【代表インタビュー】株式会社アウナラ 代表取締役CEO 佐伯 孝通

6万3,000軒の薬局市場で「真の専門性」を武器に、不安を希望に変える挑戦
日本全国に6万3,000軒を超える調剤薬局。経営者の高齢化と後継者不足、薬価改定による収益圧迫が深刻な課題となっています。そんな中、「売り手様手数料完全無料」という破壊的なビジネスモデルで急成長を遂げているのが、株式会社アウナラです。
代表取締役CEOの佐伯 孝通さん(以下、佐伯さん)は、薬局向けITシステム「メディクス」の販売で全国1,500店舗を支援した経験を持つ、業界のエキスパート。「関わる方々の不安を希望に変える」をミッションに掲げ、創業からわずか4年で調剤薬局M&A業界の新星として注目を集めています。
「薬歴は患者様の健康状態を正しく記録し、地域の健康ステーションとしての機能を果たすためのもの。そういった薬局をしっかりと残して繋いでいくことに、大きな社会的意義がある」と語る佐伯さんに、業界特化の真価と成長への想いを伺いました。
プロフィール

株式会社アウナラ
代表取締役CEO 佐伯 孝通
趣味
筋力トレーニング、読書、大相撲、格闘技観戦
尊敬する人
両親、アウナラの社員全員
座右の銘
攻防一体
学生が読むべき本
「日本列島再生論」桜井 充 ※200ページ目にアウナラが特集されてます。
経営者におすすめの本
「ベンチャーの作法 ー「結果がすべて」の世界で速さと成果を両取りする仕事術」高野 秀敏
人生で一番熱狂したこと
自分の誕生日に創業したこと
薬局業界の「真の専門性」で差別化。競合との決定的な違い

1,500店舗支援の実績が生んだ、他社が模倣できない強み
小川:まず、御社の事業について教えてください。
佐伯さん:調剤薬局に特化した支援事業を展開しており、調剤薬局に特化したM&A仲介をメイン事業としています。
実は、この領域では競合といえる競合がそれほど多くないのが現状です。M&A仲介業界全体をみると、大手仲介会社から税理士事務所によるM&A支援まで、数多くのプレイヤーが存在します。
これらの事業者も薬局案件を扱うことはありますが、業界の本質的な理解に基づいた専門的な支援を提供できているかというと疑問です。残念ながら、この業界には専門性や業界理解が十分でない事業者も散見されるのが実情です。
小川:専門性の違いはどこに現れるのでさしょうか?
佐伯さん:本質的に薬局に特化したM&A事業を展開している会社は、数えるほどしか存在しません。
その違いを端的に表す例として、薬局の記録管理があります。どのような薬が処方されたか、どのような算定を行ったかを記録する「月計表」というフォーマットがあるのですが、これは薬局運営における基本中の基本です。しかし、この基礎的な知識すら持たない業者が「薬局特化型」を名乗って営業活動を行っているケースが散見されます。
多くが自称による特化型であり、真の専門性を持つ事業者は極めて少ないのです。このような状況では、薬局オーナーが適切なアドバイスを受けられず、M&Aプロセスで失敗するリスクが高まってしまいます。
特に調剤薬局では、近隣クリニックとの関係性や処方箋の流れが事業価値に直結するため、専門知識のない仲介業者が介入すると、せっかくの信頼関係が損なわれ、薬局の価値が大幅に毀損される可能性があります。
前職で培った業界ネットワークが生む圧倒的な信頼関係
小川:佐伯さんご自身の業界経験について教えてください。
佐伯さん:私は前職で、患者様の健康状態や服薬状況を記録する薬歴システム「メディクス」を扱う販売子会社、アクシスチャージ株式会社の代表を務めていました。このシステムは、日本で初めてSaaS化された薬歴システムです。
在任中に約1,500店舗の薬局を支援させていただき、全国6万3,000軒の薬局それぞれが持つ独自の運営方法を深く理解することができました。
私たちが主にターゲットとしているのは、大手チェーンが全体の約10%を占める中で、残りの5万件以上を構成する個人経営薬局や地域チェーン、中堅チェーンです。これらの薬局では、オーナー自身が現場のプレイヤーとして活動している場合も多く、現場の実情を深く理解した専門業者でなければ適切な支援ができません。
薬歴の重要性から生まれた、地域医療への使命感
小川:薬歴の仕事を通じて、どのような気づきがあったのでしょうか?
佐伯さん:薬歴は、患者様の服薬状態や健康状態を正確に記録するための重要なツールです。この記録を適切に管理し、患者様への丁寧な対応を行う薬局が増えることで、地域社会全体にポジティブな影響をもたらすことができると確信しています。
たとえば、周囲から理解されにくい病気をお持ちの方やご家族が直面する偏見や誤解を解決する際、薬局が「地域の健康ステーション」として機能することで、適切な服薬情報や健康状態の理解を促進できます。こうした役割を果たす薬局を維持し、発展させていくことは、地域医療の向上につながる重要な社会的意義があります。
薬局のM&A仲介は、単なる事業承継の支援ではなく、地域医療インフラを残し、繋ぎ、発展させる取り組みです。この理念が、私たちの創業の原点となっています。
「売り手手数料無料」モデルの戦略的破壊力

