【代表インタビュー】deex株式会社 代表取締役 牛丸 順登

日本経済の底上げに向けた営業DX化への取り組み
deex株式会社では、従来属人的で体系化されてこなかった代理店・パートナー営業のDX化を推進し、企業の成長を支援しています。代表取締役の牛丸 順登さん(以下、牛丸さん)は「日本企業の底上げに貢献したい」という使命感のもと、独自のPRMツール「CoPASS」の開発やコンサルティングサービスを展開。リクルート時代の経験を活かし、営業戦略の科学的アプローチで企業の可能性を最大化する取り組みを進めています。
日本における代理店販売のシェアは全体の約7割にも及ぶにもかかわらず、多くの企業ではそのノウハウが体系化されていない現状があります。そんな中、牛丸さんが代表を務めるdeexは、これまで誰も本格的に取り組んでこなかった分野として挑戦。日本特有の営業手法に根差した代理店チャネルの可能性を引き出す同社の取り組みと、事業に込められた思いについて伺いました。
プロフィール

deex株式会社
代表取締役 牛丸 順登
趣味
サーフィン、ジム
尊敬する人
親
座右の銘
志高く
人生で一番熱狂したこと
毎日が挑戦の連続で、冒険しているような今この瞬間に熱狂しています
属人的営業の体系化と科学的アプローチの必要性

代理店販売が占める7割のシェアと課題
小川:御社がどのような事業をされているのか教えてください。
牛丸さん:当社は、パートナーセールス(代理店販売)の支援事業を展開しています。パートナーセールスというと聞き馴染みがない方も多いと思いますが、企業が商品を販売する方法として、自社の営業部隊による直販、マーケティング活動、そして三つ目のパートナーセールスがあります。日本全体で流通している商品やサービスのうち、代理店経由の割合は全体の6〜7割とも言われているんです。
ただ、この領域はかなり属人的で、体系化されていない部分が多いんですね。セールスやマーケティングの領域ではさまざまな手法が研究され、「AというアクションをとるとBという結果が得られる」といった知見が蓄積されてきましたが、パートナーセールスの領域ではそれがまだみつかっていません。
小川:たしかに属人性が高いイメージがありますね。
牛丸さん:はい。支援している企業としてもマーケティングやセールスの領域は多いのですが、パートナーセールスの専門支援会社は少ないんです。この領域で科学的なアプローチによるノウハウを構築し、日本企業の底上げに貢献したいという思いで起業しました。
小川:どのようなアプローチで支援されているのですか?
牛丸さん:大きく三つの観点から支援しています。一つ目は「リクルーティング」で、親和性の高い代理店とのマッチングを実現します。二つ目は「アクティベーション」、つまり代理店のサポート体制を強化し、稼働率を上げる施策を考えます。そして三つ目は「代理店制度・パートナープログラム」の設計です。
適切なインセンティブ設計や代理店ランク制度の構築などを行います。これらすべての要素が大切で、クライアント企業ごとに状況が異なるため、オーダーメイドの支援を提供しています。
クラウドツール「CoPASS」で代理店管理をDX化

小川:具体的なサービスについても教えていただけますか?
牛丸さん:主に二つのサービスを展開しています。一つ目はコンサルティング支援で、パートナーセールスの戦略立案から実行支援まで一気通貫でサポートしています。この領域に精通したプロフェッショナルが、企業の課題に合わせた解決策を提供します。
もう一つはITツール「CoPASS」の提供です。これは代理店管理に特化したクラウドサービスで、契約情報や案件進捗、手数料計算などを一元管理できます。代理店とのコミュニケーションや販促資料の共有もシステム上で行うことができ、販売データの分析機能も備えています。日本企業の商習慣に合わせてカスタマイズしたPRM(Partner Relationship Management)ツールとして、多くの企業に導入いただいています。
小川:導入企業にはどのような効果がありますか?
牛丸さん:まず業務効率の大幅な向上が期待できます。従来は属人的で手作業だった代理店管理業務の多くが自動化され、担当者の負担が軽減されます。また、データに基づいた代理店活用が可能になるため、売上の拡大にもつながります。
実際、あるAI企業では社員20人ほどの状態で、代理店チャネルを活用して40〜50億円の売上を達成し、上場を果たした例もあります。私たちはその立ち上げから伴走させていただきました。
リクルート時代の経験から芽生えたビジョン

