【代表インタビュー】千株式会社 代表取締役社長 千葉 伸明

一人ひとりの子どもを主役にした20年の挑戦と技術革新
「はいチーズ!」のブランドで知られる千株式会社。代表取締役社長の千葉 伸明さん(以下、千葉さん)は、保育園・幼稚園の写真サービスから始まり、現在ではICTシステムや給食食育サービスまで手がける総合的な保育支援企業を率いています。洗練されたインターネット写真販売サービスを通じて、20年にわたり子どもたちの笑顔を保護者に届け続けています。
業界で初めてスクールフォト向けのインターネット写真販売サービスを展開し、技術革新への飽くなきチャレンジ精神で事業を拡大してきた千葉さん。「新しいことが好き」という言葉通り、常に最新技術を取り入れながら、保育現場の課題解決に取り組み続けています。
熱狂的に新しいテクノロジーを追い求め、その可能性を事業に活かす経営哲学について、千葉さんにお話を伺いました。
プロフィール

千株式会社
代表取締役社長 千葉 伸明
趣味
サッカー、Netflix
尊敬する人
松下 幸之助、父親
座右の銘
感謝なくして前進なし。
学生が読むべき本
「ユダヤの商法」藤田 田、「ビジョナリー・カンパニー」ジム・コリンズ
経営者におすすめの本
「ビジョナリー・カンパニー」ジム・コリンズ、「頭に来てもアホとは戦うな!」田村 耕太郎
人生で一番熱狂したこと
未来に向けて事業計画を考えること、サッカー
「一人ひとりの子どもを主役に」業界初のインターネット写真販売サービス

全国に広がる「はいチーズ!」20,000以上の導入施設と成長を続けるサービス
小川:まずは御社がどのような事業をされているのか、教えていただけますか?
千葉さん:私たちは「はいチーズ!」というブランドで写真販売サービスなどを提供しています。他にも卒園・卒業アルバム制作、保育の業務支援システム、そして給食食育のサービスなどさまざまな事業を展開しています。
「はいチーズ!フォト」は創業から20年続く主力サービスです。昔は幼稚園や小学校で運動会などのイベントがあると廊下の壁に写真が貼ってあって、そこから写真を選んで購入するという光景があったのですが、そのサービスを全部インターネットでみられて買えるようにしたんです。まさにデジカメやインターネットの発展とともに提供できるようになったサービスです。
業界をリードする技術とサービス
小川:御社は業界の中でも先駆けとして市場を切り開いてこられたと聞いています。他社と比べて特徴的な点や強みはどのようなところにあるのでしょうか?
千葉さん:私たちの強みは大きく二つあります。まず他社と違うのは、写真撮影から販売、問い合わせ対応まで、トータルでサポートする写真販売サービスを提供している点です。競合他社の場合、写真撮影だけ、販売システムだけなど、サービスの一部分だけを担っていることが多く、お客様は複数の業者と連携する必要があります。
また、技術面でも常に業界をリードしてきました。特に顔認識技術を活用した「顔検索機能」は、業界で初めて実用化しました。これにより、保護者の方は数百枚、数千枚という写真の中から自分の子どもの写真を簡単にみつけることができるようになりました。
一人ひとりの子どもを主役にする撮影へのこだわり
小川:他にも御社ならではの撮影に関するスキルやこだわりがあるのでしょうか?
千葉さん:私たちが大切にしているのは、一人ひとりの子どもを主役にした撮影です。たとえば卒業式では、集合写真だけでなく、一人の子どもにフォーカスした写真も撮ります。背景をぼかして特定の子どもだけにピントを合わせるなど、その子と親御さんのために特別な一枚を残します。
通常は、一つの場面で数枚しか撮影しないことが多いですが、私たちは同じ場面でも一人ひとりに焦点を当てた写真を多く撮ります。写真1枚1枚のクオリティにもこだわりますが、量も重視しています。撮影枚数が多いほど、良い瞬間を捉えられる可能性が高まりますから。
結果的に、保護者の方は自分の子どもの特別な瞬間をより多くみつけることができ、教育施設の先生方も写真選定の手間が省けるというメリットがあります。デジタル化が進む中、写真というアナログな形で子どもたちの成長を残すことの価値は、むしろ高まっていると感じています。
「経営者一族に育まれた起業への道」300人の経営者との対話からみつけた事業アイデア

