介護タクシーに転職するには?必要な資格と2つの働き方、開業の条件

介護タクシーに転職するには、運転のための普通第二種免許が土台になります。介護保険の「通院等乗降介助」まで担うなら、介護職員初任者研修などの資格も必要です。
意外と知られていないのが、介護保険から支払われるのは乗り降りの介助の部分で、運賃は介護保険の対象外だという点。運転と介助は、別々の制度で動いているのです。
この記事では、介護タクシーの制度上の位置づけと働き方の入口、資格が要る場面、開業の条件と収入の目安を順に整理します。
介護タクシーの求人は、二種免許の取得支援があるか、介護保険の輸送を扱う事業所かで条件が大きく変わります。いまの経験で応募できる求人がどれくらいあるかは、転職エージェントを活用すれば無料で確認できます。
介護タクシーとは|福祉輸送事業限定の許可で走るタクシー
介護タクシーとは、道路運送法の一般乗用旅客自動車運送事業のうち、要介護者や障害のある人などの輸送に業務を限った「福祉輸送事業限定」の許可を受けて走るタクシーです。「介護タクシー」は通称で、国の通達では「福祉輸送サービス」と呼ばれています。
- 法律上は、街を走るタクシーと同じ一般乗用旅客自動車運送事業に入る
- 乗せられる人は、要介護・要支援認定を受けた人や身体障害者手帳を持つ人などと、その付添人に限られる
- 流し営業はできず、運送の引受けは営業所で行う
道路運送法第3条は、1個の契約で一定の乗車定員未満の自動車を貸し切って旅客を運ぶ事業を「一般乗用旅客自動車運送事業」と定めています。街のタクシーも介護タクシーも、同じ事業区分の中にあるわけです。ハイヤーとタクシーが別の法律でどう分けられているかは、ハイヤーとタクシーの違いとは?料金・営業形態・法律上の区分を比較で扱っています。
違いが出るのは、許可に付く条件のほうです。国土交通省自動車交通局長の通達「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」(平成18年9月25日。公開されている版は平成21年11月25日の一部改正後)は、業務の範囲を福祉輸送サービスに限る許可を「福祉限定許可」と呼び、各地方運輸局に公示の改正などの手続きを求めました。九州運輸局の公示(令和5年10月11日一部改正)を例に、一般のタクシーとの違いを並べると次のようになります。
| 比べる点 | 一般のタクシー | 介護タクシー(福祉限定許可) |
|---|---|---|
| 乗せられる人 | 限定なし | 要介護者等とその付添人 |
| 運送の引受け | 流し・客待ち・配車など | 営業所で引き受けた輸送に限る |
| 使う車 | 事業用自動車 | 福祉自動車、または資格を持つ人が乗るセダン型等の一般車両 |
| 営業区域 | 運輸局の公示で定める区域 | 原則として都道府県単位 |
| 最低車両数 | 運輸局の公示で定める台数 | 1営業所に1両以上 |
ここでいう要介護者等は、通達で次の5つに整理されています。
- 身体障害者手帳の交付を受けている人
- 介護保険の要介護認定を受けている人
- 介護保険の要支援認定を受けている人
- 上の3つのほか、肢体不自由や内部障害、知的障害、精神障害などで、ひとりでタクシーなどの公共交通機関を使うのが難しい人
- 消防機関や、消防機関と連携するコールセンターを通じて、患者等搬送事業者の搬送サービスを受ける患者
乗せる人の範囲がそのまま許可の条件として書き込まれる点が、一般のタクシーとのいちばん大きな違いです。 車体の両側面には「福祉輸送車両」「限定」の文字を表示することも、許可の条件に入っています。福祉自動車とは、車いすやストレッチャーのためのリフト・スロープ・寝台などの設備、または回転シート・リフトアップシートなど乗り降りを助ける装置を設けた自動車を指します。


参考:国土交通省自動車交通局長「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」
参考:国土交通省九州運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の申請事案の審査基準」
参考:e-Gov法令検索「道路運送法」
介護保険の「通院等乗降介助」との関係|運賃と介助は別の制度