大企業における代理店ビジネスの実態
小川:代理店ビジネスに注目されたきっかけは何だったのでしょうか?
牛丸さん:私は元々リクルート出身なんですが、そこで大きな気づきがありました。リクルートは当時、時価総額10兆円を超える大企業で、220個ほどのプロダクトを持っていましたが、そのほとんどを代理店経由で販売していたんです。ただ実際に各事業部の中身をみると、事業部ごとに持っているノウハウがバラバラで、代理店営業の進め方も統一されていませんでした。
さらに驚いたのが、マーケティングやセールスには参考になる書籍やウェビナーがたくさんあるのに、代理店営業の専門書やセミナーがほとんど見当たらなかったこと。それにもかかわらず、売上のインパクトは非常に大きい。この矛盾に気づき、「自分たちが教科書をつくろう」と考えるようになりました。
小川:なぜこの領域は体系化されてこなかったのでしょうか?
牛丸さん:大きな要因として、代理店が間に入ることで顧客とのコミュニケーションがブラックボックス化してしまう点があります。マーケティングや直販であれば顧客と直接やり取りするので状況が把握できますが、代理店経由だと代理店が何をモチベーションに、どういうお客さんに営業活動しているのかがみえづらいんです。
もう一つの要因は日本特有の文化で、「餅は餅屋」という考え方による上下関係の逆転が起きています。その結果、本来であれば商品やサービスを提供する側が主導権を持つはずのところ、販売を担う代理店の方が強い立場になることもあるんです。
特に販売力を持つ大手代理店になると、メーカーや提供元が「売ってもらうために頭を下げる」という構図が現場で起きてしまう。こうした販売側と提供側の立場の逆転や、情報がうまく共有されない状況が、業界全体をややこしくしているんです。
その結果、誰が何をしているのかがみえづらく、仕組みを整理したり、みんなで共通のルールをつくったりするのが難しくなってしまっています。このような背景があるからこそ、代理店との関係性や仕組みづくりに本気で向き合う必要があると感じるようになりました。
「会社と仕事の可能性を最大化する」という使命
小川:起業に至るまでの経緯を教えていただけますか?
牛丸さん:新卒でワークスアプリケーションズという会社に入社し、大手企業向けの会計システム営業を担当していました。その後、将来的な起業を視野に入れながら、経営ノウハウを学ぶためにリクルートへの入社を決めました。当時リクルート出身の上場企業創業社長が一番多かったので、そこで貴重な経験を積ませていただければと考えたんです。
リクルートでは人材エージェント事業に所属しながら、外資系コンサルティングファームの中途採用支援も担当していたのですが、そこでも気づきがありました。優秀な人材が自分の専門外の業務を外部に丸投げしてしまう姿をみて、「自分たちの強みを放棄してしまっている」と感じたんです。
代理店営業も同じで、自社製品なのに販売を完全に外部に依存することで、本来持っているはずの営業ノウハウが社内に蓄積されず、成長機会を逃しています。これらの経験から、「企業が本来持っている可能性を最大化するためにパートナービジネスを再定義する」という使命を掲げ、deexを創業しました。
柔軟な働き方とオープンな組織運営の実現

リモートワークとハイブリッド型組織の運営体制
小川:御社の社内カルチャーや働き方について教えてください。
牛丸さん:私たちの会社では、オープンなコミュニケーションを大切にしています。社員からの意見が経営判断に反映されることも多く、自分の考えや提案を自由に発言できる環境です。四半期ごとに「個人のWill(実現したい目標)に最も近づいたメンバー」を表彰する制度や、社内からの新規事業提案を積極的に採用する仕組みなど、一人ひとりの意見を尊重する文化があります。
また、柔軟な働き方も特徴の一つです。正社員だけでなく、副業やフリーランスの方も在籍するハイブリッド型組織なので、働く時間や場所に原則として制限を設けていません。オフィスは自由に利用できますが出社は必須ではなく、各自のワークライフバランスに合わせて働ける環境を整えています。2022年には内閣府の「地方創生テレワーク推進運動」に参加し、全国どこからでも参画できる体制を強化しました。
小川:御社では、どのような価値観や姿勢を持った方が多く働かれていますか?
牛丸さん:野心的なメンバーが多いと思います。同時に、人が好きで、人思いな方たちが集まっています。自分の成長を追求しつつも、周りの人を大切にするバランス感覚を持った人が多いですね。みんな仲が良く、忘年会などもとても盛り上がります。本当に幼馴染みみたいな、そんな感覚で働ける環境です。
小川:これから入社する方に求めていることは何ですか?
牛丸さん:何よりも「会社をさらに前に進めてくれる人」を求めています。専門性を持って前進する人もいれば、エネルギーや人間力で周囲を巻き込む人もいて、アプローチはさまざまです。重要なのは、自分なりにその人の「一芸」をちゃんと捉えて言語化し、それを活かして事業を前に進められることです。また、当社が上場を目指す2029年に向けて、一緒に成長してくれる仲間を募集しています。
2029年上場目標と日本経済への貢献

代理店チャネル効率化による経済成長へのアプローチ
小川:今後の展望について教えてください。
牛丸さん:2029年の上場を目指して、着実に成長を続けていきたいと考えています。現在は確かな価値を提供するサービスづくりに注力しており、クライアントからの「ありがとう」の声を大切にしています。短期的な実績づくりよりも、本質的な満足度を追求することで、長期的な信頼関係を築いていきたいと思います。
また、「CoPASS」というプロダクトを通じて、日本企業のパートナービジネスのあり方を変革していきたいという思いもあります。海外では当たり前になっているPRM(Partner Relationship Management:代理店マネジメント)の概念を、日本のビジネスに合わせた形で浸透させることで、多くの企業の成長を支援できると考えています。
小川:社会的な意義についてはどのようにお考えですか?
牛丸さん:日本全体の商流の約7割を占める代理店チャネルの効率化は、日本経済全体の底上げにつながる可能性を秘めています。また、地方創生の観点からも、場所にとらわれない働き方を推進することで、全国各地の人材が活躍できる環境づくりに貢献したいと考えています。
「企業が本来持っている可能性を最大化する」という私たちのミッションは、単にビジネスの成功だけでなく、社会全体をより良くしていくための挑戦でもあります。その実現に向けて、これからも邁進していきたいと思います。
会社概要
法人名 | deex株式会社 |
HP | https://www.deex.co.jp/ |
設立 | 2021年3月 |
事業内容 | ・理店活用コンサルティング「Partner Boost」事業 ・代理店管理/育成ツール「CoPASS」事業 ・代理店開拓支援サービス「CoPASS BPO」事業 |
採用 | https://www.wantedly.com/companies/company_2387327 |