ワンダーグループ株式会社 代表取締役CEO 塚原 誠 インタビュー記事

「アルバイト派遣」で人材業界に革命を—カジュアルワークと専門性を両立
ワンダーグループ株式会社では、「アルバイト派遣」という独自コンセプトで人材業界に新風を吹き込み、急成長を遂げています。代表取締役CEOの塚原 誠さん(以下、塚原さん)は、倒産寸前だった会社を引き継ぎ、1億6,000万円の借金を抱えた状態から、わずか4年で年商15億円の企業へと成長させました。日雇い・日払いのカジュアルな働き方を入口にしながら、企業と求職者の継続的な関係構築を支援する同社の革新的なビジネスモデルと、そこに込められた熱意について伺いました。
プロフィール

ワンダーグループ株式会社
代表取締役CEO 塚原 誠
趣味
ボルダリング
尊敬する人
中学時代の厳しい指導を受けた恩師
座右の銘
粉骨砕身
学生が読むべき本
「ゆるストイック ノイズに邪魔されず1日を積み上げる思考」佐藤 航陽
経営者におすすめの本
「ビジネスフレームワーク図鑑 すぐ使える問題解決・アイデア発想ツール70」株式会社アンド
人生で一番熱狂したこと
初めての会社を設立することを決断したとき、ワクワク1割ドキドキ9割で熱狂していました
日雇いと人材派遣の強みを融合した新しいビジネスモデル

カジュアルさと専門性を兼ね備えた独自アプローチ
小川:御社がどのような事業をされているか教えてください。
塚原さん:ワンダーグループは、アルバイト派遣というコンセプトで事業を展開している会社です。わかりやすくたとえるなら、日雇いアルバイトやスキマバイトのカジュアルさや働きやすさと、通常の派遣会社が行う人材のセグメントといった専門性を掛け合わせたビジネスモデルです。
単にシステマチックに応募者を右から左に流すプラットフォーマーではなく、人材業として一人ひとりをしっかり面談や面接をおこない、それぞれに合った仕事を、日雇いであっても提供しています。
小川:そういった会社は他にもあるのでしょうか?
塚原さん:全く同じような業態、似ている業態は限りなく少ないと思います。各社それぞれ特色があり、たとえばタイミーさんであればスキマバイトのイメージですよね。スタッフがカジュアルに働けることを最優先しています。他社はそれぞれ得意ジャンルや特定分野に特化している傾向があります。
当社は、業種や職種を問わずあらゆるお仕事に対応できる総合型の人材サービスであり、日雇い・日払いにも柔軟に対応できる点が大きな特徴です。
一見するとタイミーさんのようなサービスと似ているようにみえるかもしれませんが、当社では人の手を介して働き手を手配しており、現場ごとの細かなニーズに応じたマッチングが可能です。こうした人を介した日雇い手配の仕組みこそが、当社の強みです。
優れた集客力が生み出す差別化優位性
小川:特化した企業に負けない差別化要因はどこにありますか?
塚原さん:一重に集客力です。これは当社がスキマバイトと一般的な派遣会社の「いいとこ取り」ができているからです。スキマバイトはカジュアルであるがゆえに集客力が高いのですが、デメリットとして就業力があまり高くない人が混じったり、企業が求める人材像とずれが生じたりします。
一方、一般的な派遣業には、企業が求める人材を集めやすいというメリットがあります。これは、人が介在して面談や面接を行い、適切な人材をしっかり手配しているためです。ただしその一方で、人材そのものが集まりにくいという大きな課題も抱えています。
昨今の人材難が加速する中で、どれだけ質の高い人材が出せたとしても、そもそも人が集まらなければ意味がありません。当社はこの両者の「いいとこ取り」を実現し、集客力と人材の質の両立に成功しています。
効率的な求人戦略と継続雇用へのスムーズな橋渡し

