残業時間の平均は月13.2時間|多い業界・少ない業界と上限45時間

月の残業時間の平均は、パートタイム労働者を除く一般労働者で13.2時間です。1日あたりにならすと、40分ほどになります。
意外なのは、宿泊業,飲食サービス業の残業です。パートを含めた全体の平均では短く見えますが、正社員などの一般労働者に限ると、全業種の平均を上回ります。
この記事では、業種別・年代別の残業時間と上限45時間の意味、求人票の残業時間や固定残業代の読み方、残業が多すぎると感じたときの相談先までを整理します。
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残業時間の平均は一般労働者で月13.2時間、パートは2.2時間
残業時間の平均は、誰を含めた平均か、どの規模の事業所を対象にしたかで数字が変わります。最初に押さえたいのは次の3点です。
- 一般労働者は月13.2時間、パートタイム労働者は2.2時間、全体では9.8時間
- 30人以上の事業所に絞ると、一般労働者は14.5時間に延びる
- 年代別では20代後半が最も長く、25〜29歳の男性は月17時間
| 就業形態 | 事業所規模5人以上 | 事業所規模30人以上 |
|---|---|---|
| 一般労働者 | 13.2時間 | 14.5時間 |
| パートタイム労働者 | 2.2時間 | 2.8時間 |
| 全体(就業形態計) | 9.8時間 | 11.5時間 |
厚生労働省の毎月勤労統計調査の2025年度分結果確報による、2025年4月から2026年3月までの月平均です。調査でいう所定外労働時間は、早出、残業、臨時の呼出、休日出勤などで実際に働いた時間のこと。就業規則などで決められた始業から終業までの時間の外で働いた分が、残業として数えられています。一般労働者には正社員だけでなく、パートタイムでない契約社員なども含まれます。一般労働者の13.2時間を同じ調査の出勤日数19.3日で割ると、1日あたりの残業は40分ほどです。
調べるたびに平均の数字が違う理由
残業時間の平均を調べると、記事や資料によって数字がばらつきます。違いの多くは、次の4つの条件で説明できます。
| 確かめる条件 | 数字への影響 |
|---|---|
| パートタイム労働者を含むか | 含めると短くなる。全体9.8時間、一般労働者13.2時間 |
| 事業所の規模 | 30人以上に絞ると長くなる。一般労働者で14.5時間 |
| 事業所に聞く調査か、本人に聞く調査か | 対象も数え方も違い、そのままは比べられない |
| いつの数字か | 年度平均、暦年平均、特定の月で値が変わる |
毎月勤労統計調査は、全国の約33,000事業所を対象に、労働時間などを事業所から回答してもらう調査です。働く人本人に尋ねるアンケートとは対象が異なるため、数字が食い違っても不思議ではありません。自分の残業と比べるなら、パートタイム労働者を除いた一般労働者の数字を基準にするのが妥当でしょう。
年代別・男女別では、20代後半が最も長い
毎月勤労統計調査には年齢の区分がありません。年代別の傾向は、厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査で見られます。2025年6月の1か月間について、常用労働者10人以上の民営事業所で働く一般労働者の超過実労働時間数を集計したもので、所定労働日の始業から終業まで以外に働いた時間と、所定休日に働いた時間を数えています。
| 年齢 | 男女計 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 11時間 | 13時間 | 8時間 |
| 25〜29歳 | 14時間 | 17時間 | 10時間 |
| 30〜34歳 | 13時間 | 16時間 | 8時間 |
| 35〜39歳 | 13時間 | 16時間 | 7時間 |
| 40〜44歳 | 12時間 | 14時間 | 7時間 |
| 45〜49歳 | 11時間 | 13時間 | 7時間 |
| 50〜54歳 | 10時間 | 12時間 | 7時間 |
| 55〜59歳 | 9時間 | 11時間 | 6時間 |
| 年齢計 | 11時間 | 13時間 | 7時間 |