業界の常識を覆す、破壊的なビジネスモデル
小川:御社の「売り手手数料無料」モデルについて教えてください。
佐伯さん:このモデルの背景には、調剤薬局業界特有の事業規模があります。1店舗当たりの売上高は、最大でも2億円程度、平均では1億円程度が一般的です。このような規模の事業では、従来のM&A仲介手数料体系では、売り手にとって大きな負担となってしまいます。
一方で、買い手側からみると、1件当たりの取引規模が比較的小さいため、大手仲介会社にとっては効率性の観点から取り組みにくい案件となっています。加えて、オーナーが直接現場で業務に従事している場合が多いため、業界の深い知見を持つ専門業者でなければ適切な対応が困難です。
こうした業界特性を踏まえ、私たちは売り手の経済的負担を軽減し、より多くの薬局オーナーがM&Aを検討しやすい環境をつくるため、売り手手数料を無料とするモデルを採用しています。
圧倒的な買い手ニーズが支える事業基盤
小川:薬局M&A市場では、売り手・買い手それぞれのバランスは現在どのような傾向にありますか?
佐伯さん:買い手のニーズが圧倒的に多い状況です。薬局経営では、規模の経済効果により、1店舗よりも2店舗、2店舗よりも3店舗と、店舗数を増やすことで収益性が向上するため、積極的な拡大を目指す事業者が多数存在します。
実際に、買い手となる企業から当社に対して、「案件を紹介してほしい」という営業活動を受けることも珍しくありません。買い手候補の確保については、十分な基盤を築けていると考えています。
高い成約率を支える専門性と顧客満足度
小川:成約率はいかがですか?
佐伯さん:専任の場合、99.3%と極めて高いM&A成約率を実現しています。これは、売り手の希望する売却価格とタイミングの実現を最優先する姿勢の結果だと考えています。
私たちのサービスに対する満足度の高さを示す事例として、売却を支援したクライアントが、取引完了後に当社で働くことを希望され、実際に入社されたケースもあります。これは、私たちの支援に対する深い信頼と満足の表れだと受け止めています。
汎用営業から業界エキスパートへの転身

就職氷河期からの出発と基礎スキルの習得
小川:佐伯さんご自身の経歴について教えてください。
佐伯さん:1988年生まれで、いわゆるハンカチ世代です。就職氷河期に社会人生活をスタートしました。リーマンショック後の厳しい就職環境の中で、OA機器のベンチャー企業やケータリング会社など、複数の会社を経験しました。
その後、第2新卒として大塚商会に入社し、3年間にわたってBtoB営業の基礎を学びました。早朝から深夜まで、厳しい営業環境での経験を通じて、ビジネスパーソンとしての基礎的なスキルを身につけることができたと感じています。
続いて、株式会社セレスでアルバイト自社求人メディア「モッピージョブ」の営業や、経営者向けメディアの営業を担当し、ベンチャー企業の魅力と成長環境の価値を実感しました。
母親の一言が変えた人生の方向性
小川:そこから現在の薬局業界での事業に至るまでには、どのような転機があったのでしょうか?
佐伯さん:セレス退職後、1年間の模索期間を経た29歳のタイミングで、初めて母親に将来について相談しました。母親から「薬剤師さんのためになる仕事をしたらどうか」というアドバイスをもらったことが大きな転機となりました。
母は長年看護師として医療現場で働いており、病棟、外科系、施設看護、プライマリーケアなど幅広い経験を積んでいました。その経験から、医療業界の中で薬剤師が最も重要な役割を果たしているという確信を持っていたのです。
私の家庭では、体調不良の際はまず薬局に相談し、薬剤師からのアドバイスに基づいて適切な対応を決める習慣がありました。このような薬剤師の専門性と社会的価値を実感していた母親の言葉が、私のキャリア選択に大きく影響することになり、薬剤師の方々を支援できる仕事を探し始めました。そうして出会ったのが、薬歴システム「メディクス」を扱うアクシス社です。これこそ求めていた仕事だと感じ、入社を決意しました。
1か月で辞意から社長就任への劇的な転換
小川:アクシス社に入社されてからは、どのような経験をされたのでしょうか?
佐伯さん:当初、アクシスの企業文化に馴染めず、入社1か月で退職を検討していました。カリスマ的な社長の下で、年配のスタッフが熱心に働く環境が、私が求めていたベンチャー企業のイメージとは異なっていたからです。
しかし、退職の意向を伝えた際に、「あなたは本来はサラリーマンには向いていない。経営者に向いている」と評価をいただき、子会社の社長職を提案されました。特に推進力という点で高い評価をいただき、薬歴販売会社アクシスチャージ株式会社をほぼ独立した形で経営することになりました。
この経験が、現在の経営者としての基盤を形成する貴重な機会となりました。
急成長を支える組織づくりと企業文化

