公務員を辞めたい人へ|退職の実態と失業給付・退職手当の注意点、民間で活きる経験

公務員を辞めたいと考えるのは、特別なことではありません。国の行政職で自己都合により退職し、退職手当を受けた人は、令和6年度には令和2年度の約1.7倍に増えています。

見落としやすいのは、国家公務員の常勤職員などは雇用保険の対象外で、辞めても失業手当を受け取れない点です。ただし、それを補う仕組みもあります。

この記事では、国家・地方の退職データと辞める前に確かめたい制度、民間やベンチャーで評価されやすい経験の伝え方を整理します。

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目次

公務員を辞める人はどのくらいいるか|国家・地方の最新データ

公務員の退職を年代や理由で確かめられる公的データは、国家公務員と地方公務員で別々に公表されています。押さえておきたいのは次の4点です。

  • 国家公務員の行政職では、自己都合で退職し退職手当を受けた人が4年続けて増えている
  • その行政職の自己都合退職者の約7割は40歳未満
  • 地方公務員の普通退職者は、令和6年度に78,760人と前年度より増えた
  • 地方公務員の一般行政職でも、普通退職者の半数近くが40歳未満

国家公務員:行政職の自己都合退職は4年続けて増えている

国家公務員の退職の状況は、内閣官房内閣人事局が「退職手当の支給状況」として毎年まとめています。国家公務員退職手当法の適用を受けて退職し、退職手当を受け取った人を数えたもので、令和7年12月に公表された令和6年度分が最新です。

令和6年度に自己都合で退職し退職手当を受けた常勤職員は9,951人で、退職時の平均年齢は32.8歳でした。このうち、いわゆる行政職にあたる行政職俸給表(一)が適用される職員は2,163人。同じ区分を年度ごとにたどると、令和2年度1,290人、3年度1,617人、4年度1,944人、5年度2,088人、6年度2,163人と増え続けており、令和6年度は令和2年度の約1.7倍です。 常勤職員全体では前年度の10,317人から減ったものの、令和2年度の7,019人を上回る水準にあります。

自己都合で退職し退職手当を受けた行政職俸給表(一)適用の国家公務員の数。令和2年度1,290人、令和3年度1,617人、令和4年度1,944人、令和5年度2,088人、令和6年度2,163人で、令和6年度は令和2年度の約1.7倍。
自己都合で退職し退職手当を受けた行政職俸給表(一)適用の国家公務員の数。令和2年度1,290人、令和3年度1,617人、令和4年度1,944人、令和5年度2,088人、令和6年度2,163人で、令和6年度は令和2年度の約1.7倍。

行政職の自己都合退職者2,163人のうち、40歳未満は1,505人と約7割を占めていました。退職時の平均年齢は35.5歳、平均勤続年数は10年2月です。人事院も令和7年度の年次報告書で、公務における若年退職者の増加を、民間などから経験者を採用する取組を進める理由の一つに挙げています。

参考:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
参考:人事院「令和7年度 年次報告書 公務員人事管理における主な課題の取組状況」

地方公務員:普通退職者は令和6年度に78,760人

地方公務員については、総務省の「令和6年度 地方公務員の退職状況等調査」が最新です。対象は都道府県や市区町村などの一般職の地方公務員で、会計年度任用職員や臨時的任用職員、再任用職員などは含みません。

令和6年度の離職者135,027人のうち、自己都合などによる「普通退職」は78,760人で、前年度から2,678人(3.5%)増えました。普通退職には、自己都合の退職のほか、別の自治体や国の職員になるために退職手当を受けずに辞める場合なども含まれます。また、定年の引上げに伴い、引上げ前の定年に達した日以後に非違なく退職した人や、定年前再任用短時間勤務の職に就くために退職した人も、この調査では普通退職に数えられています。

事務系の職員にあたる一般行政職について、普通退職者(在職期間の通算を伴う退職者等を除く)22,552人を退職時の年齢で分けると、25歳未満1,411人、25〜29歳3,599人、30〜34歳3,166人、35〜39歳2,515人、40〜49歳2,677人、50〜59歳2,292人、60歳6,304人、61歳以上588人です。60歳が多いのは、引上げ前の定年に達して退職した人や、定年前再任用短時間勤務の職に移るために退職した人が含まれるためでしょう。それを除いて見ると、退職は20代後半から30代前半に集まり、40歳未満が10,691人と半数近くを占めています。 40歳未満は、前年度の9,743人から948人増えました。地方公務員のうち公立学校の教員については、離職や休職の状況と辞める前にできることを教員を辞めたいと感じたら|辞める前の休職・異動と転職先、公立と私立の違いで扱っています。

