【代表インタビュー】株式会社トレセン 代表取締役CEO 山口 雅隆

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社トレセン 山口代表

スポーツ×テクノロジーで次世代人材を育成する企業の挑戦

株式会社トレセンは、スポーツ×テクノロジーの力で新たな価値をつくる企業です。特にサッカー選手の育成・分析を支援するAIプラットフォームを開発し、日本のスポーツ界の革新に挑戦しています。代表取締役CEO山口 雅隆さん(以下、山口さん)は自身もサッカー経験者として、技術だけでなく人間性も含めた「総合的な育成」の重要性を説きます。

2023年4月にはOpenAIのChatGPTを活用した選手育成支援サービスを開始し、さらに2025年4月には欧州(イギリス/オランダ)の先進企業と独占契約を結び、世界最先端のデータ分析システムを日本市場に導入。テクノロジーの力でスポーツの可能性を広げる同社の取り組みについて伺いました。

目次

プロフィール

株式会社トレセン

代表取締役CEO 山口 雅隆

趣味

サッカー、野球、読書

尊敬する人

家族と、私に関わってくださるみなさますべて

座右の銘

「只管打坐」、「絶対は絶対にない」

学生が読むべき本

ご本人が興味がある分野で、哲学的要素のある文献すべて

経営者におすすめの本

「孫氏の兵法」守屋 洋

人生で一番熱狂したこと

毎日です。昨日より今日。

欧州企業との独占契約で日本のスポーツテック市場に革新を

データの一元管理でスポーツ選手の成長を多角的に支援

小川:まずは、御社の事業内容について教えていただけますか?

山口さん:既存の主軸事業はAIを絡めたIT事業ですが、強く推進したいのは、スポーツテックです。これまでも特にサッカーを中心とした戦略分析や選手育成のデジタル支援を行っています。選手の成長を可視化し、個別最適な支援を提供するサービスを展開しています。

2025年4月末には、欧州と提携し、先進的なデータ分析技術を日本市場向けにカスタマイズすることが決まりました。

小川:具体的にはどのようなビジネスモデルなのでしょうか?

山口さん:ターゲットとなるお客様は、トップチームから大学、高校、中学まで幅広いです。基本的にはサブスク制で、それぞれのカテゴリーに合わせた必要なツールを提供していきます。

世界最先端の技術で選手のあらゆるデータを統合

小川:御社のシステムにはどのような特徴があるのでしょうか?

山口さん:最大の特徴は、選手に関するあらゆるデータを一元管理できることです。技術面のデータだけでなく、怪我の状態、栄養状態、さらには決意や覚悟といったメンタルや性格面のデータも含めて、選手一人ひとりのタレントIDをシームレスに管理できます。

これまで日本では試合の映像分析ツールやGPSデータ、身体測定などはそれぞれ個別に存在していましたが、それらのデータを連携させる仕組みがありませんでした。私たちは統合的なプラットフォームをつくり、さまざまなデータをAPI連携で集約しています

小川:こうしたシステムは日本ではまだないのでしょうか?

山口さん:日本では初めてのシステムです。今回欧州と提携した提携した意図はそこにあります。ヨーロッパ5大リーグやプロ選手データをすべて保有しています。年俸や移籍金のデータを含むビッグデータを活用することで、選手の適正評価もある程度精度高く可視化することが可能になります。

これにより、選手は「自分がどんな選手なのか」を客観的に認識でき、監督やコーチは一元管理されたデータをみるだけで選手の状態を把握できます。さらにスカウトの方も選手の怪我の履歴や回復見込みなどを確認できるため、ミスのないスカウティング活動が可能になります。

「自由」を選んだ独立起業—スポーツとITの融合を目指して

学生時代のトレセン経験から生まれた社名とミッション

小川:こうした事業を始めようと思ったきっかけや経緯を教えていただけますか?

