【代表インタビュー】株式会社アシスト 代表取締役社長 加藤光淑

プロフィール

株式会社アシスト
代表取締役社長 加藤光淑
趣味:ゴルフ
尊敬する人:社員をはじめとする周りの方々
人生で一番熱狂したこと:常に一つひとつのことに本気で、熱狂しています。
座右の銘:一期一会
会社について
会社を長期運営する秘訣は、常に新たな挑戦を仕込むこと

貴社は現在36期目に入られたとのことですが、どのような経緯で事業をスタートされたのですか?
私は平成元年(1989年)に会社を設立しました。当時、京浜工業地帯には約1万2000社ほどの中小企業や町工場が集まっており、私はまずその企業向けに機械工具の販売事業を開始しました。
しかし、バブル崩壊や市場の変動の影響で、多くの企業が淘汰されていく厳しい時代が続きました。その中でも、私は一人で事業を続け、次第に精密研磨という特殊な分野へと事業を展開するようになりました。精密研磨は非常に奥が深く、1ミクロン単位の精度を追求する技術です。そこから、光ディスクの金型を磨く技術に着目し、海外メーカーとの連携を深めていきました。



海外展開についても伺いたいのですが、どのように始められたのでしょうか?
1998年頃、台湾で初めてのDVD製造工場を立ち上げるプロジェクトがあり、私たちはその一環として、約20億円規模のシステムを提供しました。これは台湾企業のプロジェクトの一部で、プレゼンテーションを行った3社の中で、私たちが受注することができました。このプロジェクトを通じて、日本国内外の光ディスク製造メーカーにも機械を提供し、事業を広げていきました。
さらに、コンテンツメーカーとの提携も進め、台湾で製造されたディスクを日本に輸入し、映像メーカーに販売するという流れも生み出しました。



最近の事業展開についても教えてください。
近年では、教育資材分野にも注力しています。全国に約900の学習塾があり、そこで使われる小学生や中高生向けのハードウェアを提供しています。これは、タブレットのようなデバイスで、生徒がペンを使って学習できる仕組みです。私たちはこのデバイスの設計・製造を担当し、出版社と協力して提供しています。
さらに、歯科医療分野にも進出しており、歯型をスキャンしてデータを元に歯を削り出す機械をOEM生産しています。今年から納品を開始しており、今後の成長が期待される分野です。



長期的に会社を続けられている秘訣は何だと思いますか?
1つの事業に頼るのではなく、常に次の事業を仕込んで展開していくことが大切だと思います。成功する事業もあれば、失敗するものもあります。しかし、失敗から学び、新たなビジネスチャンスを見つけて挑戦し続けることが重要です。創業当初は、まさか今のように映像事業を展開するとは思ってもみませんでしたが、常に情報を収集しながら、新たな道を切り開いてきました。



他の会社と比較したときに、どのような点に特徴がありますか?
私たちも以前は商社としてメーカーから仕入れた製品を販売する形態でしたが、それには限界があると感じています。そのため、製品やサービスに自分たち独自の工夫や技術を加え、よりBtoCの市場に焦点を合わせることが必要だと考えています。
ただ、単にデータを変換するのではなく、エンジニアが工夫して付加価値の高いサービスを提供し、お客様に満足いただけるものに仕上げることが重要です。こうしてオリジナリティを追求しなければ、競合がひしめく市場での成功は難しいでしょう。他力本願ではなく、自分たちで事業を作り出し、成長を目指す姿勢が必要だと思っています。
社員一人ひとりが挑む『付加価値づくり』の現場



エンジニアの工夫とは、具体的にはどのようなことを指しているのでしょうか?
私たちが大事にしているのは、エンジニア一人ひとりの「経営者意識」です。社員は単に指示を受けて作業を行うだけではなく、自分自身が経営者だったらどう行動するか、どうサービスや製品に付加価値をつけられるかを常に考えるように促しています。私は社員一人ひとりを「個人経営者」だと見ており、個々がスキルを高め、それを会社に還元することで成長していけると考えています。
例えば機械を扱うプロジェクトでも、顧客の要望をヒアリングし、設計し、製品をテストし、フィードバックを得て改善していく。こういった一連の流れで社員一人ひとりが考え抜いた仕事をするからこそ、顧客のニーズに応え、満足していただけるものが提供できると考えています。



