退職届の書き方|そのまま使える例文と封筒の入れ方、退職願・辞表との違い

退職届は、「〇月〇日をもって退職します」という意思を会社に一方的に伝える書類です。会社の承諾を得て辞めるための退職願とは役割が違い、役員や公務員が使う辞表とも別のもの。書く項目は表題・書き出し・本文・提出日・所属と氏名・宛名の6つで、自己都合なら理由は「一身上の都合により」で足ります。期間の定めのない雇用なら、民法上は退職を申し入れた日から2週間で雇用が終わります。ただし就業規則に申し出の期限が定められている場合もあるため、出す前に一度確認しておきましょう。この記事では、そのまま使える例文と封筒の入れ方、提出のタイミングと渡し方、受け取ってもらえないときの手段までを順に紹介します。
退職届を書く段階になっても、次の職場をどうするかまで決めきれていないなら、一人で抱え込む必要はありません。いまの経歴でどんな求人に応募できるかは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
退職届・退職願・辞表の違い|退職届は「辞めます」と伝える書類
3つの書類は、どれも職を離れるときに使うものですが、伝える中身と出す人が違います。
- 退職届は、退職することを会社に伝える書類
- 退職願は、退職させてほしいと会社に願い出る書類
- 辞表は、役員や公務員が職を辞するときの呼び方
| 書類 | 伝える中身 | 出す人 | 出すタイミングの目安 | 出したあと |
|---|---|---|---|---|
| 退職届 | 「〇月〇日をもって退職します」という通知 | 会社に雇われている人 | 退職日が決まったあと | 期間の定めのない雇用なら、承諾がなくても申入れから2週間で雇用が終わる |
| 退職願 | 「退職させてください」というお願い | 会社に雇われている人 | 退職を切り出すとき | 会社が承諾するまでは撤回できる |
| 辞表 | 役職や職を辞するという意思 | 取締役などの役員、公務員 | 辞任・辞職を申し出るとき | 会社に雇われている人の退職には一般に使わない |
いちばん大きな違いは、会社の承諾がいるかどうかです。 厚生労働省は、労働者からの一方的な意思表示で労働契約を終わらせることを「辞職」、労働者と使用者が合意して終わらせることを「合意退職」と説明しています。一般に、退職届は辞職の意思表示、退職願は合意退職の申込みにあたると考えられており、合意退職の申込みは、会社が承諾するまでは撤回できるとされています。
ただし、書類の名前だけで扱いが決まるわけではありません。厚生労働省のモデル就業規則(2025年12月改訂版)も、「退職を願い出て会社が承認したとき」に加えて、日数を会社ごとに決める形で「退職願を提出して〇日を経過したとき」を退職とする書き方をしており、呼び方や手続きは会社によってさまざまです。どちらを出すかは、勤め先の就業規則で確かめるのが確実でしょう。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する会社に就業規則の作成を義務づけ、退職に関する事項を必ず記載するよう定めています。会社には就業規則を掲示や書面の交付などで労働者に周知する義務もあるため、見当たらなければ人事や総務に尋ねて構いません。
辞表は、取締役などの役員や公務員が職を辞するときに使われてきた呼び方です。会社法第330条は、株式会社と役員の関係を「委任に関する規定に従う」と定めており、雇用とは仕組みが異なります。会社に雇われている人が辞めるときは、辞表ではなく退職届か退職願を使うのが一般的です。
参考:厚生労働省「スタートアップ労働条件 解雇と合意退職・辞職の違いについて教えてください。」
参考:厚生労働省「モデル就業規則について」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:e-Gov法令検索「会社法」
退職届の書き方|書く項目は6つ
退職届に書く項目は、表題・書き出し・本文・提出日・所属と氏名・宛名の6つ。順に埋めていけば形は整います。
- 表題は「退職届」、書き出しは「私儀」
- 本文は「一身上の都合により」と退職日
- 会社から退職を勧められて辞めるなら、理由の書き方に注意
- 提出日は実際に渡す日、宛名は会社の代表者
