仕事を辞めたいほど疲れたら|限界のサインと先に使える休み方・相談先

仕事を辞めたいほど疲れているなら、辞めるかの結論はいったん置き、休むことと人に相談することから始めてください。有給休暇や休職など、辞めずに休む仕組みはいくつもあります。

国が公開している過労のセルフチェックには、「会社を辞めたいと頻繁に思うようになること」という質問が入っています。辞めたい気持ちそのものが、過労の徴候の1つに数えられているのです。

この記事では、疲れの正体と限界のサイン、辞める前に使える4つの仕組みと相談先、転職を考える順番を整理します。

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目次

仕事を辞めたいほどの疲れの正体|令和7年の国の調査で多いのは量・責任・人間関係

疲れて辞めたいと感じるとき、何に疲れているのかは人によって違います。国の調査から押さえておきたいのは次の3点です。

  • 常用労働者10人以上の民営事業所で働く人の67.5%が、仕事で強いストレスを感じている
  • その内容は「仕事の量」「仕事の失敗、責任の発生等」「対人関係」が上位
  • 強いストレスを感じる20〜29歳では、失敗や責任を挙げた人が6割を超える

厚生労働省が2026年8月に公表した「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査)」は、常用労働者10人以上を雇う民営事業所と、そこで働く労働者に、令和7年10月31日現在の状況をたずねた調査です。個人調査は約18,000人を対象に行われ、有効回答は8,393人でした。

この調査で、いまの仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じる事柄がある労働者は67.5%(令和6年調査は68.3%)。その人たちに内容を主なもの3つ以内で選んでもらうと、「仕事の量」と「仕事の失敗、責任の発生等」がともに39.5%で最も多く、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む。)」32.9%、「仕事の質」30.7%、「顧客、取引先等からのクレーム」22.1%、「会社の将来性」20.5%、「役割・地位の変化等」17.7%と続きます。3つまで選べる質問なので、割合を足すと100%を超えます。対人関係を挙げた人は、令和6年調査の26.1%から6.8ポイント増えました。

年齢別に見ると、20〜29歳で強いストレスを感じる事柄がある人は72.0%です。その内容は「仕事の失敗、責任の発生等」60.8%、「仕事の量」51.6%、「対人関係」26.1%、「仕事の質」21.8%、「顧客、取引先等からのクレーム」20.5%、「役割・地位の変化等」16.7%、「会社の将来性」14.5%でした。強いストレスを感じる人の中で比べると、20代は労働者全体より、失敗や責任を挙げた人が21.3ポイント、仕事の量を挙げた人が12.1ポイント多くなっています。

令和7年労働安全衛生調査で、強いストレスと感じる事柄がある労働者が挙げた内容(主なもの3つ以内の複数回答)。仕事の失敗、責任の発生等:20〜29歳60.8%・労働者計39.5%、仕事の量:51.6%・39.5%、対人関係(セクハラ・パワハラを含む):26.1%・32.9%、仕事の質:21.8%・30.7%、顧客、取引先等からのクレーム:20.5%・22.1%、役割・地位の変化等:16.7%・17.7%、会社の将来性:14.5%・20.5%。
令和7年労働安全衛生調査で、強いストレスと感じる事柄がある労働者が挙げた内容(主なもの3つ以内の複数回答)。仕事の失敗、責任の発生等:20〜29歳60.8%・労働者計39.5%、仕事の量:51.6%・39.5%、対人関係(セクハラ・パワハラを含む):26.1%・32.9%、仕事の質:21.8%・30.7%、顧客、取引先等からのクレーム:20.5%・22.1%、役割・地位の変化等:16.7%・17.7%、会社の将来性:14.5%・20.5%。

疲れの中身が量か、責任の重さか、人間関係かで、打てる手は変わります。原因ごとの対処は仕事を辞めたいのは甘え?原因別の対処法にまとめているので、ここからは、疲れが体や気持ちに出始めたときに辞める前に使えるものに絞って見ていきます。