介護タクシーの仕事には、介護保険が関わる輸送と関わらない輸送があります。ここを分けておかないと、必要な資格も、事業所に求められる体制も読み違えてしまいます。
- 介護保険の対象になるのは、訪問介護員等による乗り降りの介助と、その前後の移動などの介助
- 運賃は介護保険の対象外
- 介護保険の輸送を担う事業所は、タクシーの許可とは別に訪問介護事業所としての指定を受けている
介護保険で「通院等乗降介助」が位置づけられているのは、訪問介護というサービスの中です。介護保険法は訪問介護を次のように定めています。
条文の「政令で定める者」は、介護保険法施行令第3条で、都道府県知事が行う介護員の養成研修や、都道府県知事の指定を受けた事業者が行う研修を修了した人などとされています。つまり介護保険の訪問介護は、介護福祉士か、決められた研修を修了した人が行うことが法律上の前提になっています。
厚生労働省が社会保障審議会介護給付費分科会(第259回、令和8年6月29日)に出した資料「訪問介護」は、訪問介護を身体介護・生活援助・通院等乗降介助の3つに分けています。通院等乗降介助は、通院などのために、指定訪問介護事業所の訪問介護員等が自分で運転する車への乗車・降車の介助を行い、あわせて乗車前・降車後の屋内外の移動の介助や、通院先での受診の手続きなどを行うサービスです。報酬は片道につき97単位(令和6年度介護報酬改定後の単位数)。
同じ資料は「移送に係る経費(運賃)は、介護保険の対象ではない」と明記しています。 運賃を受け取って人を運ぶ部分は道路運送法の許可、乗り降りの介助の部分は介護保険の訪問介護、という二本立てです。資料には、運賃を取らない場合は道路運送法上の許可・登録は不要とも書かれています。北海道運輸局の手引き(令和7年3月)でも、ケアプランなどにもとづいて訪問介護員等が訪問介護と一体で行う輸送に使う「介護運賃」を設定するには、訪問介護事業所の指定を受けていることが必要とされています。


介護保険の輸送を扱う事業所は、訪問介護全体から見ると一部です。同じ資料によると、令和7年3月サービス提供分で通院等乗降介助を請求した訪問介護事業所は2,688で、請求事業所35,376の7.6%。回数では訪問介護全体の30,369.9千回のうち303.4千回で、1.0%でした。


求人を探すときは、その事業所が介護保険の輸送を扱っているかどうかが最初の分かれ目になります。 扱っていれば介護の資格を生かせる場面が増え、扱っていなければ、仕事の中心は介護保険を使わない輸送になるからです。
参考:e-Gov法令検索「介護保険法」
参考:e-Gov法令検索「介護保険法施行令」
参考:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第259回(R8.6.29)資料1 訪問介護」
参考:国土交通省北海道運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)経営許可申請の手引き」令和7年3月
介護タクシーで働く2つの入口|事業所に雇われるか、自分で開業するか
介護タクシーの仕事に就く道は、許可を持つ事業所に雇われるか、自分で許可を受けて開業するかの2つに分かれます。転職としてまず考えやすいのは前者でしょう。
- 雇われる場合、許可は事業所が持つので、本人は免許と資格をそろえればよい
- 開業する場合は、福祉限定許可を自分で受け、資金・施設・法令試験の条件を満たす
- 一般のタクシー会社が福祉車両を走らせているケースもある
| 比べる点 | 事業所に雇われる | 自分で開業する |
|---|---|---|
| 許可 | 事業所が受けている | 福祉限定許可を自分で受ける |
| 運転の免許 | 普通第二種免許 | 普通第二種免許 |
| 介護の資格 | 使う車と仕事の内容で決まる | 使う車と仕事の内容で決まる |
| 法令試験 | 不要 | 申請者本人が受ける |
| 用意するお金 | 原則不要 | 車両・車庫・保険・運転資金などの自己資金 |
| 収入の性格 | 会社から支払われる賃金 | 運賃(介護保険を扱えば介護報酬も)から経費を引いた事業の所得 |
| 介護保険の輸送 | 事業所が訪問介護の指定を受けていれば担える | 訪問介護事業所の指定と、その人員基準が別に要る |