- 押印は必須ではないが、氏名は自筆にしておく
| 項目 | 書くこと | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 表題 | 退職届 | 1行目の中央に書く |
| 書き出し | 私儀 | 2行目の下寄せ。「私事」でもよい |
| 本文 | 退職理由と退職日 | 自己都合なら「一身上の都合により」。退職日は話し合いで決まった日 |
| 提出日 | 退職届を渡す日 | 縦書きは漢数字、横書きは算用数字 |
| 所属と氏名 | 部署名と氏名 | 氏名は自筆で。押印する場合は氏名の下か横 |
| 宛名 | 会社名と代表者の役職・氏名 | 自分の氏名より上の位置に書く。敬称は「殿」か「様」 |
表題は「退職届」、書き出しは「私儀」
表題は、1行目の中央に「退職届」と書きます。2行目の下のほうに置く「私儀(わたくしぎ)」は、「私事ですが」とへりくだって切り出す言葉。「私事(わたくしごと)」と書く例もあり、どちらを使っても問題はありません。横書きの場合は、書き出しを入れない形もあります。
本文は「一身上の都合により」と退職日を書く
本文は「このたび、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。」の一文で足ります。転職や家庭の事情など、自分の側の理由で辞めるなら、具体的な事情まで書く必要はありません。 「一身上の都合」は、個人的な事情による退職を表す決まった言い方です。
退職日には、上司と話し合って決まった日を書きます。有給休暇を消化してから辞める場合、退職日は最後に出社する日ではなく、雇用契約が終わる日。年月日を省略せずに書いておくと、あとで日付の食い違いが起きません。
会社から退職を勧められて辞めるなら、理由の書き方に注意
会社から退職を勧められて辞める場合は、「一身上の都合」と書く前に立ち止まってください。 雇用保険の基本手当では、正当な理由のない自己都合で退職した人に給付制限がかかります。厚生労働省のQ&Aによると、受給手続きの日から原則7日が過ぎた翌日から1か月間は基本手当を受けられず、この1か月は退職日が令和7年4月1日以降の場合の原則です。退職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上、正当な理由なく自己都合で退職して受給資格の決定を受けている場合は、3か月になります。
一方、ハローワークが示す特定受給資格者の範囲には、「事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者」が含まれています。厚生労働省のリーフレット「離職された方へ」によると、離職理由は、会社が離職証明書に書いた理由と、本人が離職票-2に書いた理由の両方を把握し、資料で事実を確かめたうえでハローワークが判定する仕組みです。会社の書いた理由に異議があれば、離職票-2でその旨を示し、事情を確認できる資料を持参できます。退職を勧められた、労働条件が聞いていた内容と大きく違ったといった事情があるときは、退職届の文面を決める前にハローワークに相談しておくと安心でしょう。
参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」
参考:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
参考:厚生労働省「離職された方へ 離職票-2の離職理由欄等の記載方法について」
提出日は実際に渡す日、宛名は会社の代表者
提出日には、退職届を実際に渡す日を書きます。本文の退職日とは別の日付なので、取り違えないようにしましょう。和暦か西暦かは、社内の書類に合わせると違和感がありません。
宛名は直属の上司ではなく、会社の代表者にします。退職届は上司個人ではなく、会社に対して出す書類だからです。「株式会社〇〇 代表取締役社長 〇〇〇〇殿」のように会社名・役職・氏名を書き、自分の氏名より上の位置に置きます。会社名は「(株)」と略さず、代表者の氏名は会社サイトの会社概要などで正しい表記を確かめておきましょう。敬称は「殿」がよく使われますが、「様」でも差し支えありません。
押印は必須ではないが、氏名は自筆にしておく
