【代表インタビュー】株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑 敬三

銅加工ひとすじに専念した先に—取引先5社から300社超へ、東大阪発の尖った製造業の成長戦略

目次

銅加工ひとすじ、危機をチャンスに変えた三代目の挑戦

「ものづくりの街」として知られる大阪府東大阪市。日本一製造業が集積するこの地で、金属加工の中でもとりわけ難易度が高い「銅」に特化した事業を展開しているのが、株式会社ハタメタルワークス代表取締役の畑 敬三さん(以下、畑さん)です。

同社は1935年(昭和10年)に鉄道車両部品の卸売業として創業。三代目である畑さんが事業を引き継いだ当時、主要取引先の合併により売上が半減するという危機的状況にありました。しかし、商社勤務で培ったマーケティングの視点と持ち前の前向きさを武器に、「短納期・小ロット・銅加工特化」という独自の戦略で取引先を5社から300社超へと拡大。年商1.5億円から10億円目前のV字回復を成し遂げています。

「まだやれることがあるんじゃないか」という直感を信じ、リーマンショックすらも成長の布石に変えてきた畑さんに、その経営哲学と仕事への向き合い方について伺いました。

【プロフィール】

畑 敬三

株式会社ハタメタルワークス

代表取締役 畑 敬三

趣味

ゴルフ、ソフトボール、ディズニーランド

座右の銘

「謙虚な心が、真の強さを生む」

尊敬する人

坂本 龍馬

学生が読むべき本

「ハイキュー!!」古舘 春一

経営者におすすめの本

「ザ・ゴール」エリヤフ・ゴールドラット

人生で一番熱狂したこと

小学3年生から大学まで続けた野球

誰もやりたがらない「銅」に特化する—逆転の発想が生んだ競争優位

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑 敬三

他社が敬遠する銅加工に商機をみた理由

小川:御社の事業について教えてください。

畑さん:当社は東大阪で金属加工の製造業を営んでいます。東大阪は、東京で言えば大田区のような場所で、日本一製造業の多い街です。その中でも当社は、金属の中でも「銅」に特化しているのが特徴になります。

金属の製造業は鉄が圧倒的に多く、次にアルミやステンレスが続きますが、銅の加工は傷がつきやすく変色しやすいため、敬遠されがちな素材です。また、銅の仕事は鉄に比べて量が出にくく、小ロットの案件が中心になります。専門で手がけている会社も少ないので、そこに特化したほうが面白いと考え、銅加工を主力にしました。

取引先5社から300社超へ。小ロット需要の「かき集め」戦略

小川:銅加工に特化して事業を拡大された経緯を教えてください。

畑さん:私がこの仕事を始めた2005年当時、取引先は5社ほどで、そのほとんどが1社に依存している状態でした。そこから小ロットの銅加工案件を積極的に受注していったところ、想像以上に需要があると実感したのです。

敬遠されがちな小ロットの仕事を一つひとつ集めていけば、十分にビジネスとして成り立つ。その手応えを早い段階でつかめたことが大きかったと思います。

現在、取引先は300社を超えています。お客様は配電盤メーカーや電気メーカー、電池メーカーなど、電気関連の企業がほとんどです。銅は電気を通しやすい素材なので、電設機器には欠かせない部品の材料として使われています。

設計の最終工程だからこそ求められる「スピード」

小川:お客様は、どのような課題を持って御社に依頼されるのでしょうか?

畑さん:電気の仕事では、「どう電気を通すか」という部分が設計工程の最後に決まることが多いのです。そのため、銅部品は納期が短くなりがちです。当社はその短納期に対応できる体制を整えており、それが喜んでいただけている理由の1つだと考えています。

ほとんどの案件がオーダーメイドで、薄板の小さな部品から1人では持てないほど大きなものまで、多品種に対応しています。

「まだやれることがあるんじゃないか」—危機的状況で下した事業承継の決断

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑 敬三

充実した商社時代と、突然訪れた決断のとき

小川:もともとは会社を引き継ぐ予定ではなかったと伺いましたが、どのような経緯で事業承継を決断されたのでしょうか?

畑さん:大学卒業後は商社に就職しました。メーカーだと決まった商品を売らなければなりませんが、商社であれば自分が良いと思ったものを売れるのではないかと考えたのです。海外で活躍したい思いもありました。実際には国内の仕事がほとんどでしたが(笑)。

商社時代は7年間勤めました。仕事は忙しく、毎日終電のような生活でしたが、仕事自体がうまくいっていて人間関係にも恵まれていたので、辛いとは感じませんでした。その環境を離れるのは惜しかったのですが、父が病気で入院したことをきっかけに、真剣に決断しなければならない状況になりました。

「なんとなく、まだやれることがある」という直感

小川:充実した会社員生活を手放すのは、大きな決断だったと思います。最終的に何が決め手になりましたか?