雇われる先は、福祉限定の事業者だけではない
求人を出しているのは、福祉限定許可だけを持つ事業者に限りません。前掲の国土交通省の通達は、すでに一般のタクシー事業の許可を受けている事業者が、新たに福祉輸送自動車を配置して福祉輸送サービスを行う場合の手続きも定めています。一般のタクシー会社が福祉車両を増やして同じサービスを行うことは、制度上も想定されているのです。
雇われる先によって、仕事の中身は変わります。訪問介護事業所を兼ねる事業者なら、通院等乗降介助として介助と運転を一続きで担う場面がある一方、一般のタクシー会社の福祉車両なら、介護保険を使わない予約輸送が中心になるかもしれません。
求人で確かめたい4つのこと
| 確かめること | なぜ見るのか | 聞き方の例 |
|---|---|---|
| 介護保険の輸送を扱うか | 扱う場合は訪問介護員等の資格が必要になる | 「通院等乗降介助の仕事はありますか」 |
| 使う車の種類 | セダン型等の一般車両に乗るなら介護の資格が義務になる | 「福祉車両とセダン型のどちらに乗りますか」 |
| 資格の取得支援 | 二種免許や初任者研修の費用を誰が持つかで負担が変わる | 「入社後に取る資格の費用はどこまで会社が負担しますか」 |
| 仕事の受け方 | 流し営業がないため、予約の入り方で1日の組み立てが決まる | 「1日に何件くらいの予約を担当しますか」 |
二種免許の取得費用と、会社が負担する場合に入社前に確かめたい条件は、二種免許の費用はいくら?取得ルート別の内訳と会社負担の条件で詳しく整理しています。
正直なところ、私たちも最初は「介護タクシー」とひとくくりに考えていました。制度を読み込むと、同じ呼び名の下に、介護保険を扱う仕事と扱わない仕事が並んでいることに気づかされます。
参考:国土交通省自動車交通局長「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」
参考:国土交通省九州運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の申請事案の審査基準」
介護タクシーに必要な資格|義務になる場面と努力義務の場面
介護タクシーの資格は、「運転のための免許」と「介護のための資格」に分けて考えると整理しやすくなります。運転の免許はどの場面でも必要ですが、介護の資格は乗る車と仕事の内容で、義務にも努力義務にもなります。
- 運転には、普通第二種免許が必要
- 福祉自動車に乗るなら、介護の資格や研修は努力義務(九州運輸局の公示)
- セダン型等の一般車両に乗るなら、介護の資格が義務(同)
- 介護保険の通院等乗降介助を行うなら、訪問介護員等であることが前提
- NPOなどが行う福祉有償運送は別の制度で、運転者の要件も違う
| 働く場面 | 運転の免許 | 介護の資格 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 福祉自動車で、介護保険を使わずに運ぶ | 普通第二種免許 | 福祉タクシー乗務員研修、介護福祉士、訪問介護員、サービス介助士のいずれか | 努力義務 |
| セダン型等の一般車両で運ぶ | 普通第二種免許 | 介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従業者のいずれか | 義務 |
| 介護保険の通院等乗降介助を行う | 普通第二種免許 | 介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者など | 介護保険のサービスを提供する前提 |
| NPOなどの福祉有償運送(介護タクシーとは別の制度) | 第一種または第二種免許に加えて、国土交通大臣が認定する講習の修了など | 福祉自動車以外の車なら、介護福祉士か認定講習の修了者などが乗務 | 義務 |
運転には普通第二種免許が必要
介護タクシーは一般乗用旅客自動車運送事業なので、運賃を受け取って人を運ぶ運転には第二種運転免許が要ります。中部運輸局の申請書作成の手引きでも、申請時に運転者の普通自動車二種免許証または大型自動車二種免許証の写しを添付することとされています。
受験資格や費用の内訳、特例教習の条件は、二種免許の費用はいくら?取得ルート別の内訳と会社負担の条件で扱っています。
