それは保育士という仕事よりも、いまの職場の組み合わせの問題である可能性が高いでしょう。
参考:こども家庭庁「保育所保育指針(平成30年度~)」
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
子どもと過ごす時間そのものがしんどい
ここまでの5つと違い、園を変えても残りやすいのがこの場面です。子どもと遊ぶ時間、泣いている子をなだめる時間、集団をまとめる時間そのものが苦痛で、休日をはさんでも気持ちが戻らない。担当する年齢やクラスが変わっても同じ感覚が続く。そうであれば、保育の仕事と自分の相性を考える段階かもしれません。
正直なところ、私たち編集部は、ここに当てはまる人はそれほど多くないのではないかと感じています。「子どもは好きなのに、毎日がきつい」と話す人の多くは、ここまでの5つの場面のどれかで、園の体制や条件の重さを背負っているように見えるからです。子どもと過ごす時間に手ごたえがあるなら、向いていないと決める前に、職場を変える選択肢を残しておく価値があります。
適性の問題か、職場の問題か|東京都の調査で見る「やりがい」と「条件」
6つの場面を並べると、保育士の仕事の核として残る部分と、園によって変わる部分が見えてきます。この章で確かめるのは次の3点です。
- 働いている保育士の約7割は、仕事のやりがいに満足している
- 満足が低いのは給与・賞与等で、3割に届かない
- 場面ごとに「核」と「園で変わる部分」に分けると、出口が見える
東京都の令和4年度の調査(平成29年4月から令和4年3月までに東京都で保育士登録をした人などを対象とし、18,239人が回答)で、保育士として働いている11,277人に、いまの職場の9項目についての満足度を7段階で聞いた結果を、「大変満足」「満足」「やや満足」の合計で並べました(編集部で合計を計算)。満足の割合が高い順に、自宅からの通勤時間73.8%、保育士としての仕事全体の「やりがい」度70.6%、職場の人間関係69.9%、勤務日数68.8%、勤務時間64.1%、保護者や地域との関係性63.6%、保育所や法人の保育理念や運営方針54.1%、その他の労働条件39.4%(具体的な条件がないと答えた人を除く9,955人)、給与・賞与等27.5%です。


仕事のやりがいに満足している人は70.6%で、給与・賞与等の27.5%とは43.1ポイントの開きがあります。 やりがいに不満の人(やや不満・不満・非常に不満の合計)は13.6%にとどまる一方、給与・賞与等に不満の人は59.0%でした。報告書によると、やりがいに満足している人の割合は、パートタイムで74.9%、正規職員とフルタイムの有期契約職員で約7割です。
対象は東京都で登録した人で、全国の保育士の姿をそのまま表すものではありません。それでも、保育の仕事そのものへの手ごたえと、働く条件への不満が別々に存在していることは読み取れます。同じ調査で保育士を辞める意向を示した2,399人のうち、理由に「職業適性に対する不安」を挙げた人は24.3%(複数回答)。辞めたい理由の全体像は保育士を辞めたい理由で多いのは?で詳しく見ています。
場面ごとに「仕事の核」と「園で変わる部分」を分ける
前の章の6つの場面を、法令や指針が定めている部分や保育という仕事の性質上どの園でも残る部分と、園の運営で変わる部分に分けると、次のようになります。
| 場面 | どの園でも残る仕事の核 | 園によって変わる部分 | 見学・面接で確かめること |
|---|---|---|---|
| 責任の重さ | 子どもの安全を守ること | 安全計画の周知、研修や訓練の頻度、ヒヤリとした場面の共有 | 安全についての研修や訓練をどう行っているか |
| 保護者対応 | 保護者への保育に関する指導 | 難しい要望を誰が引き取るか、園長や主任の関わり方 | 保護者から苦情があったとき、誰がどう対応するか |
| 書類・行事 | 指導計画を作ること | 様式の細かさ、書く時間の確保、システムの有無、行事の規模 | 計画や日誌を勤務時間内に書けるか |
| 体力 | 体を使って子どもと過ごすこと | 担当年齢、配置の手厚さ、勤務時間とシフト | 1クラスを何人の保育士で見ているか |
| 人間関係 | 職員と連携して保育すること | 職員の組み合わせ、役割分担、相談できる相手 | 職員同士のやり取り、相談の仕組み |
| 子どもとの関わり | 子どもと日々過ごすこと | 年齢やクラスの規模、集団か少人数か | 担当する年齢と人数 |
