【代表インタビュー】株式会社ARIA 代表取締役 宮崎 大輔

小児訪問看護という「空白地帯」に挑む—元看護師の経営者が描く在宅医療の未来
訪問看護と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか。退院後の高齢者が利用するサービス。多くの人がそう認識しているかもしれません。しかし、「子どもも訪問看護を使えることを知らない親御さんがまだ多い」と語るのが、株式会社ARIA代表取締役の宮崎 大輔さん(以下、宮崎さん)です。
大学卒業後、オペ看(手術室専属の看護師)として働いていた宮崎さんですが、看護師特有の年功序列のキャリアや給料に絶望し、25歳のときに看護師を辞める決断をします。「看護師に戻れない状態」をつくるために免許証を燃やしたという宮崎さん。営業職を経て、コロナ禍にSNSで発信を始めたところ、看護師界隈で話題となり、発信をきっかけに多くの共感とつながりが生まれていきました。「この人たちと何かできるのではないか」「医療従事者が正当に評価され、自己実現できるような場所をつくりたい」。そう考えて2023年4月に立ち上げたのが、小児特化型の訪問看護ステーション「NewGate訪問看護ステーション」です。
設立からわずか2年8ヶ月で11拠点、年商5〜6億円規模まで成長。利用者の約7割が小児という独自の領域を確立しています。「笑顔あふれる 自分らしい人生を」という理念は、スタッフに向けてつくられました。スタッフの自己実現なくして、利用者の自己実現はないと語る宮崎さん。そんな宮崎さんに、なぜ訪問看護の世界に飛び込み、どのような未来を描いているのか伺いました。
プロフィール

株式会社ARIA
代表取締役 宮崎 大輔
趣味
旅行
尊敬する人
ワンピース作者 尾田先生
座右の銘
ワンピースのヒルルクの言葉「人は、いつ死ぬと思う・・・?」「心臓を銃で撃ち抜かれた時・・・・・・違う。不治の病に犯された時・・・・・・違う。猛毒キノコのスープを飲んだ時・・・違う!!!」「・・・人に、忘れられた時さ・・・!!!」
学生が読むべき本
「ONE PIECE」尾田 栄一郎、「キングダム」原 泰久
経営者におすすめの本
「ゆるすということ」ジェラルド・G.ジャンポルスキ−
人生で一番熱狂したこと
モンスターハンターとラグビー
「子どもも訪問看護を使える」—必要な人に新たな選択肢を届ける

小児特化型訪問看護という新たな選択肢
小川:まず、御社の事業内容について教えてください。
宮崎さん:事業内容としては、訪問看護を行っています。利用者さんの7割ほどが小児の方で、小児特化型の事業所として運営しています。ただ、0歳から全年齢、お看取りまで対応しているステーションですので、小児特化ではあるけれど大人は受け入れないわけではありません。
小川:小児に特化されているのですね。訪問看護の事業所は数多くありますが、その中で御社ならではの強みはやはり小児対応ができるところなのでしょうか?
宮崎さん:そうですね。地域にもよりますが、小児を対応できる事業所はまだまだ少ないんです。一方で、小児の在宅医療を必要とする層は増えています。
また、発達神経症や自閉症、ADHDといったお子さんも訪問看護を使えるのですが、そもそも「使えることすら知らない」という親御さんがとても多いのが現状です。訪問看護といえば高齢者が退院後に使うものというイメージが一般的ですが、「子どもも使える」ということがまだ知られていません。そこを届けていきたいと考えて動いています。「医療×発達支援×生活×家族支援×社会参加」を支える総合ケアを提供できるところが弊社の強みです。
小川:ADHDは最近「大人のADHD」なども知られてきましたが、小児の段階で診断を受けていても、訪問看護という選択肢があることは知られていないものなのですね。
宮崎さん:各自治体によりますが、しっかりしている市区町村であれば、1歳半や3歳のタイミングで乳幼児健康診査で拾い上げてくれます。そこで発達に遅れがあることを早めに把握し、福祉サービスを案内する流れになります。
相談支援事業所の方が「訪問看護も使ってみては」と提案してくれることで、当社への依頼につながるのですが、入り口となる行政自体が「訪問看護を使える」と知らなかったり、相談支援員さんが知らなかったりするケースも多いのが実情です。利用者さんに情報自体が届いていない状態で、使えるのに使えていない人がとても多いと感じています。
小川:情報が届いていないというのは大きな課題ですね。早期に介入できると、その後の発達にも違いが出てくるのでしょうか?
宮崎さん:「やった場合」と「やらない場合」の比較例がないのでエビデンスがあるかと言われると難しい部分ではありますが、発達が遅れている子をそのまま放置して、家庭環境や親との関係性が悪化し、結果として二次障害的に悪くなって大人になっていくケースを間近でみてきました。早めに介入できたほうが家庭環境も良くなりますし、子どもを取り巻く環境自体が良くなるので、意義はあると考えています。
感覚統合療法と家庭環境への働きかけ—医療を超えた支援

