【代表インタビュー】メンタルヘルスラボ株式会社 代表取締役 古德 一暁

【熱狂ベンチャーナビ】メンタルヘルスラボ株式会社 代表取締役 古德 一暁

障がいという線引きをなくす挑戦—「メンタルダウンしない世界」を目指すイノベーター

障がい者の就労支援といえば、軽作業や清掃業務をイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、「障がい者はプログラミングやデザインができないという先入観を変えたい」と語るのが、メンタルヘルスラボ株式会社 代表取締役の古德 一暁さん(以下、古德さん)です。

同社は業界初となるITプログラムを導入した就労移行支援事業「就労移行ITスクール」を中心に、0歳から5歳向けの療育、訪問看護、障がい者雇用クラウドサービスなど多角的な事業を展開。グループ全体で年商30億円を超え、全国40店舗以上を構える業界のトップランナーとして注目を集めています。

弟の統合失調症をきっかけに福祉業界に足を踏み入れた古德さん。自身もADHDの当事者として「会社勤めは向いていない」と語る一方で、持ち前の熱狂力と独自の視点で、業界の常識に一石を投じています。「障がいという線引きをなくす」というミッションの背景には、どのような思いがあるのか。メンタルダウンしない世界を目指す挑戦について伺いました。

目次

プロフィール

メンタルヘルスラボ株式会社の古德代表

メンタルヘルスラボ株式会社

代表取締役 古德 一暁

趣味

サウナ、シーシャ、麻雀、ポーカー

尊敬する人

サイバーエージェント代表取締役社長 藤田 晋さん

座右の銘

憂鬱じゃなければ仕事じゃない

学生が読むべき本

「渋谷ではたらく社長の告白」藤田 晋

経営者におすすめの本

「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方 成功を引き寄せるマーケティング入門」森岡 毅

人生で一番熱狂したこと

「Nontitle」シーズン5

業界の常識を変えた「就労移行ITスクール」—優秀な人材採用が生む差別化

メンタルヘルスラボ株式会社の古德代表

BtoCからBtoBまで。多角的事業展開で描く福祉の未来

小川:まず、御社の事業内容について教えてください。

古德さん:当社はBtoCとBtoB両方の事業を展開しています。BtoCでは、うつや発達障がいの方向けの就労支援を中心に、0歳から5歳向けの療育、訪問看護など4つのブランドで障がい福祉施設を運営しています。

メインの事業は「就労移行ITスクール」です。業界で初めてプログラミングやWebデザインに特化したカリキュラムを導入し、これまでの就労支援の常識を変えました。

BtoB事業では、業界向けの業務改善系ソフトウェアやSaaS、障がい者向けの転職サイト、さらにはファクタリングやM&A仲介まで手がけています。業界全体がアナログだと感じたため、当社がうまくいったノウハウを業界に還元していこうという考えからスタートしました。

差別化の鍵は「優秀な人材」の採用力

小川:ITプログラムが業界初ということですが、他社との差別化はどこにあるのでしょうか?

古德さん:特別なカリキュラムを開発しているわけではありません。最も大きな差別化要因は、コミットメントできる優秀なメンバーを採用できていることです。

業界では珍しい若手で優秀な人材が揃っています。ITのカリキュラム自体は外部サービスを導入すれば済みますが、利用者のスキルを向上させて実際の就職まで導くには、優秀なメンバーによるサポートが不可欠です。

当社では、自分にも厳しく相手にもちゃんと基準値を示せる人材を重視しています。業界で働く人たちは優しい方が多いのですが、基準値を示すことが苦手な傾向があります。利用者の方を高められるようなコミュニケーションをとるためには、ときには踏み込み、深く関わる必要があり、それができる人材が当社の強みです。

運命を変えた弟の病気—消去法から始まった起業への道

メンタルヘルスラボ株式会社の古德代表

ADHD当事者として選んだ「会社勤めではない」道

小川:事業を立ち上げられたきっかけについて教えてください。

古德さん:弟が統合失調症になったことがきっかけでした。ただ、それ以前から私自身、会社勤めは向いていないと感じていました。自分もADHDで、大学では2年間で12単位しか取れませんでした。普通に社会人をするのは難しいだろうと思っていたんです。

実際、今でもどこかの会社に入って、言われたことをできるとは思いません。自分で納得感があれば頑張れますが、納得できないことに感情がついていかないタイプです。起業は消去法の選択でした。

ブログからの偶然の成功体験が導いた現在

小川:どのような経緯で現在の事業に至ったのでしょうか?