表の右側に原因がある「向いてない」は、園を変える、働き方を変えることで軽くなる余地があります。 反対に、中央の列そのものが苦痛で、どの職場を想像しても気持ちが動かないなら、保育士資格を別の形で活かす道を考える時期かもしれません。
見分けるための3つの手順
頭の中だけで考えると、どの場面のつらさも同じ重さに感じられます。次の順番で整理してみてください。
- つらい場面を1週間分書き出し、表の「仕事の核」と「園で変わる部分」のどちらに近いかを分ける
- 「園で変わる部分」が多いなら、ほかの園の見学や公表情報で、同じ条件がどこでも続くのかを確かめる
- 「仕事の核」が多いなら、担当年齢を変える、勤務時間を短くするなど、条件を一つずつ変えて試せないかを園と話す
1で書き出すときは、「保護者がつらい」ではなく「お迎えの時間に、同じ保護者からの要望を一人で受けた」のように、誰と、いつ、何があったかまで書くと分けやすくなります。職種を問わない見分け方は、仕事が向いてないと感じる9つのサインでも整理しています。


私たち編集部がこの表を作りながら気づいたのは、右側の列に並ぶことの多くが、求人票にはほとんど書かれていない、ということでした。だからこそ、見学や面接で聞く価値があるのです。
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
参考:e-Gov法令検索「児童福祉法」
参考:e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」
参考:こども家庭庁「保育所保育指針(平成30年度~)」
保育士資格はどう扱われるか|登録制と名称独占
保育士を続けるか迷うとき、資格がどうなるかも気になるところでしょう。押さえておきたいのは次の3点です。
- 保育士として働くには、資格を得たうえで都道府県の登録を受ける
- 「保育士」と名乗れるのは登録を受けた人だけ(名称独占)
- 保育の仕事から離れても、それだけで登録が取り消されるわけではない
児童福祉法は、指定保育士養成施設を卒業した人や保育士試験に合格した人などを「保育士となる資格を有する」者とし(第18条の6)、その人が保育士となるには、都道府県に備える保育士登録簿に登録を受けなければならないと定めています(第18条の18)。資格を取っただけでは保育士ではなく、登録を受けて初めて保育士になる、という順番です。
| 段階 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 資格 | 指定保育士養成施設の卒業や保育士試験の合格などで、保育士となる資格を得る | 児童福祉法第18条の6 |
| 登録 | 都道府県の保育士登録簿に登録を受け、保育士となる | 児童福祉法第18条の18 |
| 名称 | 保育士でない人は、保育士やまぎらわしい名称を使えない | 児童福祉法第18条の23 |
名称について、第18条の23は「保育士でない者は、保育士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない。」と定めています。違反すると、同法第62条により30万円以下の罰金の対象です。条文が保育士でない人に禁じているのは「保育士」という名称を使うことで、こうした資格の形は名称独占と呼ばれます。 保育所に置く保育士の数は国の基準で定められており、その数に数えられるのは原則として登録を受けた保育士です。
保育の仕事を離れたことは、児童福祉法が定める保育士登録の取消し事由に含まれていません。一方で、業務で知った秘密を守る義務は保育士でなくなった後も続きます。登録の取消し事由と守秘義務の条文は保育士を辞めたい理由と、辞めると決めたら押さえておきたいことで原文とあわせて紹介しました。
保育士として働くのをやめても、登録を受けた資格は手元に残ります。 向いていないと感じたまま無理に続けるか、すべてを手放すかの二択で考える必要はないのです。
参考:e-Gov法令検索「児童福祉法」
参考:e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」
保育士資格や経験を活かせる別の働き方
保育所の保育士が合わないと感じても、資格や経験を活かす道は保育所の中にも外にもあります。考える手がかりは次の3つです。
- 保育所以外にも、国の基準で保育士が人員に数えられる仕事がある
