【代表インタビュー】株式会社エンルーツ 代表取締役 駒田 雄也

三河で「仕事って、オモシロい」を実現する—地域密着型HR企業が描く採用支援の新しい形
転職や就職活動において、地方の企業は都市部に比べて情報発信が苦手で、求職者に魅力が伝わりにくいという課題があります。一方で、地方にも素晴らしい企業は数多く存在し、そこで働きたいと願う人材も少なくありません。しかし、企業と人材の間にミスマッチが生まれ、お互いが出会えずにいるのが現実です。
この課題に真正面から取り組んでいるのが、株式会社エンルーツ代表取締役の駒田 雄也さん(以下、駒田さん)です。愛知県三河エリアに特化したHR企業として、採用支援事業、人材紹介事業、クリエイティブ制作事業の3つの柱で地域企業の成長を支えています。
前職のマイナビで5年間、一貫して三河エリアの採用支援に携わってきた駒田さん。大学時代の挫折を乗り越え、営業の面白さに目覚めた彼が、なぜ独立という道を選んだのか。そして、「仕事って、オモシロい」というビジョンに込めた思いについて伺いました。
プロフィール

株式会社エンルーツ
代表取締役 駒田 雄也
趣味
仕事、サウナ、野球、映画
尊敬する人
西崎 康平さん(トゥモローゲート株式会社 代表取締役 最高経営責任者)
座右の銘
即断即決
学生が読むべき本
「「20代」でやっておきたいこと」川北 義則
経営者におすすめの本
「社員100人までの会社の「社長の仕事」」古田土 満
人生で一番熱狂したこと
創業してからずっと
「競合が少ない三河こそビジネスチャンス」—地域特化戦略の理由

三河エリアの特色と潜在的な市場価値
小川:御社の事業について教えてください。
駒田さん:当社は三河エリアに特化した採用関係の幅広い課題解決をしている会社です。 事業の柱として、まず採用支援事業があります。これは求人広告の代理店業務から、Web制作、映像制作、さらには入社後の研修や定着活動のためのフォローまで、一気通貫でワンストップ対応しているのが特徴です。
2つ目が人材紹介事業で、三河エリアに特化して転職希望者の相談を受けて企業様にご紹介するビジネスです。そして3つ目がクリエイティブ事業で、採用にこだわらず企業のロゴ制作やサービス制作なども幅広く手がけています。
小川:三河エリアでの採用支援について、需要と競合の状況はいかがでしょうか?
駒田さん:需要はありますが、愛知県で言ったら名古屋の方が市場は大きいのは確かです。ただし、名古屋は競合がかなり多いエリアでもあります。
私たちは三河エリアにルーツを持つ人間が多いので、三河を盛り上げていきたいという思いが強くあります。三河エリアには、トヨタ自動車を始めとした下請けの企業なども含めて本当に良い企業がたくさんあるんです。
転職市場は盛んなエリアですが、求職者視点だと「良い会社ってあまりないよね」という認識があるんです。なぜかというと、関東とか市場が大きいところに比べて、企業側がなかなか魅力を発信できていない実態があるからです。
本当は良い会社なんですが、魅力を発信できていないから求職者に届いていないという現実があるので、そこに対して当社のような専門性を持った会社が必要なんじゃないかと思いましたし、私はそこにビジネスチャンスを感じています。
三河特有の地域性を活かした差別化戦略
小川:他の採用支援会社と比べたときの御社の強みはどこにあるのでしょうか?
駒田さん:三河に特化しているので、地域のエリア性を深く理解しているメンバーがやっているというのが一番の強みです。 三河エリアって、その地域のエリア性が強いエリアだと言われています。よそ者を受け付けない雰囲気があるので、そういうエリアだからこそ、地場に根づいてやっている私たちが受け入れられていると思います。
また、基本的に伴走型でやっています。当社が大切にしているのは、目先の売上よりもお客様の採用成功です。一度限りの取引ではなく、採用課題を本当に解決することで、長期的なパートナーシップを築いていきたいと考えています。だからこそ、他社以上に丁寧で継続的なサポートを提供しています。
挫折から学んだ「本気で生きる」こと—大学時代の原体験が生んだ成長への渇望