古德さん:受験生のときに勉強を頑張っても認められなかったので、ブログやインターネットの世界で発信を始めました。それがたまたま流行って、ブログで合格報告をしたところ、読者から「勉強法を教えてほしい」という声が多数寄せられ、それに応える形で学習塾のビジネスを始めました。

その後、より効果的な集客のために塾の比較サイトなども運営し、もしかしたらマーケティングの才能があるのかなと思うようになりました。でも振り返ってみると、ほとんど意図せず偶発的に、目の前のことを頑張っていたら成功体験が重なった感じです。運の要素が大きいと思います。

小川:そこから現在の福祉事業に切り替えられた理由は何だったのでしょうか?

古德さん:自分の持っているスキルセットと感情が乗ることを組み合わせて考えたときに、この道しか生きていけないだろうなと感じました。それと、この業界をみたときに、規模のある会社が圧倒的に少なくて、私たちでも今、業界4番手くらいになれてしまうマーケットなんです。

本当に勝負しているプレイヤーが少ないので、普通にビジネスとして捉えてやれば、しっかりと成果を出せる環境があると感じました。業界全体としてスケールアップの経験を積める環境が限られているので、そこに可能性があると思ったんです。必死に生き残るためにやってきたという方が正しいかもしれません。

大変さの質が変わる成長フェーズ—責任の重さと向き合う日々

メンタルヘルスラボ株式会社の古德代表

個人から業界を背負う立場へ

小川:「必死に生き残るため」とおっしゃいましたが、やはり大変なこともたくさんあったと思います。これまでで一番大変だったことは何でしょうか?

古德さん:個人から業界全体を背負う立場になったことですね。 最初は自分の資金の中でやっていたので、社員に対する最低限の責任でした。しかし、資金調達をして株主が増え、業界のトップランナーになると、この業界のみられ方イコール当社になってしまう部分があります。

ある意味、日本の障がい福祉全体を担うようなポジションになってきているので、「こんなやつがやってて平気かな」という責任を感じることもあります。ただの業績という結果だけでなく、当社のあり方やみられ方も含めて責任を負わなければいけないフェーズに来ています。

環境の困難よりも「理解されない」ことの辛さ

小川:責任の重さ以外にも、具体的にはどのような困難がありましたか?

古德さん:2年間家がなくてオフィスに寝泊まりしていた時期もありましたし、社員の給料が足りなくて自分の報酬を戻して支払ったこともあります。でも、そういう金銭的なことや環境が整っていないことよりも、自分たちがやっていることを理解してもらえない時期の方が辛かったです。

「障がい者にはプログラミングやデザインはできないよね」という声を聞くこともありました。優しさから言ってくれていたんだと今は思いますが、当時25歳でまだピュアな面もあったので、理解されないことが一番辛かったです。自分が進んでいる方向性が正しいのだろうかという疑問が、自己否定につながってしまったんです。

熱狂と闇落ちのサイクル—全能感を求める起業家の本質

メンタルヘルスラボ株式会社の古德代表

シーシャとサウナで復活する独自のリセット法

小川:そのような困難をどのように乗り越えているのでしょうか?

古德さん:ちょいちょい逃げ出すことです。闇落ちムーブだからといって、周りにその状態であることを開示して肯定してもらいます。これは社長だから許されている部分もあるかもしれませんが、それぞれの役割をメンバーがこなしてくれているからこそできることです。

大抵のことは、シーシャを吸ったり、サウナに行ったりすると「どうでもいいか」となります。そういうリセットするルーティンワークを持っておくことが大切ですね。

小川:困難はシーシャやサウナでリセットされるとのことですが、逆に、どのようなときに熱狂されるのでしょうか?

