個人タクシーの年収は?公的統計で分かる範囲と収入の仕組み|開業の条件

個人タクシーの年収を直接示す公的な統計は、私たちが確認した範囲では見当たりません。比べられる公的な数字は、会社に雇われて働くタクシー運転者の年収まで、というのが実情です。
その一方で、開業の審査基準には「必要な資金の100%以上を自己資金で持っていること」など、お金の条件がはっきり書かれています。稼ぐ前に何を用意する仕事なのかは、国の資料で確かめられるのです。
この記事では、統計で言える範囲を確かめたうえで、収入が決まる仕組みと開業の条件を順に整理しました。
個人タクシーを目指すかどうかを考える前に、いまの自分の年収が市場でどのあたりにあるのかを知っておくと判断の軸ができるはず。タクシー以外の仕事を選んだ場合の相場も、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
個人タクシーの年収を公的統計で確かめられる範囲
「個人タクシーは法人より稼げる」という話はよく聞きますが、それを裏づける公的な統計は、私たちが調べた範囲では見つかりませんでした。理由と、代わりに使える数字は次のとおりです。
- 国の賃金統計は、雇われて働く人を対象にしている
- 比較の土台にできるのは、法人タクシー運転者の年収
- 全国ハイヤー・タクシー連合会の公開資料も、収入のデータは法人が中心
賃金構造基本統計調査は、個人事業主を対象にしていない
職種別の年収を調べるときに使われるのが、厚生労働省の賃金構造基本統計調査です。令和7年調査の「調査の概要」は、この調査の目的を「主要産業に雇用される労働者」の賃金の実態を明らかにすることとしています。 調査の対象も、5人以上の常用労働者を雇用する民営事業所(5〜9人の事業所は企業規模が5〜9人のものに限る)と、10人以上の常用労働者を雇用する公営事業所から選ばれた事業所です。
個人タクシーは、許可を受けた本人が1台の車を自分で運転する個人事業です。雇われて働く人ではないため、この調査の「タクシー運転者」の数字には入りません。ネットで見かける「個人タクシーの平均年収は◯万円」という数字は、この統計から出たものではない、という前提で読む必要があります。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況:調査の概要」
比較の土台は、法人タクシー運転者の450万8,200円
公的統計で言えるのは、会社に雇われているタクシー運転者の年収です。全国ハイヤー・タクシー連合会が令和7年賃金構造基本統計調査を取りまとめた資料では、タクシー運転者の年間推計額は450万8,200円でした。これは「月間給与×12+年間賞与」で計算した額で、社会保険料や税金を引く前の金額です。
個人タクシーの年収を考えるときは、この450万8,200円を「会社員として同じ仕事をした場合の目安」として横に置くのが、いま公的な数字で比べられる限界です。 地域別・年齢別の内訳や歩合給の仕組みは、タクシー運転手の年収はいくら?平均450万円の中身と都道府県別・年齢別データで詳しく扱っています。
参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」
業界団体の公開資料も、収入のデータは法人のもの
全国ハイヤー・タクシー連合会の「TAXI TODAY in Japan 2026」は、1日1車当たりの平均営業収入(日車営業収入)や実車率の推移を載せていますが、いずれも「法人」の数字です。同じシリーズの「事業者数と車両数」には個人タクシーの車両数が載っているものの、売上や所得の数字は見当たりませんでした。
正直なところ、私たちもどこかに個人タクシーの平均所得が載っているだろうと思って調べ始めました。見つからなかった以上、記事の中で数字を作ることはせず、収入がどう決まるかという仕組みのほうを詳しく見ていきます。
参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「TAXI TODAY in Japan 2026 経営の現状」
参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「TAXI TODAY in Japan 2026 事業者数と車両数」
個人タクシーの年収は「運賃収入−経費」で決まる
