【役員インタビュー】株式会社i-plug 取締役COO 直木英訓

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社i-plug 取締役COO 直木英訓

就活生21万人以上(2025年卒、2025年2月末時点)、企業2万社(2025年2月末時点)が利用する新卒オファー型就活サービス「OfferBox」。このサービスの特徴は、企業と学生のマッチング数に上限を設けていること。一般的なサービスとは逆の発想で人気を集めている株式会社i-plugの直木 英訓COO(以下、直木さん)に、その理由や効果についてお伺いしました。

実は直木さん自身、就活に後ろ向きだった学生時代に「一人の経営者との出会い」で人生が変わった経験の持ち主。「就活はもっと納得感を持てるものになるべき」という想いから生まれた仕組みや、AI時代の就活事情、そして自身の失敗と成功の体験談まで、率直に語っていただきました。

目次

プロフィール

株式会社i-plugの直木取締役

株式会社i-plug

取締役COO  直木 英訓

趣味

音楽制作

尊敬する人

稲盛和夫さん

座右の銘

明るく、元気に、前向きに

学生が読むべき本

「知性を磨く」田坂広志

人生で一番熱狂したこと

OfferBoxの立ち上げ

新卒採用の可能性を広げるダイレクトリクルーティングサービス

株式会社i-plugの直木取締役

就活生と企業をつなぐ「OfferBox」の仕組み

小川:御社の事業内容について教えてください。

直木さん:私たちの主力事業は、新卒に特化したダイレクトリクルーティングサービス「OfferBox」です。学生がOfferBoxに登録し、プロフィールを入力すると、企業がその情報にアクセスして、学生を検索できる仕組みです。

企業が「この学生と一緒に働きたい」と思った場合、その学生に直接アプローチをかけることができます。このサービスは、現在21万人以上の学生(2025年卒、2025年2月末時点)が登録しており、就活生は約43万人いると言われていますので、利用率も高いメディアになっています。企業は、2025年2月末に2万社に到達しました。

情報流通に制限をかける独自のマッチング手法

小川:他のサービスと比較して、OfferBoxの特徴はどのような点にありますか?

直木さん:特徴は、あえて情報の流通に制限をかけている点です。企業は1名の採用目標に対して40枠、学生は最大15枠に限定しています。これは「同時にやりとりができる枠」です。

たとえば、企業が5名を採用する場合、最大200名の学生の選考を進めることになります。この制限を設けることで、学生も企業のスカウトを無駄なく見逃さず、企業側も効率的に選考を行うことができます。さらに、企業は一括送信ではなく、学生一人ひとりに対してオファーを送るので、より相互理解が深まり、個別に最適化されたマッチングが実現します。

このようにあえて制限をかけてアプローチを行う仕組みは、通常のリクルーティングサービスで行っているところはないと思います。一般的には、一斉送信で無差別にアプローチすることが多いのですが、私たちは学生と企業のより密なコミュニケーションがとれるようにすることを大事にしています。

知名度に左右されない出会いの価値

小川:そのようなサービスだと、どういった企業や学生がターゲットになるのでしょうか?

直木さん:企業側でいうと、知名度が低い企業でも素晴らしい文化を持っていたり、独自の強みや差別化されたサービスを提供している会社がターゲットになります。実際、私もこの業界に長くいますが、たくさんの素晴らしい企業と経営者、人事担当者に出会ってきました。

世の中には本当に素敵な人たちが多いんですよね。ただ、学生たちはその情報を知る機会が少ないんです。ですので、知名度がなくても素晴らしい企業の存在を学生に知ってもらい、出会いの場をつくることが大切です。制限化された情報流通の仕組みによって、知名度がなくても目に留まる可能性が高まり、そこで新しい出会いの可能性が広がると考えています。

学生側では、就職活動や働くこと、キャリアに対して先入観を持っている場合があります。こうした学生たちが、予想外の企業や人々と出会うことで、視野が広がり、考え方が変わるきっかけになります。また、自分がどんな強みを持っているのか、どのような価値を提供できるかを評価してくれる企業との出会いが、学生にとっては大きな成長のきっかけにもなるでしょう。

時代の変化と学生の納得度を高める就職活動

株式会社i-plugの直木取締役

AIの進化がもたらす就活の変化と課題

小川:最近ではAIの急速な発展がさまざまな分野に影響を与えていますが、就活の世界にも変化を感じられますか?

直木さん:最近、特に生成AIの登場が大きな影響を与えていると感じています。たとえば、ガクチカや自己分析がAIを使って簡単に作成できるようになり、学生にとっては非常に便利になりました。

AIの活用によって、準備が効率化され、企業と会う機会も増えることは確かに良い点です。しかし、便利であるがゆえに、考えることを省略してしまう部分も増えているのではないかという懸念もあります。AIに頼りすぎることで、本来自分自身で考えて言葉を紡ぎ出すプロセスを省略し、その結果、自分を見つめ直す機会を失ってしまう可能性があると思っています。学生が本当に自分のキャリアをどう考えているのかという本質的な部分が薄れてしまう危険性があるのです。

AIの活用は進んでいますが、その過程でしっかりと自分のキャリアを考えることが大切だと感じています。

納得のいく就職活動を実現する3つの要素

小川:そのような懸念がある中で、直木さんが考える、学生が納得して就職活動を終えるためのポイントは何でしょうか?

