【代表インタビュー】ハンザ・アドバイザーズ株式会社 代表取締役 福島 貴将

勇気ある挑戦者が、何度でも次の打席に立てる世界へ 16年の「現場力」で描く成長戦略型M&Aの新潮流
「登山」のように道筋を描き、成長企業の「本来の価値を引き出す」利益相反なき完全片側FA
2025年4月、東京証券取引所が発表した上場維持基準の変更、いわゆる「100億円ショック」が日本の資本市場に大きな構造転換をもたらしている。この変化を「歴史的な好機」と捉え、成長企業やスタートアップに特化したM&Aファイナンシャルアドバイザリー(FA)事業を立ち上げたのが、ハンザ・アドバイザーズ株式会社代表取締役の福島 貴将さん(以下、福島さん)です。
ベンチャーキャピタル(VC)とM&A仲介及びアドバイザリーの両分野で計16年のキャリアを積み、3,000人以上の経営者と向き合ってきた福島さん。「仲介」ではなく「片側FA」に特化することで、譲渡企業の条件を最大化する。その独自のアプローチと、スタートアップM&A市場への深い知見について伺いました。
【プロフィール】

ハンザ・アドバイザーズ株式会社
代表取締役 福島 貴将
趣味
絵画、歩行瞑想、料理
座右の銘
自身と家族、志を共にする仲間が、心から人生を楽しみ、幸せになる
尊敬する人
渋沢栄一、リチャード・ブランソン
学生が読むべき本
「論語と算盤」渋沢 栄一、「ライク・ア・ヴァージン」リチャード・ブランソン
経営者におすすめの本
「企業に何十億ドルものバリュエーションが付く理由」アスワス・ダモダラン
人生で一番熱狂したこと
弊社の創業期。まさに今。
「片側FA」で譲渡企業の条件を最大化する、成長企業特化型M&Aアドバイザリーの強み

仲介ではなく「片側専属のファイナンシャル・アドバイザリー」に特化。譲渡企業の希望条件を追求するサービス
小川:御社の事業内容について教えてください。
福島さん:当社はM&Aのファイナンシャルアドバイザリー(FA)事業を展開しています。成長企業やスタートアップ企業を中心に、仲介ではなく「片側FA」に特化したM&Aアドバイザリーサービスを提供しております。
未上場企業向けのM&Aサービスの多くは「仲介」がメインとなっています。仲介モデルは、双方の合意形成を最優先し、成約への確実性を高めるマッチング機能として非常に優れていますが、当社は譲渡企業の条件や希望金額を最大化することに特化したサービスを提供しているのが特徴です。
VC投資とM&A執行、両方の専門性を持つ希少なキャリア
小川:スタートアップや成長企業に特化されている理由は、どこにあるのでしょうか?
福島さん:私のキャリアに起因するところが大きいです。2009年に新卒で入社し、日本最大のベンチャーキャピタルであるジャフコグループ株式会社でVC投資に奔走。M&Aキャピタルパートナーズ株式会社で10年にわたりM&Aの執行実務を研鑽しました。
その後、M&Aクラウド株式会社にてスタートアップに特化したM&Aアドバイザリー事業の立ち上げと拡大を担いました。現場の最前線で多くの起業家やステークホルダーの皆様と深く向き合う中で、現在の「成長企業に最適化した片側FA」の形に辿り着きました。
スタートアップの成長力学とM&A執行。双方を熟知した専門家は、実は非常に少ないのです。
M&A仲介業界は2010年代から急成長し、現在では登録されている支援機関も2,000社を超えるまでになりました。しかし、その多くが主眼に置くのは、後継者不在に悩む高齢オーナーの「事業承継型」M&Aです。対象となるのも、創業から30年以上が経過した、年商数億円から数十億円規模の安定成長を続ける企業が中心です。
一方で、VCから資金調達を行いJカーブでの成長を狙うスタートアップはもちろん、自己資金を原資に非連続な成長を遂げるベンチャー企業も、その実態はまったく異なります。彼らにとってのM&Aは、「出口」ではなく、一貫した「成長戦略」の重要な選択肢の1つです。IPOや追加増資、マイノリティ譲渡による資本提携など、あらゆる可能性をフラットに比較検討し、その時点で最善の資本政策を意思決定しなければなりません。
また、そこには創業オーナーの意志だけでなく、株主をはじめとした多様な利害関係者(ステークホルダー)との緻密な調整も不可欠となります。
つまり、従来の「事業承継型のM&A」と、我々が向き合う「スタートアップ・成長企業型のM&A」は、市場構造もプレイヤーも、求められる作法も全く異なる、いわば「異種の競技」なのです。
事業承継から成長戦略へ。変わりゆくM&A市場の潮流

