【代表インタビュー】キュリオシティ株式会社 代表取締役CEO 金田 隼人

「ラストマン」精神と現場感覚で企業の課題に挑む
キュリオシティ株式会社では、未経験からコンサルタントを育て、現場の感覚を大切にした実践的な企業支援を展開しています。代表取締役CEOの金田 隼人さん(以下、金田さん)は「コンサルは手段であって目的ではない」という視点から、事業会社での実務経験を持つ人材を積極的に採用し、「ラストマン」として最後まで責任を持って課題解決に取り組む姿勢を大切にしています。
従来のコンサルティングとは一線を画す「現場主義」と「責任感」を重視する同社。なぜ未経験者からコンサルタントを育てるのか、どのようにして「ラストマン」精神を社内に浸透させているのか、そして今後どのような社会課題に取り組もうとしているのか。コンサルティング事業とSES事業を軸に成長を続ける同社の取り組みや、事業承継・再生を見据えた今後の展望について、金田さんの経営哲学と人材育成への情熱から生まれる独自のビジネスモデルについて伺いました。
プロフィール

キュリオシティ株式会社
代表取締役CEO 金田 隼人
趣味
旅行・グルメ
尊敬する人
渋沢 栄一
座右の銘
立志と忠恕
学生が読むべき本
「論語と算盤」渋沢 栄一
経営者におすすめの本
「論語と算盤」渋沢 栄一
人生で一番熱狂したこと
X JAPANの復活ライブ
実践力と責任感で企業課題を解決

「常駐」で成果を出す二軸のビジネスモデル
小川:御社がどのような事業をされているのか教えてください。
金田さん:私たちは大きく2軸で事業を展開していて、一つはコンサルティング事業になります。企業の業務可視化や業務改善、事業計画の策定・システム導入・DX支援などを通じて、大企業や中堅企業のさまざまな課題解決に対し、基本的に「常駐」という形で取り組み、ソリューションを提供しています。
小川:もう一つの軸になっている事業についても、教えていただけますか?
金田さん:二つ目はシステムエンジニアリングサービス、いわゆるSES事業です。これは、大企業のクライアントを中心に、ニーズに応じたシステムエンジニアをプロジェクト現場にご紹介するビジネスモデルです。
当社は1,000社を超える企業様とお取引があり、その企業ごとに求められるスキルやタイミングに応じた最適な人材をマッチングできる体制を構築しています。そこで求められているのは、技術スキルはもちろん、現場との相性や即戦力性といった「実際に現場で機能する人材」が重要なので、営業メンバーが日々のヒアリングを丁寧に行い、把握しています。
小川:SES事業において、現場との相性を重視されているのですね。人材マッチングの際に特に気をつけていることはありますか?
金田さん:そうですね。SESビジネスはタイミングが重要で、クライアントが「人材が必要なタイミングに応じてスピーディに提案できるかどうか」が、成約に大きく影響します。なぜなら、プロジェクトの開始や人員の欠員といった要因で「今すぐにでも必要」というケースで求められることが非常に多いためです。
こうした背景から、当社では自社内で開発した生成AIを搭載したシステムを活用し、各企業様のニーズや募集タイミングをデータとして管理しています。これにより、より鮮度の高い状態で最適な人材を提案できる体制を整えていることが、当社の特徴の一つです。
小川:コンサルティングとSES以外にも事業展開をされているのでしょうか?
金田さん:はい。この2軸から派生して、昨年からは新たに経営支援事業にも取り組んでいます。こちらは主にベンチャー企業や中小企業に対して、予算計画の策定や助成金・補助金申請の支援、バックオフィス業務、業務の引き継ぎ支援やDX・AI導入をはじめとした業務の整備などを支援するものです。
もう一つは、AIプロダクトの実装構築事業です。自社でもプロダクト開発を進める一方で、クライアントに対する開発支援や伴走型の支援も行っており、テクノロジーを活用した課題解決にも力を入れています。
このように業務改善コンサルティングというアプローチを軸にSES、経営支援、AIプロダクト構築といった企業様における課題解決を成果に繋げるところまで一気通貫で支援させていただくのが弊社の事業モデルの全体像となります。
他社とは異なる独自のアプローチ