男女計で最も長いのは25〜29歳の14時間で、そこから年齢が上がるにつれて短くなる傾向です。 男性は25〜29歳の17時間、女性も25〜29歳の10時間がそれぞれの最長でした。企業規模別では1,000人以上が13時間、10〜99人が9時間と、規模が大きいほど長く出ています。6月1か月の数字で、調査の対象も毎月勤労統計調査と異なるため、13.2時間とは直接比べられません。年代による傾向をつかむ材料として読んでください。
参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年度分結果確報」
参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査と労働力調査の相違について」
参考:e-Stat「賃金構造基本統計調査 令和7年 一般労働者 産業大分類」
業種別の残業時間|多い業界と少ない業界
同じ一般労働者でも、業種によって残業時間は大きく違います。表と図から読み取れるのは次の3点です。
- 最も長い運輸業,郵便業は月24.3時間で、全業種平均の1.8倍
- 最も短い医療,福祉は6.6時間で、全業種平均のちょうど半分
- パートの多い業種は、全体の平均で見ると残業が短く見える
| 業種 | 一般労働者 | パートタイム労働者 |
|---|---|---|
| 運輸業,郵便業 | 24.3時間 | 5.3時間 |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 17.0時間 | 1.6時間 |
| 情報通信業 | 16.6時間 | 3.0時間 |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 15.6時間 | 2.3時間 |
| 製造業 | 14.7時間 | 4.9時間 |
| 教育,学習支援業 | 14.7時間 | 0.9時間 |
| 不動産業,物品賃貸業 | 14.4時間 | 2.2時間 |
| 学術研究,専門・技術サービス業 | 14.4時間 | 1.8時間 |
| 金融業,保険業 | 13.7時間 | 1.9時間 |
| 建設業 | 13.3時間 | 1.4時間 |
| サービス業(他に分類されないもの) | 13.0時間 | 3.0時間 |
| 鉱業,採石業,砂利採取業 | 12.3時間 | 0.8時間 |
| 卸売業,小売業 | 11.3時間 | 1.8時間 |
| 生活関連サービス業,娯楽業 | 10.5時間 | 2.6時間 |
| 複合サービス事業 | 8.3時間 | 5.2時間 |
| 医療,福祉 | 6.6時間 | 1.2時間 |
| 全業種(調査産業計) | 13.2時間 | 2.2時間 |
厚生労働省の毎月勤労統計調査の2025年度分結果確報による、事業所規模5人以上の月平均です。一般労働者で比べると、16業種のうち10業種が全業種平均の13.2時間を上回りました。上回る業種のほうが多いのは、一般労働者の数が製造業に次いで多い医療,福祉と、3番目に多い卸売業,小売業がいずれも平均より短く、全体の数字を引き下げているためです。自分の残業が多いかを考えるときは、全業種の平均だけでなく、自分の業種の平均とも比べてみてください。

業種の平均は、その業種で働く人の職種をすべてまとめた数字でもあります。気になる業種があれば、仕事の流れまで見ておくと残業の出方を想像しやすくなるでしょう。たとえば不動産業の営業なら、売買仲介、賃貸仲介、管理で業務の流れが分かれることを不動産営業の仕事内容とは?仲介・賃貸・管理を解説で確かめられます。
残業が多いのは運輸業,郵便業と電気・ガス、情報通信
一般労働者の残業が最も長いのは運輸業,郵便業で、月24.3時間です。 全業種平均の1.8倍にあたり、2位の電気・ガス・熱供給・水道業の17.0時間とも7時間以上の差があります。続くのは情報通信業の16.6時間、宿泊業,飲食サービス業の15.6時間。製造業と教育,学習支援業の14.7時間も平均を上回っています。2位以下の業種はいずれも17時間以内に収まっており、運輸業,郵便業の長さが際立つ結果でした。
残業が少ないのは医療,福祉と複合サービス事業