会社設立から1年で売却も当たり前の時代に
小川:成長戦略としてのM&Aは、日本では最近の動きなのでしょうか?
福島さん:日本のM&Aの歴史は1980年代に遡りますが、当時は大手証券会社や都市銀行の投資銀行部門が手掛ける、上場企業同士の巨大なディールや海外買収案件が主役でした。取引規模も数千億円単位に及ぶような大規模案件が中心で、未上場の中堅・中小企業がM&Aを検討しようにも、当時はその受け皿となる専門の市場もサービス提供者も存在しなかったのが実情です。
2000年代に入り、日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズといった、専業の大手M&A仲介会社の台頭により、中堅・中小企業の事業承継型M&Aの仲介という、巨大な市場が確立されました。
2010年代以降、M&A市場の潮流は劇的に多角化しました。現場の実感として、かつての主流であった「後継者不在の解決」のみを目的とした「事業承継型M&A」はもはや全体の半数程度。残りの半分は、さらなる成長加速を見据えた大手グループへの参画や、連続起業家による次なる挑戦のためのエグジット、あるいは機動的な事業ピボットを目的としたM&Aなど、極めてポジティブな「成長戦略型」M&Aが占めるようになっています。
直近でご支援した事例でも、創業からわずか1年、あるいは3年や5年といったスピード感での売却といったケースが、まったく珍しくなくなっていますね。売却後に新たな事業を立ち上げる連続起業家の方もいれば、譲渡先の買収企業の中で役員や新規事業部門の責任者に就任し、手腕を発揮し続ける方もいます。出口の先に描くキャリアの選択肢は、かつてないほど多様化しています。
しかし、M&Aの中身がこれほど戦略的・動的に進化した一方で、アドバイザーの手法は20年前の「事業承継型」「仲介型」からアップデートされていません。成長戦略としてのM&Aには、仲介ではなく、オーナー様の100%の味方として戦略を練り上げる「片側専属FA」が不可欠なのです。
「51%譲渡」だけではない、柔軟なスキーム設計
小川:成長企業型のM&Aでは、どのような設計が求められるのでしょうか?
福島さん:たとえば当社がよく提案するのが「2段階譲渡」という手法です。まず最初に51%や7〜8割を譲渡し、数年後に残りの株式を、その期間の業績達成度や企業価値に応じた価格で譲渡します。
これはオーナー経営者にとって、売却後も事業成長を追求する強いインセンティブになりますし、買い手側にとっても、経営者が急に離脱するリスクを抑えながら、共にバリューアップを目指せるという合理的な設計です。
スタートアップの場合は、より緻密な資本政策が求められます。複数の既存株主の利害調整があるため、一気にマジョリティ(支配権)を譲渡することが難しいケースも少なくありません。そのようなときは、既存株主からのセカンダリー譲渡と第三者割当増資を組み合わせ、まずは33.4%超(拒否権の確保)からスタートする資本業務提携を設計することもあります。
会社の成長資金を残しつつ、既存株主の出口もつくり、お試し期間を経てから段階的に持株比率を高めていく。こうした、スタートアップや成長企業の資本構成や成長フェーズに応じた柔軟な設計ができることこそが、定型的なマッチングを主とする仲介モデルと、我々のような片側FAとの大きな違いです。
企業価値1.5倍〜2倍へ。片側FA特化だからこそ実現できる成果

仲介会社の評価額の1.5倍で成約した事例
小川:成長戦略としてのM&Aにおいて、片側FAが介在することで大きな成果が出た事例があれば教えてください。
福島さん:いくつかの類型でお話しします。まず象徴的な事例として、直近でお手伝いした、企業価値8億円でM&Aの成約に至った成長企業のケースをご紹介します。
この案件のポイントは、当初、M&A仲介会社による企業価値の算定金額が4〜5億円だったという点にあります。そのまま進めていれば、おそらく5億円前後で決着していたでしょう。
しかし、当社に売り手専属のFAをご依頼いただき、売却戦略やスキームの立案から、事業計画の徹底的なブラッシュアップと、成長ストーリーを可視化したインフォメーション・メモランダム(IM)の作成を行いました。その上で、戦略的に選定した買い手候補に対して、「入札形式(プロセス・オークション)」を採用したところ、5社以上から意向表明をいただき、最終的な成約価額は8億円まで引きあがりました。最終的な手残りが1.5倍以上変わったことになります。
買い手の視点に立てば、本質的に8億円の価値がある企業を5億円で取得できるのは、これ以上ない好機です。仲介モデルの場合、買い手もまた「顧客」となるため、成約の確実性を優先して算定が保守的になりがちという構造的な側面があります。今回のケースで1.5倍以上の価額で取引を完結できたのは、当社が売り手専属のFAとして介在し、「企業が持つ真の企業価値」を正当に評価いただいた結果だと考えます。
創業3期で企業価値20億円超の成約。成長ポテンシャルを正当に評価された事例
福島さん:もう1つ、創業3期目の成長企業の事例をご紹介します。比較的利益は出ていたものの、仲介会社による当初の評価は10億~12億円程度でした。しかし、受託して動いた結果、最終的な評価額は20億円を超えました。
ポイントは2つあります。1つ目のポイントは、単なる過去の利益水準ではなく、「未来の価値」を以下の3軸で買い手に証明したことです。
市場の成長ポテンシャル:ターゲットとする市場(TAM・SAM・SOM)を再定義し、海外展開やロールアップM&A戦略による「非連続なスケールシナリオ」を可視化しました。
参入障壁:唯一無二のポジションと経営陣の希少性を言語化。
戦略的合致:買い手のリソースこそが、成長の「最後のピース」となることを説明。
もう1つのポイントは、「キーマンリスク」の解消です。こうした若い企業は、「社長が退任すると価値が激減する」と買い手に警戒されがちです。そこで、社長が一定期間継続して経営を担うプランと、その期間の業績に連動したインセンティブをセットで提案しました。これにより、買い手はリスクを抑えて高い成長を取り込むことができ、このような条件を引き出すことができました。
「登山」のように全体を見据えたルート設計。スタートアップM&A最大のポイント