畑さん:会社の状況は決して良くありませんでしたし、父も「もう辞めたほうが良いんじゃないか」と言っていたくらいです。それでも、従業員のみなさんがいること、これまで続けてきた事業を止めるのはもったいないという思いがありました。

事業の詳細までは把握していなかったものの、「まだやれることがあるんじゃないか」という感覚があったのです。今振り返ると、あのとき何であれほど前向きに考えられたのか、自分でも不思議に思います。

危機をバネに変える経営術—反発、リーマンショック、そして成長

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑 敬三

「このままではダメだ」—変革に踏み出した三代目の覚悟

小川:事業を引き継いでから、一番大変だったのはいつですか?

畑さん:やはり最初の時期です。主要取引先が合併の影響で仕事が半減し、厳しい値下げ要求もありました。この状況を変えなければならないと、営業方針や生産体制を一新しようとしたのですが、ベテランの従業員から「そんなの無理だ」という反発もありました。実際に辞めていった方もいます。

ただ、実際にはあまり大変だとは感じていませんでした。もちろん簡単な決断ではありませんでしたが、協力してくれる従業員もたくさんいましたし、自分の方針に共感してくれるメンバーと歩んでいこうと考えていました。

残ってくれた従業員たちも「このままではまずい」という危機感を共有していたので、一緒にやっていこうという気持ちで会社を立て直していくことができたのです。

リーマンショックを「生産性改革の好機」に変えた発想

小川:リーマンショックの影響はいかがでしたか?

畑さん:仕事は大幅に減りました。ただ、周囲の工場が暇になって掃除ばかりしているのをみて、「今できることがある」と考えたのです。それまで毎日22時、23時まで残業するような働き方をしていたので、この機会に生産性を上げる取り組みに注力しようと決めました。

定時を過ぎても仕事のペースを緩めていた状態をみて、「効率的に作業して、早く終わったら早く帰ろう」という方針に切り替えたところ、従業員がとても頑張るようになりました。「そんなに早く帰りたかったんだ」と驚いたほどです(笑)。早いときは午前中に仕事が終わって、午後は私しかいない日もありました。

さらに、仕事が少ないタイミングだからこそ良い人材を採用できると考え、すぐに新しい従業員を迎えました。生産性向上のための機械も導入し、景気回復後に備えた体制づくりに力を入れたのです。

営業活動で確信した「銅の小ロット需要」のポテンシャル

小川:仕事が減っている中で攻めの投資をするのは、かなり勇気のいる判断だったのではないでしょうか?

畑さん:外からみれば勇気のいる判断だったかもしれませんが、自分の中では迷いはありませんでした。全体的に仕事は減っていたものの、営業活動は積極的に続けていましたし、お客様との会話の中で、銅の小ロット加工に対する需要がまだまだ存在することを肌で感じていたからです。

景気が回復すれば、もっと多くのお客様から仕事をいただけるようになる確信がありました。必ず戻るときが来ると信じて、そのときのために準備を進めていたのです。

商社時代に培った「情報力」が経営の武器になる

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑 敬三

繊維商社で磨かれたタフな営業力

小川:商社時代はどのようなお仕事をされていたのですか?

畑さん:繊維関連の商材を扱っていました。担当していた取引先が品質に非常に厳しいところで、わずかな色の違いでも不良品として返品されるような環境だったのです。前任者が体調を崩し、さらにその前の担当者は途中で辞めてしまったと聞いていました。

ただ、私はもともとあまり深く考え込まない性格なのか、厳しい環境でも楽しみながら仕事ができていました。お客様との関係もうまくいっていましたし、大変な現場を経験したことで、多少のことでは動じないタフさが身についたのだと思います。

「しょうもない情報」こそビジネスの種になる

小川:商社時代に学んだことで、特に経営に役立っていることはありますか?

畑さん:情報の大切さです。商社では、どこでどのようなものをつくればうまくいくか、誰がどのようなものを求めているかといった情報が仕事に直結します。上司や先輩の中で仕事ができる人を観察していると、一見重要ではないような情報でも幅広く持っている方が多かった。

さまざまなことを知っている人のもとに人が集まり、それが仕事にもつながっていく。その経験から、あらゆる情報を大切にする姿勢は今でも強く意識しています。

従業員の力を引き出す「聴く経営」

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑 敬三

一方的に伝えるのではなく、まず聴くことから始める

小川:経営されるうえで大切にされていることは何ですか?