押印は法律上の必須要件ではありませんが、氏名は自筆で書いておくほうが確実です。 内閣府・法務省・経済産業省が2020年に公表した「押印についてのQ&A」は、契約について、書面の作成やその書面への押印は特段の定めがある場合を除き必要な要件とはされていないと整理しています。退職の申入れを定めた民法第627条にも、書面や押印を求める文言はありません。
同じQ&Aは、民事訴訟法第228条第4項により、本人の署名か押印がある私文書は本人が作成したものと推定される、とも説明しています。パソコンで作る場合も氏名だけは手書きにしておくと、本人が出した書類だと示しやすくなるのです。会社の書式や就業規則で押印を求められているときは、それに従いましょう。押す場合は、朱肉を使う印鑑を氏名の下か横に押すのが一般的で、インク浸透印は避けるのが無難です。
そのまま使える退職届の例文とテンプレート|縦書き・横書き
例文は、〇の部分を自分の情報に置き換えればそのまま使えます。会社に所定の書式がある場合は、そちらを優先してください。
- 縦書きは、便箋に手書きするときの基本の形
- 横書きは、パソコンで作るときに整えやすい形
- 退職願にするなら、表題と本文の結びを変える
- 手書きかパソコンかは自由で、用紙と筆記具には目安がある
縦書きの例文
縦書きは、右の行から左へ書き進めます。日付や数字は、「令和八年十一月三十日」のように漢数字で書きましょう。
| 書く位置 | 例文 |
|---|---|
| 1行目の中央 | 退職届 |
| 2行目の下寄せ | 私儀 |
| 3行目から | このたび、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。 |
| 本文の次の行、少し下げた位置 | 令和〇年〇月〇日 |
| 日付の次の行の下寄せ | 〇〇部〇〇課 氏名(自筆) 印 |
| 最後の行の上寄せ | 株式会社〇〇 代表取締役社長 〇〇〇〇殿 |
本文は1〜2行に収まります。用紙は1枚に収め、書き終えたら、宛名が自分の氏名より上に来ているかを確かめてください。
横書きの例文
横書きでは、日付や数字を算用数字で書きます。
| 書く位置 | 例文 |
|---|---|
| 1行目の右寄せ | 〇〇〇〇年〇月〇日 |
| 2行目の左寄せ | 株式会社〇〇 代表取締役社長 〇〇〇〇様 |
| 3行目の右寄せ | 〇〇部〇〇課 氏名(自筆) 印 |
| 次の行の中央 | 退職届 |
| 本文 | このたび、一身上の都合により、〇〇〇〇年〇月〇日をもって退職いたします。 |
| 最後の行の右寄せ | 以上 |
1行目の日付が提出日、本文の日付が退職日です。パソコンで作ったら、印刷してから氏名を自筆で書き入れます。
退職願にするなら表題と結びを変える
退職を切り出す段階で出すなら、退職願の形にします。変えるのは表題と本文の結びです。
| 項目 | 退職届 | 退職願 |
|---|---|---|
| 表題 | 退職届 | 退職願 |
| 本文 | このたび、一身上の都合により、〇年〇月〇日をもって退職いたします。 | このたび、一身上の都合により、勝手ながら、〇年〇月〇日をもって退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。 |
| 本文の日付の意味 | 決まった退職日 | 希望する退職日 |
退職願の日付は、話し合いで動く可能性がある「希望日」です。承諾を得て退職日が確定したあと、あらためて退職届の提出を求められることもあります。
手書きでもパソコンでもよい|用紙と筆記具の目安
退職届を手書きにしなければならない法律上の決まりはなく、パソコンで作っても構いません。 迷ったら、社内でふだん使っている書類の形式に合わせると自然です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 用紙 | 白無地の便箋、またはA4かB5の白い用紙 |
| 筆記具 | 黒のボールペンか万年筆。消せるペンは使わない |
| 書き損じ | 修正液や二重線で直さず、新しい用紙に書き直す |
退職届の封筒は白無地の長形、三つ折りで入れる
封筒にも、選び方と書き方の型があります。
- 白無地で、郵便番号の枠がない封筒を選ぶ
- 表に「退職届」、裏に所属と氏名を書く
- 三つ折りにして、書き出しが上に来る向きで入れる