介護の資格は、乗る車で義務か努力義務かが分かれる
九州運輸局の公示は、福祉自動車に乗務する人について、福祉タクシー乗務員研修の修了、介護福祉士、訪問介護員、サービス介助士のいずれかの要件を「満たすよう努めなければならない」としています。これは努力義務です。
一方、福祉自動車以外のセダン型等の一般車両に乗務する人には、介護福祉士、訪問介護員、居宅介護従業者のいずれかの要件を「満たさなければならない」としています。車いすやリフトの設備がない普通の車で福祉輸送をするなら、介護の資格が許可の条件になる、ということです。 なお、平成26年5月16日まで実施されていた「ケア輸送サービス従事者研修」の修了者は、この要件を満たした者とみなされます。
要件の書き方は運輸局ごとに違いがあります。北海道運輸局の手引き(令和7年3月)は、セダン型等の一般車両を使う場合の要件として、福祉タクシー乗務員研修、介護福祉士、訪問介護員、サービス介助士を挙げています。働く地域の運輸局の公示で、自分の持つ資格が対象に入るかを確かめておきましょう。
介護保険の通院等乗降介助には「訪問介護員等」の資格が要る
介護保険の通院等乗降介助は、訪問介護のひとつです。前掲の厚生労働省の資料は、訪問介護を担う「訪問介護員等」として、介護福祉士、実務者研修修了者(450時間)、介護職員初任者研修修了者(130時間)などを挙げています。
見落としやすいのが、生活援助従事者研修(59時間)です。同じ資料は、この研修の修了者が提供できるのは生活援助中心型のみとしています。59時間の研修だけでは、通院等乗降介助は担えません。 介護タクシーで介護保険の仕事まで視野に入れるなら、初任者研修以上を目安にするのが確実でしょう。
福祉有償運送は、介護タクシーとは別の制度
NPO法人などが自家用車で行う福祉有償運送は、道路運送法の自家用有償旅客運送の一種で、タクシー事業の許可とは仕組みが違います。道路運送法施行規則第51条の16は、運転者を、第二種または第一種の運転免許を受けていて、かつ国土交通大臣が認定する講習を修了した人(またはこれに準ずる要件を備えた人)としています。二種免許を持っていても、この講習の修了などは別に求められるのが介護タクシーとの違いです。福祉自動車以外の車を使う場合にはさらに、介護福祉士の登録を受けた人か、認定講習の修了者などの乗務が求められます。
二種免許がなくても認定講習を受ければ関われる送迎の仕事はこうした制度の中にありますが、事業として運賃を受け取る介護タクシーとは別物です。求人を見るときは、どちらの制度の仕事かを確かめてください。
参考:国土交通省九州運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の申請事案の審査基準」
参考:国土交通省北海道運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)経営許可申請の手引き」令和7年3月
参考:国土交通省中部運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)経営許可申請書作成の手引き」
参考:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第259回(R8.6.29)資料1 訪問介護」
参考:e-Gov法令検索「道路運送法施行規則」
介護タクシーを開業する条件|運輸局の審査基準と手引きで確かめる
介護タクシーを自分で始めるには、道路運送法にもとづく福祉限定許可を受ける必要があります。法律が定める基準は抽象的で、具体的な数字は各地方運輸局の公示と手引きに書かれています。
- 許可の基準は道路運送法第6条の3項目
- 最低車両数は1両で、個人でも申請できる
- 自己資金・営業所・車庫・保険・法令試験の条件は運輸局の公示や手引きで確かめる
- 介護保険の輸送も行うなら、訪問介護事業所としての指定が別に要る
条文の「輸送の安全」は事故を防ぐ体制、「適切な計画」は営業所や車庫、資金の手当て、「自ら適確に遂行するに足る能力」は法令の知識や資金力を指すと読めます。この3項目を、運輸局が具体的な条件に落としたものが審査基準です。
運輸局の公示と手引きに書かれた主な条件