「正月の話題は経営と事業」家族の影響で育まれた起業家精神
小川:千葉さんご自身の起業のきっかけについても伺いたいです。どのような経緯で会社を立ち上げられたのでしょうか?
千葉さん:私は親族のほとんどが経営者という環境で育ったんです。親だけでなく親戚にも企業家や経営者が多く、正月に集まると話題は自然と経営や事業の話になっていました。親戚には大学教授や医師など専門職の方もいましたが、サラリーマンの親戚はほとんどいなかったんです。そんな環境の中で、高校時代にビジネス教養本「ユダヤの商法」(藤田 田 著)を読み、起業を意識するようになりました。
小川:では、小さい頃から自然と経営者を目指す環境だったんですね?
千葉さん:目指していたというより、父が経営者だったので「仕事とはこういうものなんだ」と何の疑問もなく思っていました。もしパソコンをいじることが好きだったら、もう少しエンジニア寄りになっていたかもしれませんが(笑)。
多くの経営者から学んだ市場のニーズ
小川:現在の写真サービスはどのように生まれたのですか?
千葉さん:今までに二度起業しており、千株式会社は私にとって2社目なんです。20歳のときに初めて起業して上手くいかず、次の事業を模索しているときにさまざまな経営者の方と話す機会がありました。多くの経営者から話を聞くうちに、ある方から「子どものピアノの発表会を動画撮影してDVDで配布したら保護者に喜ばれた」というエピソードを教えてもらい着想を得ました。
20年前はサーバー容量の制約もあり、当時は動画よりも静止画、つまり写真サービスの方が技術的にインターネットで提供しやすいと考えました。デジタル写真をオンラインで販売するというシンプルな発想から現在のサービスが始まったんです。「はいチーズ!」というサービスは、最初から一人で完成させたというより、多くの出会いとチームの力でサービスを育ててきたという感じですね。
「次は画像と動画の時代」インターネット黎明期にみた可能性
小川:この20年でインターネットや技術も大きく変わってきましたね。千葉さんご自身は新しい技術にも関心をお持ちなのでしょうか?
千葉さん:新しい技術には特に強い関心があります。サービスを始めた20年前は文字通信やメールが当たり前になっていた時代で、次は画像と動画の時代が来ると感じていました。
クラウドサービスが登場したときもすぐに活用を始め、当社のサーバー利用量はかなり早い段階で国内トップクラスになりました。技術の可能性を見据えて挑戦することが、私たち千株式会社の特徴なんです。
「海外技術を取り入れた独自の顔認識機能」時代の先を行く技術革新
小川:そのような技術への関心が事業にも活かされていると思いますが、具体的にどのような技術を取り入れてこられたのですか?
千葉さん:たとえば、顔認識技術を早くから導入しています。業界で初めて「顔検索機能」を提供しましたが、これを実現するためには当時の国内技術では限界がありました。そこで海外のクラウドサービス(AWS)を活用し、技術的な課題を一つひとつ解決していきました。
私たちは画像認識にAWSが提供しているAmazon Rekognitionという画像認識サービスを採用しました。この機能を導入した当時、日本国内にはその技術を使える拠点がなかったため、データをシアトルやオレゴンなど海外に送って処理するなど、先進的な取り組みを行いました。セキュリティ面もかなり重視しており、お預かりしている大切なお子様の写真データを安全に管理するための対策を徹底しています。
私自身はもともと営業出身ですが、テクノロジーに触れることが好きで、新しい技術の可能性を探ることに熱が入ります。最近ではAIの進化に注目していて、今後はAI技術によって業務の効率化が進み、人が本来持つ力をより創造的な仕事に発揮できるようになると考えています。
小川:お話を伺っていると、千葉さんが新しい技術に出会ったときの情熱が伝わってきます。テクノロジーへの好奇心が千葉さんを突き動かしているように感じますが、ご自身にとって「熱狂」とは何でしょうか?
千葉さん:やはり夢を追いかけているときの気持ちそのものだと思います。。「こんなことをしたい」「あんな会社にしたい」と思い描いているときは、年齢に関係なくワクワクしますね。常に新しい技術や情報に触れ、時代の先端にいたいという気持ちが原動力になっています。
新しい技術を試すのが好きで、最新のデバイスやサービスもできるだけ早く使ってみます。ただ、何度か痛い目に遭ったこともあるので、最近では少し様子をみてから導入することも覚えました(笑)。
「社員の成長が会社を育てる」自己研鑽を重視する企業文化

「SEN Create」と「SEN ゼミナール」成長を促す社内制度
小川:御社の社内の雰囲気や文化についても教えていただけますか?
千葉さん:当社では「人の力」と「技術の力」で、子どもと家族の未来をつくるというコーポレートメッセージを掲げています。この実現のために、社員の成長を何よりも大切にしています。一番求めているのは「成長」への意欲ですね。向上心があって、知的好奇心を持ち、学び続ける人を大切にしています。仕事に対して前向きであることも重要です。
当社では「SEN Create」という新規事業の提案機会を年に1〜2回設けています。また、「SEN ゼミナール」という社内の勉強会も開催しており、社員同士が知識やスキルを教え合う場として活用されています。こうした仕組みを通じて、社員の自発的な成長をサポートしています。
変化する技術と仕事の未来
小川:「SEN ゼミナール」や「SEN Create」といった制度を通じて社員の成長を支援されているんですね。こうした取り組みの背景には、変化の速い時代への対応という狙いもあるのでしょうか?特にテクノロジーの進化についてはどのようにお考えですか?
千葉さん:技術の進化は速く、特に最近のAI技術の発展には目を見張るものがあります。こうした技術の進化により、業務の進め方や仕事の性質自体が変わっていくでしょう。AIが得意な分野と人間にしかできない分野の境界線がより明確になっていくと思います。
重要なのは、新しい技術を恐れず積極的に活用していくことです。当社では社員にAIツールの活用を推奨していて、その使い方についての情報共有も行っています。変化する環境に適応し、より創造的な価値を生み出すことこそが、これからの時代に求められていると感じています。
挑戦し続ける姿勢と若い世代へのメッセージ
小川:最後に、これからの技術や業界に関わる若い方へメッセージをいただけますか?
千葉さん:新しい技術や変化を恐れず、積極的に挑戦してほしいと思います。特に若い世代には、好奇心を持ってさまざまなことに触れる機会を大切にしてほしいですね。
お話した通り、私は新しい技術に触れるのが好きで、そうした好奇心がビジネスを広げる力になってきたと感じています。たとえば顔認識技術を使った検索機能も、当初は技術的な課題が多くありましたが、粘り強く取り組むことで実現できました。
失敗を恐れず挑戦し続けることが、結果的に大きな成果につながります。自分の可能性を信じて、新しいことにどんどんチャレンジしていってください。
法人名 | 千株式会社 |
HP | https://sencorp.co.jp/ |
設立 | 2004年10月 |
事業内容 | 総合保育テックサービス「はいチーズ!」事業広告販促事業マーケティング支援事業 |
採用情報 | https://sencorp.co.jp/recruit-newgrads/ |