コンサルは「手段」であって「目的」ではない
小川:コンサルティング事業に取り組む上で、大切にされている考え方やスタンスを教えてください。
金田さん:コンサルティングというのはあくまで「手段」であって、「目的」ではないと考えています。コンサルタントとして淡々とプロフェッショナルな仕事をすることも重要ですが、論理的すぎるがゆえに余白がなく、新しい発想や面白みが生まれにくい現場も多いと感じてきました。得てして、人間的なパッションや目的がみえづらい、そんな状況にもどかしさを感じたんです。
私たちはコンサルティングという枠組みを重視しすぎず、クライアントの不安を取り除くこと、やりたいことの実現を後押しすること、そして手の足りない部分を支えること。そんな「泥臭いけれど本質的な価値」を大切にしています。
「ラストマン」として最後まで責任を持つ姿勢
小川:そうした考えのもとで、社内ではどのような姿勢や価値観を大切にされていますか?
金田さん:社内では「ラストマン」という概念を掲げており、これはプロジェクトや事業、チームにおける「最後の責任者」として、誰かに責任を委ねるのではなく、自責の意識でやり切り、成果を生み出すという姿勢を表す言葉です。その覚悟と責任感が、お客様からの高い満足度にもつながっていると思います。
小川:「ラストマン」という考え方は、実際のプロジェクト進行にどう影響しているのでしょうか?
金田さん:コンサル業界では「セクショナリズム」、つまり「この領域だけを担当します」といった縦割りの風潮が根強くありますが、私たちは業務の全体像を把握することを重視しています。たとえ契約上の範囲外であっても、クライアントのために必要だと感じたことは、自発的に設計・提案します。
そうすることで、目の前の業務だけでなく、その先の構想計画まで伴走できるんです。もちろん、それは予算が発生していない部分かもしれませんが、先回りして提案し、実行していくことでお客様の信頼にもつながり、結果として継続的な関係が生まれていきます。
このように、画一的なやり方ではなく、柔軟に、そして責任を持って最後までやり切る。そんなスタイルが、私たちのコンサルティングの最大の特徴です。
事業会社での経験が活きる現場感覚

小川:未経験からコンサルタントを目指す人材を積極的に採用されているとのことですが、その狙いや手応えについて詳しく教えていただけますか?
金田さん:「事業の現場を知っている人材」が、コンサル業界で本当の意味で価値を発揮できると考えているからです。
一般的なコンサルティングを事業とする会社は、転職市場においてコンサルタント経験者や大手の戦略コンサルファーム出身者を採用しがちですが、私たちはその真逆の戦略をとっています。事業会社での実務経験を経て、「これからコンサルとして成長したい」という強い意思を持つ人こそが、長期的に信頼されるプロフェッショナルになれると考えているんです。
実際に、もともとコンサル未経験だった社員が、大企業のプロジェクトに参画し高い評価を受けたことで、その会社との関係性が深まり、プロジェクトの幅も広がっていくケースが何度もありました。事業会社での経験があるからこそ、事業会社側の立場の視点、課題に対する現場感覚を持っており、論理だけではたどり着けない本質的な提案ができる。これが私たちの提供価値の核になっています。
小川:未経験者を育てることで、どのような優位性が生まれるのでしょうか?
金田さん:経験者採用にありがちな「コンサルタントとしての成功体験」に縛られることがない分、柔軟で素直な姿勢を持ち、成長スピードが速い点は、大きな強みだと思います。
また、当社ではコンサル未経験でありながら、事業会社で実務経験を積んできたメンバーが多く、そうした人材が現場で培った視点やスキルを活かして、本質的な価値を提供できるように成長している点も、当社の優位性につながっています。
小川:クライアントにとって価値ある支援ができるように、大切にしている姿勢はありますか?
金田さん:クライアントからヒアリングするだけでなく、実際に現場に足を運び、自分たちの目や肌感覚で状況を捉えることを大切にしています。なぜなら、現場でしかみえてこない課題や、言葉には表れない本質的な障壁がたくさんあるからです。
実際に、ある企業様から「大手コンサルはアウトプットの質は高いけど、現場で本当に使えるかというと難しい」という声を聞きます。経営視点でみると合理的で理屈は通っていても、現場にうまく落とし込めていないケースが多いと言うんです。特に製造業や店舗型ビジネスのように、本部と現場が分断されがちな企業では、そこに大きなギャップが生まれやすいですね。
小川:そうしたギャップを埋めるために、具体的にどのようなアプローチをされているのですか?
金田さん:そのギャップを埋めるには、現場に入って、人の動きや感情、これまでの慣習やご自身ですら気づいていない不満や問題点といった「目にみえないもの」を把握することが不可欠です。そうでなければ、どんなに質の高い提案も、絵に描いた餅で終わってしまいます。
だからこそ私たちは、現場から考え、現場とともに動きながら、実際に使えるアウトプットをつくっていくことを何より大切にしています。そこに、私たちが提供できる本質的な価値があると考えています。
人づくりが会社・社会づくりの原点