低コストで高パフォーマンスを実現する求人力
小川:そういったビジネスモデルを実現できた理由はどういうところにあるのでしょうか?
塚原さん:多くの要因がありますが、最も影響が大きいのは求人力です。この事業を成功させるには、日雇い日払いでの人材手配が必要不可欠です。
通常の派遣業では、一人の営業担当者が月に30人程度の派遣スタッフを担当し、月に1回の面談サイクルで運営できます。しかし日雇い事業では、1日30人稼働したら翌日はまた別の30人が働くという形になります。30日間で計算すると、延べ900人とコミュニケーションをとる必要があり、ここに大きな人的コストが発生します。
人的コストの削減は難しいため、応募者を増やすための求人にかかる広告費の最適化が重要になります。そこで当社では、フリーターへの効果的な訴求に注力しています。日雇い業界全体では登録者の30〜35%が学生ですが、当社は15%程度に抑え、フリーター層を主要ターゲットにしています。フリーターへの効果的な求人アプローチや、働いているフリーターからの紹介(リファラル)によって広告費を大幅に削減しています。
小川:具体的な応募単価はどのぐらいなのでしょうか?
塚原さん:応募単価が業界平均500〜800円のところ、当社では150円程度まで最適化できています。これは綿密なABテストの繰り返しや、求人媒体との戦略的な連携の結果です。そして求人に対する迅速な対応力、応募から登録までのスムーズな導線設計も重要なポイントとなっています。
また、通常の派遣会社と差別化している点として、「どんな仕事があるか」ではなく「ワンダーグループで働く」ことを前面に打ち出す戦略を採用しています。まず当社に登録してもらい、その後に一人ひとりに合った仕事を一緒に探していくという独自の導線を構築しています。
フリーターへの戦略的アプローチで実現する継続雇用モデル
小川:なぜフリーターへの訴求を強化されているのですか?
塚原さん:当社は日雇いアルバイトを入口とした継続的雇用創出をコンセプトに掲げています。人材難の中で、企業に対してはまず日雇いで人材を試してもらい、相性の良い人材がみつかれば継続雇用へとステップアップしていく流れを提案しています。
フリーターの方は、このビジネスモデルに適性を持っています。学生は休暇期間の短期就労には適していても、「来月から正社員として働きませんか」といった提案には応じづらい現実があります。一方でフリーターの方であれば、「これから長期的に頑張ってみませんか」という提案に前向きにご検討いただけるケースが多く、企業側にも安定した継続雇用の機会を提供できるというメリットがあります。
小川:実際に短期バイトから長期雇用へ移行する割合はどれくらいですか?
塚原さん:当社の全体売上の約10%が長期稼働や転職関連から生まれています。9割は日雇い日払いの働き方ですが、稼働者全体の2%が継続雇用につながるという数値で推移しています。
具体例を挙げると、ある物流倉庫で毎日10人の派遣を30日間行うと、延べ300人が稼働します。2ヶ月経過すると600人となり、そのうちの2%、つまり12人が固定メンバーへと成長します。最初は日々異なる人材に業務を教える手間はありますが、2ヶ月の期間を経れば12人の安定したチームが形成されるのです。
これを従来の求人手法と比較すると、その効率性は明らかです。通常なら1人の採用に月50万円の広告費をかけ、2ヶ月で100万円のコストがかかります。一方、当社のアプローチでは1人あたり3,000円程度のマージンで12人の安定した人材を確保できるため、コスト効率の面で圧倒的な優位性があります。
熱狂から生まれた組織文化と急成長の原動力

逆境から生まれた情熱とビジョン
小川:塚原さんご自身が、最も熱狂された経験について教えてください。
塚原さん:ワンダーグループの立ち上げ期が、私にとって最も熱狂したことでした。順風満帆な状況では生まれなかったであろう情熱と覚悟がそこにはありました。
当社は現在創業10年目の会社ですが、私がこの会社の経営を引き継いだのは約4年前のことです。それまでは別の経営陣が運営していましたが、私自身は全く異なる分野で営業代行会社を経営しており、人材業の経験は皆無でした。
当時のワンダーグループは小規模な組織でしたが、コロナ禍により既存クライアントの事業停止が相次ぎ、半年以上にわたって売上がゼロという深刻な状況に陥っていました。コロナ関連の各種融資制度を活用した結果、累計借入額が約1億6,000万円という巨額の負債を抱えるに至っていたのです。
この危機的状況下で前任の経営陣が退任した後、会社の株主から経営再建の打診がありました。通常であれば巨額の借金を抱えた会社の再建は避けるべきリスクですが、私はむしろそこに大きな挑戦と意義を見出しました。「多くの企業が新規設立で成功を目指す中、再建という困難な道にこそ稀有な価値がある」という考えが、私の決断の背景にありました。
1日20時間の死に物狂いの努力で実現した急成長
塚原さん:私と前職から招いた副社長の2人だけでスタートした新生ワンダーグループ。目標は3年以内に年商10億円の達成でした。そのためには最初の3ヶ月で月商3000万円を実現する必要があると計算し、1日20時間、休日なしの徹底した取り組みを開始しました。
クライアントに対しては一から新しいコンセプトを説明し、スタッフ募集においては広告予算がない中で無料のSNS媒体や人的ネットワークを最大限に活用。クライアントには「必ず約束した人数を用意します」という完全コミットメント型の営業アプローチを徹底しました。
この懸命な努力の結果、わずか3ヶ月で月商3,600万円を達成し、当初の目標を上回ることができました。この成果が当社のビジネスモデルへの確信へと変わり、この方向性で業界に新たな価値を提供できると実感しました。
その後、全国に拠点を展開し、組織を拡大。現在は年商15億円に成長し、初期に掲げた目標を達成することができました。今後は30億円、50億円という新たな高みを目指して歩みを進めています。
自己成長と組織成長を実現する環境