複数株主の利害調整こそが、スタートアップM&Aの核心
小川:成長フェーズの企業がM&Aを進めるうえで、最もつまずきやすいポイントはどこでしょうか?
福島さん:スタートアップM&Aで最も重要なのは「利害関係者の調整」、特に株主の調整です。
多くのスタートアップは、創業期のエンジェル投資家やシードVCからの調達に始まり、シリーズA、シリーズBと各ステージで、金融系VC、事業会社、CVCなど、多種多様な投資家から資金調達を重ねています。ここで重要になるのが「資本政策表」の複雑さです。
各投資家は、普通株式だけではなく、優先分配権などが付いた「種類株式」を発行しているケースがほとんどです。そのため、投資家ごとに「いくらの時価総額で出資し、最低限いくら以上のリターンを求めているか」という期待値が全く異なります。
事業承継型のM&Aでは社長が100%の株式を保有していることがほとんどですが、スタートアップM&Aでは株主の意思決定を社長だけでは行えない。これが最大の特徴です。
FAアドバイザーの仕事は「登山ガイド」のようなもの
小川:その調整において、御社の強みはどこにあるのでしょうか?
福島さん:M&Aは「登山」に近いと考えています。初めて山に挑む方は、どうしても「頂上にいつ着くか」「頂上の景色は」という結果だけに目を奪われがちです。
しかし、経験を積んだ熟練者は違います。天候の変化を予測し、どの地点で休息を入れ、どこで食料を補給すべきか。道中のリスクをすべて洗い出し、ゴールから逆算した緻密なルート設計と装備の準備を事前に行います。
当社FAアドバイザーの仕事も同様です。初めてM&Aに臨む経営者に、半年から1年以上に及ぶ長丁場のロードマップを示し、刻一刻と変わる状況下で最適な意思決定をサポートする。M&Aの実行というゴールまで、一歩一歩確実かつ戦略的に先導することが役割だと考えています。
「どのタイミングで株主との協議に踏み切るべきか」、「希望する譲渡価額は、現在の資本政策に照らして本当に実現可能なのか、あるいはどうスキームを調整すれば到達できるのか」。事業承継アドバイザーは、承継案件において卓越した経験と調整力を発揮するプロフェッショナルです。
しかし、スタートアップM&Aにはそれとは異なる独自の専門性が不可欠です。この領域特有の力学に精通していなければ、いかに熟練のアドバイザーであっても「ルート選定」を誤るリスクがあります。
スタートアップ特有の資本政策や力学に精通し、事業の本質・財務・現状を読み解いたうえで、そこからM&Aへの最短ルートをオーダーメイドで設計する、これこそが弊社の付加価値であると考えます。
「100億円ショック」と創業の決意。日本のスタートアップエコシステムが変わる