法人タクシー運転者の年収は会社から支払われる賃金ですが、個人タクシーの収入は事業の売上から経費を引いた残りです。同じ「年収」という言葉でも、中身が違います。
- 法人は賃金、個人は事業所得
- 車両・保険・車庫などの費用を自分で負担する
- 1台を自分だけで運転するため、売上の上限は自分の乗務時間で決まる
法人タクシー運転者との違い
国税庁は、事業所得の金額を「総収入金額−必要経費」で計算すると説明しています。 個人タクシーなら、1年間の運賃収入が総収入金額にあたり、そこから営業に必要な費用を引いた額が事業所得です。法人タクシー運転者との違いを整理すると、次のように分かれます。
| 項目 | 法人タクシー運転者 | 個人タクシー |
|---|---|---|
| 収入の性格 | 会社から支払われる賃金 | 運賃収入から経費を引いた事業所得 |
| 車両・保険・車庫の費用 | 会社が負担 | 自分で負担 |
| 公的統計 | 賃金構造基本統計調査で年収が分かる | 所得を直接示す公的統計は見当たらない |
| 働き方を決める人 | 会社の勤務シフト | 許可の条件の範囲で自分 |
このため、「個人タクシーの売上」と「法人タクシー運転者の年収」を並べて比べると、経費の分だけ個人タクシーを大きく見積もることになるわけです。比べるなら、経費を引いたあとの所得同士で見る必要があるでしょう。
参考:国税庁「No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)」
経費に入る主なもの
国の審査基準は、開業時に見積もる資金として、設備資金、運転資金、自動車車庫に要する資金、保険料の4つを挙げています。開業後も、これらに対応する費用がかかり続けると考えておくと分かりやすいでしょう。
- 事業用の車両と、その整備・燃料にかかる費用
- 電子地図に現在地を表示し、目的地までの経路を案内する機器
- 自賠責保険と、国の告示で定める基準に合う任意保険の保険料
- 自動車車庫の賃料など、車庫の確保にかかる費用
- 事業者団体などに加入する場合は、その会費
任意保険の基準は国土交通省の告示で決められていて、旅客の生命・身体の損害については1人につき8,000万円以上を限度額とする保険でなければなりません。経費の金額は車種や地域、加入する団体によって変わり、その平均を示す公的な集計は見当たらないため、自分の条件で見積もるしかありません。
1台を自分で運転するから、売上の上限は乗務時間
関東運輸局の審査基準では、許可に付ける条件として「使用する事業用自動車は1両であり、他人に当該事業用自動車を営業のために運転させてはならない」と定めています。あわせて、月に2日以上の定期休日を定めることも条件です。
法人のように複数の車両や運転者を抱えて売上を伸ばすことはできません。個人タクシーの売上は、自分がどれだけの時間、どの地域で、どれだけお客さんを乗せられるかで決まります。 収入の天井は、自分の体力と時間の配分そのものと言えます。
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
参考:国土交通省「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運行により生じた旅客その他の者の生命、身体又は財産の損害を賠償するために講じておくべき措置の基準を定める告示」
開業に必要な資金は、自己資金で100%以上
個人タクシーの審査で問われるのは、どれだけ稼げそうかではなく、開業に必要なお金を自分で用意できているかどうか。関東運輸局の審査基準で決められている資金の条件は次のとおりです。
- 所要資金は4つの費用の合計で見積もる
- 設備資金と運転資金は、それぞれ80万円以上
- 所要資金の100%以上を、自己名義の預貯金等で常に確保する
関東運輸局の審査基準は、所要資金を「設備資金」「運転資金」「自動車車庫に要する資金」「保険料」の合計とし、その100%以上の自己資金(自己名義の預貯金等)が申請日以降常時確保されていることを求めています。 設備資金と運転資金の目安は次の表のとおり。
| 費用 | 審査基準での扱い |
|---|---|
| 設備資金(車庫を除く) | 80万円以上。80万円未満で所要の設備が調達できることが明らかな場合はその額 |
| 運転資金 | 80万円以上 |
| 自動車車庫に要する資金 | 新築・改築・購入・借入など、車庫の確保に要する資金 |