留年という挫折が生んだ「巻き返し」への強い意志
小川:駒田さんのこれまでのご経歴について教えてください。
駒田さん:私は愛知県の大学を出た後、最初は日産のディーラーに就職し、その後社会人4年目のときにマイナビに転職して5年間勤務しました。 マイナビでは1年半プレイヤーを経験した後、3年半はマネージャーを務めていました。
転職のきっかけは、より若い人たちが活き活きと活躍している前向きな組織で働きたいという思いから。日産時代はとにかくガムシャラに働き、常に成績は上位をキープできるようにしていました。
しかし周りをみると活躍している方たちはベテラン勢が多く、若い人があまり活躍していない実態があって、この環境で自分は大丈夫か……?という危機感を覚えました。 比較的大きなマーケットに行って挑戦したい思いと、自分と同じように若い人がガムシャラに仕事を頑張っているような環境に行きたいという思いが湧いたんです。
小川:その「前向きに働きたい」という原動力はどこから生まれたのでしょうか?
駒田さん:実は、大学時代に1年留年していて、その5年間が人生の中で一番頑張れていない時期でした。 一応部活もやっていたんですが、本当に頑張れていませんでした。
野球をやっていたんですが、やりきった感はなくて。どうしても自分に甘えてしまったり、なんとなく過ごしていた部分があったので、「自分ってかっこよくないな」と思ったのをすごく覚えています。
だからこそ社会人1年目のときは、ここで巻き返さないと本当にダメになってしまうという強い危機感がありました。 大学時代の自分を変えるチャンスは今しかない、絶対にここで復活するんだという気持ちで必死に頑張り、結果に貪欲だったのを覚えています。
営業の本質をみつけた瞬間—課題解決の面白さに気づく
小川:そうした必死の思いで営業に取り組まれたわけですが、実際にやってみて営業という仕事をどのように感じられたのでしょうか?
駒田さん:営業って最初は「口が上手い人が活躍する人」みたいなイメージがあったんですが、実際にやってみると全く違いました。営業について勉強すればするほど、表面的な仕事ではなく、本質的な課題解決の仕事だということが分かったんです。
いかにその相手の話をしっかり聞いて、課題を抽出して、そこに対して解決の提案をし、相手に選んでもらうか。この流れは、車を売る個人営業でも、求人広告を売る法人営業でも同じでした。営業の本質は相手の課題解決だと思っています。
それを身をもって体感していく中で、スキルが身についていき、成果が出ていくというプロセスが本当に楽しいんです。昔に比べれば自分でもスキルはついて成果も出せるようになりましたが、今でもそういうところが楽しいですね。
「営業と経営は全く違うゲーム」—創業時の試練と学び

マイナビ時代に感じた本当の課題解決への渇望
小川:独立を決意されたきっかけについて、もう少し詳しく教えてください。
駒田さん:マイナビでマネージャーをしていたとき、一時期、毎日終電を逃してタクシーで帰るような日々が続いていました。 自分の幸せって何だろうと考えたタイミングがあって、自分のメンバーや部下をみたときにも、みんな疲弊しているようにみえたんです。
仕事は好きなんだけれども、自分はこのままの人生で大丈夫かなと思い始めました。お客さんに対してもそうで、結局マイナビにいたので「マイナビを売る」のが正義だし、メーカーの人間としてそれをやるべきなんですが、そこに100%腹落ちできてない自分もいました。
「これって本当にお客さんのためになってるのかな」という気持ちがどうしてもあったんです。 自分の本心からお客さんの成功にコミットできるような、本当の課題解決がしたいなと思うようになりました。
人生の中で仕事って結構な割合を占めるものなので、人生豊かに楽しく過ごすんだったら、絶対仕事って楽しくなきゃいけないよなと思ったのが、独立の背景です。
売上は上がったのに赤字—財務の壁にぶつかった1期目
小川:独立後、一番大変だったことは何でしょうか?
駒田さん:一番大変だったのは、独立してすぐの頃、営業と経営は全く別のスキルが必要だということを理解できていなかったことです。私はずっと営業畑にいたので、売上をつくることに関してはそれなりにできていたと思います。1期目から営業活動は順調で、しっかりと売上を立てることはできました。
でも、その売上をどう使うか、どこに投資するか、どうやってお金を守っていくかという財務の部分は何も分からなくて、1期目が終わってみたら、売上はそれなりに上がったはずなのに赤字でした。 決算書って成績表だと思うんですが、赤点だったわけです。自分なりに頑張って売上をつくったと思っていたのに、お金がないという状況でした。
営業をやるということと、会社経営をするということは全然違うことなんだなという理解をそこでしました。2期目で財務を学んだのですが、1期目で赤字なので銀行からもそれほど借り入れはできなかったんです。一方で、私はどんどん売上を増やし、人も入れて拡大していきたいという思いで採用もしていました。
そして、人の採用のスピードと売上の拡大のスピードが伴っていなくて、本当にキャッシュアウトするんじゃないかというところまで行きました。 「あと数百万円しかない」「数ヶ月したら潰れるんじゃないか」という状況までいったんです。
仲間への責任感が生んだ不屈の精神力
小川:そうした困難の中で、頑張れたモチベーションは何だったのでしょうか?
駒田さん:「一緒にやってくれているメンバーを絶対自分が守っていくんだ」という責任感です。 今当社には、私と同じマイナビの経験組が私含めて4人いるんですが、年収を下げてまで来てくれているわけです。
その他のメンバーも、立ち上がったばかりのベンチャーに入るということは、安定のキャリアを捨てて挑戦してきてくれているわけなので、それを自分は何がなんでも守らなきゃいけない。これは、圧倒的なモチベーションでした。
一方で、「自分がこれだけやってるんだから、どうにかできるでしょ」という根拠のない自信みたいなのもありました。 メンバーの前向きさもそうです。うちのメンバーに対して自信持って言えるのは、本当にみんな素直で純粋で、一丸となって頑張っていこうという前向きな姿勢があるんです。これは本当に誇れるところだと思っています。
「草野球ではなく甲子園を目指す」—仕事の面白さを追求する組織づくり

