仕事辞めたいけど次がない|先に辞めるか在職中に探すかの決め方と辞めたあとのお金

仕事を辞めたいけど次がないときは、心身に余裕があれば在職中に探し、限界に近ければ辞める前に休むのが基本の順番です。辞めてから探し始めた転職者では、次の職場に入るまで4か月以上空いた人が半数を超えています。
見落としやすいのが、体調を崩して辞めたときの雇用保険です。すぐに働けない間は受け取れない代わりに、受け取れる期限を延ばす手続きがあります。
この記事では、先に辞めるか在職中に探すかの決め方と、辞めたあとのお金、在職中の段取りを公的な統計と制度で確かめます。
「次がない」と感じている段階でも、一人で結論を出す必要はありません。在職したまま、いまの経験でどんな仕事を選べそうかは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
次がないまま辞めると、次の職場まで何か月空くのか
先に辞めた場合にどれくらいの期間が空くのかは、厚生労働省の転職者実態調査で確かめられます。押さえておきたいのは次の3点です。
- 辞めてから転職活動を始めた人は、4か月以上空いた人が56.3%
- 在職中に始めた人は、間をあけないか1か月未満で移った人が3分の2
- この数字に、まだ次が決まっていない人や1年を超えて空いた人は入っていない
令和7年転職者実態調査は、5人以上の常用労働者を雇用する事業所で働く転職者に、令和7年10月1日現在の状況をたずねた調査です。ここでいう転職者は、期間の定めがないか1年以上の期間を定めて雇われたフルタイムの労働者のうち、雇われる前の1年間に他の企業で働いた経験があり、令和6年10月1日から令和7年9月30日までに今の勤め先に雇われた人。個人調査は13,975人を対象に行われ、有効回答は7,310人でした。
同じ調査の統計表(第27表)は、前の勤め先を辞めてから今の勤め先に入るまでの期間を、転職活動を始めた時期別に集計しています。前の勤め先を辞めてから転職活動を始めた人を100%とすると、空いた期間は1か月未満7.4%、1か月以上2か月未満12.7%、2か月以上4か月未満21.9%、4か月以上6か月未満17.1%、6か月以上8か月未満10.8%、8か月以上10か月未満6.8%、10か月以上21.6%でした。4か月以上を合わせると56.3%になります(不明1.8%)。
在職中に転職活動を始めた人を同じく100%とすると、離職期間なし31.2%、1か月未満35.5%、1か月以上2か月未満13.0%、2か月以上4か月未満8.8%、4か月以上6か月未満3.2%、6か月以上8か月未満2.1%、8か月以上10か月未満0.9%、10か月以上2.9%です(不明2.3%)。在職中に始めた人の3分の2は、間をあけずに、あるいは1か月未満で次の職場に移っていました。 4か月以上空いた人は、合わせて9.1%にとどまります。


ただし、この数字は「先に辞めると4か月以上かかる」という意味ではありません。辞めてから探した人の中には、しばらく休んでから動き始めた人や、時間をかけて次の職場を選んだ人も含まれます。転職者の定義上、辞めてから1年を超えて次の会社に入った人と、調査の時点でまだ次が決まっていない人も集計の外です。それでも先に辞めるなら、数か月単位で給与のない期間を見込んでおくほうが、統計に表れた実態に近いと言えます。
参考:厚生労働省「令和7年転職者実態調査の概況」
参考:e-Stat「雇用の構造に関する実態調査 転職者実態調査 令和7年 統計表 個人調査」
先に辞めるか在職中に探すかは、体の余裕とお金の見通しで決める
次がない状態で取れる進め方は、大きく分けて3つあります。
- 続けながら探す余力があるなら、在職中に探す
- 心身の不調が続いているなら、辞めるか決める前に休む
- 職場に戻ること自体が難しく、生活費の見通しが立つなら、先に辞めて探す
| 進め方 | 向いている状態 | 最初にすること | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| 在職中に探す | 疲れはあるが、平日の夜や休日に応募書類や面接の準備ができる | 探す期限と、辞める条件を決める | 面接の日程を勤務と調整する必要がある |
| 先に休む | 眠れない、休日も回復しないなど、心身の不調が続いている | 受診し、有給休暇や休職制度を就業規則で確かめる | 休職制度の有無や期間は会社ごとに違う |
| 先に辞めて探す | 休職制度がない、または職場に戻ることがつらく、生活費の見通しが立つ | 雇用保険を受け取れるかと、生活費が何か月もつかを確かめる | 自己都合なら給付制限があり、給与も手当もない期間ができる |
迷ったら、仕事の不満より先に体の状態を見る
