【代表インタビュー】株式会社Nexor 代表取締役 髙橋 優斗

顧問派遣×ユーザー視点で変えるエンタープライズ営業の常識
顧問派遣というビジネスモデルをご存知でしょうか。大手企業への営業を強化したいスタートアップにとって、元役員クラスの人脈と知見を活用できる有効な手段として活用されています。しかし、「顧問を契約したものの、うまく成果に繋がらない」という声も少なくありません。
株式会社Nexor代表取締役の髙橋 優斗さん(以下、髙橋さん)は、新卒でキーエンスに入社後、スタートアップのログラスで1人目セールスとして入社し、エンタープライズ統括部部長を歴任。自ら100名規模の顧問と契約しながら営業を実践してきた経験から、「ユーザーサイドの視点」で顧問派遣事業を展開するという独自のアプローチに辿り着きました。
もう1つ、髙橋さんが大切にしているのが「仕事を娯楽に」という哲学。前職で倒れた経験から、疲れたら1週間休んで10万円がもらえる「疲れた手当」や、目標達成後はいくらでも休める「達成時無限有給制度」など、ユニークな福利厚生を備えた組織をつくり上げました。
営業を「お客様の意思決定の後押し」と定義し、クロージングをしない営業スタイルを貫く髙橋さん。プロキックボクサーという異色の経歴を持ち、好奇心のままに行動し続ける彼に、Nexorが目指す世界について伺いました。
プロフィール

株式会社Nexor
代表取締役 髙橋 優斗
趣味
お笑い鑑賞、キャンプ、子供とゲームセンターにいくこと
座右の銘
人として、かっこよく。
尊敬する人
渋谷 龍太(SUPER BEAVER)
学生が読むべき本
「左ききのエレン」かっぴー
経営者におすすめの本
「キングダム」原 泰久
人生で一番熱狂したこと
プロキックボクサー時代の経験
ユーザー視点で解決する顧問派遣の「真の課題」

レッドオーシャンに飛び込んだ理由—実践者だからこそみえた業界の盲点
小川:まず、御社がどのような事業を展開されているのか教えてください。
髙橋さん:現在、大きく3つの事業を展開しています。顧問派遣事業、エンタープライズコンサル事業、そしてAI活用支援・受託開発支援です。
メイン事業である顧問派遣は、たとえばトヨタ自動車に営業したいスタートアップに、トヨタ自動車の元役員の方を紹介し、その方の人脈や知見を活用しながら営業を加速していただくサービスです。
小川:競合も多いと聞きますが、なぜこの領域に参入されたのでしょうか?
髙橋さん:競合は10社以上あるレッドオーシャンです。ただ、私が前職のログラスで営業統括をしていたとき、同時に100名ぐらいの顧問と契約しながら顧問営業をしていました。
そこで一番困ったのが、顧問様とどう付き合えば良いのか、どういうアジェンダで商談に臨めば良いのか、組織体制はどう組むべきかといった実践的なノウハウが全くなかったことなんです。
周りのベンチャーに話を聞くと、多くの会社が顧問施策をやっているんですが、うまくいっている会社は本当に一握り。それは顧問を受け入れる側の企業の問題体制、アジェンダ、営業力が原因なんです。
だからこそ、顧問施策をやり切った私たちが、ユーザーサイドの視点で会社を立ち上げました。良い顧問様と、顧問施策をうまくやるためのノウハウ、両方揃っている会社は他にないと自負しています。
小川:具体的な成功事例を教えていただけますか?
髙橋さん:AIの受託開発をされているスタートアップでは、当社から紹介した顧問の方から6件案件を紹介いただいて5件受注、受注率80%で、半年で数千万後半の売上が上がりました。ROIで言うと10倍以上ですね。
別の会社では、最初2名の顧問から始めて4ヶ月で4件受注。効果が出すぎたので、他の営業代行の予算を全部顧問に寄せてもらって、今は数十名体制で展開されています。
「楽しい」が「辛い」に変わる瞬間を知っているからこそ