自然と責任感が育まれる組織設計
小川:御社ではどのように熱狂的な環境をつくられているのですか?
塚原さん:まず社員の年齢層が若いことで意思共有がスムーズに行われ、熱量の伝達がしやすい組織基盤があります。また、現代では珍しいことかもしれませんが、社員同士の交流イベントや会社の集まりを自主的に企画する文化があり、体育館を借りての運動会などさまざまな活動を会社としてサポートしています。
業務時間外でのコミュニケーションが自然と生まれることで、組織全体の一体感や熱量の共有がより効果的に行われています。さらに特筆すべき点として、業務の構造自体が責任感を醸成する仕組みになっています。
日雇い日払いの業界特性上、自分の担当業務が完了しなければ次のシフト担当者に負担が生じるという状況が「自動的な責任感」を生み出しています。遊びや私生活を充実させるためにも仕事をきちんと完遂する必要があるという文化が自然と根づいており、これが高いパフォーマンスにつながっています。
明確なキャリアパスと成長機会
小川:入社した方のキャリアパスについて教えてください。
塚原さん:キャリア形成の第一段階として、まずはスタッフの現場経験を通じてコミュニケーション能力を養います。次に現場とスタッフの関係性をコントロールできるマネジメントスキルを習得し、さらにチームや部門のマネージャーへと成長していきます。
店長のような現場責任者からエリア長などの上位職を目指すキャリアルートの他、自分の得意分野を活かして新たな部門を立ち上げ、将来的にはその部門を子会社化して経営者になるというパスも用意しています。実際に子会社として独立していったケースもあり、多様な成長機会を提供しています。
小川:これから入社を検討する方に求められる適性は何でしょうか?
塚原さん:人との交流に前向きな方、あるいはそれをストレスと感じない方が活躍されています。人とのコミュニケーションやマネジメントというリアルな対人スキルを磨きたいと考える方に特に適した環境です。
デジタル化やAI技術が急速に発展する現代において、人と効果的に関わる能力そのものが重要なビジネススキルとして再評価されています。従来は単に「人と話すのが好き」という性格特性として捉えられていたものが、今や明確なビジネス上の強みとなっています。このようなパラダイムシフトを理解し、人間関係構築に価値を見出せる方との相性は抜群です。
小川:入社後にどのような成長が期待できますか?
塚原さん:当社の環境では、対人スキルが自然と身につきます。また、成長フェーズの企業であるため、事業拡大の生の過程を体験できることも大きな特徴です。さらに若手でも裁量を持って仕事に取り組める環境があるため、自分のアイデアの実現と成長サイクルの加速が期待できると思います。
社員が自ら提案したことが実現されることが多く、みんなで一緒に成長していける環境を大切にしています。自分の意見を発信し、チームで実現していきたい方にとって、働きがいのある環境だと自負しています。
次世代型「リアル×デジタル」ハイブリッドモデルの展望

人的価値を最大化する未来志向のアプローチ
小川:今後どのような会社を目指されていますか?
塚原さん:社会的な影響力を持つ企業へと成長していきたいと考えています。売上目標も重要ですが、当社の人材アプローチがスタンダードとして業界に広がっていくことにも大きな価値を見出しています。システム依存ではなく、人が適切に介在する人材マッチングの重要性を広く認知してもらいたいと思います。
また、社員にとっては会社の成長と影響力拡大のプロセスを共に経験できる貴重な機会を提供したいと考えています。自分たちが関わる企業が社会的影響力を高めていく過程を体験することは、キャリア形成上もかけがえのない経験になるでしょう。
小川:人が介在することの価値はどのように表現できますか?
塚原さん:当社は次世代型アナログ派遣という概念を提唱しています。一見すると古典的な手法に思えるかもしれませんが、これこそが次世代型のアプローチなのです。現在の完全デジタル派遣の先にある未来形は、重要度の低い業務はデジタルで処理し、核心的な部分は人的判断で行う最適なハイブリッドモデル。ただし比率としては9:1程度で、9割の重要な部分は人が担うべきだと考えています。
たとえば、朝のモーニングコール一つとっても、「そんな対応は昔のやり方だ」と言われることがありますが、これこそ最先端のアプローチです。「起きました」と言う声のトーンから2度寝の可能性を判断したり、必要に応じて電話を継続するといった細やかな対応は、機械では代替できません。
スタッフの勤怠管理などのシステム面はデジタル化していますが、人を動かし、モチベートする力は人にしかないというのが私たちの確信です。テクノロジーの進化に伴い、むしろ人間ならではの細やかな対応の価値が再評価される時代が来ていると感じています。
小川:最後に、これから社会に出る方へのメッセージをお願いします。
塚原さん:私たちが提供しているのは単なる人材サービスではなく、人と企業が最適につながる機会の創出です。人を動かす力を実践的に学べる環境が当社にはあります。自分の成長とともに会社も成長していく、その相乗効果を実感できるのが当社の魅力です。テクノロジーと人間力の融合という次世代型のビジネスモデルを一緒に創っていける仲間をお待ちしております。
会社情報
法人名 | ワンダーグループ株式会社 |
HP | https://www.wonder-gr.co.jp/ |
設立 | 2015年7月29日 |
事業内容 | ・各種人材サービスおよびアウトソーシング事業の受託及び請負 |
採用情報 | https://www.wonder-gr.co.jp/recruitment |