山口さん:社名の「トレセン」は、サッカーの選抜を意味します。私は学生のときにトレセンに所属していました。そのとき、選手がどのような基準で選ばれているのか、背番号はどうやって決まるのかなど、そのロジックがわからなかったんです。そういったトレセン制度自体に興味を持っていましたし、定性的な評価基準や精神的にまだ成熟してなかったので、何気ない一言に戸惑い、萎縮してしまう事も多かったです。本末転倒なのですが、サッカーが嫌いになった時期もありました

一方で、トレセンに選ばれることは誇りでもあり、そこではいろんな刺激を受けることができます。このように個を活かして成長させるトレセンの考え方に共感し、社名にしました。

社会人になってからはしばらくサッカーから離れていましたが、40歳になったら好きなことをやろうと考え、39歳のときに独立しました。IT業界では30代から役員を務めてきた経験があり、そこに得意なサッカーを組み合わせスポーツテックで勝負しようと考えたのです。

当社のミッションは「人と社会の可能性を高め、新たな未来を創る」ことです。このミッションの下、最新技術を活用しながらも、選手の感覚や直感を大切にした人材育成に取り組んでいます。サッカーに必要な瞬時の判断力といった感性とテクノロジー、この両方のバランスが成長には欠かせないと考えています。

「安定と不自由」より「リスクと自由」を選んだ決断

小川:40歳からの挑戦を決断した理由は何だったのでしょうか?

山口さん:独立前は中堅企業で役員を務めていました。しかし、会社が大きくなるほど組織化が進み、社内での足の引っ張り合いや、役職に就くことだけが目的になってしまう風潮に違和感を覚えていました。

私は「人間には二つの選択肢しかない」と考えています。「安定はしているけど自由がない」か、「リスクはあるけど自由がある」か。私は断然後者を選びました。自分で判断し、自分で責任を取る。そのほうが自分に合っていると思ったので、独立を決意しました。

小川:独立後すぐにこの事業を始めたのですか?

山口さん:創業当初からフットサルの動線分析アプリケーションなど、サッカーに関連したデジタルサービスを開発していました。しかしコロナの影響でイベントが中止になり、そこから現在スポンサー/パートナーとして関わっているクラブとの出会いがありました。そのクラブも選手の個別育成を、ITを活用しながら包括的な選手育成を実現しようとしており、ともに進む事になりました。そこからだんだんと現在のようなプラットフォーム構想に近づいていきました。

データに基づいた選手育成が日本のスポーツを変える

選手とチームの「最適化」でパフォーマンスを向上

小川:このシステムを導入することで、どのような課題が解決されるのでしょうか?

山口さん:従来のスカウティングでは、エージェントやダイレクターが定性的な基準でプロファイリングを行い、選手の特徴や昨年度の結果をもとに移籍先を探していました。しかし、私たちのプラットフォームでは、ビッグデータに基づいた客観的な評価が可能になります。定性をより定量化できるアドバンスがあります。

たとえば、日本人選手がヨーロッパに移籍してもベンチで終わってしまうケースが多いのは、適材適所のマッチングができていないからです。これは選手の選手生命にも関わる大きな課題です。

当社のシステムを使えば、選手の特性に合った最適なチームや環境をみつけられます。選手にとっても、チームにとっても、移籍交渉の元となるエビデンスデータが揃い、より良い選択ができるようになるのです。

システムのビジネス活用と今後の展望

小川:このシステムはスポーツ以外の分野でも活用できそうですね。

山口さん:はい、その通りです。たとえば、私たちの会社のエンジニアにも同じような考え方が適用できます。技術力だけでなく、コミュニケーション能力や協調性、勤務態度なども含めたパフォーマンス評価ができます。

技術は高いけれどコミュニケーションが足りない、あるいは遅刻が多いといった傾向があれば、それも含めたROI(Return on Investment:投資利益率)評価が可能になります。パフォーマンスに対して客観的なフィードバックができるようになりますし、評価軸の共通化も可能です。

人事分野への展開も考えており、定量的なデータをもとにしたコミュニケーションができるようにしたいと考えています。最終的には定性的な判断になるのですが、データに基づいた評価は大きな助けになるでしょう。

自己完結型の人材が未来をつくる—企業文化と採用方針

「繋がっていないようにみえて繋がっている」理想のチーム像

小川:御社に入社するとどのような環境で働けるのでしょうか?