- 郵送するときは封筒を二重にし、添え状を付ける
封筒の選び方と書き方
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 封筒の種類 | 白無地で、郵便番号の枠がないもの。中が透けにくい二重封筒だと安心 |
| サイズ | B5の用紙なら長形4号、A4の用紙なら長形3号 |
| 表面 | 中央に「退職届」と縦書きする。宛名は書かない |
| 裏面 | 左下に所属部署と氏名を書く |
| 封 | 手渡しなら封をしなくてもよい。郵送するならのり付けし、封じ目に「〆」を書く |
封筒の文字は、用紙を入れる前に書いておくと書きやすく、中の書類に跡が付きません。茶封筒は事務用の印象が強いため、避けるのが無難です。
三つ折りにして入れる手順
- 文面を上にして置き、下から3分の1を折り上げる
- 上から3分の1を折り下げて重ねる
- 封筒の裏側から見て、用紙の書き出しが右上に来る向きで入れる
この向きで入れておけば、受け取った人が封筒から出して開いたとき、すぐに表題が目に入ります。
郵送するときは封筒を二重にし、添え状を付ける
休職中や遠方への転居などで手渡しできないときは、郵送でも出せます。退職届を入れた封筒は、ひと回り大きい郵送用の封筒に入れ、表に会社の所在地と宛先を書きましょう。宛先は、ふだんの提出先である上司や人事担当者にします。同封する添え状は、退職届を同封したことと、直接お渡しできないお詫びを短く書けば十分です。郵送することは、事前に電話やメールで上司に伝えておくと行き違いが起きません。送るときは郵便局の窓口から、送った記録が残る書留などを選びます。
退職届を出すタイミングは、就業規則と民法の2週間で考える
退職届は、上司に退職の意思を伝え、退職日が決まってから出すのが一般的な流れです。期限の考え方には、民法と就業規則という2つの物差しがあります。
- 民法では、期間の定めのない雇用は申入れから2週間で終わる
- 就業規則に「1か月前」などの期限があれば、まずはそれに沿う
- 退職を切り出す相手は直属の上司で、書類より先に口頭で伝える
- 退職届は直属の上司に手渡しし、退職日までの段取りを決める
- 送り出す側には、辞めたあとの関係を大切にしている社長もいる
民法では、申入れから2週間で雇用が終わる
期間の定めのない雇用で、退職の時期を定めているのは民法第627条第1項です。
「雇用の期間を定めなかったとき」は、正社員のように契約期間の決まっていない雇い方のこと。「解約の申入れ」は、ここでは退職の意思を会社に伝えることを指します。会社の承諾がなくても、申し入れた日から2週間が過ぎれば雇用は終わる、というのが条文の意味です。 厚生労働省のモデル就業規則の解説も、会社の承認がなくても、退職の申出をした日から起算して原則として14日を経過したときは退職となると説明しています。
以前は月給制などに例外がありましたが、2020年4月施行の民法改正で、労働者からの辞職の予告期間は月給制や年俸制でも一律2週間になったと厚生労働省は説明しています。同じ条の第2項は、いまは「使用者からの解約の申入れ」についての定めです。労働局のQ&Aなどには、月給制なら賃金計算期間の前半までに申し入れる、という改正前の説明が残っているものもあります。
参考:e-Gov法令検索「民法」
参考:厚生労働省「モデル就業規則について」
参考:厚生労働省「スタートアップ労働条件 解雇と合意退職・辞職の違いについて教えてください。」
就業規則に「1か月前」とあるときの考え方
就業規則に「退職の申し出は1か月前までに」などと書かれている場合、民法の2週間とどちらに従うかについては、公的機関の説明にも幅があります。
| 資料 | 説明の要旨 |
|---|---|
| 厚生労働省「スタートアップ労働条件」 | 民法627条の期間を超える予告期間の設定を無効と判断した裁判例が多く、就業規則で延ばすことはできない |
| 茨城労働局 事業主向けQ&A | 就業規則が優先するという見解がある一方、民法を強行規定と解する裁判例もあり、それによれば2週間で退職の効力が生じる |
| 茨城労働局 労働者向けQ&A | 1か月前など社会通念上著しく長くない定めなら、トラブル防止のため、まず就業規則に沿って申し出たほうがよい |