戦略的リファラル採用と強固な企業文化
小川:採用や組織づくりについて教えてください。
佐伯さん:リファラル採用に積極的に取り組んでおり、営業職の紹介成功時には30万円、内勤職では20万円のインセンティブを設定しています。この制度により、社員が積極的に優秀な人材を紹介してくれる環境を構築しています。
また、SNS経由での応募も増加しており、YouTubeなどでの露出を通じて認知度向上も図っています。
小川:会社の雰囲気はいかがですか?
佐伯さん:体育会系的なエネルギッシュな文化を持つメンバーが多く在籍しています。チームワークを重視し、積極的なコミュニケーションを通じて結束力を高めています。
業界の特性上、薬局のオーナーには元MR(医薬情報担当者)出身者が多く、従来から会食文化が根付いています。そのため、クライアントとの関係構築においても、コミュニケーション能力が重要な要素になると思います。
厳しい現実と向き合う覚悟が求められる職場
小川:どのような人材を求めていますか?
佐伯さん:率直に申し上げると、この業界での仕事は困難な場面が多く、楽しい瞬間は全体の1割程度です。しかし、困難な状況においても諦めずにやり抜く力、次のステップに向けて努力を継続する強い意志と粘り強さが最も重要な資質だと考えています。
特別な能力や資格よりも、最終的には精神的な強さが成功を左右する業界です。そのような覚悟を持って取り組める方であれば、必ず活躍していただけると確信しています。
小川:たとえば、営業職ではどのような大変さがあるのでしょうか?
佐伯さん:薬局経営者とのコミュニケーションには特別な配慮と時間が必要です。多くの個人経営薬局では、オーナー自身が現場で調剤業務に従事しているため、営業時間中はほとんど時間を取っていただけません。
薬局の営業時間は一般的に朝9時から夕方6時、土曜日は午前中のみというケースが多く、商談は必然的に閉局後の夜7時以降や土曜日の午後になります。さらに、在宅調剤で患者様のお宅に訪問される場合は、「調剤が終わってからなので8時半から」といったように、遅い時間からの打ち合わせも珍しくありません。
医療従事者としての専門性が高い一方で、一般的なビジネス慣習とは異なる文化を持つ業界でもあるため、一般企業での常識が通用しない場面が頻繁にあり、これに対応できずに退職を選択する社員もいます。興味深いことに、退職理由として当社や私個人への不満よりも、業界特有のコミュニケーションの難しさを挙げるケースが多いのが実情です。
しかし、この困難を乗り越えた社員は、他では得られない専門性と強靭な精神力を身につけることができていますね。
IPOから時価総額1,000億円企業への道筋

前職超えを目指す野心的な成長戦略
小川:今後の会社の展望について教えてください。
佐伯さん:IPOの実現を通じて、まずは時価総額1,000億円の企業を目指し、その後は事業領域を拡大してグループ年商1,000億円規模の企業グループ構築を目標としています。
私自身が子会社経営の経験を持つため、複数の子会社を設立し、事業を分離・拡大することで、社内にベンチャー企業を数多く創出したいと考えています。この戦略により、意欲ある社員により大きな裁量と成長機会を提供できると確信しています。
社会的意義と事業成長の両立
小川:最後に、これから入社を考えている方へメッセージをお願いします。
佐伯さん:調剤薬局という特殊なマーケットに真剣に向き合い、業界の発展に貢献する覚悟をお持ちの方であれば、必ず活躍していただけます。現在、東京、大阪をはじめ全国で人材を募集しておりますので、少しでもご興味をお持ちの方はお気軽にご連絡ください。
私たちの仕事は、薬局という形で地域社会に貢献する事業を残し、発展させることです。支援した薬局で患者様が相談される姿や、薬剤師が活き活きと働く様子をみると、自分たちの仕事が持つ社会的意義を深く実感できます。
「ありがとう」「本当に助かった」といったクライアントや患者様からのフィードバックをいただくたびに、この仕事に携わることの価値を改めて感じています。
会社概要
会社名 | 株式会社アウナラ |
HP | https://aunara.jp/ |
設立 | 2021年6月4日 |
事業内容 | 【薬局特化型支援事業】 M & A 仲介 コスト適正化支援(薬価交渉・税理士法人紹介等) 薬局運営支援 医師開業初期費用支援 【HR 支援事業】 医療福祉法人紹介 オフィスワーク系人材紹 【その他事業】 インフルエンサー活用支援 |
採用情報 | https://aunara.jp/recruit/ |