順番を決めるとき、最初に見るのは辞めたい理由ではなく体の状態です。在職中の転職活動は勤務に上乗せされる負担なので、休日に休んでも疲れが抜けない状態で始めると、どちらも中途半端になりかねません。不調が続いているなら、「辞めるか、続けるか」の前に「休む」を挟んでください。 自分の状態を確かめるセルフチェックや原因ごとの対処は、仕事を辞めたいのは甘え?原因別の対処法で紹介しています。
正直なところ、辞めるか続けるかの二択で考えているうちは、休むという選択肢がすっぽり抜け落ちやすいと感じます。
お金の見通しは「何か月もつか」で数える
体に余力があるなら、次はお金です。1か月の生活費を書き出し、預貯金で何か月まかなえるかを数えてみましょう。そこに、雇用保険の基本手当を受け取れるかどうか、受け取れるならいつから何日分かを重ねると、先に辞めた場合に耐えられる期間が見えてきます。数えてみて、統計にあった数か月の空白を受け止めきれないと分かったら、在職中に探すほうが無理がありません。
辞める理由が会社の側にあるなら、記録を残しておく
長時間労働やハラスメント、賃金の不払いといった会社側に原因がある離職は、雇用保険の「特定受給資格者」にあたる場合があり、認められれば給付制限はかかりません。あたるかどうかは、ハローワークが本人と会社それぞれの主張と証拠書類から決めます。先に辞めるときほど、勤怠の記録やハラスメントを相談したやりとりなど、事情を示す資料を辞める前に集めておくと安心です。
参考:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
辞めたあとのお金|基本手当の日数・給付制限と、出ていくお金
先に辞めるかどうかを決めるには、辞めたあとに入るお金と出ていくお金を並べておく必要があります。要点は次の5つです。
- 基本手当を受け取るには、原則として離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要
- 自己都合で、雇用保険に入っていた期間が10年未満なら、受け取れるのは90日分
- 正当な理由のない自己都合なら、待期7日に続けて原則1か月の給付制限がかかる
- 早く決まれば再就職手当があり、雇用保険を受け取れない人には求職者支援制度がある
- 住民税・国民年金・国民健康保険は、辞めたあとも支払いが続く
受け取れる人と、受け取れる日数
雇用保険の基本手当を受け取れるのは、原則として、離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上ある人です。倒産・解雇などで辞めた特定受給資格者や、正当な理由のある自己都合などで辞めた特定理由離職者は、離職の日以前1年間に6か月以上あれば足ります。加えて、就職しようとする意思といつでも就職できる能力があるのに仕事に就けない「失業の状態」であることが条件です。
受け取れる日数は、雇用保険法が定めています。
「受給資格者」は基本手当を受け取る資格がある人、「算定基礎期間」は雇用保険に入っていた期間のことです。前の会社を辞めて1年以内に次の会社で雇用保険に入り、その間に基本手当などを受け取っていなければ、前の会社の期間も通算されます。倒産・解雇などによる特定受給資格者や、障害のある人など就職が困難な人には別の日数が定められていますが、自己都合で辞めた場合はこの第1項の日数です。雇用保険に入っていた期間が10年未満なら、受け取れるのは90日分。 辞めたあとの数か月をすべて基本手当で埋められるとは限らないのです。
自己都合なら、待期7日と給付制限が続く
手続きは、住所を管轄するハローワークに離職票を出し、求職の申込みをするところから始まります。そこから失業している日が通算7日になるまでが待期で、正当な理由なく自己都合で辞めた場合は、さらに給付制限が続きます。
給付制限は、退職日が2025年4月1日以降なら原則1か月、3月31日以前なら原則2か月です。退職日から数えて過去5年のうちに、正当な理由のない自己都合退職で2回以上受給資格の決定を受けた人は、3か月になります。基本手当は給付制限が明けたあとの失業認定日から支給の対象になり、認定日の約7日後に口座へ振り込まれる仕組みです。
2025年4月からは、教育訓練給付金の対象講座や公共職業訓練などを離職日前1年以内に受けていた人は待期のあとから、離職日以後に受ける人は受講を始めた日から、給付制限が解除されるようになりました。対象は2025年4月1日以降に受講を始めたもので、途中で退校した場合は当てはまりません。受講していることは、決められた時期までにハローワークへ申し出る必要があります。