| 保険料 | 自賠責保険料(保険期間12か月以上)と、告示の基準に合う任意保険または共済の保険料の年額 |
設備資金と運転資金は、基準どおりなら合わせて160万円以上になり、そこに車庫と保険の費用が加わります。借入で用意するのではなく、自分の名義の預貯金等で全額を持っておく必要がある点が、会社員として働く場合との大きな違いです。


車両や設備を80万円未満で用意できる見込みがあれば、設備資金はその額で見積もれます。とはいえ、運転資金の80万円は下限です。開業直後に売上が安定しない時期を、自分の資金で支えられるかどうかが審査で見られている、と読むことができます。
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
個人タクシーはどこで、何台走っているか
個人タクシーは全国どこでも同じように走っているわけではありません。開業できる場所を考えるうえで、まず全体の数と地域の偏りを押さえておきます。
- 全国の個人タクシーは25,009台
- 東京都だけで全体の約36%を占める
- 個人タクシーが1台もない県もある
全国ハイヤー・タクシー連合会の「TAXI TODAY in Japan 2026」によると、個人タクシーの車両数は25,009台です(令和7年3月末現在、国土交通省調べ)。 1人1台の事業なので、台数はそのまま事業者の数に近い目安になります。同じ資料のグラフでは、平成13年度は46,117台で、そこから約46%減ったことになります。
都道府県別に見ると、東京都が9,116台で全体の約36%を占めます。続いて大阪府2,217台、神奈川県1,949台、京都府1,688台、福岡県1,573台。この5都府県を合わせると16,543台で、全国の約66%です。一方で、茨城県、群馬県、山梨県、鳥取県、島根県は0台でした。


個人タクシーとして開業できるかどうかは、住んでいる地域でそもそも営業できる区域があるかに左右されます。 審査基準も営業区域ごとに定められていて、営業所は営業区域内に置き、住居と営業所が同じであることが求められます。法人タクシーで経験を積んだ地域で、そのまま開業を考えるのが現実的でしょう。
参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「TAXI TODAY in Japan 2026 事業者数と車両数」
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
個人タクシーになる条件|関東運輸局の審査基準で見る
個人タクシーを始めるには、道路運送法にもとづく国土交通大臣の許可が必要です。許可の審査基準は地方運輸局ごとの公示で定められているため、ここでは関東運輸局の公示(令和8年2月17日一部改正)を例に、人口が概ね30万人以上の都市を含む営業区域の新規許可の条件を見ていきます。
- 申請日現在で65歳未満、有効な第二種運転免許を持っている
- 年齢区分ごとに、タクシー・ハイヤーなどの運転経歴を満たす
- 一定期間、行政処分や交通違反がない
- 資金計画・営業所・車両・車庫・健康状態が基準を満たす
- 関東運輸局長が実施する法令の試験に合格する
道路運送法は、1個の契約で一定の乗車定員未満の自動車を貸し切って旅客を運ぶ事業を「一般乗用旅客自動車運送事業」とし、一般旅客自動車運送事業の1つに位置づけています。タクシーはこれにあたり、個人タクシーも会社と同じく、この許可を受けて初めて営業できる事業者になるのです。つまり個人タクシーは「資格」ではなく「事業の許可」で、運転のうまさに加えて、事業を続けられる体制かどうかが審査されます。


年齢と運転経歴
運転経歴の条件は、申請日現在の年齢によって3つに分かれます。要点は次のとおりです。
| 申請時の年齢 | 運転経歴の主な条件 |
|---|---|
| 35歳未満 | 申請する営業区域で、同一のタクシー・ハイヤー事業者に10年以上継続して雇用され、申請日以前10年間無事故無違反 |
| 35歳以上40歳未満 | 営業区域で自動車の運転を職業とした期間が10年以上、うちタクシー・ハイヤーが5年以上、営業区域で継続3年以上。10年間無事故無違反なら40歳以上の条件でもよい |
| 40歳以上65歳未満 | 申請日以前25年間のうち、自動車の運転を職業とした期間が10年以上。営業区域で申請日以前3年以内に2年以上タクシー・ハイヤーを運転 |