御社の経営理念について、社員への期待や組織の在り方について教えていただけますか?
私たちの理念は「強みを伸ばし合い、弱みを補い合う」ことや、「社会を豊かにする手助けを」というところにあります。社員一人ひとりが個人のスキルを高め、会社全体としても社会に必要とされる存在であることを目指しています。この姿勢を持って、より良いものを作り、社会に還元していきたいと考えています。
そして私たちが大切にしているのは、社員一人ひとりが「個人事業主」としての意識を持って働くことです。実際には社員として会社に所属していても、仕事に取り組む上で、自分が社会にとって必要な存在かどうか、また会社自体も社会に求められる企業であり続けられるか、常に考え続けるべきだと思うんです。よく「お客様第一」といった言葉もありますが、やはりその基盤として、社員個々がプロフェッショナル意識を持つことが重要だと考えています。



一人ひとりが「個人事業主」としての意識を持つことで、どのような変化が期待されますか?
個々が自分の強みを活かし、弱みを補い合うことで全体の成長につながると考えています。人にはそれぞれ得意・不得意がありますからね。例えば、私が営業に長けているとしても、エンジニアリングの分野では他の社員に助けてもらうことが多いです。そういった補い合いの姿勢が、個人と組織全体の力を引き出し、さらに高めていけるのだと思います。
加藤さんご自身について
顧客ニーズを追求した結果選んだ、独立の道





社会人になってから、起業された経緯を教えてください。
私は高校を卒業後、大手資本の会社の子会社に入社し、トラックの運転手として働き始めました。入社後は配送業務や倉庫管理、在庫管理といった基礎的な仕事からスタートし、配達業務や倉庫内の整理などを担当していました。ただ、ずっと営業職に興味があったので、24歳頃に営業職への異動を希望し、26歳で営業に配属されることになります。
営業職では、会社が用意した決まった商品を販売していたのですが、お客様を訪問する中で、ニーズが多岐にわたることに気付きました。次第に、自分が考えた商品を自由に提供できたら、もっとお客様のためになるのではと感じるようになります。そして、自分の30歳の誕生日に会社を辞め、独立を決意しました。
会社の雰囲気と従業員について
挑戦を後押しする柔軟な企業文化



社内の雰囲気について教えてください。
社員一人ひとりが自立した姿勢で仕事に臨んでいるので、私も社員が「やりたい」と思ったことに対して、稟議書を出されたことに一度も「NO」と言ったことがなく、どんな設備投資でも挑戦を後押しできるようにしています。
また、社員は皆真面目で、顧客ニーズに応じた柔軟な対応力を備えています。特に、社内外のチームワークを活かし、必要な資源や知識を共有しながらワンストップでお客様にサービスを提供することを重視しています。これは、同地域の中小企業の協力体制から学んだことで、分業化された企業同士が連携し、製品の開発や製造を支えてきた背景に由来しています。社員たちは、この強固なネットワークを築き、外部企業とも連携して製品を作り上げる力に長けており、これは36年間続けてきた同社の強みです。



これから会社に入ってきてほしい人は、どんな人ですか?
会社が求める人材について、やはり基本的なスキルは必要ですが、一番大事なのは「素直さ」だと思っています。人の意見やアドバイスを素直に受け入れられる人は成長が早く、結果的にスキルも高めていけると感じています。また、仕事は強制されるものではなく、自分の意志で取り組むことが大事です。常に反発するような姿勢だと、スキルも向上しませんし、成長も限られてしまいます。これからの時代、ネットや技術が進化する中で、柔軟に人の意見を取り入れられる素直さが、より一層重要になってくるのではないでしょうか。
また時代に適応し、会社としても成長し続けるためには、チームで協力しながら新しい環境や変化に対応する力として、協調性が必要だと思います。そのような素直さと協調性を持った人材が、時代に合った組織をつくり上げていくのだと思っています。