参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 調査の概要」
参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 個人調査」

限界のサインは「過労徴候度セルフチェック」で確かめる

疲れが限界に近いかどうかを、自分の感覚だけで見極めるのは難しいものです。厚生労働省の「こころの耳」にある「働く人の過労徴候度セルフチェック」を使うと、受診や相談に動く目安をつかめます。

  • 質問は26問で、過去6か月の変化をたずねる
  • 「会社を辞めたいと頻繁に思うようになること」も質問に入っている
  • 体の症状によっては、すぐに医療機関を受診するよう勧めている

このセルフチェックは、実際に過労死した人の労災申請の際に作成された調査復命書に記載のあった前駆症状を活用して、過労のリスクを測るものです。質問は全部で26問、所要時間は約5分。過去6か月の間に、それぞれの変化が「全くなかった」「少しあった」「しばしばあった」「頻繁にあった」のどれに当たるかを選びます。質問は6つのまとまりに分かれていて、まとまりごとに、疑われる状態と取るべき対応が示される仕組みです。

まとまり質問の例こころの耳が示す対応
異常な睡眠欲求帰宅後、夕食や入浴もできないほど疲れ切ってすぐ寝てしまう慢性的な疲労状態が疑われる。仕事量の調整や休む時間の確保を職場で相談する
胸部等の違和感胸部の痛みや圧迫感、動悸主治医や産業保健スタッフに相談する。頻度が高ければすぐ受診
激しい痛み等の身体症状激しい頭痛やめまいひどい場合はすぐ受診し、ひどくなくても一度相談する
感情の不安定化些細なことですぐ怒る、会社を辞めたいと頻繁に思う非常に強いストレス状態が考えられる。原因の改善を相談する
脳心疾患関連の症状急に意識がなくなる、呂律が回らない危険な症状なので、すぐ受診する
異常な疲労感と眠気休息や睡眠をとっても回復しない疲労感、不眠睡眠の質の悪化が疑われる。不眠が2週間以上続くなら受診

どのまとまりも、「全くなかった」以外に1つでも当てはまれば、その状態が疑われるという示し方です。病名を決めるものではないので、動くための目安として使ってください。

対応の急ぎ方で分けると、3つの段階になります。胸の痛みや動悸が頻繁にある、激しい痛みがひどい、急に意識がなくなるといった体の症状は、すぐに医療機関へ。眠れない状態が2週間以上続くなら受診。疲れ切って帰宅後すぐ寝てしまう、会社を辞めたいと頻繁に思うといった状態は、職場の管理者や産業保健スタッフに相談し、仕事量の調整や休む時間の確保を考える段階です。

働く人の過労徴候度セルフチェックが示す対応を急ぎ方で3つに分けた図。すぐ受診:胸の痛みや動悸が頻繁にある、激しい痛みがひどい、急に意識がなくなるといった体の症状。受診:眠れない状態が2週間以上続く。相談して休む:疲れ切って帰宅後すぐ寝てしまう、会社を辞めたいと頻繁に思うといった状態は、職場の管理者や産業保健スタッフに相談し、仕事量の調整や休む時間の確保を考える。
働く人の過労徴候度セルフチェックが示す対応を急ぎ方で3つに分けた図。すぐ受診:胸の痛みや動悸が頻繁にある、激しい痛みがひどい、急に意識がなくなるといった体の症状。受診:眠れない状態が2週間以上続く。相談して休む:疲れ切って帰宅後すぐ寝てしまう、会社を辞めたいと頻繁に思うといった状態は、職場の管理者や産業保健スタッフに相談し、仕事量の調整や休む時間の確保を考える。