国土交通省の通達と、北海道運輸局・中部運輸局の手引きから、主な条件を拾うと次のとおりです。
| 項目 | 主な条件 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 営業区域 | 原則として都道府県単位 | 国土交通省の通達 |
| 最低車両数 | 1両 | 国土交通省の通達 |
| 営業所・車庫 | 営業所は営業区域内。車庫は原則として営業所に併設し、できない場合は直線で2キロメートル以内(遠隔点呼を行う場合を除く) | 中部運輸局の手引き |
| 自己資金 | 事業開始当初に要する資金以上、かつ所要資金の50%以上を、申請期間中常に確保 | 中部運輸局の手引き |
| 任意保険 | 対人8,000万円以上、対物200万円以上(免責30万円以下) | 中部運輸局の手引き |
| 法令試験 | 申請後に実施。○×式・語群選択式の40問で、28問以上の正解で合格 | 北海道運輸局の手引き |
| 標準処理期間 | 2か月 | 国土交通省の通達 |
| 許可後の手続き | 登録免許税3万円の納付、運賃の認可、事業用自動車の登録、指導主任者の選任など | 北海道運輸局の手引き |
中部運輸局の手引きでは、所要資金のうち運転資金は項目ごとに2か月分を計上するとされています。北海道運輸局の手引きによれば、法令試験の範囲は道路運送法や旅客自動車運送事業運輸規則などで、試験当日は自動車六法などを持ち込めます。車両が5両以上になれば、運行管理者と整備管理者に有資格者を選ぶ必要も出てくるでしょう。
同じ福祉限定許可でも、条件の細部は運輸局ごとに違います。 たとえば営業所の使用権原について、中部運輸局の手引きは借りる場合に3年以上の使用権限を示す賃貸借契約書などを求めていますが、北海道運輸局の手引きは営業所・車庫・休憩施設の賃貸借契約などについて契約期間1年以上としています。開業を考える地域の運輸局の公示と手引きを、最初に読んでおきましょう。
申請から運輸開始までの流れ
北海道運輸局の手引きに沿うと、申請から仕事を始めるまでは次の順に進みます。
- 許可申請書と添付書類を作り、運輸支局に提出する(運賃の認可申請も同時に出せる)
- 申請後おおむね1か月をめどに法令試験を受け、残高証明書などで自己資金を示す
- 許可を受ける(標準処理期間は2か月で、補正にかかった期間は含まない)
- 許可の日から1か月以内に登録免許税3万円を納め、運賃の認可を受ける
- 事業用自動車の登録と指導主任者の選任を済ませ、運輸を開始する
手引きは「許可になったら直ぐに仕事を開始出来る訳ではありません」と注意を促しています。許可はゴールではなく、運輸開始の前にもう一段の手続きがある、と考えておくと計画が狂いにくくなります。


介護保険の輸送も行うなら、訪問介護事業所の指定が別に要る
福祉限定許可だけでは、介護保険の通院等乗降介助は請求できません。前掲の厚生労働省の資料によると、訪問介護事業所には、訪問介護員等を常勤換算で2.5以上、サービス提供責任者を利用者40人に1人以上、常勤の管理者を置くことが求められます。
常勤換算は1人あたり1.0が上限なので、2.5以上を満たすには少なくとも3人分の人手が要る計算です。1人で始める場合、自分の事業所として通院等乗降介助を請求する体制は組めません。 介護保険の輸送まで手がけたいなら、訪問介護事業所を運営する事業者と組むか、人を雇って事業所の体制を整えるかのどちらかです。


経営者に創業のころの話を聞くと、最初は小さく始めて、条件がそろってから広げたという答えが少なくありません。介護タクシーの開業も、許可と介護保険の指定を一度に取ろうとせず、段階を分けて考えるほうが現実的かもしれません。
参考:e-Gov法令検索「道路運送法」
参考:国土交通省自動車交通局長「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」
参考:国土交通省北海道運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)経営許可申請の手引き」令和7年3月
参考:国土交通省中部運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)経営許可申請書作成の手引き」
