【代表インタビュー】株式会社USEN FIELDING 代表取締役社長 寺見 俊吾

2025年6月5日、幕張メッセ国際展示場で「USEN FIELDING GRAND PRIX-2025-」が開催されました。全国約1,000名のフィールドエンジニアの中から地区予選を勝ち抜いた精鋭35名が集結し、「USEN商材部門」「ロボティクス部門」「電気通信部門」「YOUTH部門」の4部門で技術力と接客スキルを競い合う技術技能大会です。
株式会社USEN FIELDINGは、2024年7月にグループ会社の株式会社USENから独立した新しい会社でありながら、その歴史は60年以上に及びます。店舗のBGM設備から業務用サービスロボット設置、電気工事まで幅広い現場作業を担う技術集団として、70万件以上の設置・施工や保守・メンテナンスを全国で手がけています。
この技術技能大会を2006年に立ち上げた張本人でもある代表取締役社長の寺見 俊吾さん(以下、寺見さん)に、大会に込められた思いと新会社としての展望について話を伺いました。
プロフィール
株式会社USEN FIELDING
代表取締役社長 寺見 俊吾
趣味
草野球・ゴルフ・ハードロックを聴くこと
尊敬する人
妻
座右の銘
和気致祥
学生が読むべき本
「金持ち父さん、貧乏父さん 」ロバート・キヨサキ
経営者におすすめの本
「論語と算盤」渋沢 栄一
人生で一番熱狂したこと
仕事でもプライベートでも、何か一つの目標を仲間たちと一緒に成し遂げた瞬間(その後の酒がうまい)
60年以上の歴史を持つ「現場のプロ集団」—全国約1,000名のフィールドエンジニアを束ねる技術力

技能五輪とは違う独自の技術領域を活かした大会づくり
小川:まず、今回の技術技能大会について教えてください。2006年から続いている大会ということですが、立ち上げの経緯をお聞かせいただけますか?
寺見さん:実は今回で12回目の開催になります。2006年に第1回大会を開催したのですが、その立ち上げの中心人物が私でした。当時は3回、4回ぐらいまで、企画から手配まですべて自分で仕切ってやっていました。
そもそもこの大会を始めたきっかけですが、一般的に「技能五輪」というものがあるんです。これは世界大会まで開催される、職人たちのオリンピックのような大会です。配管、建築、情報ネットワーク施工などさまざまな部門もあり、当社の取引先企業が参加しているのをみて、当社も参加したいと思いました。
ただ、技能五輪に出場しているのは主に大手電気工事会社や通信工事会社が中心です。当社はBGMに関連する施工が中心の会社で、少し毛色が違います。そこで、自分たちで大会を立ち上げようという話になったんです。
「ここで勝ったらキャリアが変わる」全国約1,000名の頂点を決める大会
小川:この大会が社内に与える影響はどのようなものでしょうか?
寺見さん:全国で1,000名近くの中で、勝ち抜いてきた人に集まってもらい、各地区の代表として競ってもらう大会です。入賞者には称号を与え、副賞もついてきます。
この大会で勝つと、その後の社内での立場や業務内容が大きく変わっていくんです。人に教える立場になったり、審査をする立場になったり。新しいプロジェクトがあると「その地区には大会入賞者がいるから任せよう」という話になります。役職者になっていく方もいれば、技術をもっと伸ばしてプロジェクトマネージャーのような仕事をする方も出てきます。
小川:社員の方同士で話をされるときも、この大会の話題が多いのでしょうか?
寺見さん:当社のフィールドエンジニアたちは、この大会を目標にしているという話が普段から出てきますね。大会に出たことがある人、これから出ようと思ってる人。あのときはああだった、こうだったとか、そんな話になります。
USENフィールドエンジニア部門の分社化—培った組織力を外部にも提供

組織力を自分たちの中だけで収めておくのはもったいない
小川:2024年7月にUSENから分社化されましたが、その経緯について教えていただけますか?
寺見さん:それまでは、技術本部というUSENの中のフィールドエンジニア組織でした。私がその責任者を務めており、1,000名ほどの社員がそのまま工事会社として分離したという形です。
私はフィールドエンジニア部門の責任者を10年以上務めさせていただきました。統括部長、本部長、そして役員へとステップアップを重ねてきた経緯もあり、今回の分社化では代表を務めることになりました。このような機会をいただけて、非常にありがたく思っています。
小川:分社化の狙いはどこにあったのでしょうか?
寺見さん:私たちが培ってきた技術力や現場対応力を、グループ内だけで活用するのはもったいないという話が出ていました。外部からの仕事を受注してみると、「これはできる」ということがわかって自信もつきました。そこから、別の工事会社として立ち上げるのもありなのではないかと思うようになったんです。
ここ数年は、グループ外のお客様の仕事も少しずつ受注し始めていたので、今回の分社化を機に、そこをもっと伸ばしていこうという狙いがあります。
70万件を超える店舗・施設の施工や保守を担う技術力
小川:実際にはどのような会社との取引が多いのでしょうか?
寺見さん:主にお取引いただいているお客様は、USENの店舗BGMやDXソリューションが提供されている飲食店、小売店、オフィスなどです。また、大手商業施設にもグループ会社のソリューションが入っています。
皆さんが普段お買い物をされるショッピングモールで耳にしている音楽や、お店の中で流れている音楽は、ほぼ100%当社の施工によって提供していると言っても良いでしょう。そうしたお客様への工事件数は年間で40万件ぐらいになります。
メンテナンスをしているお客様は、USENの各種ソリューションをご利用いただいているお客様で70万件ぐらいです。そこでのメンテナンスから、お客様が何か新しい商材を求められたときには必ず当社が対応に行きます。ほとんどの店舗に出入りしているとお考えください。
現場への想いと技術技能大会への情熱