35歳以上の区分では、バスやタクシーなど旅客を運ぶ事業用の自動車(一般旅客自動車運送事業用自動車)以外を運転していた期間は50%に換算されます。どの区分でも、タクシー会社などで運転を職業にしてきた年数が前提です。この年数の重さが、タクシーの仕事がきついと言われる理由とどう関わるかは、タクシー運転手はやめとけと言われる7つの理由でも触れています。
行政処分と交通違反の履歴
法令の遵守状況として、申請日以前5年間と申請日以降に、輸送施設の使用停止以上の処分や運転免許の取消し処分などを受けていないことが求められます。さらに、申請日以前3年間と申請日以降に、道路交通法の違反がなく、運転免許の効力の停止も受けていないこと。ただし申請日の1年前以前の、点数1点の違反か点数が付かない違反のどちらか1回に限っては、違反がないものとみなされます。
営業所・車両・車庫・健康状態
営業所は申請する営業区域内にあり、住居と同じであること、そして申請日現在その区域に実際に住んでいることが条件です。車庫は営業区域内で、営業所から直線で2キロメートル以内、土地・建物について1年以上の使用権原が必要になります。
事業用自動車には、電子地図を表示し、車両の位置を地図上に示し、目的地までの経路を案内する機能を持つ機器を備えることが条件。健康面では、医療機関で胸部疾患・心臓疾患・血圧などの診断を受けて営業に支障がないこと、自動車事故対策機構などで運転に関する適性診断を受けて支障がないことが求められます。また、申請日前3年間に個人タクシーを譲渡・廃止した人や、許可期限の更新を受けなかった人は申請できません。
ここまでの条件はあくまで関東運輸局管内のもので、他の地域では各運輸局の公示を確認する必要があります。
参考:e-Gov法令検索「道路運送法」
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
新規許可と譲渡譲受|個人タクシーの2つの入り口
個人タクシーを始める方法は、新しく許可を受ける「新規許可」と、いまの個人タクシー事業者から事業を引き継ぐ「譲渡譲受」に分かれます。どちらを選べるかは、営業区域の状況次第です。
- 新規許可の受付は、営業区域の指定によって制限がある
- 譲渡譲受は国土交通大臣の認可が必要で、譲渡人にも条件がある
- 事業者が亡くなった場合の相続にも、期限付きの手続きがある
新規許可は、営業区域によって受付が限られる
関東運輸局の審査基準では、新規許可の申請の受付を「通年」としています。令和8年2月17日の改正で、それまでの「毎年9月」から改められました(令和8年4月1日以降に受け付ける申請から適用)。
ただし、タクシーの供給過剰の是正などを目的とした法律(タクシー適正化・活性化特措法)で「特定地域」に指定されている地域を営業区域とする申請は受け付けられません。「準特定地域」では、国の特例により申請が認められる地域に限って、毎年度5月・9月・1月の各1か月が受付期間です(関東運輸局長が別に受付期間を公示した場合は、その期間)。
この特例について、国土交通省の通達(令和4年3月30日)は背景を2つ挙げています。新型コロナウイルス感染症の影響で譲渡を希望する人と譲受を希望する人が会う機会が激減し、譲渡譲受が円滑に行えなくなったこと。そして個人タクシーは自らが運行管理・整備管理をしなければならない特性があるなか、事業者の高齢化が進んでいることです。そこで準特定地域に限り、一定の期間に廃業した事業者数の範囲で、新規の参入を時限的に認める仕組みになっています。
譲渡譲受は、国土交通大臣の認可で効力が生じる
当事者どうしで話がまとまっても、認可を受けるまでは事業を引き継いだことになりません。譲渡譲受の認可申請の受付は、関東運輸局の審査基準では通年とされています。同じ基準で、譲渡する側(譲渡人)と譲り受ける側(譲受人)に、それぞれ次の条件があります。
| 立場 | 主な条件 |
|---|---|
| 譲渡人 | 有効な第二種運転免許を持ち、65歳以上80歳未満、65歳未満で傷病等により自ら事業ができない正当な理由がある、65歳未満で20年以上個人タクシーを経営している、のいずれか |
| 譲受人 | 新規許可と同じ基準(申請の時期等の定めを除く)を満たす。譲渡人が75歳以上80歳未満の場合は60歳以下 |