人との縁から生まれた経営哲学
小川:金田さんが現在、最も情熱を注いでいることについて教えてください。
金田さん:私が最も情熱を注いでいるのは「人を育てること」です。人づくりこそが、まちづくりや国づくり、さらにはコトづくりや会社づくりに直結すると信じており、すべての原点は「人」にあると考えています。
小川:「人を育てること」に情熱を注いでいる背景には、どのような経験や考えがあるのでしょうか?
金田さん:私のこれまでのキャリアでは、常に人に支えられてきた実感が強くあります。学生時代に全国の大学と企業をつなぐ採用支援を行い、その後はスポンサーを募って世界中の大学を巡る経験もしました。
新卒で入社した会社では教育事業を立ち上げましたが、社長が突然いなくなり、副社長としてその後の会社の行く末を考えていた際に当時の株主の皆様に背中を押していただきました。その後立ち上げた会社では、共同創業メンバーとの大きなトラブルにも直面してしまったのですが、多くの人たちの支えがあったおかげで立ち直り、その経験を通じて新規事業の支援や空間デザイン、街づくりのプロデュースなど、60社以上の立ち上げに関わることができたんです。
小川:そうした経験から特に影響を受けた人物はいらっしゃいますか?
金田さん:小学生の頃から私と同じ深谷出身の渋沢栄一に強く影響を受けました。江戸末期から大正時代まで4時代を生きた人物で、日本の近代経済の基盤を築いた改革者です。合本主義、経済道徳合一説を通じて、日本の未来を切り開き、社会改革にも大きな影響を与えました。
彼は人間味溢れる人物で、泣いたり笑ったりしながらも常に人とのご縁を大切にし、未来のために事業を創り続けた人です。私もそのような人生を歩みたいと思っています。
だからこそ、どんな仕事においても初心を忘れず、常に人の感性に寄り添った仕事をしていきたいと思うようになりました。それが私の「人づくり」の考え方の根底にあるものです。
責任者を育てる3年間のプログラム

「ラストマン」として現場で活きる力を育む
小川:今年から始められた「ラストマン研修」では、他の育成プログラムと比べて、どのような特徴があるのか教えてください。
金田さん:段階的に責任の範囲を広げながら実践を積めることが特徴です。まず最初はタスクの実行を担当し、次第にチームやメンバーのタスクをマネジメントしながら、プロジェクトを目的達成へと導く力を身につけていきます。その後、事業の責任者として、事業全体をオーナーシップを持って成し遂げる力を養います。
このステップを経ることで、約3年でどこへ行っても通用するコンサルタントとして、ひいてはビジネスマンとしての力を身につけられると考えています。もちろん、成長には終わりはありませんが、この期間に多くの実務経験と研修を通じて、専門知識と人間力を備えたコンサルタントとして一人前になることを目指しています。
小川:研修で得たスキルや経験は、その後のキャリアにどのように結びついていくのでしょうか?
金田さん:研修を通じて身につけることができるのは、単なるコンサルティングスキルではなく、ビジネス全体における総合的な力だと思っています。私たちが大事にしているのは「責任者を育てる」こと。どんな単位でも、自分の責任で物事をやり遂げる力が、周囲の信頼を勝ち取る力につながります。これは経営者にも、成功したビジネスマンにも共通する大事な要素です。
人間力やマインドを磨くためのプログラムでもあり、自分のやりたいことをみつけ、それに挑戦する力を養うための経験を積んでいけるので、自分のキャリアを広げていくには最適な経験だと思います。
企業価値を超えた社会的意義への挑戦