言葉の遅れには「公園で遊ばせる」ことが効果的
小川:具体的にはどのようなことをして発達を促していくのでしょうか?
宮崎さん:たとえば、言語系で悩んでいるお子さんや学習障害のお子さんが多いのですが、2歳、3歳になっても一語文しか話せないお子さんがいます。「パパ、〇〇して」といった三語文が話せる年齢でも、「パパ」「ママ」しか言えない状態は発達が遅れている状態です。
発達が遅れているお子さんには「感覚統合療法」というアプローチを行います。言語が遅れているからといって「ママって言ってごらん」と言葉がけをすることだけが有効というわけではなく、たとえば公園でたくさん遊ばせることも有効である場合があります。
小川:公園で遊ばせることが言葉の発達につながるのですか?
宮崎さん:子どもの脳の発達は、指先で触れて「これは硬い」「柔らかい」「こうなったらこうなる」と体で覚えていくことで促進されます。私たちは療育支援の中でその土壌をつくったり、外出支援で公園に連れて行って感覚を磨いてもらう支援を行っています。その中で言語も発達していき、言葉が出るようになったり、今までできなかったことができるようになったりします。
小川:医療的な処置だけでなく、幅広い支援をされているのですね。
宮崎さん:発達のお子さんへの支援は「医療っぽくない」部分が多いです。病院でやるようなこととはまったく違います。療育支援や、どちらかというとお父さんお母さんのフォロー、社会から孤立しないためのサポートが中心になります。
自閉症のお子さんは社会から孤立しがちで、不登校になったり自己肯定感が著しく低くなったりします。家庭環境がとても大切なので、親御さんに「こういう声かけをしてあげてください」とお伝えしたり、親御さんにゆっくり休んでいただく時間をつくったりもします。
小川:親御さんのケアも含めてサポートされているのですね。
宮崎さん:学校や保育園などの関係機関に対しても、「このお子さんはこういう特徴があるから、宿題をやらせるのはあまり良くない」といった提案をすることもあります。できないことを「できない」と積み重ねるだけでは逆効果ですから。
自閉症だから何もできないわけではなく、苦手な分野があるだけです。得意なところもあるし、人並み以上なこともあります。お子さんの特性に合ったアプローチを提案し、どうやったら生きやすくなるかをゆっくり教えていくのが私たちの仕事です。
「勝ち筋」を見極めて小児領域へ—SNS採用を武器にした戦略

他社が参入しない理由と、あえて飛び込んだ理由
小川:他社さんが小児領域をやりたがらないのは、小児経験のある看護師が少ないといった理由からでしょうか?
宮崎さん:そうですね。小児病棟の経験がないと子どもへの対応に不安を感じる人が多く、「謎のブロック」のようなものが発生している印象です。
他の訪問看護ステーションはスタッフ層が40代、50代中心で、病棟で確立された価値観の人が在宅に流れてくることが多いので、小児を急にやると言われても受け入れ難いのかもしれません。訴訟リスクがあるとか、お子さんに何かあったときに親御さんが出てくるからリスクが高いとも言われますね。
小川:そうした中で小児に踏み切られたのは、どのような理由からだったのでしょうか。
宮崎さん:小児は単純に「勝ち筋があった」からです。私が訪問看護業界に入ってきた理由は、まず採用がSNS上で強かったこと。これは他社と比較してかなり強みになっています。
ただ、採用できても同じ利用者層を狙っていては、長い付き合いのある事業所に依頼が流れてしまいます。訪問看護ステーションは数え切れないほどあり、ケアマネージャーさんも営業を受けすぎて疲れている状態です。大手がシェアを取っている領域に攻めていくのは勝機が薄い。そう判断し、誰も本気で攻めていない分野として「小児」に舵を切りました。
看護師免許を燃やした25歳—退路を断つ覚悟