「辞めたい」が頻繁に浮かぶのも、徴候の1つ

「会社を辞めたいと頻繁に思うようになること」は、「些細なことにでもすぐに怒ったり、いらいらするようになること」などと並ぶ、感情の不安定化をたずねる質問です。こころの耳は、ここに当てはまる人は非常に強いストレス状態にあることが考えられるとし、職場の管理者や産業保健スタッフ等と相談しながら原因を改善することを挙げています。すぐには難しい場合、勤務後や休日に仕事から心理的に距離を置ける休み方を勧めています。

辞めたい気持ちが頻繁に浮かぶなら、それを決断の根拠にする前に、疲れのサインとして受け止めてください。 「死にたい」「消えたい」という気持ちがよぎるほどつらいときは、一人で抱えずに人に話すことが先です。厚生労働省の「まもろうよ こころ」で、電話やSNSで話せる相談先を探せます。

参考:厚生労働省「こころの耳:働く人の過労徴候度セルフチェック」
参考:厚生労働省「まもろうよ こころ」

辞める前に使える4つの仕組み|有給休暇・医師の面接指導・休職・傷病手当金

疲れが続いているとき、辞めずに休む、働き方を変えるための仕組みは、法律と会社の規則、健康保険に分かれて用意されています。

  • 年次有給休暇は、会社の承認なしに取れる
  • 月80時間を超える時間外・休日労働で疲れがたまったときや、ストレスチェックで高ストレスとされたときは、医師の面接指導を申し出られる
  • 休職は法律ではなく、会社の就業規則で決まる
  • 給与が出ない期間は、健康保険の傷病手当金がある

年次有給休暇は、疲れを回復するための休暇

厚生労働省は年次有給休暇を、一定期間勤続した労働者に対して「心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇」と説明しています。疲れを取るために使うのは、制度の趣旨そのものです。

雇い入れの日から6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば、10労働日の有給休暇が与えられます。日数は勤続年数に応じて増え、6年6か月以上で20労働日。パートタイム労働者などにも、所定労働日数に応じて与えられます。いつ休むかについて、労働基準法はこう定めています。

“
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
労働基準法(昭和22年法律第49号)
第39条第5項
条文を見る

「使用者」は会社、「時季」は休む日や期間のことです。休む日を決めるのは働く側で、取得に会社の承認は必要ありません。 会社が別の日に変えられるのは、その日に休まれると事業の正常な運営が妨げられるときだけで、厚生労働省は、有給休暇を与えないとすることはできないと説明しています。2019年4月からは、年10日以上が与えられる人について、会社が年5日を確実に取得させることも義務になりました。

まとまった日数を休みたいなら、残りの日数を先に確かめておきましょう。有給休暇は、発生した日から2年間使えます。

参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有休があると聞きましたが、本当ですか。」
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「年次有給休暇|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識」

月80時間超の時間外・休日労働で疲れがたまったときや高ストレスのときは、医師の面接指導を申し出られる

残業が続いて疲れがたまっているなら、医師と話せる仕組みが法律で用意されています。労働安全衛生法第66条の8は、一定の要件に当たる労働者に医師による面接指導を行うことを事業者に義務づけ、その要件を省令がこう定めています。

“
法第六十六条の八第一項の厚生労働省令で定める要件は、休憩時間を除き一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が一月当たり八十時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる者であることとする。
労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)
第52条の2第1項(抜粋)
条文を見る

「一週間当たり四十時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間」は、おおむね時間外労働と休日労働を合わせた時間にあたります。その時間が月80時間を超え、疲れがたまっている人が対象です。会社には、80時間を超えた労働者にその時間を知らせる義務があり、面接指導は本人の申出で行われます。申出があれば、会社は遅滞なく面接指導を行わなければなりません。 産業医が本人に申出を勧めることもできる仕組みです。

面接指導のあと、会社は医師の意見を聴き、必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講じなければならないと、労働安全衛生法第66条の8は定めています。辞めなくても、働き方そのものを見直すきっかけになりうる制度です。