譲受人に求められる条件は新規許可とほぼ同じで、譲渡譲受だからといって運転経歴や資金の条件が軽くなるわけではありません。 譲渡の対価について、私たちが確認した国土交通省・運輸局の資料には目安が載っていませんでした。


事業者が亡くなった場合は相続の認可という手続きがあり、被相続人が亡くなった時点で75歳未満であること、相続人が新規許可の基準を満たすこと、亡くなってから60日以内に申請することが条件です。
参考:e-Gov法令検索「道路運送法」
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
参考:国土交通省自動車局長「準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業(1人1車制個人タクシーに限る。)に係る道路運送法第4条第1項の許可の特例的な取扱いについて」
法令の試験と、許可のあとに続く条件
審査の最後の関門が、運輸局長が実施する法令の試験です。そして許可を受けたあとも、期限と条件が付いた状態で事業を続けることになります。
- 関東運輸局では、申請前に受ける「事前試験」がある
- 令和8年3月の事前試験は、受験者191名のうち165名が合格
- 許可にはおおむね3年の期限があり、更新しながら続ける
関東運輸局の法令試験
関東運輸局の審査基準が求めるのは「法令の試験」への合格で、申請前に受ける事前試験と、申請後に受ける試験があります。過去の公示には「法令及び地理の試験」という名称も残っていますが、現在の審査基準で求められているのは法令の試験です。
令和8年3月2日に実施された事前試験の受験者は、特別区・武三交通圏138名、京浜交通圏25名、その他の交通圏28名の計191名で、合格者は165名でした。 計算すると約86%が合格しています。平均点は特別区・武三交通圏が43.63点、京浜交通圏が42.4点、その他の交通圏が36.46点でした。申請後試験は受験者6名で、6名とも合格しています。


次回は令和8年11月11日(水)に横浜第二合同庁舎で実施予定と公示されています。対象は、令和8年8月1日から9月30日までに事前試験を申し込んだ人と、6月1日から9月30日までに譲渡譲受の認可を申請した人です。
許可には期限と条件が付く
この規定にもとづいて、個人タクシーの許可には期限と条件が付きます。関東運輸局の審査基準で付けるとされている主な内容は次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 期限 | 許可・認可の日からおおむね3年。更新しながら事業を続ける |
| 事業開始 | 許可等の日から4か月以内に事業を始める |
| 車両と運転 | 事業用自動車は1両で、他人に営業のために運転させない |
| 休日 | 月に2日以上の定期休日を定める |
| 記録 | 営業中は運転日報を携行して記入し、1年間保存する |
| 高齢期 | 65歳に達したら高齢者向けの適性診断を受ける。期限の更新時に、満75歳に達する日以降の期限は付さない |
満75歳の扱いには例外があり、人口が概ね30万人以上の都市を含まない営業区域で、申請日現在75歳以上の人が法人タクシー事業者による運行管理を受ける体制を整えて許可を受けた場合は満80歳です。また令和6年1月の改正後のこの条件は、平成14年1月31日以前に許可を取得した人には適用されません。新しく開業する人にとっては、何歳まで営業できるかが許可の条件として決まっている、ということです。


取材で経営者の話を聞いていると、事業を始めるときに「いつまで、どう続けるか」を考えている人が多いと感じます。個人タクシーはそれが制度として先に決まっている珍しい事業で、開業の年齢から逆算して何年営業できるかを計算しておくと、資金計画も立てやすくなります。会社に属さない働き方の全体像は、フリーランスとは?個人事業主との違い・主な職種・新法で守られることでも整理しています。
参考:国土交通省関東運輸局「公示」令和8年3月26日(個人タクシー事業の法令試験(事前試験)実施結果について ほか)
参考:国土交通省関東運輸局「公示」令和8年10月8日(個人タクシーの法令試験の実施について ほか)
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
参考:e-Gov法令検索「道路運送法」
個人タクシーの年収に関するよくある質問
個人タクシーは法人タクシーより年収が高いですか?