畑さん:当社はものづくりの会社ですから、従業員がいなければ成り立ちません。いかに従業員のみなさんに気持ちよく頑張ってもらえるかが、経営のうえで最も大切だと考えています。

私自身、伝えたいことはたくさんあります。しかし、一方的に伝えるだけでは響かないと感じています。特に若い従業員に対しては、「どう思って仕事をしているのか」をできるだけ聴くようにしています。こちらが「こうしたほうが良い」と思っていても、相手には別の考えがあるかもしれない。

取引先との関係では立場上、相手の話を聴くことは自然にできますが、社長と従業員という関係ではつい自分の言いたいことだけを伝えてしまいがちです。だからこそ意識的に「聴く姿勢」を大切にしています。従業員が私の考えを理解して頑張ってくれると、会社はうまくいく。それは日々強く実感していることです。

ものづくりの面白さと、自分で考える力を育む現場

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑 敬三

図面から製品へ。オーダーメイドのものづくりが持つ醍醐味

小川:御社で働く面白さは、どのようなところにありますか?

畑さん:ものづくりの会社なので、自分がつくったものが形になり、世の中で使われるというのが一番の醍醐味です。また、お客様から言われたものをそのままつくるだけではなく、つくり手の立場から「よりコストを抑えられる方法」についても積極的にご提案しています。

小ロットのオーダーメイドがほとんどなので、毎回異なる製品をつくる面白さがある反面、いかに効率よく仕上げるかという部分では一人ひとりの能力が試されます。同じ製品をつくっても、削り方のアプローチが人によって異なるのです。どれが正解というわけではないのですが、個性が出て面白いと感じています。

「自分で考える」人が活躍できる環境

小川:採用の際に、大切にされていることはありますか?

畑さん:自分で考えて動ける人を求めています。言われた通りにやるのではなく、「もう少し工夫できるところはないか」と自ら考えて試してみる姿勢を大切にしています。経験者もいれば未経験から入社した従業員もいますが、基本的にはOJTで学んでいく環境です。大事なのは経験の有無よりも、自分の頭で考えて仕事に向き合えるかどうかだと思います。

「銅加工と言えばハタメタルワークス」—全国に届けたいブランドの力

【熱狂ベンチャーナビ】株式会社ハタメタルワークス 代表取締役 畑 敬三

さらなる飛躍を見据えた展望

小川:今後、どのような会社にしていきたいとお考えですか?

畑さん:金属加工の中でも銅加工に特化した尖った会社になれていると思いますが、この強みをさらに全国へ広げていきたいと考えています。「銅加工と言えばハタメタルワークス」と認知され、銅のことで困ったらまず当社に連絡が来る。そういう存在を目指しています。

会社概要

会社名株式会社ハタメタルワークス
HPhttps://www.hata-metal.co.jp
設立1935年創業/1988年設立
事業内容銅加工・金属加工

※2026年3月4日時点の情報です。

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小川莉奈のアバター

編集者

小川 莉奈 - 熱狂ベンチャーナビ編集部

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看護師から一般企業へ就職。その後株式会社デジマケに入社。自身の転職経験を元に新卒~若手の転職者にわかりやすい情報をお届けします。

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監修者

西畑大樹 - 熱狂ベンチャーナビ運営責任者

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新卒で証券会社に入社。その後、不動産・マーケティング・SaaS企業と4社の経験を経て独立。
学生時代は無人島のインターンや創業2か月目の会社でインターン生として2年勤務。
学生時代から新卒就活領域のメディア運営やキャリアコンサルタントを行っていた経験を元に業界や企業理解が深まるインタビュー記事や就活や転職に役立つ情報をお届けします。

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秋山翔一 - 熱狂ベンチャーナビ編集責任者

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新卒で商社に入社。その後WEBマーケティング支援を行う会社に転職。その後、繊維メーカーの役員を経て株式会社デジマケを創業。
年間500記事以上の監修を行っております。採用側の視点でサービスのファクトチェックや記事内容を精査しています。

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執筆者情報

熱狂ベンチャーナビ編集部はインターンシップ・新卒就活・転職経験者で編成されております。20代~30代の幅広い年齢・職種やキャリアを持つメンバーが在籍しているため、就活・転職の苦しかった経験や成功体験を元に求職者に役立つ情報を発信いたします。

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