一般労働者の残業が最も短いのは医療,福祉の6.6時間で、全業種平均のちょうど半分です。郵便局や協同組合などが分類される複合サービス事業が8.3時間、生活関連サービス業,娯楽業が10.5時間、卸売業,小売業が11.3時間と続きます。医療,福祉には、介護施設のほか保育所も含まれます。シフトで勤務時間を組む職場の一日の流れは、保育園の仕事内容を解説|保育士以外の仕事も紹介を読むとつかみやすいでしょう。ただし業種の平均は業種全体をならした数字で、平均が短い業種にも残業の多い職場はあり得ます。
パートを含めた平均では、飲食などの残業が短く見える
業種別のランキングを見比べるときに気をつけたいのが、パートタイム労働者を含めた全体の平均です。毎月勤労統計調査によると、宿泊業,飲食サービス業は働く人の78.27%がパートタイム労働者。生活関連サービス業,娯楽業も49.35%、卸売業,小売業も44.9%と、全業種の31.39%を大きく上回ります。パートタイム労働者の残業は月2.2時間と短いため、こうした業種は全体の平均で並べると残業が少なく見えるのです。
宿泊業,飲食サービス業の残業は、パートを含む全体では5.2時間ですが、一般労働者に限ると15.6時間と全業種平均を上回ります。 同じように、生活関連サービス業,娯楽業は全体6.6時間に対して一般労働者10.5時間、卸売業,小売業は7.0時間に対して11.3時間、教育,学習支援業は10.1時間に対して14.7時間でした。正社員やフルタイムの仕事を探しているなら、一般労働者の数字で比べるほうが実態に近づきます。

参考:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年度分結果確報」
参考:総務省「日本標準産業分類(令和5年7月告示)分類項目表」
残業時間の上限は原則月45時間・年360時間
残業時間の上限は、労働基準法第36条が定めています。会社が法定労働時間を超えて働かせるには、労使で36協定を結んで労働基準監督署に届け出る必要があり、その協定で延ばせる時間にも上限があります。
- 36協定で延ばせる時間外労働は、原則として月45時間・年360時間まで
- 統計の所定外労働時間と、法律の時間外労働は数え方が違う
- 月60時間を超えた時間外労働には、5割以上の割増賃金がつく
条文の「限度時間」は、36協定で延ばせる時間外労働の原則の上限を指します。括弧の中は、1年単位の変形労働時間制で3か月を超える期間を定めて働く場合の扱いで、上限は月42時間・年320時間に下がります。ここで数えるのは、1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて働いた時間です。
通常は予見できないほど業務量が増えたときなど、臨時に限度時間を超える必要がある場合は、特別条項を付けた36協定を結べます。それでも時間外労働は年720時間以内。休日労働を含めて1か月100時間未満、2〜6か月の平均で80時間以内に収める必要があり、月45時間を超えてよい月は年に6か月までです。上限を超えて働かせた場合の罰則は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金。特別条項は、繁忙期などに限って使う例外の仕組みです。
統計の「所定外」と法律の「時間外」は数え方が違う
平均の13.2時間と上限の45時間を並べるときは、数え方の違いを知っておく必要があります。
| 項目 | 統計の所定外労働時間 | 法律の時間外労働 |
|---|---|---|
| 基準になる時間 | 会社が決めた始業から終業まで | 1日8時間・週40時間 |
| 所定7時間の会社で8時間働いた日の1時間 | 数える | 数えない |
| 休日に出勤して働いた時間 | 数える | 法定休日の労働は休日労働として別に数え、それ以外の休日の労働は1日8時間・週40時間を超えた分を数える |
法定休日は、労働基準法が原則として毎週少なくとも1回与えるよう定めている休日のことです。所定労働時間が法定より短い会社や休日出勤がある職場では、統計の所定外労働時間のほうが、法律上の時間外労働より長く出ます。統計の平均と法律の上限を比べるときは、物差しが違うことを前提に読んでください。
月60時間を超えると、割増賃金は5割以上になる