ログラス時代の原体験—急成長の光と影
小川:これまでのキャリアの中で、一番熱狂されたのはいつですか?
髙橋さん:ログラスの初期ですね。「良い景気を作ろう」というミッションのもと、少ない人数で船を少しずつ大きくしていって、仲間が加わって、どんどん成長していく。あの過程はすごく熱狂しました。私が入社したときは10数名で、退職時は350名。4年半でそれだけ成長したんです。
ただ、人が急速に増える中で、様々な葛藤がありました。チームの数字がいかなかったとき、自分の営業もしなきゃいけない、でも自分が営業すると他のメンバーをみられない。
数字の余裕がないと心の余裕もなくなって、人に優しくできなくなる。それを救うために自分がめちゃくちゃ頑張って営業するんですけど、最終的に体力が持たなくて倒れました。
小川:そういった経験が、今の組織づくりに影響しているんですね。
髙橋さん:そうですね。だからこそ当社では、いろんな福利厚生を用意しています。私に「疲れた」と申告してもらえれば、年に1回、1週間休んで10万円がもらえる「疲れた手当」をつくりました。当時、私は疲れたと言えなかったんです。休みを与えるだけだと使ってくれないと思ったので、お金ももらえるなら使ってくれるんじゃないかと。
もう1つが「達成時無限有給制度」です。エース人材ってノルマは達成するじゃないですか。でも期末が迫ってくると、未達の人の分も頼まれて、一番頑張った人が一番苦しい思いをするんですよ。
だから達成したらいくらでも休んでください、給料も出しますと。もうちょっと稼ぎたかったらやってもらっても良いけど、あなたのミッションは終わっているので、それ以上苦しい思いをすることはないという制度です。
熱狂はすごく良いと思うんですけど、やはり長く楽しむことが大事。生活の中に仕事があって、仕事が生活を食うことはない。生活を充実させるために仕事があるだけなので、そのための制度としてつくっています。
反面教師から学んだ「押さない営業」の真髄

キーエンス流の反対を行く—クロージングしない営業スタイル
小川:髙橋さんはキーエンスで営業を学ばれたそうですが、今の営業スタイルはどのように確立されたのでしょうか?
髙橋さん:実はキーエンスの反面教師でこうなったんです(笑)。キーエンスは、とにかく電話して「今日買ってください、今買ってください」という営業。効率的な営業手法ですが、人に嫌われている感覚もありました。
転職して、向井 俊介さんという営業で有名な方と話したときに、「営業は相手の事業を発展させる、投資を後押しすることだ」と教えてもらったんです。そのために必要なのは、買ってくださいとお願いする行動量じゃなくて、知識を学ぶための行動量や、相手に選択肢をいっぱい与えてあげるための行動量だと。
小川:具体的にはどのような営業をされているのでしょうか?
髙橋さん:私は転職してからクロージングをしたことが1回もないんです。提案書も「社内稟議に必要なパーツを渡すので、あなたが買うんだからあなたがつくってください。そのサポートはします」というスタンス。こちらから「買ってください」と言ったことは一度もありません。
逆に競合の情報もめちゃくちゃ渡します。結果、うちを選んでもらう方がコミットが高くなりますから。前職での営業の約3割がお客さんからの紹介でしたし、受注率も他の人の3倍ぐらい高かったです。
営業の本質は「お客様の意思決定の後押し」
小川:髙橋さんにとって営業とは何ですか?
髙橋さん:お客様の意思決定の後押しをすることだと思っています。売り込むとか、自分の商材を売るとかはどうでも良いんです。お客さんが伸びるための意思決定を後押しするのが営業の一番の仕事。
営業を苦しい仕事ではなく、楽しいとかやりがいのある仕事にしていきたい。「営業を娯楽にする」それがうちの会社の正しい表現かもしれませんね。
好奇心と行動力が生む唯一無二のキャリア

戦略的キャリア構築と異色の経歴
小川:キーエンスからログラスに転職されて、そこから独立された理由を教えてください。
髙橋さん:実家が自営業で不動産をやっていて、父の姿をみて育ったので、そのうち独立するものだと思っていました。そして、父を超えるには、起業して父を超える経営者になるしかないとも常々思っていました。そのために、まずネームバリューと今後戦っていくための武器が欲しかったので、営業が強いと言われるキーエンスに入りました。
本当はキーエンスを辞めて独立するつもりだったんですが、冷静に考えたらキーエンスのものを売る営業しか学んでなかった。ネームバリューがないものを売っていく営業力や、戦略、人事、経営を学ぶならスタートアップしかないと思って、ログラスに入りました。
小川:戦略的にキャリアを構築されてきたんですね。ところで、プロフィールを拝見すると、プロキックボクサーのご経歴がありましたが、どのようなきっかけでプロを目指されたのですか?
髙橋さん:正直、最初はプロになる気は全くなかったんです。ただ、私は有名大学を出ていないので、何か突出した実績がないと評価してもらえないと思ったんです。そこで、アマチュアで日本一になった実績を活かして、キックボクサーとして認めてもらおうと考え、プロの道に進みました。
3週間で8キロ減量したり、K-1のトップ選手にボコボコにされて血を吐いたり。大学最後のクリスマスは試合で、一晩で40キロぐらい走って水を抜いて体重を落として。本当に地獄と熱狂の狭間みたいな経験でしたが、あのときの経験はかけがえのないものです。
小川:そういう好奇心が営業力にも繋がっているのでしょうか?
髙橋さん:そうかもしれませんね。営業は8割知識だと思っているんです。専門知識じゃなくて、予備知識も含めて。
うんちくを言える人って、周りに人が集まるじゃないですか。本当にいろんな知識を持っているのが営業の強みだと思っています。一見繋がっていないようなことも、どこかで繋がって営業に生かせたりするんです。
「決して無理せず、地に足つけて着実に」事業をつくる組織