参考:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第259回(R8.6.29)資料1 訪問介護」
介護タクシーの収入|公的統計で言える範囲
介護タクシーの運転者に限った年収の公的統計は、今回調べた国の統計の中には見当たりませんでした。比べられるのは、近い職種の年収までです。
- 賃金構造基本統計調査の職種の分類に、介護タクシーの運転者という区分はない
- 近い職種として、訪問介護従事者とタクシー運転者の年収換算が参考になる
- 開業した場合の収入は、運賃(と介護報酬)から経費を引いた事業の所得
近い職種の年収換算は371.0万円〜450.8万円
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)は、職種(小分類)ごとに賃金を公表しています。ただ、その中に「介護タクシーの運転者」という区分はありません。どの職種に計上されるかは仕事の実態によるため、ここでは近い職種の目安として並べます。
| 職種 | きまって支給する現金給与額(月) | 年間賞与その他特別給与額 | 年収換算 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|
| 訪問介護従事者 | 28万1,600円 | 43万9,700円 | 381.9万円 | 51.2歳 |
| タクシー運転者 | 35万9,200円 | 19万7,800円 | 450.8万円 | 56.8歳 |
| 乗用自動車運転者(タクシー運転者を除く) | 28万1,700円 | 32万9,400円 | 371.0万円 | 59.5歳 |
いずれも一般労働者の男女計、企業規模10人以上の値で、年収換算は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算しました。3つの職種を並べると、年収換算は371.0万円から450.8万円の幅に収まります。 タクシー運転者の年収の内訳や都道府県別・年齢別の差は、タクシー運転手の年収はいくら?平均450万円の中身と都道府県別・年齢別データで詳しく扱っています。


この3つの数字は、介護タクシーの年収そのものではありません。介護タクシーの運転者がこのどこかに含まれている可能性はあっても、その割合は統計から分からないためです。
開業した場合は「運賃+介護報酬−経費」
開業した場合の収入は、賃金ではなく事業の所得です。売上は運賃と、訪問介護事業所の指定を受けていれば通院等乗降介助の介護報酬(片道97単位)で、そこから車両・燃料・保険・車庫・営業所などの経費を引いた残りが手元に残ります。流し営業ができないため、売上の大きさは予約をどれだけ受けられるかに左右されます。 開業した介護タクシーの所得を示す公的な集計も見当たらないため、自分の地域の運賃と見込める予約件数から見積もるほかありません。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(e-Stat)
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況:調査の概要」
参考:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第259回(R8.6.29)資料1 訪問介護」
介護タクシーへの転職に関するよくある質問
介護タクシーの運転手に二種免許は必要ですか?
運賃を受け取って人を運ぶ介護タクシーの運転には、普通第二種免許が必要です。 介護タクシーは道路運送法の一般乗用旅客自動車運送事業で、中部運輸局の手引きでも申請時に運転者の二種免許証の写しを添付することとされています。一方、NPO法人などが行う福祉有償運送は別の制度で、道路運送法施行規則第51条の16により、第一種運転免許でも国土交通大臣が認定する講習を修了すれば運転者になれます(第二種免許を持つ人にも、この講習の修了などが求められます)。
参考:国土交通省中部運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)経営許可申請書作成の手引き」
参考:e-Gov法令検索「道路運送法施行規則」
介護職員初任者研修がなくても介護タクシーで働けますか?