東証の上場維持基準変更がもたらす構造転換
小川:御社を立ち上げた経緯について教えてください。
福島さん:大きく2つの理由があります。まず、2025年4月に発表された東証の上場維持基準の変更です。時価総額100億円というハードルが厳格化がされたことで、私がVC時代からみてきた「スモールIPO」という選択肢は非常に困難になりました。これは天動説が地動説になったくらい、日本の証券市場では大きな出来事です。エコシステム全体が変わると思っています。
加えて、日本のスタートアップエコシステムは今、「出口なき9割の問題」という深刻な構造的課題に直面しています。
2010年代の第4次ベンチャーブームによって、市場には膨大なリスクマネーが供給されましたが、実際にIPOまで到達できるのは全体のわずか1割程度に過ぎません。つまり、9割以上の投資先企業が未上場のままファンドの中に滞留しているのが実情なんです。
さらに深刻なのが、2015年以降に組成された多くのファンドが、2025年から償還期限、つまり満期を迎えます。年間2,800社以上が資金調達を行う一方で、IPOはわずか47社という圧倒的な供給過多の状態にあり、もはや既存のIPO市場だけではこの膨大な案件を消化しきれません。M&Aによる流動性の確保は、今や業界全体の喫緊の課題となっています。
小川:現場で経営者と対峙していても、その変化は感じますか?
福島さん:強く感じますね。現場で若い起業家とお会いすると、そもそも上場を目指していない方が圧倒的に増えていると感じます。出口がみえない現状は、起業家をリスク回避的なスモールビジネスへと向かわせる要因にもなっていて、これではビジネス界の「大谷翔平」のようなグローバルリーダーは生まれません。
だからこそ、私たちは「最大・最速の『失敗』を讃える世界」をつくりたいと考えています。失敗は終わりではなく、次なる挑戦を生み出すための「種」なんです。ハンザ・アドバイザーズが、M&Aという「ポジティブなExit」をエコシステムに実装することで、勇気ある挑戦者が何度でも次の打席に立てる世界を実現していきます。
仲介10年のジレンマから生まれた「片側FA特化」への確信
福島さん:もう1つは、15年間のキャリアを通じて感じていた、仲介モデル特有のジレンマです。これまでM&A仲介は、日本のM&A市場において極めて大きな功績を残してきました。後継者不在で廃業を余儀なくされていた事業承継オーナーを数多く救ってきた、社会的意義のある事業モデルであることは間違いありません。
しかしこの10年で、成長企業やスタートアップといった多様なプレイヤーがM&A市場に増えたことで、従来の仲介モデルでは解決しきれない課題が顕在化してきました。その課題を解決できるサービス提供者はまだまだ少ない。アドバイザーはなくならないという前提のもと、成長企業やスタートアップに伴走できる最適解はFAだと確信し、FA特化の会社を立ち上げました。
「起業家へのリスペクト」を原点に。専門家ネットワークで面的支援を実現

15年のキャリアを支える根本の価値観
小川:お仕事をされるうえで大切にしていることは何ですか?
福島さん:一番のアイデンティティは「経営者に対する絶対的なリスペクト」です。これが私のキャリアの根本にあります。
「これから世界を変えよう」という志を抱き、ゼロから事業を創り上げ、成長させていく起業家や経営者の方と本気で仕事をすることは、私にとって何よりもエキサイティングで、好奇心に満ちた仕事です。その隣で伴走支援をさせていただくにあたり、経営者への敬意を絶対に忘れてはいけないと考えています。
アドバイザーという名称は、ともすると上から目線に聞こえるかもしれません。しかし私たちは、M&Aという専門分野においてノウハウと経験を一時的に提供しているに過ぎません。本当に素晴らしいのは、リスクをとり、様々なハードシングスに直面しながら、会社を成長させている経営者や起業家の方々です。
「ハンザ同盟」をモチーフにした専門家ネットワーク構想
福島さん:社名の「ハンザ・アドバイザーズ」は、中世ヨーロッパで約400年に渡り繁栄を極めた「ハンザ同盟」をモチーフにしています。ハンザ同盟は、当時絶対的な権力をもっていた国家や教会といった既存の支配体制に属さず、商人たちが自ら集まった、世界史上最大の「商業同盟」です。
私たちもまた、志を同じくする構成員や連携する士業の方々が、それぞれ自立したプロとして集う組織を目指しています。現在、当社の理念に共感いただいた公認会計士、司法書士、弁護士の先生方と、スタートアップや成長企業に面的にサービス提供できる同盟を組むための提携を進めております。
M&Aは経営における大きな節目ですが、本来はスポット的な事象ではありません。会社設立時の登記から、会計、法務、資金調達、そして資本提携から譲渡、IPOに至るまで、成長企業のライフサイクルすべてを「面」で支え抜く体制を構築していくことが、現在私たちが注力しているテーマです。
かつてのハンザ同盟が独自のネットワークで商業のあり方を変えたように、私たちも各領域のスペシャリストと連携し、仲介一辺倒のM&A業界で「片側FA」という選択肢をスタンダードとし、日本のスタートアップエコシステムに「M&A EXIT」という新たな血流を循環させていきます。
会社概要
| 会社名 | ハンザ・アドバイザーズ株式会社 |
| HP | https://hanseatic.co.jp |
| 設立 | 2025年5月 |
| 事業内容 | ・M&A ファイナンシャルアドバイザリー業務 ・資本政策・資金調達支援 ・事業戦略コンサルティング |
※2025年12月2日時点の情報です。