成長と達成感こそが真の仕事の楽しさ
小川:御社のビジョンである「仕事って、オモシロい」について、どのような思いから生まれたのでしょうか?
駒田さん:人生の中で仕事が占める割合は大きいので、どうせ働くのなら「仕事って楽しくなきゃいけないよな」「楽しい方が絶対良いじゃん」と思ったのがマイナビのときでした。
自分と一緒に働くメンバー含めて、仕事が楽しいって思える環境をつくりたいって強く思ったのが背景です。
小川:具体的に、どのようになったら仕事を面白がれると思いますか?
駒田さん:結果を追い求めることです。その結果に対する達成感や、結果を追い求めることで得られる成長の楽しさを感じてほしいですね。 そのとき、その一瞬は大変かもしれないけど、でもそれが結局自分の成長につながったり、自分の経験となる。後で振り返ってみても「あのときが一番楽しかったよね」と言える時間にしたいんです。
「草野球じゃなくて、甲子園を目指そうよ」という言い方をするんですが、 本気で目標を持って挑まなければ、そのときは楽だったりするかもしれない。でも、仕事においてそれでは何も残らなかったり成果が出なかったりして、結局それってただ時間を無駄にしてるだけで、楽しいとは言えないと思っています。
しっかりと個人レベルでも成長をして、組織が拡大して、何かを達成する。その達成感を味わうことによる楽しさを実感できる仕事にしたいと思います。
優しさと協調性を持つフラットな組織文化
小川:会社の雰囲気や文化について教えてください。
駒田さん:良い意味でも悪い意味でも、「良い人」が多いと思っています。 共通点で言うと、全員が素直で真面目で、仕事に真剣に向き合っています。性格的な部分で言うと、優しくて協調性があると思っています。もうちょっと主張とかガツガツしても良いんじゃないかなと思うぐらい、優しいメンバーが多いですね。
平均年齢は30歳で、一番若いメンバーが23歳、その他はだいたい29歳から33歳ぐらいです。年齢が近いから、だいぶフラットな環境だと思います。私が代表で、その下にマネージャー層がない組織構造なので、上下関係を感じない職場だと思います。
三河でのシェア拡大という明確な挑戦目標
小川:これから入社される方に期待することについて聞かせてください。
駒田さん:一番求めているのは、パッション、それこそ熱狂です。 もちろん営業スキルや社会人としての基本的なスキルは必要ですが、それ以上に大切なのは想いの部分です。
三河のHR業界でトップを目指している私たちと一緒に、会社を大きくしていきたい、シェアを獲得していきたい、という強い想いを持っている人と働きたいですね。
小川:最後に今後の事業展望について聞かせてください。
駒田さん:三河エリアでのシェア拡大を目指しています。 採用支援では顧客数と売上の拡大、人材紹介では「ジョブスイッチ」という三河に特化したサービスの認知度向上と利用者拡大が主なミッションです。
「三河で転職相談って言えばジョブスイッチだよね」とか、企業さまが採用に困ったら「一旦エンルーツに相談するか」という感じですね。学生に関しても、三河で就職したいという人に対して、「三河で働くなら、エンルーツっていうイケてるベンチャーがあるやん」と言われる会社にしたいと思っています。
そのためには認知を取っていかないといけないし、影響力を持たないといけないので、売上を上げていくし、会社の規模も拡大していきたいと考えています。
会社概要
会社名 | 株式会社エンルーツ |
HP | https://enroots.co.jp |
設立 | 2023年2月 |
事業内容 | 採用支援事業 人材紹介事業 クリエイティブ制作事業 |
※2025年7月22日時点の情報です。