私たちが確認した範囲では、公的な統計で直接比べることはできません。 厚生労働省の賃金構造基本統計調査は雇われて働く人が対象で、個人事業主である個人タクシーの所得は含まれないためです。比べられるのは、令和7年調査をもとにした法人タクシー運転者の年間推計額450万8,200円(賞与を含み、社会保険料や税金を引く前の額)までです。個人タクシーの収入は運賃収入から車両・保険・車庫などの経費を引いた事業所得なので、比べるときは売上ではなく経費を引いたあとの金額で見る必要があります。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況:調査の概要」
参考:一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「『令和7年賃金構造基本統計調査』によるタクシー運転者の現況」
個人タクシーの開業資金はいくら必要ですか?
関東運輸局の審査基準では、設備資金80万円以上、運転資金80万円以上に、車庫の確保に要する資金と保険料の年額を足した額が所要資金です。 設備資金は、80万円未満で所要の設備を調達できることが明らかな場合はその額で見積もれます。所要資金の100%以上を、自己名義の預貯金等で申請日以降常に確保していることも条件です。他の地域の基準は、各運輸局の公示で確認してください。
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
個人タクシーは何歳からなれますか?
関東運輸局の審査基準には、申請できる下限の年齢は書かれていませんが、運転経歴の条件が年齢区分ごとに決まっています。 35歳未満の場合は、申請する営業区域で同一のタクシー・ハイヤー事業者に10年以上継続して雇用され、申請日以前10年間無事故無違反であることが必要です。新規許可の申請は、人口が概ね30万人以上の都市を含む営業区域では申請日現在で65歳未満が条件です。
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
個人タクシーに定年はありますか?
会社のような定年はありませんが、関東運輸局の審査基準では、許可の期限を更新する際に満75歳に達する日以降の期限は付さないとしています。 人口が概ね30万人以上の都市を含まない営業区域で、申請日現在75歳以上の人が法人タクシー事業者による運行管理を受ける体制を整えて許可を受けた場合は満80歳です。この条件の現在の内容は令和6年1月の改正によるもので、平成14年1月31日以前に許可を取得した人には適用されません。
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
個人タクシーにも地理試験はありますか?
関東運輸局の審査基準で求められているのは「法令の試験」への合格です。 過去の公示には「法令及び地理の試験」という名称も見られますが、現在の審査基準の条文は法令の試験となっています。令和8年3月2日の事前試験では、受験者191名のうち165名が合格しました。法人タクシーの運転者になるときの登録試験は別の制度で、その費用や流れは二種免許の費用はいくら?取得ルート別の内訳と会社負担の条件で扱っています。
参考:国土交通省関東運輸局「個人タクシー事業の許可及び譲渡譲受認可申請事案の審査基準について」
参考:国土交通省関東運輸局「公示」令和8年3月26日(個人タクシー事業の法令試験(事前試験)実施結果について ほか)
まとめ
個人タクシーの年収を直接示す公的な統計は、私たちが確認した範囲では見当たりませんでした。賃金構造基本統計調査は雇われて働く人が対象で、比較の土台にできるのは、令和7年調査をもとにした法人タクシー運転者の年間推計額450万8,200円です。個人タクシーの収入は、運賃収入から車両・保険・車庫などの経費を引いた事業所得で、1台を自分だけで運転するため、売上の上限は自分の乗務時間で決まります。
開業には、関東運輸局の審査基準で見ると、65歳未満であること、年齢区分ごとの運転経歴、所要資金の100%以上の自己資金、法令の試験への合格などが求められます。入り口は新規許可と譲渡譲受の2つ。新規許可は、営業区域の指定によって受付が限られます。
数字が見つからないぶん、私たちは「いくら稼げるか」より「何年、どの区域で、いくらの元手で続けられるか」を先に確かめるほうが、判断を誤りにくいと考えています。個人タクシーは、その条件が審査基準として先に示されている事業です。経営者が自分の事業の始め方をどう決めたかは、熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューで本人の言葉として読めます。
独立を考えるかどうかにかかわらず、いまの経歴で会社員としてどんな条件が提示されるかを知っておくと、比べる軸がもう1本増えます。