直木さん:学生が納得して就職活動を終えるためには、「能動的意思決定」が重要だと考えているので、私たちはそれが実現できるような仕組みをつくっています。

私たちは学生の就活の納得度が上がるように、3つの要素を大切にしています。1つ目は、意思決定の判断軸がしっかりと形成されていること。2つ目は、企業と学生の相互理解が深まっていること。そして3つ目は、学生自身が就職活動に対して「やり切った」と思えることです。

これらを満たすことで、学生は自分の意思で企業を選ぶことができ、それが成功体験となり、その後のキャリアに自信を持つことができるのではないでしょうか。私たちはAIやテクノロジーをそういったことの実現が加速するように、活用の仕方を考えて進化させていきたいと考えています。そのためには「個別最適化した情報流通をいかに増やしていくか」が重要だと思います。

個別最適化された情報流通の価値

小川:その「個別最適化した情報流通」を実現するために、具体的にどのような取り組みをされているのですか?

直木さん:企業には、学生一人ひとりのプロフィールをしっかりと読んでもらい、どこが良いと思ってアプローチしているのかを伝えるようにお願いしています。これはすごく大変な作業なのですが、これによって、学生が「自分のことをちゃんとみてくれている」と感じてもらえるからです。

このような丁寧なアプローチが、学生と企業の良い出会いに繋がりますし、ときには学生が思いもしなかった業界や企業に興味を持つきっかけにもなり、可能性も広がります。

二極化する学生の企業選びの志向

小川:最近の学生さんたちの企業選びについて、何か考え方の変化 を感じることはありますか?

直木さん:最近の学生の企業選びには、二極化がみられると思います。依然として安定した企業に入りたいと考えている学生は一定数いますが、もう一方では、自分がその企業で3年、5年後に最も成長できる環境を選びたいという視点を持つ学生も増えてきています。この変化により、企業選びの基準が大きく変わってきていると感じています。

キャリアセンターとの会話を通じて学生の意識の変化を感じたこともあります。以前は自己分析や業界研究についての相談が多かったのですが、最近では「内定を3つもらっているけれど、どの会社が一番自分のキャリアを開けるか」という相談が増えているそうです。

今の学生は、SNSやネットが発達したことで、効率的に情報を得る環境で育ってきているので、「どの会社に入れば一番有利になるか」といった考え方に変わってきているのだと思います。

学生の能動的意思決定を支援する環境づくり

小川:そのような学生の変化に対して、どのように支援していこうとお考えですか?

直木さん:私たちのダイレクトリクルーティングサービスで、「個別最適化したオファー型の情報流通」という仕組みを提供しているのは、そういった能動的な選択ができるようにするためです。これは、学生と企業が密にコミュニケーションをとることで、相互理解を深めることができ、学生の納得度を高められるようにしています。

また、学生が自分のキャリアをどのように築いていくかを意識し、社会とのつながりを理解することが重要だと考えています。知識だけではなく、実際の体験を通じて得られる学びこそが、学生にとって本当の意味で価値があるものだと思っています。

学生はさまざまな業界や企業をみて、色々な人と直接対話をすることで、自分の軸を定めていくことができます。実際に企業の現場を知り、業界の人々と会話することによって、先入観を超えた本当の理解が生まれます。こうした経験を通して、学生は思いもよらない出会いや体験が得られることもありますし、その結果、最終的に納得のいく選択をすることができるような環境をつくっています。

直木さん自身の就活経験と企業文化

株式会社i-plugの直木取締役

社会に出ることへの不安から覚悟を決めた転機

小川:直木さんご自身は、学生時代に働くことについてどのように考えていましたか?

直木さん:もともと、私は学生時代、働くことに対してかなり後ろ向きな考えを持っていました。社会に出ることに対して、自分の存在が世の中から必要とされているのかという不安な思いが大きく「社会に出たくない」と思っていました。そのため周囲よりも1年以上遅れて就活を始め、準備も全くしていないので、もちろん選考も全然通りませんでしたね。

そんな中で、60人ほどのベンチャー企業の社長と人事の責任者と出会いました。初めてその企業の説明会に参加したとき、その社長たちが目をキラキラさせて「自分たちはこういう世界をつくりたいんだ」と話しているのをみて、初めて社会人ってこんなにかっこいい人がいるんだなと思いました。そのとき、私もその一員として一緒に働いてみたいと思い、社会に出ることに対する考え方がポジティブに切り替わったんです。

人生を変えた「勘違い」と覚悟の決断

小川:その出会いがあって、その後どのように行動されたのですか?