「戻れる道をつくったら甘えてしまう」
小川:今回のメディアのテーマが「熱狂」なのですが、宮崎さんがこれまでで一番熱狂したことは何でしょうか?
宮崎さん:私は25歳まで看護師をやっていて、今32歳なのですが、看護師を辞めてから最初は営業をずっとやっていました。そのときが一番しんどかったし、熱狂していた気がしますね。
小川:それはなぜ熱狂されていたのでしょうか?
宮崎さん:退路を断っていたからですね。看護師を辞めたときに、看護師免許を燃やして「看護師に戻れない状態」にしたんです。もう看護師には戻らないと。戻れる道をつくったら甘えてしまうと思って。免許を燃やして個人事業主になったのですが、ちょうどそのタイミングで子どもも生まれていたので、必死でしたね。
小川:多くの人なら、いきなり独立ではなく、まずは一般企業に入る選択を考えそうですよね。
宮崎さん:それが選択肢になくて、「できない」と思っていました。看護師として働くしかないという感覚で、他の就職の仕方も分からなかったし、どうやって探したらいいかも分からなかった。独立か看護師かの二択でした。
当時はめちゃくちゃアホだったのか、「それ以外ない」と思っていて。看護師を辞めてあらゆるところから反感を食らっていたので、その中で結果を出さないとダメだという思いで必死でした。
小川:そもそも看護師を辞められた理由は何だったのでしょうか?
宮崎さん:給料が上がりづらいことと、将来への危機感です。ちょうど結婚して子どもができるタイミングだったこともあり、今後の生活設計やお金との向き合い方を考えたときに、このままで大丈夫なのかという不安がありました。
看護師は新卒時点での給与ベースは高いのですが、30代、40代になっても劇的には変わりません。他の業界に比べると、初期が高いだけでそこからの伸びがとても緩やかです。その状況を突破できる道は看護師の道にはないと感じたからですね。
SNSがきっかけで訪問看護の立ち上げへ
小川:いつか看護師領域で独立しようと考えていたのですか?
宮崎さん:いえ、それは考えていませんでした。本当に看護師というか医療の業界に戻ることはもうないと思っていたので。
そこからコロナがあって営業も難しくなってきて、SNSでも発信するかと思ってTikTokやインスタグラムで発信を始めたら、看護師界隈を中心に大きな反響があったんです。いろんな看護師さんがみてくれるようになったから、それがきっかけで「この人たちと何かできるのではないか」と考えて、訪問看護を立ち上げました。
小川:SNSを続けられた理由やモチベーションは何だったのでしょうか?
宮崎さん:それも本当に、「営業がコロナでできなくなるから、やばい、進化しないと」と思って。「食いつながないとダメだ、稼がないと」という気持ちで何かしらの方法を探していました。
小川:そういった危機感が原動力だったのですね。看護師領域で発信し始めた理由は何だったんですか?
宮崎さん:これまでの経験や現場でみてきたことを、いちばん等身大で語れるのが看護の領域だったからです。あとは、営業をやっていたときに話すことが得意というところがあって、他の発信をみていても「このくらいなら自分でも話せそう」という感覚で始めたら結構うまくいったという感じです。看護の内容で「あるある」のようなことを、エピソードトーク形式で発信している人がほとんどいなかったので、それなら発信できそうだと思ってやりました。
看護師のキャリアを超える—自己実現を支援する組織づくり

理念はスタッフに向けた言葉
小川:御社で働く看護師さんが、生き生きと働ける環境について教えてください。
宮崎さん:開業当初は「この人と働いたら面白そう」という動機で集まってくれた人が多かったです。まだ2年8ヶ月ほどしか経っていないのですが、最初の1年で入ってきてくれた人は、本当にここで人生を変えたい、もっと成長したいという気持ちで入職してくれました。
小川:成長意欲の高い方が集まっている背景には、どのような考え方があるのでしょうか?
宮崎さん:私自身、理念をスタッフに向けてつくっています。ミッション・ビジョン・バリューに関しても、「看護師として利用者さんにどんなことをするのか」というよりも、「自分たちが成長するためにどうあるべきか」をずっと言い続けている会社の運営です。そこに共感してくれた人たちの熱量は高いので、入ってきてくれた人はそもそも熱量が高いですね。
小川:「笑顔あふれる、自分らしい人生を」という理念は、スタッフの方に向けた言葉なのですね。
宮崎さん:はい。当社で熱狂できるという意味で言うと、看護師のキャリアで終わらないところがあります。病院では現場のプレイヤーとしてのキャリアを極めていくことがほとんどですが、訪問看護は「看護師をマネジメントする」という仕事があったり、売上や経営的な部分の管理も必要になったりします。
プレイヤーとしてだけでなくマネージャーとして働いたり、本部で会社全体のことや他の事業まで幅広く考えるところまでキャリアを歩めます。病院では想像できないようなキャリアを踏めるので、上を目指したいという意欲を持った人が多いですね。
小川:看護師で「一般企業で働いてみたい」という人は結構いらっしゃるようですが、やはり専門職なので「看護師しかできない」と思っている人が多い印象があります。看護師のキャリアを活かせるけど一般企業の経営的な部分も挑戦できる雰囲気があるのはすごく良いですね。
宮崎さん:そうですね。「一般企業みたいな位置付け」になると思います。「在宅医療を学びたいから入社する」というよりは、「一般企業で働いてみたい」という思いに近しい動機で入社する人も結構多いです。
未経験でも安心の教育体制と効率的な働き方