もう1つ気をつけたいのが、受け取れる期間です。基本手当を受け取れるのは、原則として離職日の翌日から1年間。手続きが遅れてこの期間を過ぎると、所定給付日数が残っていても、その日以後は受け取れません。
1日あたりの額と、早く決まったときの再就職手当
1日あたりの基本手当日額は、賞与などを除いて離職前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割った賃金日額の、およそ50〜80%です。60〜64歳は45〜80%で、どの年齢でも賃金が低い人ほど高い率がかかります。年齢ごとの上限額は令和8年8月1日現在、30歳未満7,450円、30歳以上45歳未満8,270円、45歳以上60歳未満9,110円、60歳以上65歳未満7,830円となっています。厚生労働省は目安として、給与の総支給額が平均月15万円程度なら月11.2万円程度という例を示しています。
30歳未満で自己都合、雇用保険に入っていた期間が10年未満の人なら、上限の日額で計算しても90日分で67万500円が上限です。


反対に、早く次が決まったときに受け取れるのが再就職手当です。所定給付日数の3分の1以上を残して安定した職業に就き、8つの要件をすべて満たすと支給されます。額は、支給残日数が所定給付日数の3分の2以上なら基本手当日額×残日数×70%、3分の1以上なら60%で、計算に使う日額にも上限があります。ただし、給付制限を受けた人が待期のあと1か月の間に就職する場合は、ハローワークか、許可・届出のある職業紹介事業者の紹介による就職であることが条件です。受給手続きの前から内定していた会社への就職も対象になりません。
雇用保険を受け取れないときは、求職者支援制度がある
雇用保険の加入期間が足りない、受給が終わったといった理由で基本手当を受け取れない人には、求職者支援制度があります。無料の職業訓練を受けながら、要件を満たせば月10万円の給付金を受け取れる制度です。給付金の主な要件は、本人の収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下で、訓練の実施日すべてに出席すること(やむを得ない理由がある場合は8割以上)。給付金の要件を満たさなくても、訓練だけを無料で受けることはできます。
辞めたあとも出ていくお金
辞めたあとも支払いが続くものと、負担を軽くする仕組みは次のとおりです。
| 支払い | 辞めたあとの扱い | 確かめておくこと |
|---|---|---|
| 住民税 | 前年1年間の所得で計算されるため、辞めたあとも納付が続く | 1〜4月に辞めると、5月分までの残りが最後の給与などからまとめて差し引かれる場合がある |
| 国民年金 | 次の会社に入るまでは、自分で保険料を納める | 失業した本人の前年所得を除いて審査される、失業等による特例免除がある |
| 国民健康保険 | 任意継続か国民健康保険に入るか、家族の扶養に入る | 特定受給資格者と特定理由離職者は、失業時から翌年度末まで、国民健康保険料の計算で前年の給与所得を30/100とする軽減がある |
辞めてから気づきやすいのが住民税です。所得割は前年の1月1日から12月31日までの所得で計算されるため、辞めた年も、その翌年も、在職中の所得にもとづく税額の支払いが続くことがあります。会社員の住民税は給与から天引きされていますが、辞めればその天引きも終わり。地方税法第321条の5第2項によれば、1月1日から4月30日までに辞めた場合は、5月31日までの残りの月の分が、最後の給与や退職手当からまとめて差し引かれます。6月1日から12月31日までに辞めた場合にまとめて差し引かれるのは、本人が申し出たときです。どちらも、支払われる給与などが残りの額を超える場合に限られます。差し引かれなかった分は、市区町村から届く納税通知書で自分で納める普通徴収に切り替わる仕組みです。
国民年金と健康保険の切り替えの期限や手続き先は、転職のタイミングはいつがいい?で表にまとめています。
参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
参考:e-Gov法令検索「雇用保険法」
参考:都道府県労働局・ハローワーク「雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ 令和7年4月以降に教育訓練等を受ける場合、給付制限が解除され、基本手当を受給できます」
参考:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
参考:総務省「個人住民税」
参考:e-Gov法令検索「地方税法」
参考:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