- 保育所の中で、担当や働き方を変える道がある
- 保育の外に移るなら、つらかった場面から次の職場の条件を逆算する
保育所以外で、保育士が人員基準に入る仕事
障害のある子どもが通う児童発達支援や放課後等デイサービスは、国の基準で、置くべき従業者として「児童指導員又は保育士」が定められています。児童発達支援センター以外の児童発達支援事業所と放課後等デイサービス事業所では、障害児の数が10人までなら、児童指導員と保育士を合わせて2人以上を、提供時間を通じて置くことになっています。あわせて、児童発達支援管理責任者を1人以上置く決まりです。
小学生が放課後を過ごす放課後児童クラブ(学童保育)にも、保育士の資格が生きる道があります。放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準では、放課後児童支援員になれるのは、保育士の資格を持つ人や社会福祉士の資格を持つ人、教員免許状を持つ人など、基準に列挙された人のうち、都道府県知事や指定都市・中核市の長が行う研修を修了した人です。支援員は支援の単位ごとに2人以上を置き、そのうち1人を除いて補助員で代えられるとされています。ただし、この基準は市町村が条例で基準を定めるときに参酌するものなので、実際の決まりは働きたい市町村の条例で確かめることになります。


どちらも、保育所とは子どもの年齢や関わり方が変わる仕事です。 乳幼児の集団保育がきつかった人が、少人数で一人ひとりの発達に合わせて関わる仕事や、小学生の放課後を支える仕事で手ごたえを得ることもあるでしょう。乳児院や児童養護施設など、保育所以外で保育士が働く施設は保育園の仕事内容と、保育士以外の仕事で紹介しています。
参考:e-Gov法令検索「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
参考:e-Gov法令検索「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」
保育所の中で、担当や働き方を変える
保育所で働き続けながら負担を変える方法もあります。担当する年齢を変える、クラス担任から外れてフリーの立場で入る、勤務時間を短くする、正規職員からパートタイムに切り替える。どれも、まずいまの園と話し合える部分です。
東京都の令和4年度調査では、仕事のやりがいに満足している人の割合はパートタイムで74.9%と、正規職員やフルタイムの有期契約職員(約7割)より高くなっていました。雇用形態によって担当や年齢層が違うことも反映した数字で、パートタイムに変えればやりがいが上がる、という因果を示すものではありません。それでも、働き方を変えて保育を続けている人が多いことは確かです。雇用形態ごとの退職理由の違いや短時間で働く保育士の賃金は、保育士を辞めたい理由と、辞める前の選択肢で取り上げました。
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
保育の外に移るなら、つらかった場面から逆算する
保育の外に移るときは、「何がしたいか」より先に「何がつらかったか」から次の職場の条件を決めると、同じつらさを繰り返しにくくなります。
| 保育でつらかった場面 | 次の職場で確かめたいこと |
|---|---|
| 命を預かる責任の重さ | 判断を一人で背負わず、確認や相談の手順が決まっているか |
| 保護者からの要望への対応 | 顧客対応の比重と、難しい案件を引き取る担当がいるか |
| 書類や行事の準備 | 事務の量と、勤務時間内に終わる仕組みがあるか |
| 立ちっぱなし・抱っこなど体の負担 | 座ってできる業務の割合、シフトの組み方 |
| 少人数の職場の人間関係 | 職場の人数と、部署を移れる仕組みがあるか |
保育で身につけた力は、ほかの職種でも使えます。どんな職種があり、採用する側が何を見ているのかは未経験の転職におすすめの職種7選で、公的データとあわせて整理しました。
保育の外の会社を選ぶとき、求人票だけでは、どんな経験の人が採られ、入社後に何を任されているのかまでは見えにくいものです。熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューには、採用で見ている点や人の育て方を経営者自身が語った記事があり、保育とは違う職場の中身を知る手がかりになります。
保育士に向いてないと感じたときによくある質問
保育士に向いていない人の特徴はありますか?