令和6年度の地方公務員(一般行政職)の普通退職者22,552人の退職時の年齢。25歳未満1,411人、25〜29歳3,599人、30〜34歳3,166人、35〜39歳2,515人、40〜49歳2,677人、50〜59歳2,292人、60歳6,304人、61歳以上588人。40歳未満は10,691人で半数近く。
令和6年度の地方公務員(一般行政職)の普通退職者22,552人の退職時の年齢。25歳未満1,411人、25〜29歳3,599人、30〜34歳3,166人、35〜39歳2,515人、40〜49歳2,677人、50〜59歳2,292人、60歳6,304人、61歳以上588人。40歳未満は10,691人で半数近く。

参考:総務省「令和6年度 地方公務員の退職状況等調査」
参考:総務省「退職状況等調査結果のポイント(令和6年度)」
参考:総務省「令和5年度 地方公務員の退職状況等調査」

辞めたい理由を整理する|公務の中で試せることと、外を考える目安

辞めたい理由がどこにあるかで、公務の中で試せることも、外に出ると決める目安も変わります。公務員ならではの事情として、次の点を押さえておきましょう。

  • 国家公務員では、転勤に否定的な意識を持つ人が回答者の5割強
  • 長時間の超過勤務は、人事院も最小化を課題に掲げている
  • 処遇や兼業の決まりは、見直しが進んでいる部分もある
  • 不満は職場の外の機関にも相談できる

正直なところ、「公務員を辞めたい」という言葉の中身は、人によってかなり違うと感じます。

まず公務員に特有の事情として、転勤を見ておきましょう。人事院が令和7年12月から令和8年1月にかけて、一般職の国家公務員(常勤職員)約28万人に行ったWebアンケート(有効回答107,662人)では、転勤について「どこにでもぜひ行きたい」5.1%、「条件が合えば行きたい」42.2%、「できれば行きたくない」36.5%、「絶対に行きたくない」16.1%という回答でした。回答者の5割強が、転勤に否定的な意識を持っていることになります。 同じ年次報告書には、望まない転勤を求められたときに辞めるという選択肢のハードルが下がっている、という府省の声も紹介されています。

一般職の国家公務員(常勤職員)への人事院のWebアンケートで、転勤に対する意識は「どこにでもぜひ行きたい」5.1%、「条件が合えば行きたい」42.2%、「できれば行きたくない」36.5%、「絶対に行きたくない」16.1%。否定的な意識を持つ人は5割強。
一般職の国家公務員(常勤職員)への人事院のWebアンケートで、転勤に対する意識は「どこにでもぜひ行きたい」5.1%、「条件が合えば行きたい」42.2%、「できれば行きたくない」36.5%、「絶対に行きたくない」16.1%。否定的な意識を持つ人は5割強。

ほかの理由も含めて、試せることと外を考える目安を並べると次のようになります。

辞めたい理由公務の中で試せること外を考える目安
転勤・異動家庭の事情や異動の希望を人事担当に伝える生活の事情と転勤の見通しが合わない状態が続く
長時間の超過勤務自分の勤務時間を記録し、上司や人事担当に相談する記録をもとに相談しても業務量が変わらない
給与・評価給与の改定や昇格の決まり方を確かめる自分が求める水準や評価のされ方と合わない
仕事内容・専門性希望部署への異動や、認められる範囲での兼業を検討する身につけたい専門性に近づく道が組織の中にない
住民対応・人間関係職場の相談窓口や、人事院・人事委員会などに相談する相談しても状況が変わらない

国家公務員の長時間の超過勤務については、人事院が月100時間や平均月80時間の上限を超える超過勤務の最小化を喫緊の課題とし、各府省への伴走支援や調査を強めています。処遇では、令和7年の勧告で国家公務員の初任給が大卒で12,000円、高卒で12,300円引き上げられました。令和8年8月の報告では、年齢にかかわりなく能力・実績がより反映される人事管理や処遇に向けた見直しを進めると示しています。