参考:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
在職中に転職活動を進める5つの段取り
在職中に探すと決めたら、勤務と並行できる形に段取りを組みます。順番は次の5つです。


- 探す期限と、辞める条件を先に決める
- 先に辞めた場合に何か月もつかを計算しておく
- 経験を書き出して、応募書類の骨組みをつくる
- 求人サイト・転職エージェント・ハローワークを並行して使う
- 面接の時間をつくり、内定と入社日が決まってから退職を伝える
探す期限と、辞める条件を先に決める
在職中の転職活動は、終わりを決めないまま続けると、疲れだけがたまっていきがちです。「3か月探して書類が通らなければ探し方を変える」「その前に体調が崩れたら休職を相談する」のように、期限と分かれ道を先に書き出しておきましょう。期限を決めておけば、「いつまでこの状態が続くのか」という不安を、自分で区切れるようになります。
先に辞めた場合に何か月もつかを計算しておく
在職中に探すと決めても、途中で限界が来ることはあります。慌てないよう、1か月の生活費、預貯金、基本手当を受け取れる場合の日額と日数、辞めたあとも続く住民税や保険料を1枚に並べておきましょう。余裕が小さいと分かれば、在職中に決めきる理由がはっきりします。
経験を書き出して、応募書類の骨組みをつくる
平日の夜に応募先ごとの書類を一から書くのは、在職中には重い作業です。担当した業務と、そこで出した結果を先に書き出し、職務経歴書の骨組みを1つ作っておけば、応募のたびに直すのは志望先に合わせた部分だけで済みます。書き方の型と見本は、職務経歴書の書き方|4職種の見本とテンプレートを参考にしてください。
求人の探し方は1つに絞らない
求人を探す経路には、マイナビ・リクナビといった求人サイト、転職エージェント、ハローワークがあります。ハローワークは、在職中でも求職登録ができます。転職エージェントは厚生労働大臣の許可を受けた有料職業紹介事業者で、職業安定法第32条の3第2項により、省令で定める場合を除いて求職者から手数料を取ることができません。勤務の合間に求人を絞り込みにくいときは、条件の整理から相談できる窓口を並行して使えます。
面接の時間をつくり、内定と入社日が決まってから退職を伝える
面接の時間は、年次有給休暇やオンライン面接でつくるのが現実的です。年次有給休暇は1日単位が原則ですが、就業規則などに定めがあれば半日単位で、労使協定があれば年5日の範囲で時間単位で取れます。自分の会社でどの単位が使えるかを、就業規則で確かめておきましょう。
退職を伝えるのは、内定が出て入社日が決まってから。入社日から逆算して、就業規則の申し出の期限、引き継ぎ、有給休暇の消化を組み立てます。切り出し方や伝える日の逆算は、退職の伝え方|上司への切り出し方・タイミング・理由と引き止めの断り方の例文で例文つきで紹介しています。
参考:ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(仕事をお探しの方)」
参考:e-Gov法令検索「職業安定法」
参考:厚生労働省「確かめよう労働条件 年次有給休暇|しっかり学ぼう!働くときの基礎知識」
心身が限界なら、辞めるか決める前に休む・相談する
体調が理由で辞めたいなら、次の職場探しより先に、休むことと、お金の制度を確かめることを考えてください。
- 先にするのは、受診と、休めるかどうかの確認
- 会社の健康保険には傷病手当金があり、条件を満たせば退職後も続く
- 働けない間は基本手当を受けられないが、受け取れる期間を延ばせる
- 体調を理由にした退職は、正当な理由のある自己都合と判断される場合がある
朝になると体が重く出勤の支度が進まない、週末になっても職場の場面が頭の中でくり返される。こうした状態が続いているなら、まずは医療機関や産業医に相談し、有給休暇や休職制度で休めるかを確かめましょう。休職制度の有無や期間は会社によって違うため、就業規則で確認します。
休んでいる間の収入は、傷病手当金で支えられる
会社員が加入する健康保険には、業務外の病気やけがで仕事を休み、給与が出ないときの傷病手当金があります。全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合、連続3日間の待期のあと、4日目以降の仕事に就けなかった日が対象で、支給期間は支給開始日から通算1年6か月です。退職日までに続けて1年以上加入していて、退職日の時点で傷病手当金を受けているか受けられる状態なら、辞めたあとも引き続き受け取れます。ただし、いったん仕事に就ける状態になると、その後また働けなくなっても支給されません。
働けない間は、基本手当を受け取れる期間を延ばす