では、この仕組みはどのくらい使われているのでしょうか。令和7年労働安全衛生調査では、派遣労働者を除く労働者のうち、過去1年間に1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった人は1.4%。そのうち、超えたすべての月で医師の面接指導を受けた人は16.2%、一部の月だけ受けた人は7.1%で、受けなかった人が76.7%でした。面接指導は疲労の蓄積があって本人が申し出た場合に行うものなので、受けなかった人がすべて対象だったとは限りません。それでも、超えた月に一度でも面接指導を受けた人は、合わせて23.3%にとどまります。

令和7年労働安全衛生調査で、過去1年間に1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった労働者(派遣労働者を除く、全体の1.4%)のうち、超えたすべての月で医師の面接指導を受けた人は16.2%、一部の月だけ受けた人は7.1%、受けなかった人は76.7%。
令和7年労働安全衛生調査で、過去1年間に1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があった労働者(派遣労働者を除く、全体の1.4%)のうち、超えたすべての月で医師の面接指導を受けた人は16.2%、一部の月だけ受けた人は7.1%、受けなかった人は76.7%。

ストレスチェックも、面接指導につながる入口です。常時50人以上の労働者を使用する事業場には毎年1回の実施が義務づけられ、結果は本人に通知される仕組みです。高ストレスで面接指導が必要とされた人が申し出れば、会社は医師による面接指導を行わなければならず、申し出たことを理由とする不利益な取扱いも、労働安全衛生法第66条の10で禁じられています。50人未満の事業場はいまは努力義務ですが、令和7年の法改正で、2028年4月1日から義務になります。

産業医の選任が義務づけられているのも、労働安全衛生法と同法施行令により、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。50人未満の事業場で働く人は、労働者健康安全機構の地域産業保健センターで、長時間労働者の面接指導の相談や、医師・保健師による健康相談を原則無料で受けられます。

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 個人調査」
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「ストレスチェックって な~に?|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識」
参考:厚生労働省「こころの耳:ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)」
参考:労働者健康安全機構「地域窓口(地域産業保健センター)」

休職は法律ではなく、会社の就業規則で決まる

有給休暇を使っても回復が追いつかないときに考えるのが休職です。厚生労働省のモデル就業規則は、休職を「労働者としての身分を保有したまま一定期間就労義務を免除する特別な扱い」と説明し、休職の定義や期間の制限、復職などについて労働基準法に定めはないとしています。休職できるかどうか、何か月休めるか、その間の給与がどうなるかは、会社ごとの就業規則で決まるということです。

就業規則で確かめたいのは、次の4点です。

確かめること見る点
休職できる条件欠勤が何か月続いたら休職になるか、医師の診断書が必要か
休職期間何か月、あるいは何年まで休めるか
休職中の賃金無給か、一部が支給されるか
期間が満了したとき復職できない場合に退職の扱いになるか

モデル就業規則の規程例は、業務外の傷病による欠勤が一定期間を超えたら休職とし、満了してもなお治らず働くことが難しければ退職とする形です。休職中を無給とするか有給とするかも、各事業場が決めて就業規則に定めます。期間の上限と満了したときの扱いを最初に確かめておくと、休んでいる間の見通しが立ちます。

メンタルヘルスの不調で長く休む人は、規模の大きな職場ではとくに珍しくありません。令和7年労働安全衛生調査(常用労働者10人以上の民営事業所が対象)では、過去1年間にメンタルヘルス不調で連続1か月以上休業した労働者がいた事業所は10.8%で、1,000人以上の事業所では90.3%でした。休業した労働者の割合は、常用労働者全体の0.6%です。

休むときの流れは、厚生労働省と労働者健康安全機構の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」が5つのステップで示しています。第1ステップの病気休業開始及び休業中のケアでは、主治医の診断書(病気休業診断書)を会社に出すと休業が始まり、会社は傷病手当金などの経済的な保障や相談先、休業の最長(保障)期間などを情報提供するよう示されています。そこから、主治医による職場復帰可能の判断、職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プラン(復帰日や就業上の配慮などを定めたもの)の作成、最終的な職場復帰の決定、職場復帰後のフォローアップへと続く流れです。