時間外労働には、通常の賃金の2割5分以上の割増賃金がつきます。月60時間を超えた部分は5割以上で、中小企業にも2023年4月1日からこの率が適用されています。法定休日に働いた場合の割増率は3割5分以上です。時間外労働が月60時間を超えた月は、給与明細で割増率が切り替わっているかを確かめておきましょう。 なお、労使協定で代替休暇を定めている会社では、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇が与えられることもあります。
業務によっては別の上限がある
上限の扱いが異なる業務もあります。自動車の運転の業務は、2024年4月から、特別条項を付けても時間外労働は年960時間までとされ、1か月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の規定は適用されません。建設の事業は2024年4月から原則どおりの上限が適用されており、この2つの規定が外れるのは災害時の復旧・復興の事業に限られます。医師にも別の枠が設けられており、新たな技術や商品などの研究開発に係る業務には、限度時間などの規定が適用されません。トラックやタクシーなどの運転手として働くなら、業種の平均とあわせてこの別枠も確かめておくとよいでしょう。
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省「中小企業の事業主の皆さまへ 2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」
自分の残業は多い?判断の目安と相談先
自分の残業が多いかどうかは、平均との差と、法律が引いている線の両方で見ると判断しやすくなります。
- 平均の13.2時間から特別条項の上限まで、6つの線で位置を確かめる
- 自分の労働時間を記録し、勤め先の36協定で延ばせる時間を見ておく
- 上限を超えている、残業代が払われないと感じたら、社外の窓口に相談できる
月の残業時間を6つの線で見比べる
| 月の残業時間 | 何の線か | 根拠 |
|---|---|---|
| 13.2時間 | 一般労働者の平均 | 毎月勤労統計調査 2025年度分結果確報 |
| 20時間 | 正社員の月平均所定外労働時間として、ユースエール認定で求められる水準 | 厚生労働省 ユースエール認定制度 |
| 45時間 | 36協定で延ばせる時間外労働の原則の上限 | 労働基準法第36条第4項 |
| 60時間 | 超えた時間外労働の割増率が5割以上になる | 労働基準法第37条第1項 |
| 80時間 | 休日労働を含め、2〜6か月の平均で超えてはならない | 労働基準法第36条第6項 |
| 100時間 | 休日労働を含め、1か月で達してはならない | 労働基準法第36条第6項 |
上の2行は統計や認定基準で使う所定外労働時間、45時間と60時間は法定労働時間を超えた時間外労働、80時間と100時間は休日労働も含めた時間で、数え方はそろっていません。
一般労働者の平均13.2時間に対して、月20時間は約1.5倍、45時間は約3.4倍にあたります。 出勤日数の19.3日で割ると、20時間は1日あたり約1時間、45時間なら2時間20分ほど。業種別の平均で月20時間を超えるのは運輸業,郵便業だけなので、20時間を超える月が続いているなら、平均より長い側にいると考えてよいでしょう。ユースエールは、常時雇用する労働者が300人以下の会社を対象にした厚生労働省の認定制度で、前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下であることを基準の一つにしています。一方の45時間は、法律が協定に認める原則の上限にすぎず、「45時間までなら普通」という意味ではありません。
労働時間を記録し、36協定の中身を確かめる
残業が多いかを判断する前提は、自分が実際に何時間働いているかを把握していることです。厚生労働省のガイドラインは、会社に労働日ごとの始業・終業時刻の確認と記録を求めており、その方法は、使用者が自ら現認するか、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録といった客観的な記録を基礎にするのが原則とされています。会社の記録とは別に、自分の手元にも出退勤の時刻を残しておくと、あとで確かめる材料になります。
もう一つ見ておきたいのが、勤め先の36協定です。労働基準法第106条により、会社は36協定を、作業場の見やすい場所への掲示や書面の交付などで労働者に周知しなければなりません。 1か月と1年に延ばせる時間、特別条項の有無と内容を確かめ、自分の残業がその枠に収まっているかを見てみましょう。