古德さん:基本的に何にでも熱狂します。目の前のことに対して全力で取り組むタイプで、運動会でも3位だったときは、優勝できなくて機嫌が悪くなるくらいです。

私は「全能感」を常に感じていたいタイプなんです。この世界は自分が想像しているような、全知全能の神のような感覚を得ていたい。自分が思ったように絵が描けている、うまくいっているという感覚に常にいたいんです。だからこそ、うまくいかないことがあると強烈にストレスを感じて、そのエピソードを覚えています。

「良いやつ」が集まる組織—邪悪じゃない人材が生む文化

メンタルヘルスラボ株式会社の古德代表

学生が子会社社長になる挑戦的環境

小川:御社の組織文化について教えてください。

古德さん:年齢や経歴、学生といった立場に関係なく、一人ひとりの実績と貢献を正当に評価する会社です。学生で子会社の社長をやっているメンバーもいますし、新卒1年目でも数千万円の裁量権を持っています。

17歳で起業経験のある優秀なメンバーには、億単位の新規事業の責任者を任せています。1年目や2年目から拠点リーダーとして立ち上げを経験するメンバーも多く、数千万円の予算を持ちながら拠点立ち上げを任せています。

小川:どのような基準で人材を評価されているのでしょうか?

古德さん:一番大事なのは「邪悪じゃない」ことです。人を介在する仕事なので、邪悪な人は向いていません。チームで動けて、分かりやすく「良いやつ」であることが重要です。

他人を蹴落とそうとせず、チーム単位で考えられる人を求めています。私がつくった会社とは思えないくらい、みんな良い人が集まっています。

退職者も参加する飲み会に表れる良好な関係性

小川:具体的にはどのような職場の雰囲気なのでしょうか?

古德さん:会社を辞めたメンバーが、勝手に当社の飲み会に参加したりしています。現場はとても仲が良いようですね。私は呼ばれませんが(笑)。

グローバル展開で目指す「メンタルダウンしない世界」

メンタルヘルスラボ株式会社の古德代表

制度設計から始まる海外挑戦

小川:今後の展望について教えてください。

古德さん:メンタルの可視化を通じて、メンタルダウンしない世の中をつくることが目標です。現在は日本国内でしか展開できていませんが、グローバル展開、特にアメリカから準備を進めています。

日本人は基本的に病みやすい人種だと思います。なぜそうなのかを比較検証するためにも、海外展開が必要です。

海外のファンドは日本の医療や福祉分野に興味を持っていますが、制度が分からなすぎて投資検討が面倒で手を出せずにいます。海外の資本が流れ込んできたら業界がもっと充実し、競争が生まれると思います。

競争がないから労働環境も良くならないと考えているので、当社がその一役を担えるように業界全体に貢献していきたいです。

才能を失わない「ギリギリのキープ」を目指して

小川:最終的にはどのような世界を目指されているのでしょうか?

古德さん:「メンタルダウンしない世界」です。ただ、これは精神疾患の発症を無くしたい、という意味とはやや異なります。その人が才能を失うことなく、ギリギリのところでキープしながら社会との接点を持ったまま、やりがいを持って働けることがベストだと思っています。

完全に薬でなくすのは良くありません。才能をなくしてしまうからです。そういう才能をなくすことなく、いろんな人が生きやすい世の中になってほしい。私も紙一重のところにいるので、そんな思いを強く持っています。

人生いろいろあるけど、お互い頑張りましょう。

会社概要

会社名メンタルヘルスラボ株式会社
HPhttps://logz.co.jp
設立2019年9月
事業内容就労移行支援事業
児童発達支援事業
訪問看護事業
自立訓練事業
雇用クラウド事業
採用情報https://recruit.mentalhealthlabo.co.jp

※2025年8月5日時点の情報です。

ぜひ熱狂をシェアして下さい!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
小川莉奈のアバター

編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

プロフィールを見る

看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

西畑大樹のアバター

監修者

西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

プロフィールを見る

新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

HP X FB
秋山翔一のアバター

ファクトチェック

秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

プロフィールを見る

新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
年間500記事以上の監修を行っております。採用側の視点でサービスのファクトチェックや記事内容を精査しています。

HP X FB

執筆者情報

熱狂ベンチャーナビ編集部はインターンシップ・新卒就活・転職経験者で編成されております。20代~30代の幅広い年齢・職種やキャリアを持つメンバーが在籍しているため、就活・転職の苦しかった経験や成功体験を元に求職者に役立つ情報を発信いたします。

目次