職場復帰支援の手引きが示す5つのステップ。第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア。主治医の診断書(病気休業診断書)を会社に出すと休業が始まり、会社は傷病手当金などの経済的な保障や相談先、休業の最長(保障)期間などを情報提供する。第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断。第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プラン(復帰日や就業上の配慮などを定めたもの)の作成。第4ステップ:最終的な職場復帰の決定。第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ。
職場復帰支援の手引きが示す5つのステップ。第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア。主治医の診断書(病気休業診断書)を会社に出すと休業が始まり、会社は傷病手当金などの経済的な保障や相談先、休業の最長(保障)期間などを情報提供する。第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断。第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プラン(復帰日や就業上の配慮などを定めたもの)の作成。第4ステップ:最終的な職場復帰の決定。第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ。

参考:厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則(令和7年12月版)」
参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 事業所調査」
参考:厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

業務外の病気やけがで給与が出ない期間は、傷病手当金で支えられる

休職中など給与が出ない期間の収入を支えるのが、健康保険の傷病手当金です。協会けんぽ(全国健康保険協会)では、次の4つの要件をすべて満たすと支給されます。

  • 業務外の事由による病気やけがの療養のための休業であること
  • 仕事に就くことができないこと
  • 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
  • 休業した期間について給与の支払いがないこと

自費の診療や自宅療養の期間も対象です。仕事に就けない状態かどうかは、療養担当者の意見等をもとに、本人の仕事の内容を考慮して判断されます。業務上や通勤途中の病気・けがは労災保険の給付対象で、傷病手当金の対象からは外れます。

協会けんぽの傷病手当金の4つの要件。業務外の病気・けが:業務外の事由による病気やけがの療養のための休業で、業務上や通勤途中のものは労災保険の対象。仕事に就けない:療養担当者の意見等をもとに、仕事の内容を考慮して判断される。4日以上休んだ:連続する3日間(待期)を含み4日以上仕事に就けなかった。待期には有給休暇や土日・祝日も含まれる。給与が出ない:休業した期間に給与の支払いがない。給与が傷病手当金の額より少なければ差額が支給される。
協会けんぽの傷病手当金の4つの要件。業務外の病気・けが:業務外の事由による病気やけがの療養のための休業で、業務上や通勤途中のものは労災保険の対象。仕事に就けない:療養担当者の意見等をもとに、仕事の内容を考慮して判断される。4日以上休んだ:連続する3日間(待期)を含み4日以上仕事に就けなかった。待期には有給休暇や土日・祝日も含まれる。給与が出ない:休業した期間に給与の支払いがない。給与が傷病手当金の額より少なければ差額が支給される。

有給休暇との関係で押さえておきたいのが、最初の3日間(待期)の扱いです。待期には有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれ、その間に給与が出たかどうかは関係ありません。 ただし連続して3日間休む必要があり、2日休んで3日目に出勤すると待期は成立しません。4日目以降に有給休暇を使った日は給与が支払われるので、その日は傷病手当金の対象外です。給与が出ていても傷病手当金の額より少ない場合は、差額が支給されます。

支給されるのは4日目以降の仕事に就けなかった日で、支給期間は支給を開始した日から通算1年6か月。協会けんぽの計算例によると、支給開始日より前の12か月の標準報酬月額を平均して17万円の人なら、1日あたり3,780円です。

参考:全国健康保険協会「傷病手当金」

一人で抱えないための相談先|困りごとで選ぶ

疲れを話せる相手がいても、体の不調や労働条件のことまで身近な人だけで抱えるのは負担が大きいものです。

  • ストレスを実際に相談した相手は家族・友人や上司・同僚が中心で、主治医や産業医は数%
  • 体や気持ちの不調は、医療機関やこころの耳へ
  • 残業や休み方、職場のトラブルは、総合労働相談コーナーやほっとラインへ