相談先は労働基準監督署と総合労働相談コーナー
上限を超えて働かされている、残業代が払われていないと感じたら、社外の窓口に相談できます。
| 窓口 | 主な内容 | 利用のしかた |
|---|---|---|
| 労働基準監督署 | 労働基準法違反の申告 | 所在地は厚生労働省の一覧から探せる |
| 総合労働相談コーナー | 労働問題全般の相談。都道府県労働局や労働基準監督署内など全国378か所 | 予約不要・無料。面談か電話で相談できる |
| 労働条件相談ほっとライン | 違法な時間外労働や賃金不払残業などの電話相談 | 0120-811-610。月〜金17時〜22時、土日祝9時〜21時、年末年始を除く。無料・匿名可 |
労働基準監督署に法律違反を申告したことを理由に、会社が解雇などの不利益な扱いをすることは、労働基準法第104条で禁じられています。 どこに相談すればよいか迷う場合は、総合労働相談コーナーから始めるのが手軽です。法律違反の疑いがあれば、労働基準監督署など指導の権限を持つ部署に取り次いでもらえます。
参考:厚生労働省「ユースエール認定制度」
参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法」
参考:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」
参考:厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」
参考:厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」
求人票の「月平均残業◯時間」と固定残業代の読み方
転職先を探すときは、求人票の残業の書き方から、入社後の働き方をある程度まで読み取れます。見るポイントは次の3つです。
- 「月平均◯時間」は、いつの誰の平均かを確かめる
- 36協定の特別条項の欄で、繁忙期にどこまで延びうるかを見る
- 固定残業代は、時間数と1時間あたりの金額で読む
「月平均◯時間」は、いつの誰の平均かを聞く
ハローワークや転職エージェントへの求人申込みでも、マイナビ・リクナビなどの求人サイトへの掲載でも、会社は労働条件を明示しなければなりません。厚生労働省のリーフレットには、時間外労働の記載例として「あり(月平均20時間)」という書き方が載っています。ハローワークの求人申込書の書き方も、時間外労働が「あり」の場合は月平均残業時間数を書くよう案内しています。
ただし、その平均がいつの誰の数字かまでは、求人票からは分かりません。 会社全体の平均なのか募集部署の平均なのか、繁忙期を含む1年の平均なのか直近数か月なのかで、数字の意味は変わります。面接で「募集している部署の直近1年の月平均ですか」「いちばん忙しい月は何時間でしたか」と聞けば、平均の中身が見えてくるはずです。新卒の応募なら、若者雇用促進法にもとづく職場情報の一つとして、前事業年度の月平均所定外労働時間の実績を企業に求められます。求められた企業の義務は、決められた3つの区分からそれぞれ1つ以上の情報を出すことなので、この数字が返ってくるとは限りません。
36協定の特別条項の欄で、繁忙期の上限を見る
ハローワークの求人票には、月平均の時間外労働とあわせて、36協定の特別条項の有無と「特別な事情・期間等」を載せる欄があります。求人申込書の書き方では、特別条項付きの36協定を結んでいる場合は「あり」を選び、特別な事情や延長時間を具体的に書くよう求めており、記載例は「○○のとき(特別な事情)は、1日○時間まで、○回を限度として1ヶ月○時間まで、1年○時間までできる」という形です。特別条項が「あり」の会社は、繁忙期に月45時間を超える残業が起こりうる会社だと読めます。 平均が短くても、特定の時期に残業が集中する職場はあるもの。ハローワーク以外の求人でこの記載が見当たらなければ、面接で特別条項の有無と、延長できる時間を聞いてみてください。
固定残業代は、時間数と1時間あたりの金額で読む
固定残業代は、実際の残業の有無にかかわらず、一定時間分の割増賃金を定額で払う仕組みです。厚生労働省は、固定残業代を採る場合、求人票や募集要項に次の3つをすべて書くよう求めています。