情報共有の課題を感じた管理職時代
小川:寺見さんご自身のキャリアを振り返って、印象深い経験はありますか?
寺見さん:入社してから、技術部門の中で本部的な役割の仕事に携わることが多く、会社が新しいことを始めるときや重要な検討をする際には、必ず関わらせてくれる先輩や上司がいました。
そうした経験を通じて感じていたのは、若手社員が現場で「今日はどこに行って何をする」ということだけを知らされて、それが何のためにやっているのかわからないという状況への歯がゆさでした。
小川:当時は情報が少ないまま現場に行くことが多かったのですね。
寺見さん:そのような状況が当たり前になっていましたね。私は、会社として、部門として、何をするためにこの作業が必要なのかを、もっと早く理解したかったんです。そうすれば、現場に行く前にもっと余裕を持って準備ができると思っていました。
朝になって「今日はここに行く」と言われてから道具を用意するのではなく、事前に知らせてもらえれば余裕を持った準備ができます。現場では道具や材料を用意しておく必要がありますが、それも含めてもっと効率的にできるはずだと思っていました。
新技術への挑戦が面白さの源泉
小川:そうした疑問を持ちながらも、なぜこの会社で長く働き続けることができたのでしょうか?
寺見さん:恵まれていたのは、毎日同じ作業を繰り返す仕事ではなかったことです。何ヶ月かこのプロジェクトをやったら、次は別のプロジェクトという風に、関わっている業務に変化がありました。
単純作業があまり好きではなかったこともあり、新しいことに挑戦していくことが面白かった。それがモチベーションだったと思います。
2001年にUSENが世界で初めて商用FTTHサービス(光ファイバーサービス)の提供を開始したときも、最初に携わらせていただきました。自分でやったことのないことを勉強して、今度はそれを各地のフィールドエンジニアに教えて回る役割もやらせていただいたんです。
30年の会社生活で一番の思い出
小川:これまでのキャリアで最も熱狂した瞬間はいつでしょうか?
寺見さん:やはりこの大会ですね。私の約30年の会社生活の中で、特に立ち上げ初期の大会で、フィニッシュを迎えた瞬間は本当に「やりきったな」という感じがしました。
大変だった記憶があるのは、開催場所のことです。これまで沖縄でやったり、富士急ハイランドのスケートリンクのようなところを夏場に貸し切ってやったりしました。
今回のように屋根付きの会場で開催し始めたのは最近なんです。昔は屋外開催だったので、毎回雨の心配をして、スタッフは1週間前から気が気ではありませんでした。朝起きてみたら風で準備したものが全部飛ばされていて、また一から作り直すということもあり、本当に苦労しました。
それでもやり遂げるという意気込みがありました。今では考えられませんが、当時の大会前日はほとんど寝ずに作業していたほどです。そうやってチームワークで一つのものをつくり上げる達成感は格別でした。
出場する選手はもちろん主役ですが、この運営側のスキル、能力、経験も今後の仕事に大いに活かされると思います。大会運営も現場の仕事と同じですから。
「普通の工事屋さんには勝てない」USEN FIELDINGならではの強み