体調を崩して辞めた場合、すぐに働けない間は「いつでも就職できる能力」がないため、雇用保険の基本手当は受け取れません。その代わりに、受け取れる期間を延ばす仕組みが法律に置かれています。
「各号に定める期間」は、多くの人にとって離職日の翌日から1年間の受給期間を指し、「厚生労働省令で定める理由」には病気やけがも含まれるのです。30日以上続けて働けないときは、ハローワークに申し出れば、働けない日数を受給期間に加えられます。 加えられるのは最長3年で、本来の1年と合わせて4年までです。申請は30日以上働けなくなった日の翌日以降、早めに行うのが原則です。延長後の受給期間の最後の日まで受け付けられますが、遅れると所定給付日数のすべてを受け取れない場合があります。郵送や、委任状を添えた代理人による申請もできます。
傷病手当金で療養し、働ける状態に戻ってから基本手当の手続きをする、という順番を取れるわけです。
体調を理由にした退職は、給付制限がかからない場合がある
ハローワークが示す特定理由離職者の範囲には、体力の不足、心身の障害、病気、けがなどで辞めた人が含まれています。自分の都合ではあっても、やむを得ない事情があったと扱われる区分です。認められれば給付制限はかからず、受給に必要な加入期間も離職前1年間に6か月以上で足りるのです。国民健康保険料の軽減の対象にもなります。離職理由はハローワークが本人と会社それぞれの主張と証拠書類から決めるので、体調が理由だと示せる書類があれば、手続きのときに持っていくとよいでしょう。


話を聞いてもらえる窓口
一人で考え込んでしまうときは、厚生労働省の「こころの耳」に、働く人向けの電話・SNS・メールの窓口があり、名前を伏せて無料で相談できます。電話とSNSの相談は平日17時から22時と土日の10時から16時(祝日・振替休日・年末年始を除く)、メール相談は24時間受け付けで1週間以内に返信されます。利用には各相談の利用規約への同意が必要です。「消えたい」と思うほど追い込まれているときは、厚生労働省の「まもろうよ こころ」で、年代や話せる時間帯に合わせた電話やSNSの相談先を探せます。
参考:全国健康保険協会「傷病手当金」
参考:e-Gov法令検索「雇用保険法」
参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
参考:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
参考:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
参考:厚生労働省「こころの耳の相談窓口」
参考:厚生労働省「まもろうよ こころ」
経営者の話に見る、在職中に探した人と先に辞めた人
取材で経営者に話を聞いていると、本人や、仕事で出会った人が「辞めたい」と思った時期の話がよく出てきます。ここでは、在職中に探していた人と、先に辞めた人の2つの話を紹介します。
- 在職中に探していたから、会社が変わる場面を見届けてから決められた
- 先に辞めた人は、辞めたあとの時間を何に使うかを決めていた
在職中に探していたから、会社が変わる場面を見届けられた
人事制度づくりを支援する株式会社あしたのチームの山本拓馬社長は、入社3年目に福岡で担当した、当時100人ほどの小売店でのできごとを振り返っています。
この店長が辞めようとしていた理由は、給与の決まり方が経営者の感覚に委ねられていたことだったといいます。その後、店長は社内の仕組みづくりの中心になり、今では社長の右腕ともいえるポジションに就き、組織も約300名規模に成長したそうです。この話のように、在職中に探していれば、会社の側が変わる節目を見届けてから、残るか移るかを選び直せることもあります。 探し始めることと辞めることは、同じ決断ではないのです。
先に辞めた人は、辞めたあとの時間を何に使うかを決めていた
合同会社S.FARMSの蛯名洸CEOは、大学を卒業して上京したあとに勤めたハウスメーカーを辞めたときのことを、こう話しています。
蛯名CEOは帰国後、すぐに起業はせず、ITベンチャーに入社して2年ほど現場の経験を積んでから会社を立ち上げています。次の職場が決まっていない時期を、行き先と期間を決めたうえで過ごしていたと言えるでしょう。先に辞めるなら、空いた時間を何に使い、いつ次に動くのかを決めておくと、その期間を面接でも自分の言葉で説明しやすくなります。
経営者インタビューには、会社員時代の転職や独立のいきさつを語った話も少なくありません。次の当てがないまま迷っている時期に読むと、自分の状況と重ねられる場面が見つかるかもしれません。
仕事辞めたいけど次がないときによくある質問
次の仕事を決めずに辞めると、転職までどれくらいかかりますか?