乗る車と仕事の内容によります。 九州運輸局の公示では、福祉自動車に乗る場合の介護の資格や研修は努力義務ですが、セダン型等の一般車両に乗る場合は介護福祉士・訪問介護員・居宅介護従業者のいずれかが義務です。介護保険の通院等乗降介助を行うなら、厚生労働省の資料が挙げる「訪問介護員等」(介護福祉士、実務者研修修了者、初任者研修修了者など)であることが前提になり、生活援助従事者研修(59時間)の修了だけでは担えません。要件の書き方は運輸局ごとに違うため、働く地域の公示も確かめてください。
参考:国土交通省九州運輸局「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の申請事案の審査基準」
参考:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第259回(R8.6.29)資料1 訪問介護」
介護タクシーは一人で開業できますか?
福祉限定許可は最低車両数1両で、個人でも申請できます。 ただし、介護保険の通院等乗降介助を行うには訪問介護事業所の指定が別に必要で、厚生労働省の資料によると訪問介護員等を常勤換算2.5以上置くことなどが求められます。1人では満たせないため、一人で始める場合の中心は介護保険を使わない輸送です。自己資金や営業所・車庫の条件は、中部運輸局の手引きのように運輸局ごとに具体的な基準があります。
参考:国土交通省自動車交通局長「一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可等の取扱いについて」
参考:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第259回(R8.6.29)資料1 訪問介護」
介護タクシーの運賃は介護保険で支払えますか?
運賃は介護保険の対象外です。 厚生労働省の資料は、介護保険の通院等乗降介助(片道97単位、令和6年度介護報酬改定後)について、移送にかかる経費である運賃は介護保険の対象ではないと明記しています。介護保険から支払われるのは、訪問介護員等が行う乗り降りの介助や、その前後の移動・受診手続きなどの介助の部分です。
参考:厚生労働省「社保審-介護給付費分科会 第259回(R8.6.29)資料1 訪問介護」
介護タクシーの年収はどのくらいですか?
介護タクシーの運転者だけの年収を示す公的統計は、確認した範囲では見当たりません。 近い職種として、令和7年賃金構造基本統計調査(一般労働者、企業規模10人以上)の年収換算を見ると、訪問介護従事者が381.9万円、タクシー運転者が450.8万円、乗用自動車運転者(タクシー運転者を除く)が371.0万円です。いずれも「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算した目安で、介護タクシーの年収そのものではありません。
参考:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」(e-Stat)
まとめ
介護タクシーは、道路運送法の一般乗用旅客自動車運送事業のうち、要介護者等の輸送に業務を限った福祉限定許可で走るタクシーです。運転には普通第二種免許が必要で、介護の資格は、乗る車と仕事の内容で扱いが変わります。九州運輸局の公示では、福祉自動車なら努力義務、セダン型等の一般車両なら義務。介護保険の通院等乗降介助を担うなら、初任者研修などを修了した訪問介護員等であることが前提です。
働き方の入口は、事業所に雇われるか、自分で開業するかの2つ。開業には運輸局の審査と法令試験があり、自己資金や営業所の条件は運輸局ごとに細部が違います。介護保険の輸送まで行うには訪問介護事業所の指定が別に要り、1人では人員基準を満たせません。収入は、介護タクシーだけを切り出した公的統計が見当たらないため、近い職種の年収換算371.0万円〜450.8万円を目安として見るのが、いま公的な数字で言える範囲です。
制度を読み込んでみて、私たちが感じたのは「介護タクシー」という一つの呼び名の下に、運転の仕事と介護の仕事がそれぞれの制度を背負って並んでいるということでした。どちらの制度の仕事をしたいのかを先に決めておくと、取る資格も、選ぶ事業所も自然と絞れてきます。ゼロから事業を立ち上げた人がどんな順番で準備を進めたかは、熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューで、本人の言葉からたどれます。
資格と働き方の見通しが立ったら、次はいまの経歴で応募できる求人を並べて比べる番です。