仕事の幅を広げたいなら、兼業の決まりも確かめておきましょう。国家公務員は、令和8年4月1日に施行された見直しで、職員が持つ知識・技能をいかした自営兼業や、社会貢献につながる自営兼業が承認されうる基準が新設されました。地方公務員は、地方公務員法第38条により、任命権者の許可を受ければ報酬を得て事業などに従事できます。

職場の中で言い出しにくい不満は、外の機関にも相談できます。国家公務員は人事院が苦情相談を受けており、地方公務員は人事委員会や公平委員会が職員の苦情を処理することが、地方公務員法第8条で定められています。心身の不調が理由なら、辞めるかどうかより先に、休むことと相談を優先してください。不調のサインや相談先は、仕事を辞めたいのは甘え?原因別の対処法で詳しく整理しています。

理由ごとに「中で変えられるか」を一度確かめておくと、辞めると決めたときも、次の職場で何を確かめればよいかがはっきりします。

参考:人事院「令和7年度 年次報告書 各府省・職員の転勤に対する意識等」
参考:人事院「令和7年度 年次報告書 公務員人事管理における主な課題の取組状況」
参考:人事院「令和7年度 年次報告書 適正な公務員給与の確保等(令和7年勧告・報告)」
参考:人事院「令和8年 人事院勧告 報告文・勧告文」
参考:e-Gov法令検索「地方公務員法」

辞める前に確かめたい、公務員ならではの制度

公務員の退職には、民間の会社員とは違う決まりがいくつもあります。辞めると決める前に、次の5点を確かめておきましょう。

  • 国家公務員の常勤職員などは雇用保険の対象外で、代わりの仕組みがある
  • 国家公務員の自己都合の退職手当は、勤続10年以下だと基本額が6割に減る
  • 健康保険と年金は、共済組合から次の勤め先の制度に切り替わる
  • 国家公務員は、在職中の求職と内定後の届出に決まりがある
  • 国家公務員と地方公務員では、根拠となる法律や条例が違う

国家公務員の常勤職員などは雇用保険の対象外。代わりに「失業者の退職手当」がある

雇用保険を適用しない人は、雇用保険法第6条に並んでいます。公務員にかかわるのは第6号です。

“
次に掲げる者については、この法律は、適用しない。(中略)六 国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合に、他の法令、条例、規則等に基づいて支給を受けるべき諸給与の内容が、求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者であつて、厚生労働省令で定めるもの
雇用保険法(昭和49年法律第116号)
第6条第6号
条文を見る

「求職者給付」は、失業手当と呼ばれる基本手当などのこと。辞めたときに受け取る退職手当などが、雇用保険の給付を上回ると認められる人には雇用保険を適用しない、という意味です。対象は雇用保険法施行規則第4条で決まっており、国の場合は常勤の職員など、都道府県や市町村の場合は、自治体の長が適用しないことを申請して承認を受けた職員が当てはまります。国家公務員の常勤職員と、承認を受けた自治体の職員は、辞めても雇用保険の基本手当を受け取れません。 非常勤の職員などはこの除外に当たらず、雇用保険に入っている場合もあります。給与明細の控除欄に雇用保険料があるかで見当がつくでしょう。

その代わりに国家公務員には、国家公務員退職手当法第10条の「失業者の退職手当」があります。勤続期間12か月以上(倒産や解雇などに相当する「特定退職者」は6か月以上)で退職した職員のうち、受け取った退職手当が、雇用保険に入っていたとみなした場合の基本手当の見込み額(日額×所定給付日数)に届かない人に、届かない分を失業している日について支給する仕組みです。支給はハローワークを通じて、基本手当と同じ支給の条件で行われます。勤続が短く退職手当が少ない人ほど、この差額が生じる可能性があります。 一方、特定退職者にあたらない人で、勤続期間が12か月に満たない場合は、原則として対象になりません。地方公務員の退職手当は、地方自治法第204条にもとづいて各自治体の条例で定めるため、同じ仕組みの有無や条件は勤め先の退職手当条例で確かめてください。

参考:e-Gov法令検索「雇用保険法」
参考:e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」
参考:e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」
参考:e-Gov法令検索「地方自治法」