| 大阪労働局 Q&A | 就業規則に退職の規定があれば原則としてそれが適用されるので確認を。極端に長い期間は無効とされる場合もある |
どの説明も、就業規則の期限がどれだけ長くても通る、とはしていません。 茨城労働局は事業主向けのQ&Aで、新しい人が見つかるまでいつまでも退職を許可しないということはできない、と明記しています。
実際の進め方としては、就業規則の期限に間に合うように早めに伝え、引き継ぎも含めて退職日を話し合うのが現実的です。話し合いがまとまらない、退職そのものを認めてもらえないといったときに、民法の2週間が拠りどころになります。
参考:厚生労働省「スタートアップ労働条件 解雇と合意退職・辞職の違いについて教えてください。」
参考:茨城労働局「退職の申出があった際には」
参考:茨城労働局「やめたいのにダメと言われて困ってる」
参考:大阪労働局「よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)」
伝え方の要点|書類より先に、直属の上司へ口頭で
退職届をいきなり差し出すより、まず直属の上司に口頭で退職の意思を伝え、退職日を相談してから書類を出す順番が一般的です。押さえておきたい点は次の5つ。
- 最初に伝える相手は直属の上司にする
- 会議室など、二人で話せる場所と時間をとってもらう
- 退職の意思が固まっているなら、相談ではなく決めたこととして伝える
- 理由は簡潔にし、職場への不満を並べない
- 繁忙期や引き継ぎの都合も聞いたうえで、退職日を決める
渡し方と、退職日までの流れ
退職日が決まったら、退職届を封筒に入れて直属の上司に手渡しします。封筒ごと両手で差し出し、「退職届です。よろしくお願いいたします」と一言添えれば十分です。上司が席を外していても、机に置いて済ませるのは避けましょう。受け取ったかどうかがあいまいになるため、時間をとってもらって直接渡すのが確実です。人事部に直接出すよう指示された場合は、それに従います。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 退職を決めたら | 就業規則で、申し出の期限と提出する書類を確認する |
| 申し出の期限より前 | 直属の上司に口頭で退職の意思を伝え、退職日を相談する |
| 退職日が決まったら | 退職届を書き、直属の上司に手渡しする |
| 退職日までの期間 | 引き継ぎの資料をつくり、有給休暇の残りと最終出社日を確かめる |
| 最終出社日 | 会社から借りている物を返し、退職後に届く書類の送り先を確認する |
辞めたあとも関係は続く
退職届を受け取る側の経営者は、辞めていく人をどう見ているのでしょうか。取材で社長の話を聞いていると、辞めたあとの関係まで気にかけている人は少なくないと感じます。
株式会社CBTソリューションズの野口功司社長は、社内の人間関係について次のように語っています。
メンタルヘルスラボ株式会社の古德一暁社長も、職場の雰囲気を尋ねられてこう答えています。
退職は、関係を断ち切る手続きではなく、関係の形を変える手続きでもあります。 期限を守って伝え、引き継ぎを済ませ、書類を整えて渡すことは、辞めたあとの関係を保つための準備にもなるはずです。
退職届を受け取ってもらえないときは、内容証明郵便で送れる
上司が退職届を受け取らない、話を聞いてもらえないといった場合でも、退職できなくなるわけではありません。まずは手渡しを試み、それでも難しいときに次の手段を使います。
- 期間の定めのない雇用なら、退職の申入れに会社の承諾は要らない
- 退職の申入れは会社に届いた時点で効力を持つため、届いた記録を残す
- 内容証明と配達証明を付けた郵便なら、出した内容と配達の事実が証明される
- 話がこじれたら、総合労働相談コーナーに無料で相談できる
会社の承諾がなくても、退職は申し入れられる
大阪労働局のQ&Aは、上司が退職願を受け取ってくれないという相談に対し、期間の定めのない雇用契約は民法第627条により申入れの日から2週間で終了するため、会社の同意がなければ退職できないというものではないと答えています。受け取りを断られたときは、その日時と相手、言われた内容をメモしておきましょう。あとで経緯を説明するときの材料になります。
ポイントは、届いたことを示せるかどうか。民法は、意思表示の効力が生じる時期を次のように定めています。