令和7年労働安全衛生調査では、仕事や職業生活のストレスを相談できる人がいる労働者は94.8%で、そのうち実際に相談したことがある人は71.2%でした。実際に相談したことがある人を100とすると、相談した相手(複数回答)は「家族・友人」68.3%、「上司」56.6%、「同僚」53.8%が多く、「地域のかかりつけ医・主治医」は3.9%、「産業医」は2.0%にとどまります。身近な人に話せているならそれは大切な支えですが、体に不調が出ているなら、医師や専門の窓口にもつないでおきましょう。

令和7年労働安全衛生調査で、仕事や職業生活のストレスを実際に相談したことがある労働者が相談した相手(複数回答)。家族・友人68.3%、上司56.6%、同僚53.8%、地域のかかりつけ医・主治医3.9%、産業医2.0%。
令和7年労働安全衛生調査で、仕事や職業生活のストレスを実際に相談したことがある労働者が相談した相手(複数回答)。家族・友人68.3%、上司56.6%、同僚53.8%、地域のかかりつけ医・主治医3.9%、産業医2.0%。
相談先向いている相談受付と費用
医療機関(主治医・かかりつけ医)眠れない、疲れが抜けないなど体や気持ちの不調こころの耳の「全国医療機関検索」で近くの医療機関を探せる
産業医・保健師長時間労働の面接指導、休み方や働き方の相談常時50人以上の事業場には産業医の選任義務がある
地域産業保健センター50人未満の事業場で働く人の健康相談、面接指導の相談原則無料
こころの耳の相談窓口仕事の悩みやストレスを聞いてほしいとき電話・SNSは平日17〜22時、土日10〜16時(祝日・年末年始などを除く)。メールは24時間受付。匿名・無料
総合労働相談コーナー残業、休みの取り方、パワハラなど職場の問題全国378か所。予約不要・無料で、面談か電話
労働条件相談ほっとライン違法な時間外労働や過重労働による健康障害など0120-811-610。平日17〜22時、土日・祝日9〜21時(年末年始を除く)。無料・匿名可
まもろうよ こころ「死にたい」「消えたい」と感じるほどつらいとき電話やSNSの相談先を探せる

こころの耳の相談には、利用規約への同意が必要です。ほっとラインから事業場に指導することはできません。相談の前に、いつごろから、どんな場面で疲れを感じるのかをメモしておくと、状況が伝わりやすくなります。

参考:厚生労働省「令和7年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 個人調査」
参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」
参考:労働者健康安全機構「地域窓口(地域産業保健センター)」
参考:厚生労働省「こころの耳:全国医療機関検索」
参考:厚生労働省「こころの耳の相談窓口」
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
参考:厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」
参考:厚生労働省「まもろうよ こころ」

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経営者にも、疲れて立ち止まった時期があった

取材で会社員時代の話を聞くと、休むつもりがないまま限界を迎えた経験を語ってくれる経営者もいます。2人の言葉を紹介します。

  • 休むつもりがなかったのに、体の不調と家族の一言で受診した
  • 「疲れた」と言えないまま働き続け、体力が持たずに倒れた

休むつもりはなかったが、家族の一言で受診した

株式会社アトラスパートナーズの杉浦誠二社長は、新卒で入った人材サービス会社で、取引が途絶えた企業を何百社と開拓し直す担当を任されました。1年だけと聞いていた担当が2年目も続くと告げられ、心が折れてしまったといいます。

“
体にも不調が出ていて、妻から「さすがに休職したほうが良いんじゃない」と言われました。休むつもりはなかったのですが、病院へ行ったところ、うつ病と診断されました。
株式会社アトラスパートナーズ 代表取締役
杉浦 誠二
インタビューを読む