| 求人票に書かれるべきこと | 読むときの見方 |
|---|---|
| 固定残業代を除いた基本給の額 | 総額でなく、残業代の計算の基礎になる部分を見る |
| 固定残業代の時間数と金額 | 何時間分かを、一般労働者の平均13.2時間と比べる |
| 固定残業時間を超えた分を追加で払う旨 | 書かれていなければ、超えた分の扱いを面接で確かめる |
書き方が整っていても、金額が時間数に見合っているかは別の問題です。固定残業代を時間数で割ると、残業1時間あたりの単価が出ます。時間外労働の割増率は2割5分以上で、計算の基礎には基本給のほか、家族手当や通勤手当などを除いた手当も入ります。そのため、単価が「基本給÷月の所定労働時間」の1.25倍に届かないなら、表示どおりの時間まで残業した月は、固定残業代だけでは割増賃金が足りない計算です。 足りない分は追加で支払われる必要があります。月の所定労働時間は、1日の所定労働時間に月の平均労働日数をかけると目安がつかめるでしょう。
固定残業代があっても、会社が労働時間を記録しなくてよいわけではありません。 厚生労働省のガイドラインは、自己申告で労働時間を把握する会社に対し、時間外労働手当の定額払などが正しい申告を妨げる要因になっていないかを確かめるよう求めています。内定の段階では、労働条件通知書で所定労働時間を超える労働の有無を確かめましょう。労働基準法施行規則は、契約を結ぶときに書面などで明示する事項として、これを挙げています。
参考:厚生労働省・都道府県労働局「労働者を募集する企業の皆様へ ~求人の申込みや労働者の募集に当たっての留意事項~」
参考:ハローワークインターネットサービス「『求人申込書』の書き方」
参考:厚生労働省「職場情報の提供制度」
参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「就労実態等に関する職場情報を応募者に提供する制度について」
参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」
参考:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
残業を減らしている会社は、何を変えているのか
残業の長さは、業種や職種だけで決まるものではありません。会社がどこに手を入れているかで変わることは、経営者の言葉からも読み取れます。私たちが取材で残業の話を聞いていて印象に残るのは、「早く帰ろう」という呼びかけよりも、残業がどこで生まれ、働いた時間をどう数えて払っているかを具体的に話す経営者の言葉です。
株式会社Massive Actの高萩遼介代表取締役は、自社の働き方を同業他社と比べてこう語ります。
固定残業代が何時間分に設定されているかは、会社が毎月どのくらいの残業を前提にしているかの手がかりになります。求人票で固定残業代の有無と時間数を確かめ、面接で超えた分の計算のしかたまで聞いておけば、入社後に残業代で戸惑う場面は減るはずです。
訪問看護を手がける株式会社ARIAの宮崎大輔代表取締役は、スタッフの残業の原因になっていた業務を挙げています。
医療,福祉は、一般労働者の残業が全業種で最も短い業種です。それでも職場によっては、書類作業が残業を生んでいることがうかがえます。同社はこの見直しで、日々の記録業務の時間を3分の1に短縮したそうです。業種の平均よりも、その会社が残業の原因をどこに見つけ、何を減らしているかのほうが、入社後の働き方を具体的に教えてくれます。 面接で「残業が増えるのはどの時期で、原因になっている業務は何ですか」と聞いてみると、会社が残業をどう捉えているかが見えてくるでしょう。
残業時間の平均に関するよくある質問
残業月20時間は多いですか?
一般労働者の平均よりは多めですが、法律の原則の上限である月45時間の半分以下です。 毎月勤労統計調査の2025年度分結果確報では、一般労働者の残業は月平均13.2時間でした。20時間を出勤日数で割ると1日あたり約1時間にあたり、厚生労働省のユースエール認定でも、正社員の月平均所定外労働時間20時間以下が基準の一つになっています。平均との差が気になるなら、自分の業種の平均と比べると位置がはっきりします。
1日や1年に直すと、残業時間の平均はどのくらいですか?