直木さん:どうしてもその会社に入りたかったので、選考に応募して、最終選考である社長面接まで進むことができましたが、選考に落ちました。内心ボコボコにされたくらいの気分でした。そのときに社長から「君は就職が目的になっているので、今のままだと社会人としては潰れてしまうよ。まず、あなた自身がどうなりたいのかを考えるべきです。そしてなりたい自分と今の自分のギャップを埋めるために、私たちの会社があると思うなら、再度チャレンジしてください。」という言葉をもらいました。

その言葉が自分にとって大きな衝撃で、心の中で本気で変わらなければならないと感じたんです。それって実際は遠回しの見送り連絡だったと思うのですが、私は「再チャレンジの機会をもらえたと」大いなる勘違いをしてしまって(笑)。その後、1週間かけて「自分がどんな人間になりたいのか、そしてなぜその会社で働きたいのか」を真剣に考えて、長文のメールを送ったんです。

その結果、社長から「そこまで言うなら、もう一度面接をしてみよう」と言っていただき、最終面接のリベンジを受けました。そして、無事にその場で内定をもらい、その後、社員全員と握手を交わして、「ようこそわが社へ!」と迎え入れてもらったんです。

そのまま全社員の前に案内され、皆から大きな拍手をもらった光景は、今でも胸に焼きついています。この経験が「絶対にこの恩を返すんだ!」と、私が社会に出る覚悟を決めさせてくれた瞬間だったんですよね。

覚悟が生み出した成長とキャリア

小川:その覚悟を持って入社されてからは、どのような変化があったのでしょうか?

直木さん:入社後は、大阪支社に配属され、当時社員5人の中に新卒が2人入るという、結構カオスな状況でしたが、私は絶対に成果を出したいと強く思い、必死に働きました。その覚悟があったからこそ、成果が出て、さらに頑張りたいというサイクルが回り、20代後半で40人くらいのメンバーを持つ立場にまで成長できたと考えていますし、この経験があったからこそ、今の自分があると感じています。

こうした経験から、最終的に私が大切にしているのは「覚悟を持って入社すること」です。私が経験したような素晴らしい出会いをつくり、学生たちにも人生を変えるような出会いを提供できる環境をつくっていきたいと考えています。

i-plugの企業文化とビジョン

株式会社i-plugの直木取締役

共感し合える社内環境とキャリアパス

小川:会社の社内の雰囲気や、キャリアパスについて教えていただけますか?

直木さん:この会社には自分が成長することで、「世の中をより良くしたい」とか「お客さんに良い価値を提供したい」とピュアな想いを持つ人が多く、共感し合いながら一緒に働ける環境だと感じています。この会社のメンバーは、皆が世の中をより良くするために進化していくことに誇りを持って取り組んでおり、そうした価値を追求するメンバーが多いです。

キャリアパスに関しては、一般的なものというよりも、個々の行動力や成果によって大きく変わります。私たちは「どんな思いを持って、何をして、どんな成果を上げたか」この3つが大事だと考えています。

能力が高くても成果を上げなければ意味がありませんし、逆に難しい環境の中でも成果を出せる人は自然と上に上がっていきます。社内では価値を届けるために、自分を成長させ、能力を上げていくという考え方が浸透しています。

新卒で入社して急成長し、今や27歳で部長として活躍しているメンバーもいます。結果が出た人にとっては、キャリアアップのチャンスがどんどん広がる環境です。

未来の仲間に求める資質

小川:これから入社を考えている方に、どのような資質や心構えを期待されますか?

直木さん:新しく入社する方には、まずは「自分がどうありたいか」を明確に持ってほしいですね。それがはっきりしていれば、必ず目標に向かって努力できるし、その努力が成果に繋がると思います。

最初は明確な目標がなくても構いませんが「自分はどうなりたいか」をしっかりと考え、それを実現するために努力し、周りを巻き込んで成果を出していくことができる人を求めています。自分自身が着火剤になって、燃え尽きることなく継続していくような人が、当社では活躍できると感じています。

つながりで人の可能性を広げる未来へ

小川:最後に、今後の事業展望や目指している社会像についてお聞かせください。

直木さん:私たちが目指しているのは、「つながりで、人の可能性があふれる社会をつくる」ということです。「つながりのあり方」をより良くすることで、それに関わる人々や組織の可能性を広げていきたいと考えています。

現在の主力事業である「OfferBox」も、その一環として展開しており、これを通じてより多くの人々の可能性を広げていきました。しかし、これはまだ一歩進んだ段階に過ぎません。

今後、さらにこのサービスの価値を高め、お客様にもっと多くの価値を提供することが必要です。また、私たちは新しい価値を創造し、つながりを通じて人や組織の可能性が広がる社会をつくるために、これからさらに新しい事業を立ち上げていきたいと考えています。

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小川莉奈のアバター

編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護士から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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監修者

西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

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新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
年間500記事以上の監修を行っております。採用側の視点でサービスのファクトチェックや記事内容を精査しています。

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執筆者情報

熱狂ベンチャーナビ編集部はインターンシップ・新卒就活・転職経験者で編成されております。20代~30代の幅広い年齢・職種やキャリアを持つメンバーが在籍しているため、就活・転職の苦しかった経験や成功体験を元に求職者に役立つ情報を発信いたします。

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