雰囲気とユニークな働き方
小川:会社の雰囲気について教えてください。
髙橋さん:いわゆる体育会系の「営業頑張ろうぜ!」「寝ずに仕事!」みたいな雰囲気ではないです。うちは外部株主を入れてないし、目標を達成してもしなくても、誰にも何も言われません。
友達の家に集まって、みんなで話しているようなテンションというか、飲み会しながら楽しいことをずっと話し合っているような雰囲気です。それでも短期間で圧倒的な売上、利益を創出できています。
バリューは威風堂々、正真正銘、生活円満。人に応援されるようなこと、自分たちが威風堂々とできることであり、それが正真正銘、本質的なことであれば、何でもありだよねと。共同創業者はプロポーカープレイヤーでもあり、急に「来週韓国に1週間行くんだよね」とか言い出します(笑)。
結果が出ていれば何も言われないし、結果出せてなかった人をみんなで助ける。ビジネスと友達の間ぐらいな感じでやってますね。
小川:そんな自由な雰囲気の中で、実際に入社したメンバーはどんな経験ができるのでしょうか?
髙橋さん:一番大きいのは、普段絶対会えないような方々と当たり前のように会話ができる環境ですね。ロイヤルホストの社長候補だった方、大手総合商社の常務、超大手小売会社の社長とか。そういう偉人レベルの人たちと会って知見をもらえるのは、社会人としてすごく素晴らしいことだと思います。
小川:入社される方に一番求めることは何ですか?
髙橋さん:好奇心が旺盛で、素直で、楽しめる。この3つですね。営業なんて別に経験しなくても良いんですよ。営業って会話なんで、経験している人が売れるとは限らない。飲み会で面白い人って営業やったら絶対できるんで、営業経験はいらないですね。
私はたぶん、人より500倍ぐらい好奇心が旺盛なんですよ。知らないことは何でもやってみたいし、知らないまま死ねないみたいな感じです。この人と話したいなと思ったら、すぐSNSでDMを送って会いに行きますし。そういう行動力のある人を採用したいですね。
事業の一貫性がないホールディングスへ

ミッション「夜明けのきっかけを」に込めた想い
小川:ミッションに「夜明けのきっかけを」と掲げられていますが、どういう想いがあるのでしょうか?
髙橋さん:私は31歳なんですが、生まれてからずっと、日本は夜が明けてないと感じているんです。日本は素晴らしいものを持っているのだから、その夜明けのきっかけをつくりたい。
それから、会社で誰にも頼れず悩んでいる方、良いサービスを持っているのに大手企業になかなか届けられない会社、本当は活躍できるポテンシャルを持っているのに発揮できていない人。そういった一人ひとりの人生にも夜明けを届けたいという想いがあります。
小川:今後、会社をどのようにしていきたいですか?
髙橋さん:あえてなんですけど、事業の一貫性がないホールディングスをつくりたいと思っています。各メンバーや仲間が「楽しい!」「やってみたい!」と思うものをどんどん事業化させていって、彼らの背中を押してあげたい。
DMMさんとか、レバレジーズさんのように、非上場で、オーナーで、ちゃんとメンバーがやりたいことを応援して、ホールディングス化していくのが中長期的な目標です。既に今動いている事業も、顧問派遣とは全く関係ないtoC事業で、事業シナジーはゼロなんですよ(笑)。
小川:最後に、これから入社する方へメッセージをお願いします。
髙橋さん:営業って本当に楽しい仕事ですし、数字なんて後からついてくるんで、ちゃんとお客さんのことを想えるような営業ができるのは、うちの特徴だと思います。また、普段会えない偉人のような人と会って話をするのは、20代、30代でかけがえのない経験です。
うちは転職も進んでOKなので、うちで経営を学んでもらって新しい会社をつくる、全然OKです。ステップアップとして使っていただくのも全然良いので、夢がある人もぜひお話ししたいですね。
会社概要
| 会社名 | 株式会社Nexor |
| HP | https://nexor-biz.com |
| 設立 | 2024年12月 |
| 事業内容 | 顧問派遣事業 営業コンサルティング事業 AI活用支援事業 |
※2025年9月22日時点の情報です。