杉浦社長は休職を経て復職し、勤めながら副業を始めたのちに独立しています。本人に休むつもりがなくても、体に出た不調と身近な人の一言が、立ち止まるきっかけになることがあります。 周りから「休んだほうがいい」と言われたら、それも判断の材料に加えてみてください。

「疲れた」と言えないまま、体力が持たずに倒れた

株式会社Nexorの髙橋優斗社長は、前職のスタートアップで社員が10数名から350名に増える時期を経験し、チームの数字が届かないときは自分の営業とメンバーを見ることの両方を抱えていたと振り返っています。

“
数字の余裕がないと心の余裕もなくなって、人に優しくできなくなる。それを救うために自分がめちゃくちゃ頑張って営業するんですけど、最終的に体力が持たなくて倒れました。
株式会社Nexor 代表取締役
髙橋 優斗
インタビューを読む

髙橋社長は、当時は「疲れた」と言えなかったと語り、いまの会社では「疲れた」と申告すれば休める手当を設けているそうです。疲れたと口に出せるかどうかは、本人の我慢強さだけでなく、職場の仕組みにも左右されるのでしょう。次の職場を選ぶときに確かめたい点は、このあと整理します。

社員の休み方をどう考えているかは、経営者によって答えが違います。気になる会社があれば、経営者本人の言葉で確かめてみてください。

経営者インタビューを読む|熱狂ベンチャーナビ

転職は、疲れが回復してから考える

体調が戻ってくると、同じ職場に戻るか、環境を変えるかを考える余裕が出てきます。押さえたいのは次の3つです。

  • 辞めるか続けるかは、休んで回復してから決めても遅くない
  • 職場に戻るときも、主治医の意見を聞きながら一歩ずつ進める
  • 転職するなら、次の職場に休める仕組みがあるかを確かめる

こころの耳は、職場復帰について、本人は焦らないこと、主治医の意見に耳を傾けることを勧めています。厚生労働省の手引きも、主治医の職場復帰可能の判断は日常生活での回復の程度によることが多く、職場で求められる業務遂行能力まで回復しているとは限らないとしています。回復の途中で「もう大丈夫」と感じても、主治医と相談しながら戻るほうが、ぶり返しを避けやすいでしょう。

休んで戻っても、量や責任の偏りといった働き方そのものが変わらず、同じ疲れがくり返されそうなら、そこで転職を具体的に考える段階です。正直なところ、疲れ切った状態で次の会社を選ぶと、目の前のつらさから離れることだけが基準になりやすいと感じます。回復してから選べば、同じ疲れ方をしないための条件まで見られるはずです。次を決めずに辞めるか在職中に探すかで迷うときは、仕事辞めたいけど次がない|先に辞めるか在職中に探すかの決め方と辞めたあとのお金で決め方と辞めたあとのお金を整理しています。

確かめること見方
残業の実績求人票の記載に加え、配属予定の部署の実績を面接で聞く
有給休暇の取りやすさ取得率や平均取得日数を公表しているか
休職制度休職できる期間、休職中の賃金、満了したときの扱い
相談できる人産業医や社内外の相談窓口があるか
勤務間インターバル終業から次の始業まで、一定の休息時間を確保する制度があるか

勤務間インターバルについて、労働時間等設定改善法第2条第1項は、事業主に「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」などの措置を講ずるよう努めることを求めています。義務ではなく努力義務で、令和7年就労条件総合調査(常用労働者30人以上の民営法人が対象)で導入している企業は6.9%でした。導入している会社は少数なので、ないことだけで候補から外すより、あれば休息を重視している手がかりの1つとして見るのが現実的です。

残業時間の全国平均と上限は残業時間の平均は月13.2時間|多い業界・少ない業界と上限45時間、公表データを使った職場の見分け方はホワイト企業とは?国の認定制度5つで見分ける方法で確かめられます。辞めると決めたら、退職の伝え方も参考にしてください。上司に直接伝える気力が残っていないときに選択肢に挙がる退職代行の仕組みと注意点は、退職代行とは?違法性の線引きと弁護士・労働組合・民間でできることの違いで整理しています。

参考:厚生労働省「こころの耳:職場復帰のガイダンス(働く方へ)」
参考:厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
参考:e-Gov法令検索「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」
参考:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査 結果の概要 労働時間制度」

仕事を辞めたいほど疲れたときによくある質問

疲れたという理由で有給休暇を取ってもいいですか?