国家公務員の自己都合の退職手当は、勤続10年以下だと基本額が6割に減る

国家公務員の退職手当は、退職日の俸給月額に、退職理由と勤続期間に応じた支給率と調整率を掛けた基本額に、調整額を加えて計算します。自己都合で辞める場合、国家公務員退職手当法第3条第2項により、基本額は勤続1年以上10年以下で100分の60、11年以上15年以下で100分の80、16年以上19年以下で100分の90に減らされます。

内閣人事局の支給率早見表(調整率を掛けた後の率)では、自己都合の場合、勤続3年で俸給月額の1.5066か月分、5年で2.511か月分、10年で5.022か月分です。勤続期間は1年未満の端数を切り捨てて数え、勤続期間そのものが6か月以上1年未満のときに限って1年として扱われます。さらに、勤続9年以下の自己都合退職者には調整額が支給されません。

国家公務員が自己都合で退職したときの退職手当の支給率(調整率を掛けた後)。勤続3年で俸給月額の1.5066か月分、5年で2.511か月分、10年で5.022か月分。勤続9年以下の自己都合退職には調整額が支給されない。
国家公務員が自己都合で退職したときの退職手当の支給率(調整率を掛けた後)。勤続3年で俸給月額の1.5066か月分、5年で2.511か月分、10年で5.022か月分。勤続9年以下の自己都合退職には調整額が支給されない。

実際の支給額も見ておきましょう。令和6年度に自己都合で退職した行政職俸給表(一)の職員2,163人の平均支給額は331.5万円、平均勤続年数は10年2月でした。勤続5年未満の830人に限ると、平均は27.3万円です。勤続が短いうちに辞めるなら、退職手当だけに頼らない資金計画を立てておくと安心です。 地方公務員は条例で決まるため、支給率は勤め先の人事担当や退職手当条例で確かめてください。

参考:e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」
参考:内閣官房内閣人事局「国家公務員の退職手当制度の概要」
参考:内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」
参考:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和6年度退職者)」

健康保険と年金は、共済組合から次の勤め先の制度へ切り替わる

公務員が加入する共済組合の資格は、国家公務員・地方公務員とも、退職した日の翌日に失われます。

年金は、切り替えといっても仕組みが途切れるわけではありません。公務員は共済組合の組合員であると同時に厚生年金保険の被保険者で、厚生年金保険法の区分では、国家公務員は第2号、地方公務員は第3号の厚生年金被保険者にあたります。民間企業に移れば第1号厚生年金被保険者になり、厚生年金への加入はそのまま続くのです。

健康保険は、退職の翌日に入社するなら、次の勤め先の健康保険に移るだけで済みます。間が空く場合は、共済組合の任意継続組合員になるか、国民健康保険か家族の被扶養者に切り替えます。共済組合の任意継続は、退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員だったことが条件で、退職の日から起算して20日を経過する日までに申し出る必要があり、続けられるのは最長2年です。入って1年未満で辞める人は、共済組合の任意継続を使えない点に注意してください。 国民年金への切り替えなど、間が空くときの手続きは転職のタイミングはいつがいい?で整理しています。

参考:e-Gov法令検索「国家公務員共済組合法」
参考:e-Gov法令検索「地方公務員等共済組合法」
参考:e-Gov法令検索「厚生年金保険法」

国家公務員は、在職中の求職と内定後の届出に決まりがある

国家公務員が在職中に転職活動をするときは、国家公務員法の再就職等規制を知っておく必要があります。在職中の求職を定めた条文は次のとおりです。

“
職員は、利害関係企業等(営利企業等のうち、職員の職務に利害関係を有するものとして政令で定めるものをいう。以下同じ。)に対し、離職後に当該利害関係企業等若しくはその子法人の地位に就くことを目的として、自己に関する情報を提供し、若しくは当該地位に関する情報の提供を依頼し、又は当該地位に就くことを要求し、若しくは約束してはならない。
国家公務員法(昭和22年法律第120号)
第106条の3第1項
条文を見る

「利害関係企業等」は、自分の職務で許認可や補助金の交付、立入検査、行政指導、契約などの相手方になっている企業や団体のこと。内閣人事局の案内によると、この規制の対象は本省課長補佐級以上に相当する職員で、行政職俸給表(一)では5級以上です。禁止されているのは利害関係企業等への求職で、転職活動そのものではありません。 一方で、再就職の約束(内定)をしたときは、役職を問わずすべての職員が、約束から1週間以内を目安に届け出ることになっており、届出を怠った職員は懲戒処分の対象になります。