発達領域は全員が未経験からスタート
小川:小児の経験がない未経験の方が入社した場合、どのような教育体制がありますか?
宮崎さん:経験者が社内にいるので、その人が撮った動画や研修の動画を全部アーカイブで残してみてもらったり、訪問業務では必ず先輩看護師が同行してOJTを行ったりしています。実際の支援を直接みて学び、自立に向けて動いていく形です。
小川:同行訪問でしっかり学べる環境があるのですね。
宮崎さん:はい。入社してから3ヶ月間の研修期間は必ず同行訪問を行い、段階的に自立できるようにしています。また、発達領域は小児病棟で働いていても臨床で経験しにくい分野なので、当社では全員が未経験からスタートする前提で教育を行っています。
そこはみんな一緒なので、「最初は不安だよね」と共感してくれる人も社内に多いです。周りのフォローもあって、ほとんどの人が未経験から1人で訪問できるようになっています。だいたい1利用者に対して2〜3回の同行訪問を経て、一人立ちする流れです。
人間関係に悩まない直行直帰スタイル
小川:働く環境や雰囲気について教えてください。
宮崎さん:現場のスタッフは自宅から直接利用者さんのお宅へ向かい、仕事が終わったらそのまま帰宅する直行直帰のスタイルです。基本的に1人で訪問することが多いので、事業所で会ったときはみんなワイワイしていますが、人間関係で困ることはほとんどないと思います。
役職のメンバーもモチベーションがとても高いです。「どうやったらスタッフをより良くできるか」「どうやったらこの環境を良くできるか」と、私が掲げるビジョンに本当に熱心についてきてくれています。いわゆる「お局さん」みたいな人がいる雰囲気では全くないですね。
AI活用で医療業界の「生産性の限界」を突破する

記録業務をAIに任せてスタッフの負担を軽減
小川:AI導入や記録業務の効率化についてもお聞きしたいです。
宮崎さん:医療業界はITをなかなか取り入れないので、未だにFAXを使っているところも多いです。そういった最新技術の取り入れについては遅い業界なので、パソコンが苦手な人やAIを使いこなせていない人が多く、会社全体でうまく活用するには時間がかかりますが、当社では記録業務にAIを活用しています。
小川:具体的にはどのような活用をされているのでしょうか?
宮崎さん:毎月「計画書」と「報告書」を作成する必要があるのですが、こうした定型的な書類作成に時間を取られて残業になるスタッフも多いのが実情です。当社ではバックオフィスでAIを使って効率的に作成し、担当者は内容の確認だけを行う形にしています。
もちろん質も大事ですし、適当に報告していいわけではないので、担当の目は必ず通します。本当に担当として必要なことだけをやってもらい、記録や事務作業はバックオフィス側で巻き取れるようにしています。それだけで、日々の記録業務時間を3分の1に短縮しました。月単位で考えると数日分になります。
小川:効率化によって従業員の方への還元も大きくなりますね。
宮崎さん:はい。目指しているのは、医療従事者の生産性の限界を超えることです。ITを取り入れてこなかった業界なので、1ヶ月や1週間の労働時間で出せる結果に限界がある。この常識をAIを使って突破していきたいと考えています。
3年で年商15億・20拠点へ—小児に寄り添い続ける未来

小川:今後の展望について教えてください。
宮崎さん:数字的な目標になりますが、向こう3年で年商を現在の5〜6億円から15億円まで伸ばしたいと考えています。拠点数も現在の11拠点から20拠点まで拡大する計画です。
また、小児に関連するデイサービスや相談支援事業所、就労支援施設B型なども展開していきたいです。小児のお子さんたちもいつかは成人になりますが、その先でも当社がフォローできる施設を持っていれば、大人になってからも人生に寄り添えます。訪問看護だけでなく、さまざまなサービスを充実させていきたいと考えています。
会社概要
| 会社名 | 株式会社ARIA |
| HP | https://new-gate.jp/ |
| 設立 | 2022年12月 |
| 事業内容 | 訪問看護 |
| 採用情報 | https://recruit.new-gate.jp/recruit/ |
※2025年12月時点の情報です。