「意思表示」はここでは退職の申入れ、「到達」は会社に届いたことを指します。退職の申入れは会社に届いた時点で効力を持つため、届いた日を後から示せる方法で送ることが欠かせません。 同じ条の第2項は、相手が正当な理由なく通知の到達を妨げたときは、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす、と定めています。
参考:大阪労働局「よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)」
参考:e-Gov法令検索「民法」
内容証明と配達証明で、出した内容と届いたことを証明する
手渡しできないときに使えるのが、日本郵便の内容証明です。内容証明は、いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに差し出したかを、差出人が作った謄本によって日本郵便が証明する制度。証明されるのは文書が存在したことで、書かれた内容が真実かどうかではありません。内容証明は一般書留にする必要があり、配達証明を付ければ、配達したという事実も証明されます。
| サービス | 証明できること | 加算料金 |
|---|---|---|
| 内容証明 | いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに差し出したか | 480円。2枚目以降は1枚ごとに290円増 |
| 配達証明 | 一般書留とした郵便物を配達した事実 | 350円 |
表の加算料金に、基本の郵便料金と一般書留の料金が加わります。料金は、2026年10月時点で日本郵便が案内しているものです。
窓口で出すときは、受取人に送る内容文書と、その謄本2通、差出人と受取人の住所氏名を書いた封筒、料金を提出します。内容証明を扱うのは集配郵便局など指定された郵便局だけなので、事前に確認しておきましょう。窓口で出す内容証明は1枚あたり520字までと決まっているので、文面を退職の意思と退職日、差出日、氏名に絞れば1枚に収まります。
インターネットから24時間差し出せるe内容証明もあります。Wordで作った文書をアップロードすると、印刷から封入、発送までを日本郵便が行う仕組みです。文書1枚で謄本を通常送付する場合の料金は、郵便料金と一般書留料金を含めて1,295円です。配達証明を付けると350円が加わります。
参考:日本郵便「内容証明」
参考:日本郵便「配達証明」
参考:日本郵便「e内容証明(電子内容証明)」
話がこじれたら、総合労働相談コーナーへ
退職を認めてもらえない、受け取りを拒まれ続けるといった状態が続くなら、一人で抱え込まずに公的な窓口へ相談できます。厚生労働省の総合労働相談コーナーは、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内など378か所に置かれた相談窓口。解雇や雇止め、いじめ・嫌がらせなど、あらゆる分野の労働問題を対象としており、専門の相談員が面談か電話で対応します。予約は不要で、利用は無料です。
退職届の書き方に関するよくある質問
退職届はいつまでに出せばいいですか?
まず就業規則で申し出の期限を確認し、それに間に合うように上司へ伝えるのが基本です。 期間の定めのない雇用なら、民法第627条第1項により、退職の申入れから2週間で雇用は終わります。就業規則で「1か月前」などと定めている場合の扱いは公的機関の説明にも幅があるため、円満に辞めたいなら就業規則の期限に沿い、話し合いがまとまらないときに民法の2週間を拠りどころにするのが現実的です。
退職届を出したあとで撤回できますか?
退職を願い出る書類か、一方的に伝える書類かで考え方が変わります。 厚生労働省は、労働者が合意退職を申し込んだ場合、会社の承諾があるまでは申込みを撤回できると説明しています。これに対し、退職を一方的に伝える退職届は、会社に届いた時点で効力が生じる意思表示です。取り下げたいときは会社と話し合って同意を得る必要がある、と考えておきましょう。迷いが残るうちは、退職届を出す前に上司と話す時間をとるほうが安全です。
参考:厚生労働省「スタートアップ労働条件 解雇と合意退職・辞職の違いについて教えてください。」
パートや契約社員でも、2週間前に退職届を出せば辞められますか?