小川:研修を通して成長された方々は、今後どのような分野で活躍されることを期待されていますか?
金田さん:今後は新たなステージとして、事業承継や事業再生などの分野にも取り組んでいく予定です。日本の課題である後継者不足や黒字倒産に対して、企業の支援を行い、次世代の経営者を育成する役割も視野に入れています。
また、コンサルタントとして弊社で経験を積んだメンバーの卒業制度およびアルムナイ制度も設けていきます。各メンバーのキャリアプランに沿って、キュリオシティのパートナーになっていく道も今期から実施していきます。
小川:研修を経て実際に働く中で、御社ではどのような経験や成長の機会があるのでしょうか?
金田さん:クライアントの課題がますます複雑化する中で、私たちが提供するサービスは企業ごとに異なります。そのため、さまざまな価値観や哲学を持つ企業に関わることができ、これが非常に面白い点だと思っています。ルーチンワークにとどまらず、幅広い業界や業態でさまざまな取り組みに携わることで、自分の視野を広げることができるため、毎回新しい挑戦がある環境です。
また、当社は現在成長真っ只中の会社であり、毎年増収増益を目指している最中です。このような環境で会社の成長に関わり、一緒に築いていく経験は非常に貴重だと考えています。成長の過程で大変なこともたくさんあると思いますが、それだけ多くの学びや成長が得られる環境だと思います。
そして、会社をより良い環境にするべく率先して新たな社内制度や仕掛けに関する意見やアイデアを検討し、自ら声を上げ、自らの手で会社を成長させることができるのも魅力の一つだと社員がよく言ってくれています。
協力的で挑戦できる組織文化

「一緒に働きたい」と思える人材が集う職場
小川:御社で働く方々の雰囲気や会社の風土について、教えてください。
金田さん:当社では、社員一人ひとりの人間的な素養を重視しています。面接の際には、もちろん能力も重視しますが、それ以上に「一緒に働きたい」と思えるかどうかを重要視しています。
話していて「応援したいな」「この人と一緒に仕事をしてみたい」と思える人を採用しているので、能力が高くてもマッチしない場合は、採用しないこともあります。このように、社内には協力的で人間的な魅力があるメンバーが多いです。
また、社員には必ずアウトプットを求めています。悩んでもまず一つ出してみるという風土が根づいていて、自分の価値観や意見をしっかりと表現することを大事にしています。
小川:これから入社する方に一番求めているものは何ですか?
金田さん:コンサルティングを手段の一つとして柔軟に捉え、成長したいという強い意志を持っていることです。自分なりの捉え方に固執せず、状況に応じて柔軟に対応し、どんなことも自分ごととして捉え、圧倒的な当事者意識で物事を推進できる人が理想です。その結果、成長を目指していけるような人が、私たちの会社には最もフィットすると考えています。
また、組織としては縦割りではなく、とてもフラットな環境です。コミュニケーションの頻度は少ないかもしれませんが、社員は会社をどうしたいか、自分がやりたいことを伝えやすい雰囲気があります。社員からの提案もよく受け入れられ、それが実現されることが多いので、みんなで一緒に成長していける環境が整っています。
事業承継から再生まで―社会課題に挑む未来
小川:今後の会社の展望を教えてください。
金田さん:まずコンサルティングとSESという2つの事業を軸に、さらに成長を目指して積極的な採用や営業活動を行い、販路の拡大を進めていきます。また、経営支援事業とAIプロダクトの実装・構築事業は弊社にとって新規の事業になりますが、既存事業をより加速させるためのシナジーを生む事業でもあります。「ラストマン」という概念を起点にして、プロジェクト単位にとどまらず、企業全体の変革や承継に関わるような取り組みも進めていきたいと考えています。
会社の経営を承継したり、場合によっては買収したりするようなプロジェクトに関与していき、実際に1社、2社と成果を上げることを目指していきます。コンサル経験を積んだ後には、ラストマンとして自分が承継先を見つけ、そこから新しい社長を育てるという流れをつくっていけたら、社会課題へのアプローチもでき、次のキャリアステップに繋がる大きな意味を持つと考えています。このビジョンを実現し、社会に貢献できるよう全力で取り組んでいきます。
会社情報
法人名 | キュリオシティ株式会社 |
HP | https://curiosity-biz.co.jp/ |
設立 | 1995年10月 |
事業内容 | ・コンサルティング事業・SES事業・経営支援事業・AIプロダクトの実装構築事業 |
採用情報 | https://curiosity-biz.co.jp/recruit/ |