辞めるときの手続きは、人事院規則8-12第51条が、職員から書面で辞職の申出があれば、任命権者は特に支障のない限り承認するものと定めています。地方公務員法は、離職後の元職員による働きかけの規制(第38条の2)を中心に定め、再就職の届出などは条例で定めることができる仕組みです。地方公務員の在職中の求職や届出、辞職の手続きは、勤め先の条例や規則、人事担当の案内で確かめてください。

項目国家公務員地方公務員
雇用保険常勤職員などは適用されない自治体の長が申請し承認を受けた職員は適用されない
退職手当の決まり国家公務員退職手当法自治体の条例
失業者の退職手当国家公務員退職手当法第10条に定めがある勤め先の条例で確かめる
健康保険国家公務員共済組合地方公務員共済組合
年金の区分第2号厚生年金被保険者第3号厚生年金被保険者
在職中の求職課長補佐級以上は利害関係企業等への求職が禁止勤め先の条例・規則で確かめる
内定後の届出すべての職員が約束から1週間以内を目安に届け出る条例で定める場合がある

参考:e-Gov法令検索「国家公務員法」
参考:内閣官房内閣人事局「転職や再就職のために求職活動をしようとする職員の方へ」
参考:e-Gov法令検索「人事院規則八―一二(職員の任免)」
参考:e-Gov法令検索「地方公務員法」

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民間・ベンチャーへの転職で評価されやすい経験と伝え方

公務の経験は、そのままの言葉では民間の採用担当者に伝わりにくいことがあります。伝え方のポイントは3つです。

  • 公務の経験は、業務の言葉に置き換えると伝わりやすい
  • 職務経歴書では、担当した範囲と数字、自分が変えたことを書く
  • ベンチャーを選ぶなら、制度と報酬の中身を書面で確かめる

公務の経験を、民間で通じる言葉に置き換える

人事院は令和8年6月、国家公務員に求められるスキルを整理した「国家公務員スキル一覧 Ver.1.0」を作成し、説明資料を公開しています。資料作成力や法令・制度理解、法・予算プロセス理解といった業務スキル、ステークホルダーマネジメント力や合意形成力、交渉力といった対人スキル、課題発見・設定力や有事対応力、プロジェクト管理力といった概念化スキルが並んでいます。公務で積んだ経験を、自分の言葉で説明するときの手がかりになるでしょう。

たとえば「予算の要求や執行を担当した」は「予算の策定と執行管理を担った」に、「条例や要綱、制度の運用・改正に関わった」は「規程やルールを設計し、運用した」に言い換えられます。「関係部署や議会、住民との調整を重ねた」なら「利害の異なる関係者の合意をまとめた」、「窓口や電話で住民の相談・苦情に応じた」なら「顧客対応・クレーム対応を担った」。「災害対応や選挙事務などの臨時の業務を担った」は「期限の動かせない案件を段取りし、有事に対応した」と書けます。肩書きや部署名より、何をどの規模で担当したかを伝えましょう。

公務の経験を民間で伝わる言葉に置き換えた例。予算の要求や執行を担当した→予算の策定と執行管理を担った。条例や要綱、制度の運用・改正に関わった→規程やルールを設計し、運用した。関係部署や議会、住民との調整を重ねた→利害の異なる関係者の合意をまとめた。窓口や電話で住民の相談・苦情に応じた→顧客対応・クレーム対応を担った。災害対応や選挙事務などの臨時の業務を担った→期限の動かせない案件を段取りし、有事に対応した。
公務の経験を民間で伝わる言葉に置き換えた例。予算の要求や執行を担当した→予算の策定と執行管理を担った。条例や要綱、制度の運用・改正に関わった→規程やルールを設計し、運用した。関係部署や議会、住民との調整を重ねた→利害の異なる関係者の合意をまとめた。窓口や電話で住民の相談・苦情に応じた→顧客対応・クレーム対応を担った。災害対応や選挙事務などの臨時の業務を担った→期限の動かせない案件を段取りし、有事に対応した。