分かれ目は、雇用形態の名前ではなく、契約期間の定めがあるかどうかです。 パートやアルバイトでも、契約期間の定めがなければ民法第627条第1項の2週間が当てはまります。では、契約期間の定めがある場合はどうでしょうか。大阪労働局は、契約期間中は原則として労働者も辞めることができず、民法第628条により、やむを得ない事由があるときは直ちに契約を解除できると説明しています。同条には、その事由が当事者の一方の過失によって生じたときは相手方に損害賠償の責任を負う、という定めもあるのです。また労働基準法附則第137条により、1年を超える期間の労働契約を結んだ人は、契約の初日から1年を経過した日以後であれば、使用者に申し出ていつでも退職できます。ただし、一定の事業の完了に必要な期間を定めた契約は対象外です。厚生労働大臣が定める基準に当たる高度な専門的知識等を持ち、それを必要とする業務に就く人や、60歳以上の人の契約も除かれます。
参考:大阪労働局「よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)」
参考:e-Gov法令検索「民法」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
退職届はメールで送ってもいいですか?
民法第627条の条文に申入れの方法は書かれていませんが、勤め先の就業規則で書面の提出が定められているなら、それに従うのが確実です。 メールは送った記録が残る一方、正式な提出として扱ってもらえるかは会社の運用次第。出社できる状況なら書面を手渡しし、手渡しが難しいときは配達証明を付けた内容証明郵便を使う、という順番で考えると無理がありません。
参考:e-Gov法令検索「民法」
参考:日本郵便「内容証明」
退職届に書く退職理由は、本当の理由でなくてもいいですか?
自分の側の事情で辞めるなら、「一身上の都合により」と書けば足り、具体的な理由まで書く必要はありません。 一方、会社から退職を勧められた、労働条件が聞いていた内容と大きく違ったといった事情で辞める場合は、雇用保険の扱いが変わる可能性があります。ハローワークが示す特定受給資格者の範囲には、事業主から退職を勧奨されたことによる離職などが含まれており、離職理由は会社と本人の主張を資料で確かめたうえでハローワークが判定します。こうした事情があるときは、書く前にハローワークへ相談しておきましょう。
参考:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
まとめ
退職届は、退職の意思を会社に一方的に伝える書類です。会社の承諾を前提にする退職願、役員や公務員が使う辞表とは役割が違い、出す前には就業規則で書類の種類と申し出の期限を確かめておきます。書く項目は表題・書き出し・本文・提出日・所属と氏名・宛名の6つ。自己都合なら理由は「一身上の都合により」で足り、氏名を自筆にしておけば、パソコンで作っても本人の書類だと示しやすくなります。
期間の定めのない雇用なら、民法上は申入れから2週間で雇用が終わります。就業規則の期限との関係は公的機関の説明にも幅があるため、円満に辞めるなら期限に沿って早めに伝え、受け取ってもらえないときは内容証明と配達証明で記録を残しましょう。会社から退職を勧められて辞める場合は、文面を決める前にハローワークへ相談しておくと安心です。
正直なところ、退職届そのものは数行で書き終わる書類です。それでも、辞めた人とのつながりを大切にする社長の話を聞くたびに、その数行をどう渡すかで辞めたあとの関係が変わるのだと感じます。働く人との関係を大事にしている会社の空気は、経営者インタビューからも読み取れます。次の職場に出す書類の準備には、履歴書のAI作成はバレる?見抜かれない書き方のコツもあわせてどうぞ。
退職届を出す前後は次の職場を考え始める時期でもあり、辞めたあとの選択肢を早めに知っておくと、退職日の決め方にも余裕が生まれます。