性格や特徴だけで向き不向きを決めるより、仕事の核がつらいかどうかで考えるほうが確かです。 手がかりになるのは、児童福祉法第18条の4が保育士の仕事として定める「児童の保育」と「児童の保護者に対する保育に関する指導」そのものが苦痛かどうかです。子どもと過ごす時間や保護者とのやり取り自体はつらくないのに毎日がきついなら、書類の量や人間関係、配置の手厚さなど、園によって変わる部分が原因である可能性があります。
子どもは好きなのに保育士がきついのは、おかしいことですか?
おかしいことではありません。 東京都の令和4年度東京都保育士実態調査(平成29年4月から令和4年3月までの東京都の保育士登録者などが対象)で、保育士として働いている11,277人のうち、仕事全体のやりがいに満足している人は70.6%でしたが、給与・賞与等に満足している人は27.5%でした(いずれも大変満足・満足・やや満足の合計を編集部で計算)。仕事への手ごたえがあっても、条件への不満から「きつい」と感じることは十分あり得ます。
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
責任が重くて怖いと感じるのは、向いていないからですか?
責任の重さを感じること自体は、向いていない証拠ではありません。 東京都の令和4年度の調査では、役職に就きたくないと答えた保育士7,564人の42.7%が、理由に「責任の重い仕事をしたくない」を挙げていました(複数回答)。また、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第6条の3は、安全計画を作り、職員への研修や訓練を定期的に行うことを施設の義務としています。安全を個人の注意力だけで支えている園なら、職場の体制を見直す余地があります。
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
参考:e-Gov法令検索「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」
保育士をやめたら、資格は使えなくなりますか?
使えなくなることはありません。保育の仕事を離れることは、児童福祉法第18条の19が定める保育士登録の取消し事由に当たらないからです。 保育士となる資格を得て都道府県の保育士登録を受けた人は、保育所で働いていなくても登録を受けた保育士のままです。「保育士」と名乗れるのは登録を受けた人だけで(第18条の23)、保育士でない人が名乗ると第62条により30万円以下の罰金の対象になります。業務で知った秘密を守る義務は、保育士でなくなった後も続く点に注意してください。
保育士資格を活かせる、保育園以外の仕事はありますか?
国の基準で保育士が人員に数えられる仕事があります。 障害のある子どもが通う児童発達支援(児童発達支援センター以外)と放課後等デイサービスでは、「児童指導員又は保育士」を、障害児の数が10人までなら合わせて2人以上置くことになっています。放課後児童クラブの放課後児童支援員は、国の基準では、保育士などの資格を持つ人が都道府県知事などの行う研修を修了してなるものです。この基準は市町村が条例を定めるときに参酌するもので、実際の求人の条件も事業所ごとに違うため、応募の前に確かめてください。
参考:e-Gov法令検索「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」
参考:e-Gov法令検索「放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準」
まとめ
保育士に向いてないと感じる場面には、責任の重さ、保護者対応、書類や行事、体力、職員同士の人間関係、子どもとの関わりそのものがあります。このうち、保育の中で子どもの安全を守ること、保護者への保育に関する指導、指導計画を作ることは、法令や保育所保育指針が保育所と保育士の仕事として定める核で、どの園でも残ります。一方、安全計画の周知や研修、保護者対応を園全体で受け止める体制、書類の様式やシステム、配置の手厚さ、職員の組み合わせは園によって変わる部分です。東京都の令和4年度の調査でも、働いている保育士の70.6%が仕事のやりがいに満足していたのに対し、給与・賞与等に満足していたのは27.5%でした。
つらい場面を書き出して「仕事の核」と「園で変わる部分」に分けてみると、園を変える、働き方を変える、資格を別の形で活かす、のどれが自分に合うかが見えてくるはずです。私たちは、保育士に向いていないと感じることは、保育の仕事を真剣に考えてきた人ほど通る道なのではないかと思っています。登録を受けた保育士の資格は、保育所を離れても手元に残ります。
参考:東京都福祉局「令和4年度東京都保育士実態調査結果(報告書)」
参考:e-Gov法令検索「児童福祉法」
どの道を選ぶにしても、いまの自分の経験がほかの園や保育の外の職場でどう受け止められるのかを先に知っておくと、「向いてない」の判断に、いまの職場の中だけでは見えない材料が加わります。