令和7年転職者実態調査では、前の勤め先を辞めてから転職活動を始めた転職者のうち、次の勤め先に入るまで4か月以上空いた人が56.3%でした。 10か月以上空いた人も21.6%います。一方、在職中に始めた人では4か月以上空いた人は9.1%でした。この調査の転職者は、辞めてから1年以内に今の勤め先に雇われたフルタイムの人で、調査の時点でまだ次が決まっていない人は含まれません。休んでから探し始めた人も含まれるため、空いた期間がすべて「決まらなかった」期間とは限りません。
参考:e-Stat「雇用の構造に関する実態調査 転職者実態調査 令和7年 統計表 個人調査」
自己都合で辞めたら、失業保険はいつから受け取れますか?
退職日が2025年4月1日以降の、正当な理由のない自己都合退職なら、ハローワークで手続きをして待期7日が過ぎてから、原則1か月の給付制限がかかります。 支給の対象になるのは給付制限が明けたあとの失業認定日からで、認定日の約7日後に振り込まれます。過去5年のうちに正当な理由のない自己都合退職で2回以上受給資格の決定を受けた人は、給付制限が3か月です。そもそも受け取るには、原則として離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要になります。
参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
雇用保険の加入期間が1年未満で辞めると、何も受け取れませんか?
体調などの正当な理由のある自己都合や倒産・解雇などで辞めた場合は、離職前1年間に加入期間が6か月以上あれば、基本手当の受給資格を得られます。 正当な理由のない自己都合なら、原則どおり離職前2年間に通算12か月以上が必要です。これらの要件を満たせない人や受給が終わった人には、求職者支援制度があります。無料の職業訓練を受けながら、本人の収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下といった要件を満たせば、月10万円の給付金を受け取れる制度です。
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
参考:厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
体調を崩して辞める場合、辞める前に何を確かめればいいですか?
健康保険の傷病手当金を退職後も受け取れるかどうかを、辞める前に確かめてください。 協会けんぽの場合、退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も続けて受け取れます。雇用保険の基本手当は働けない間は受け取れませんが、30日以上続けて働けないときは申し出れば、最長3年を受給期間に加えられます。体調を理由にした退職が正当な理由のある自己都合と認められれば、給付制限はかかりません。
参考:全国健康保険協会「傷病手当金」
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
参考:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
辞めたあとの空白期間は、転職で不利になりますか?
空白の長さが選考にどう影響するかは、会社や職種によって異なり、公的な統計から一律には言えません。 令和7年転職者実態調査では、前の勤め先を辞めてから10か月以上空いて今の勤め先に入った人が、転職者全体の7.6%いました。面接で聞かれたときに備え、空いた期間に何をしていたか、なぜいま動くのかを話せるよう準備しておくと安心です。
参考:e-Stat「雇用の構造に関する実態調査 転職者実態調査 令和7年 統計表 個人調査」
まとめ
仕事を辞めたいけれど次がないときは、体の状態とお金の見通しで順番を決めます。心身に余裕があれば在職中に探し、不調が続いているなら辞めるか決める前に休む。職場に戻ること自体が難しく、生活費の見通しが立つなら先に辞める道もあります。令和7年転職者実態調査では、辞めてから活動を始めた転職者の56.3%が次の職場まで4か月以上空いており、在職中に始めた人では9.1%でした。
先に辞めるなら、雇用保険の要点を押さえておきましょう。正当な理由のない自己都合なら待期7日に続けて原則1か月の給付制限がかかり、雇用保険に入っていた期間が10年未満なら受け取れるのは90日分です。住民税や国民年金、健康保険の支払いは辞めたあとも続きます。体調が理由なら、傷病手当金の継続、受給期間の延長、特定理由離職者の扱いを先に確かめてください。
私たち編集部は、「次がない」という不安そのものより、その不安に押されて準備のないまま決めてしまうことのほうが心配だと考えています。辞める日を決めるのは、体とお金の見通しを紙に書き出してからでも遅くありません。
在職中に探すと決めたら、最初の一歩は、いまの経験で応募できる求人を知ることです。