一般労働者の月13.2時間は、1日あたりで40分ほど、1年では約158時間です。 1日あたりは同じ調査の出勤日数19.3日で割った値、1年は月平均を12倍した値で、どちらも目安として計算したもの。36協定で延ばせる時間外労働の原則の上限は年360時間なので、平均はその半分に届きません。パートタイム労働者の月2.2時間は、1年に直すと約26時間です。
休日出勤は残業時間に含まれますか?
統計の残業時間には含まれますが、法律の上限では数え方が分かれます。 毎月勤労統計調査の所定外労働時間は、休日出勤を含めた時間です。労働基準法では、原則として毎週少なくとも1回与える法定休日に働いた時間は休日労働として扱い、月45時間・年360時間の上限には含めません。ただし1か月100時間未満と2〜6か月平均80時間以内の上限は、休日労働を含めて数えます。月60時間の割増賃金の計算には、法定休日の労働時間は含まれず、それ以外の休日に働いた時間は含まれます。
参考:厚生労働省「中小企業の事業主の皆さまへ 2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」
管理職には残業時間の上限がないのですか?
労働基準法上の管理監督者にあたる人には、労働時間・休憩・休日の規定が適用されません。 ただし厚生労働省は、管理監督者にあたるかどうかは肩書や職位ではなく、職務内容や責任と権限、勤務の実態で判断するとしています。「課長」などの肩書があっても、自分の裁量で使える権限が少なかったり、労働時間を厳しく管理されていたりする場合は管理監督者とはいえず、時間外や休日の割増賃金が必要です。管理監督者であっても、健康を害するような長時間労働をさせてはならないとされています。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」
残業が少ない会社は、どうやって探せばいいですか?
まず公表されている数字を集めるのが手堅い方法です。 厚生労働省の「しょくばらぼ」では、職場改善に積極的な企業の残業時間や有給休暇取得率などを検索・比較でき、2026年10月1日時点で152,380件の企業が載っています。ユースエール認定を受けた中小企業も、正社員の月平均所定外労働時間20時間以下が基準の一つです。求人票では月平均残業時間、36協定の特別条項、固定残業代の時間数をあわせて確かめてください。サイトに載っていない会社が悪いわけではないので、気になる会社は面接で直近の実績を尋ねれば足ります。
まとめ
残業時間の平均は、厚生労働省の毎月勤労統計調査の2025年度分結果確報で、パートタイム労働者を除く一般労働者が月13.2時間、パートタイム労働者が2.2時間、全体では9.8時間でした。業種別では運輸業,郵便業の24.3時間から医療,福祉の6.6時間まで開きがあり、パートの多い業種は全体の平均で見ると残業が短く見えます。年代別では20代後半が最も長い水準です。
法律の上限は、36協定で延ばせる時間外労働が原則月45時間・年360時間。求人票では、月平均残業時間がいつの誰の平均か、36協定の特別条項があるか、固定残業代が何時間分でいくらかを確かめると、入社後の働き方が具体的に見えてくるでしょう。上限を超えている、残業代が払われていないと感じたら、労働基準監督署や総合労働相談コーナーに相談できます。
正直なところ、平均より長いか短いかだけで職場の良し悪しは決まらない、と私たちは考えています。残業を減らしている会社の経営者が語っていたのは、残業代を1分単位で払う仕組みや、残業の原因になる書類作業を減らす工夫の話でした。求人票で数字を確かめたら、その会社の経営者が働き方をどう語っているかにも目を向けてみてください。熱狂ベンチャーナビの経営者インタビューでは、残業や働き方への考えを経営者自身の言葉で読めます。
条件を数字で読めるようになったら、残業の少ない求人を実際に並べて比べてみるのが近道です。