電気工事から業務用ロボットの設置まで「ワンストップでできる」技術力
小川:分社化により外部への展開を本格化されるとのことですが、競合他社との差別化はどこにあるのでしょうか?
寺見さん:普通の工事屋さんと勝負するのは、専門性の観点で勝てないかもしれません。ただ、これから出てくる新しいIoT製品については取り扱いの幅が広く、ワンストップでできるので、優位性があると考えています。
電気工事と業務用サービスロボットの設置はもう全く別の世界です。しかしその分、Wi-Fi機器や防犯・監視カメラを取り付けたり、スマートTVに音楽と映像が流れるソフトウェアを設定したりという新しい環境への対応力に強みを持っています。この領域は、市場ニーズもこれからさらに高まってくると思います。
全国約1,000名の機動力「明日からこうしてくださいと言ったら一斉に変えられる力」
小川:技術力以外での強みはいかがでしょうか?
寺見さん:全国に北海道から沖縄まで当社の社員がいて、約1,000名に「これを明日からこうしてください」と言ったら一斉に変えられる力があるんです。そのスピードが売りです。柔軟性と機敏性、起動性みたいなものがきっと他社にはない当社の強みだと思います。
こうした強みを活かして、他社がまだ手をつけていない分野や、新しく生まれてくる市場のニーズにも積極的に対応していきたいと考えています。売上規模としては、まずは100億円を突破するぐらいの数字を目標にしていきたいと思っています。
現場での仕事の醍醐味 「ただの職人じゃない」接客から始まる
小川:現場で働く魅力について教えてください。
寺見さん:やはり、完成したときの成果物ですね。音楽が流れたとか、映像が映ったとか、業務用サービスロボットが動いたとか。そして、お客様が「ありがとう」と言ってくださる。
私たちは単なる工事業者ではないんです。お店に伺って「USEN FIELDINGです」とご挨拶し、名刺をお渡しして「本日はこのような工事をさせていただきます」とご説明することから始まります。
一般的な工事業者のように、職人気質のスタッフがやってきて黙々と作業して帰るというのとは全く違います。この接客重視の姿勢こそが、当社の最大の武器だと思っています。
AIの時代だからこそ価値を増す「現場力」 ブルーカラーが見直される時代
小川:AI技術の発達により、現場作業の価値はどう変わると思いますか?
寺見さん:机の上の仕事はもうどんどんAIができるようになってきているので、欧米ではブルーカラー職の価値が以前より注目されているようです。報酬面でも変化が出てきているという見方もあるようです。
当社のフィールドエンジニア社員のスキルは高水準で、グループ外の企業から請け負う仕事であっても、すぐにマスターしてしまうんです。やったことのない新しい仕事でも対応できますし、「本当に優秀ですね」「丁寧できっちりしている」とよく言われます。そうした技術力だけでなく、現場で身についた礼儀や知識、経験なども評価いただいていると思います。
次世代育成への取り組み マルチスキルと専門性の両立を目指す人事制度

「60点は全部できるように、1個2個は尖った強みを」スキルマップで可視化
小川:人材育成の方針について教えてください。
寺見さん:基本的には一通り、60点ぐらいは全部できるようになってもらいたいと思っています。当社でよく言うマルチスキルというもので、1人で何でもできるようになってもらうということです。現在、各社員に「自分には何ができるか」というスキルマップをつけてもらっており、その点数でレーダーチャートのようなものができます。だいたい円になるように、60点は最低限クリアしてもらいます。ただし限界はあるので、全部100点は取れませんよね。その代わり一つか二つは、80点、90点、100点に近い尖った強みを持ってもらいたいとお願いしています。
それが自分たちの武器だと思えるような人事制度を、今まさに構築中です。
「やる気こそが大事」学歴不問の採用方針
小川:今、御社ではどのような人材を求めていますか?
寺見さん:学歴や経歴は問いません。主体的に学び、チャレンジできる方を求めています。工業系でなければダメとか、電気電子系の知識がなければダメということはありません。基礎知識があるに越したことはないのですが、入社後であっても絶対に身につけられますし、ベテラン社員たちも新しい資格が必要になったら勉強しています。
少しでも興味のある方は、ぜひ当社に入ってほしいです。本当に、採用を一生懸命やっているんですよ。今年の4月は58名が新卒入社しました。私たちの業界は採用難なので、今まで大卒にしか目を向けていなかった会社が、高卒の方にも注目するようになってきています。
正直に申し上げると、例えば工場勤務のような毎日同じ作業の繰り返しは面白くないと思うんです。それに比べて当社なら、いろんなことにチャレンジできるし、飽きることがありません。
小川:最後に、これからの時代を担う若い世代にメッセージをお願いします。
寺見さん:最初は物足りなさを感じるかもしれません。特に現場仕事は。ですが、絶対続けていれば面白いことを与えられる自信はあります。「こんな仕事もできるぞ」ということもありますし、まだ今みえていない新しい仕事もどんどん出てきます。おそらく来年の今頃にはまた違うことを当社はやっているはずなので。
そこに学歴や社歴、経験は関係なく「やる気さえあれば誰でもトライできる」という社風はあると思います。未経験だったとしても学べる環境は準備しています。少しでも興味のある方はぜひ一緒に働きましょう。
法人名 | 株式会社USEN FIELDING |
HP | https://usen-fielding.co.jp |
設立 | 2024年7月1日 |
事業内容 | 電気工事・電気通信工事・情報通信機器設置の管理や修理、保守に関するサービス 音響設備・カメラ・サイネージ・ロボットの設置や管理、修理、保守に関するサービス |
採用情報 | https://recruit.unext-hd.co.jp |