参考:人事院「国家公務員スキル一覧」
参考:人事院「国家公務員スキル一覧 Ver.1.0 説明資料」

職務経歴書と面接では「範囲・数字・変えたこと」で伝える

公務員の職務経歴書は、異動のたびに部署名と業務名を並べただけになりがちです。担当した事業の予算規模、対応した件数、関わった関係者の数のように、数字で範囲を示すと読み手が規模をつかめます。前例どおりに回したことより、手順を見直して処理を早めた、様式を変えて問い合わせを減らした、といった「自分が変えたこと」を一つでも書けると、新しい環境で動ける裏づけにもなるはずです。

辞めたい理由をそのまま志望動機にせず、「次の職場で何をしたいか」に言い換えておくことも欠かせません。たとえば「前例踏襲がつらい」なら「改善の提案がすぐ形になる環境で、業務の仕組みづくりに関わりたい」といった具合です。書き方の型は職務経歴書の書き方にまとめています。

ベンチャー・スタートアップを選ぶなら、制度と報酬の中身を確かめる

公務からベンチャーやスタートアップに移ると、退職金制度の有無、評価や昇給の決まり方、任される仕事の範囲が大きく変わることがあります。公務の整った制度に慣れているなら、提示された年収だけで判断せず、労働条件を書面で受け取り、求人票や面接で聞いた内容と照らし合わせておきましょう。確かめる順序はスタートアップ転職で後悔しないためにで詳しく紹介しています。

採用する側は、公務員出身者のどこを見ているか

ここでは公務員出身者に限らず、転職者を採用した会社の側が挙げる理由から考えます。

厚生労働省の「令和7年転職者実態調査」は、5人以上の常用労働者を雇う事業所(有効回答9,154事業所)に、転職者を採用した理由を職種ごとに3つまで選んでもらっています。事務的な仕事で転職者を採用した事業所では、「離職者の補充のため」51.8%、「経験を活かし即戦力になるから」41.5%、「職場への適応力があるから」36.5%、「専門知識・能力があるから」22.6%、「新卒者の採用が困難なため」9.1%でした。専門的・技術的な仕事では、「経験を活かし即戦力になるから」64.1%、「専門知識・能力があるから」51.2%と、経験と専門性を挙げる割合がさらに高くなります。3つまでの複数回答のため、割合を足しても100%にはなりません。

令和7年転職者実態調査で、事務的な仕事で転職者を採用した事業所の主な採用理由(3つまでの複数回答)。離職者の補充のため51.8%、経験を活かし即戦力になるから41.5%、職場への適応力があるから36.5%、専門知識・能力があるから22.6%、新卒者の採用が困難なため9.1%。
令和7年転職者実態調査で、事務的な仕事で転職者を採用した事業所の主な採用理由(3つまでの複数回答)。離職者の補充のため51.8%、経験を活かし即戦力になるから41.5%、職場への適応力があるから36.5%、専門知識・能力があるから22.6%、新卒者の採用が困難なため9.1%。

この調査からは、事務系の中途採用で、欠員を埋める即戦力と並んで、新しい職場になじめるかどうかも採用の理由になっていることが分かります。公務員出身者にとって、異動のたびに新しい業務を覚えてきた経験は、職場への適応力を具体的に示せる材料です。 何年ごとにどんな部署へ移り、そのたびに何を覚えて成果につなげたかを、一つの流れとして話せるようにしておきましょう。

私たち編集部も、経営者の話を聞くたびに、経歴の肩書きより、その人が何を考えてどう動いたかが話の中心になると感じています。熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューでは、社長自身がどんな人と働きたいか、入社した人に何を任せているかを語っています。志望する業界の会社が何を求めているかを知る材料として読んでみてください。

経営者インタビューを読む|熱狂ベンチャーナビ

参考:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」

公務員を辞めたいときによくある質問

公務員を辞めたら失業保険(失業手当)はもらえますか?