年次有給休暇は、厚生労働省が「心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇」と説明している制度です。 取得に会社の承認は必要なく、会社が別の日に変えられるのは、請求した日に休まれると事業の正常な運営が妨げられるときだけです(労働基準法第39条第5項)。雇い入れの日から6か月継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤していれば10労働日が与えられ、発生した日から2年間使えます。

参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有休があると聞きましたが、本当ですか。」
参考:厚生労働省 確かめよう労働条件「年次有給休暇|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識」

休職するには医師の診断書が必要ですか?

休職の条件や手続きは法律ではなく会社の就業規則で決まるので、まず就業規則を確かめてください。 厚生労働省のモデル就業規則も、休職の定義や期間、復職について労働基準法に定めはないとしています。メンタルヘルスの不調で休む場合について、厚生労働省と労働者健康安全機構の職場復帰支援の手引きは、主治医の診断書(病気休業診断書)を会社に出すことで休業が始まる流れを示しています。

参考:厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則(令和7年12月版)」
参考:厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

傷病手当金と有給休暇は一緒に使えますか?

協会けんぽの場合、最初の3日間の待期には、有給休暇を使った日も含まれます。 待期は連続して3日間休むことで成立し、土日・祝日などの公休日も数えられます。一方、4日目以降に有給休暇を使って給与が支払われた日は、傷病手当金は支給されません。給与が出ていても傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。対象は業務外の病気やけがの療養で仕事に就けない場合で、業務上や通勤途中の病気・けがは労災保険の対象です。

参考:全国健康保険協会「傷病手当金」

会社に産業医がいない場合、どこに相談できますか?

産業医の選任が義務づけられているのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。 50人未満の事業場で働く人は、労働者健康安全機構の地域産業保健センターで、長時間労働者への医師による面接指導の相談や、医師・保健師による健康相談を原則無料で受けられます。

参考:e-Gov法令検索「労働安全衛生法施行令」
参考:労働者健康安全機構「地域窓口(地域産業保健センター)」

まとめ

仕事を辞めたいほど疲れたときは、辞めるかどうかを決める前に、休むことと相談することを先にしてください。令和7年労働安全衛生調査では、常用労働者10人以上の民営事業所で働く労働者の67.5%が仕事で強いストレスを感じており、その内容は仕事の量、失敗や責任、対人関係が上位でした。こころの耳の過労徴候度セルフチェックには「会社を辞めたいと頻繁に思うようになること」という質問もあり、辞めたい気持ちは疲れのサインとして受け止める価値があります。

辞める前に使える仕組みは4つです。会社の承認なしに取れる年次有給休暇、時間外・休日労働が月80時間を超えて疲れがたまったときやストレスチェックで高ストレスとされたときに申し出られる医師の面接指導、就業規則で条件が決まる休職、給与が出ない期間を支える健康保険の傷病手当金。体や気持ちの不調は医療機関やこころの耳へ、労働条件のことは総合労働相談コーナーへと、相談先も分けて使えます。

私たち編集部は、疲れて辞めたいと感じることを弱さの証拠だとは考えていません。回復した頭で選んだ道なら、残るにしても移るにしても、あとから納得しやすいはずです。

体調が落ち着き、次の働き方を考えられるようになったら、選べる職場を一緒に整理してくれる相手がいると、判断を急がずに済みます。

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編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
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