山口さん:会社のロゴマークにサッカーチームの11人を表す11本の線がありますが、これらは実はつながっていません。しかし、遠くからみると一つのまとまりにみえます。これが私たちの理想とする姿です。

社員には会社の規則意識や形式的なルールはもちろん大切ですが、それ以上に、「プロジェクトへの貢献」と「自己研鑽・技術向上」の2点だけを先ず重視してほしいと伝えています。

社名の「トレセン」は選手を育成する「トレーニングセンター」という意味もあります。私の理想は、トレセンで経験を積んだ後に、より大きな会社に転職してもらうこと。実際、昨年初めて世界を代表するテクノロジー企業にトレセン出身者が移籍しました。彼の給料も上がり、職務経歴書に「トレセン」と書いてくれたことが何より嬉しかったですね。

小川:これから入社する人に一番求めていることは何ですか?

山口さん:自己完結できる人が一番理想です。言われたことを単にこなすのではなく、「なぜそれをするのか」という目的を理解し、最後まで主導的な視点で責任を持ってやり遂げる姿勢が重要です。

背景にある目的を理解して、自ら考え行動できる人材を求めています。経験やビジネススキルがなくても、そうした意思を持った人を採用しています。

日本から世界へ—アジア市場を視野に入れたグローバル展開

スポーツテックでアジア市場をリードする未来へ

小川:今後どのような会社にしていきたいですか?

山口さん:まずは日本一のスポーツテック企業になり、次にアジア制覇を目指しています。日本のサッカー界を押し上げる一役を担いたいという思いと、サッカーへの恩返しをしたい気持ちがあります。

日本ではスポーツの価値や魅力はまだヨーロッパほど認知されていません。そうした点も発信していきたいですね。会社の規模として大企業にはならないと思いますが、質の高い企業として突き抜けていきたいと考えています。

欧州のパートナー企業とも連携し、彼らが持つ先進技術を日本やアジア市場に広げていく戦略です。

技術が育む人間性—マルコCEOからのエール

今回の取材に同席したパートナー企業CEOであるマルコさんは、トレセン社との提携について次のように語りました。

「この提携には大きな期待を寄せています。トレセンと共に日本市場だけでなくアジア全体の市場を開拓していきたいと考えています。ビジネスのビジョンや会社のミッションにおいて私たちは同じ考え方を持っており、スポーツにおけるテクノロジーの活用方法に革命を起こしたいと思っています。スポーツ、教育、さらにはその他の産業においても、新しい形の価値を提供していけることを楽しみにしています。」

スポーツとテクノロジーの力で人間の可能性を広げる。山口さんたちの挑戦は、データ分析やAIという先端技術を用いながらも、常に「人」を中心に据えた温かみのある取り組みでした。選手一人ひとりの個性を尊重し、その才能を最大限に引き出すためのプラットフォームは、スポーツの世界を超えて、さまざまな分野での人材育成にも応用できる可能性を秘めています。「可能性への挑戦」という同社のスローガンの下、これからも多くの才能が花開いていくことでしょう。

会社概要

法人名株式会社トレセン
HPhttps://tresen.co.jp
設立2019年8月1日
事業内容スポーツテック
採用https://tresen.co.jp/recruit.php
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小川莉奈のアバター

編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護士から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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監修者

西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

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新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
年間500記事以上の監修を行っております。採用側の視点でサービスのファクトチェックや記事内容を精査しています。

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執筆者情報

熱狂ベンチャーナビ編集部はインターンシップ・新卒就活・転職経験者で編成されております。20代~30代の幅広い年齢・職種やキャリアを持つメンバーが在籍しているため、就活・転職の苦しかった経験や成功体験を元に求職者に役立つ情報を発信いたします。

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