国家公務員の常勤職員や、自治体が承認を受けた地方公務員の職員は、雇用保険の対象外のため、雇用保険の基本手当は受け取れません。 雇用保険法第6条第6号と同法施行規則第4条による扱いです。国家公務員の場合は、勤続期間12か月以上(倒産や解雇などに相当する特定退職者は6か月以上)で退職し、受け取った退職手当が基本手当の見込み額に届かないとき、国家公務員退職手当法第10条の「失業者の退職手当」として、失業している日について届かない分がハローワークを通じて支給されます。地方公務員は、勤め先の退職手当条例で確かめてください。

参考:e-Gov法令検索「雇用保険法」
参考:e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」

公務員を自己都合で辞めると、退職金はいくらですか?

国家公務員の場合、自己都合の支給率は勤続5年で俸給月額の2.511か月分、10年で5.022か月分です。 内閣人事局の支給率早見表にある、調整率を掛けた後の率で、勤続9年以下の自己都合退職には調整額がつきません。令和6年度に自己都合で退職した行政職俸給表(一)の国家公務員2,163人の平均支給額は331.5万円で、平均勤続年数は10年2月でした。地方公務員の退職手当は自治体の条例で決まります。

参考:内閣官房内閣人事局「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」
参考:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況(令和6年度退職者)」

在職中に転職活動をしても大丈夫ですか?

転職活動そのものは禁じられていませんが、国家公務員は相手先と役職によって規制があります。 本省課長補佐級以上に相当する職員、行政職俸給表(一)なら5級以上の職員は、許認可や補助金、契約などの相手方である「利害関係企業等」への求職が、国家公務員法第106条の3で禁じられています。再就職の約束(内定)をしたら、役職を問わず約束から1週間以内を目安に届け出る決まりです。地方公務員は、勤め先の条例や規則を確かめてください。

参考:内閣官房内閣人事局「転職や再就職のために求職活動をしようとする職員の方へ」

公務員を辞めたあと、また公務員に戻れますか?

国家公務員では、公務を一度離れた人を柔軟に採用できるようにする制度が、令和8年4月から整えられています。 人事院は令和8年8月の報告で、公務を離れて民間などで経験を積んだ「アルムナイ人材」を、専門的なスキルを持つ民間人材とあわせて柔軟に採用できるよう制度を整備したと説明しています。採用されるかどうかは各府省の選考しだいです。地方公務員は、各自治体の採用試験や募集の案内で確かめてください。

参考:人事院「令和8年 人事院勧告 報告文・勧告文」

公務員から民間に転職するとき、どんな経験が評価されますか?

令和7年転職者実態調査では、事務的な仕事で転職者を採用した事業所の4割前後が、「即戦力」や「職場への適応力」を採用理由に挙げています。 採用理由(3つまでの複数回答)は「離職者の補充のため」51.8%、「経験を活かし即戦力になるから」41.5%、「職場への適応力があるから」36.5%でした。公務員出身者に限った集計ではありませんが、公務の経験を予算の執行管理や関係者との合意形成のように業務の言葉に置き換え、異動のたびに新しい業務を覚えてきた経験とあわせて話せると、伝わりやすくなります。

参考:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」

まとめ

公務員を辞めたいと感じるのは、特別なことではありません。国の行政職で自己都合により退職し退職手当を受けた人は令和2年度から令和6年度にかけて約1.7倍に増え、地方公務員の普通退職者も令和6年度に78,760人と前年度を上回りました。辞めたい理由が転勤や長時間の超過勤務、処遇、仕事内容のどこにあるかを分けると、公務の中で試せることと、外に出る目安が見えてきます。

辞める前には、公務員ならではの制度を確かめておきましょう。国家公務員の常勤職員などは雇用保険の対象外で、代わりに失業者の退職手当という仕組みがあります。国家公務員の自己都合の退職手当は勤続10年以下だと基本額が6割に減り、健康保険と年金は共済組合から次の勤め先の制度へ。国家公務員には在職中の求職と内定後の届出の決まりもあり、地方公務員は条例で確かめる部分が多くなります。

参考:内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
参考:総務省「令和6年度 地方公務員の退職状況等調査」
参考:e-Gov法令検索「雇用保険法」
参考:e-Gov法令検索「国家公務員退職手当法」

私たち編集部は、公務で積んだ経験の多くは、民間で伝わる言葉に置き換えられると考えています。肩書きではなく、何を担当し、何を変えたかを、自分の言葉で語れるように準備してみてください。

公務の経験がどの業界でどう評価されるかを確かめてから決めれば、辞めるかどうかの判断も落ち着いてできます。

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編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
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